『ブラックブック』この映画を見て!
第196回『ブラックブック』
今回紹介する作品は第2次世界大戦下のナチスに支配されたオランダを舞台にユダヤ人女性が必死に生き延びる姿を描いた作品『ブラックブック』です。
本作品はハリウッドで『ロボコップ』や『氷の微笑』などの過激な作品を次々と発表したポール・ヴァーホーヴェンが母国オランダに戻って脚本と監督を担当しています。ヴァーホーヴェンはハリウッドでは過激な暴力描写と性描写ばかりが話題になっていましたが、人間の悪意やドロドロした欲望をサスペンスたっぷりに描くことに長けた監督です。そんな監督の持ち味が本作品では最大限活かされています。
ストーリー:「1944年、ナチス・ドイツ占領下のオランダ。美しいユダヤ人女性歌手・ラヘルは、ナチスから逃れるため一家で南部へ向かう。しかし、ドイツ軍の追跡により彼女を除く家族全員が射殺されてしまう。その後、ラヘルはレジスタンスに救われる。ラヘルはユダヤ人であることを隠し、名前をエリスと変えてレジスタンス活動に参加する。そしてナチス内部の情報を探るため、ナチス将校ムンツェに接近して、彼の愛人となることに成功するのだが…。」
ナチスに追われるユダヤ人を描いた戦争映画というと『シンドラーのリスト』や『戦場のピアニスト』などユダヤ人迫害の苦難を重苦しく描いた作品が多いのですが、本作品は主人公が裏切り者を探すというサスペンスタッチで物語が展開していくので娯楽作品として手に汗握りながら楽しく見ることができます。
また本作品の素晴らしいところはナチスを悪、レジスタンスやユダヤ人を善として単純に分けて描いていないところです。欲望のためにナチに協力するユダヤ人やレジスタンスがいたり、ナチの中にも主人公に協力する良い将校がいたりと人間の愚かさや弱さを人種や国籍で分けることなく冷徹に描いています。
特に印象的だったのが敗戦後にオランダの民衆がナチ協力者を虐待するシーンです。ナチに虐げられた民衆が戦後ナチと同じような愚かな行為をする姿は人間という生き物の愚かさや弱さを見事に抉り出しています。ヴァーホーヴェン監督は下品な描写をする癖がありますが、本作品はそんな下品な描写が作品のテーマである戦争や人間の下品さを描くことと上手く結びついていたと思います。
あと本作品を見て凄いと思ったのは主人公の女性を演じたカリス・ファン・ハウテンの体当たりの演技です。主人公は次から次へと屈辱を受けるのですが、それに屈することなく逞しく生き延びる姿は女性のしたたかさや力強さといったものを感じました。特に印象的だったのが主人公がブロンドに陰毛を染めるシーンと後半の糞尿を浴びるシーン。何が何でも生き延びようとする人間の気迫を感じました。
もちろんヴァーホーヴェンらしくエロ・グロな描写も健在です。しかし、以前の作品に比べると少し控えめだったような気がします。
本作品は久しぶりの戦争映画の傑作であり、ヴァーホーヴェンの傑作です。ぜひ一度見てください!
上映時間 144分
製作国 オランダ/ドイツ/イギリス/ベルギー
製作年度 2006年
監督 ポール・ヴァーホーヴェン
脚本 ジェラルド・ソエトマン ポール・ヴァーホーヴェン
撮影:カール・ウォルター・リンデンローブ
音楽:アン・ダッドリー
出演:カリス・ファン・ハウテン、トム・ホフマン、セバスチャン・コッホ、デレク・デ・リント
ハリナ・ライン、ワルデマー・コブス、ミヒル・ホイスマン、ドルフ・デ・ヴリーズ
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