『その男、凶暴につき』この映画を見て!
第299回『その男、凶暴につき』
今回紹介する作品は北野武の初監督作品『その男、凶暴につき』です。本作品は当初の予定では深作欣二が監督することになっていたのですが、スケジュール調整が出来なかったために、主役のビートたけしが監督も務めることになりました。
ストーリー:「首都圏の警察署に勤務する我妻は捜査のためなら暴力も厭わない性格のため署内でも敬遠されていた。そんなある時、港で麻薬の売人が殺害される事件が発生。新人の菊池と捜査開始する。手荒な捜査で犯行グループの実態を暴いていくうちに、警察内部にも犯行に加担しているという事実が浮かび上がってくる。」
北野監督は数多くのバイオレンス映画を撮っていますが、本作品は一番ドライかつクールで暴力の凄みが出ています。
冒頭のホームレス狩りをしていた中学生の家にたけし演ずる刑事が突然のり込み暴力を振るうシーンから張り詰めた空気が漂っており、見る者を手に汗握らせます。主人公の過激な取調べシーンも迫力満点で見ていて背筋が凍ります。本作品の暴力は突発的かつ痛々しく観客に大きなインパクトを与えます。
役者としてのビートたけしの演技は子どものような純粋さと他のものを寄せ付けない狂気のオーラを感じさせ、見ていて清々しくも怖いです。また、殺し屋を演じる白竜もたけしと同じくらい強烈な存在感のある演技を見せてくれます。この2人が対決する後半の展開は一瞬たりとも目を離すことができません。
また、佐野史郎や岸辺一徳も人間の嫌らしさや醜さを前面に出した演技も映画に深みを与えています。
本作品は暴力によって破滅していくことを選んだ男たちの狂気迫る姿を淡々とリアルに描いた傑作です。ただ、救いようのない映画であるので見る人を選ぶ作品でもあります。
上映時間 103分
製作国 日本
製作年度 1989年
監督: 北野武
脚本: 野沢尚
撮影: 佐々木原保志
美術: 望月正照
編集: 神谷信武
音楽: 久米大作
出演: ビートたけし
白竜
川上麻衣子
佐野史郎
芦川誠
平泉成
音無美紀子
岸部一徳
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