アニメ映画

『君の名は』この映画を見て!

第312回『君の名は』
Index  今回の作品は邦画歴代2位の興行収入となった大ヒット作品『君の名は』。私も公開されて半年経過して劇場にて鑑賞してきました。

 新海誠監督は2002年に公開されたデビュー作の『ほしのこえ』の時から好きで、美しい背景美術と観る人の感情を揺さぶる音楽の挿入の仕方が印象に残る作品が多いです。

 今回の作品も美しい背景と RADWIMPS の音楽が印象的でした。また、以前の作品に比較して、キャラクターデザインも背景とマッチしており、作画も躍動感があり、素晴らしかったです。スタッフに田中将賀さんと安藤雅司さんが参加されたことで、この映画の映像としてのクオリティは格段に上がったと思います。

 ストーリーに関しては、見知らぬ男女の心が突然の入れ替わるという設定は面白く、主人公たちの戸惑いと何とか目の前の状況を切り抜けようとする姿は微笑ましく、次第に主人公たちが心を寄せ合って恋愛感情を抱くようになる前半の展開は見ていて瑞々しく心地よかったです。
 それ故に後半の東日本大震災等を意識した内容に突然シフトチェンジに驚きました。また、タイムラグというSF的設定も盛り込み、真実を探り何とか会おうとする主人公の男の子の賢明な姿や悲劇を回避するために苦闘する少しサスペンスタッチのストーリー展開に惹きこまれました。
 ただ、冷静に考えるとかなり突っ込みどころのある矛盾のあるストーリー展開ではあります。
なぜ二人はタイムラグに気付かなかったのか、如何にヒロインは父親を説得出来たのか?、タイムパラドックスも気になるところではあります。
 また、個人的に
最後がハッピーエンドだったことも印象的でした。新海作品は切ない終わり方が印象的だったのですが、監督の心情の変化か、多くの人に観てもらいたく変えたのか?ただ、この映画はこの終わり方がとてもあっていたとは思いますし、だからこそヒットしたのだがと思います。
 この映画はファンタジーという形で
突然の災いで失ったものを取り戻したい人の叶わぬ思いに対して、一時の慰めを与えてくれます。

 

監督: 新海誠 

脚本: 新海誠 

キャラクターデザイン: 田中将賀 安藤雅司 

作画監督:安藤雅司 

美術監督:丹治匠、馬島亮子、渡邉丞 

音楽: RADWIMPS

声の出演:神木隆之介 

 上白石萌音 

 長澤まさみ 

 市原悦子 

 成田凌 

 悠木碧 

 島崎信長 

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『ホーホケキョ となりの山田くん』映画鑑賞日記

Photo_2  いしいひさいちの四コマ漫画作品を20億円の制作費をかけて高畑勲監督が映画化した本作品。スタジオジブリとしては初のセル画制作アニメを用いないフルデジタル処理で制作されています。高畑監督は水彩画のような手描き調の画面にこだわり、通常のアニメ映画の約3倍17万枚もの作画を行っています。(ジブリ作品の中で一番の作画枚数だそうです。)

 私は公開と同時に劇場に足を運んで鑑賞したのですが、水彩画のような映像のクオリティは流石ジブリと思いましたが、ストーリーが起伏がなく淡々としており映画として1時間40分見るには辛かったです。
 一般庶民の何気ない日常生活を哀愁と笑いを交えて描いている点は悪くはないのですが、わざわざ映画館で見る必要が感じられず、『サザエさん』のようにテレビで毎週放映した方が楽しく見れるのではと思いました。

 ただ、矢野顕子の音楽はとても素晴らしく、聞いていて心が落ち着きます。

製作国    日本
上映時間 104分
製作年度 1999年
監督:高畑勲   
絵コンテ:田辺修、百瀬義行   
原作:いしいひさいち   
脚本:高畑勲   
作画監督:小西賢一   
音楽:矢野顕子   
声の出演:
    朝丘雪路   
    益岡徹   
    荒木雅子   
    五十畑迅人   
    宇野なおみ   
    矢野顕子

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『おもひでぽろぽろ』映画鑑賞日記

Photo  岡本螢と刀根夕子による同名原作コミックを高畑勲監督がアニメ化した本作品。原作は小学生時代のエピソードのみですが、高畑監督はそこに27歳の主人公が田舎の農村を訪ねるエピソードを独自に追加。現代から過去を回想する形で物語が展開します。

 私は本作品を中学校時代に初めて見たのですが、淡々とした展開が退屈で途中睡魔に襲われたほどでした。
 映像はジブリだけあって現代のパートは実写かと思えるほど緻密で素晴らしいのですが、主人公たちの顔の皺はやり過ぎで違和感がありました。
 また、高畑監督の田舎や有機農業を礼賛するメッセージも田舎育ちの私には都会から見た理想にしか見えず共感できませんでした。
 ただ、ベット・ミドラーの名曲「The Rose」を都はるみが歌った主題歌「愛は花、君はその種子」はとても素晴らしく、それを聞きたいがためにサントラを買ったほどでした。

 最近久しぶりに本作品をふと見返したのですが、中学校の時の比べると興味深く見ることができました。

 私は本作品を昔を懐かしむことが主題の映画だとずっと思っていました。しかし、改めて見ると、自分の過去と今の自分の繋がりを自覚することで主人公が成長する姿を描いた映画であることに気づきました。
 ラストシーンで主人公が結婚を決めて引き返すシーンは本作品のいわばクライマックスでありますが、小さい頃の自分や友だちが未来に向かう主人公を見送る姿は過去との繋がりや和解を見事に表現しています。
 過去のエピソードは時代は違うとは言え、どれも自分も経験したことがあるようなエピソードが多く共感できます。個人的には分数の割り算のエピソードが一番共感できました。
 本作品は子どもの時の見るより、社会人になってから見た方がいろいろ感じることが多い作品です。

 ただ、何度見ても登場人物の顔の皺と高畑監督の田舎賛美には共感できませんでした。

上映時間 118分
製作国    日本
製作年度 1991年
監督:    高畑勲   
原作:    岡本螢   
    刀根夕子   
脚本:    高畑勲   
作画監督:近藤喜文   
    近藤勝也   
    佐藤好春   
特殊効果:谷藤薫児   
美術監督:男鹿和雄   
撮影監督:白石久男   
編集:    瀬山武司   
    金子尚樹   
    木田伴子   
    毛利安孝   
音楽:    星勝   
場面設計・絵コンテ:百瀬義行   
声の出演:今井美樹   
    柳葉敏郎   
    本名陽子   
    寺田路恵   
    伊藤正博   
    北川智絵   
    山下容里枝   
    三野輪有紀   
    飯塚雅弓   
    押谷芽衣   
    小峰めぐみ   
    滝沢幸代   
    石川匡
    増田裕生   
    佐藤広純

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『東京ゴッドファーザーズ』この映画を見て!

第305回『東京ゴッドファーザーズ』
Photo_3  今回紹介する作品は先月惜しくも亡くなった今敏監督が現代の東京を舞台に描く奇跡の物語『東京ゴッドファーザーズ』です。声の出演に江守徹、梅垣義明、岡本綾が参加しています。

ストーリー:「元競輪選手のギンちゃん、元ドラッグ・クイーンのハナちゃん、家出少女のミユキの3人は、ホームレスとして新宿の公園でダンボールハウスにて共同生活をしていた。そんな彼らはクリスマスの夜にゴミ置き場の中からひとりの赤ん坊を見つける。ギンちゃんは警察に届けるべきだと主張するが、赤ん坊を欲しがっていたハナちゃんは、“清子”と勝手に命名して手放そうとしない。。ハナちゃんに押し切られる形で3人は自分たちで清子の親探しをすることにしたのだが・・・。」

 本作品を始めてみた時、まるで実写かと思うほど描きこまれた東京の街並みにまず驚きました。そんなリアルな風景の中で繰り広げられる赤ん坊をめぐる物語はあまりにも出来すぎた偶然の連続です。普通ここまでご都合主義な展開が続くとうそ臭くて白けてしまいますが、本作品はキャラクターの魅力とテンポの良いシナリオと演出で最後まで飽きることなく楽しむことができます。

 主人公の3人はそれぞれ辛い事情があって家族と別れてホームレスになっているのですが、そんな彼らが赤ん坊のために奔走する中で自分たちの人生を見つめなおしていきます。その展開はベタなのですが、なぜか感動してしまいます。

 赤ん坊の両親を探す話しも終盤に思わぬ展開となり、主人公たちがアクション映画並みの活躍をするのですが、ラストに起こる本作品最大の奇跡はアニメだから表現ができる素晴らしい締めくくり方だったと思います。

 あとオープニングのスタッフロールも東京の街並みに溶け込むよう工夫が凝らしてあって面白い試みだと思いました。

 本作品はアニメ好きでない方でも十分楽しめる作品に仕上がっています。心温まる奇跡のストーリーを是非一度ご覧になってください。  

上映時間 90分
製作国    日本
製作年度 2003年
監督:今敏   
企画:丸山正雄   
脚本:今敏、信本敬子   
キャラクターデザイン:今敏、小西賢一   
作画監督:小西賢一   
美術監督:池信孝   
色彩設計:橋本賢   
撮影監督:須貝克俊   
音楽:鈴木慶一   
音響監督:三間雅文   
声の出演:江守徹   
    梅垣義明   
    岡本綾   
    飯塚昭三   
    加藤精三   
    石丸博也   
    槐柳二   
    屋良有作   
    寺瀬今日子   
    大塚明夫   
    小山力也   
    こおろぎさとみ   
    柴田理恵   
    矢原加奈子   
    犬山犬子   
    山寺宏一   

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『千年女優』この映画を観て!

第304回『千年女優』
Photo_2  今回紹介する作品は先日惜しくも亡くなった今敏監督の代表作『千年女優』です。公開されるや否や世界各国の映画祭で高い評価を受け、国内でも『千と千尋の神隠し』と同時に第5回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門大賞を受賞しています。

ストーリー:「芸能界を引退した伝説の大女優・藤原千代子は自分がかつて撮影していた撮影所の取り壊しに伴うインタビューの依頼に応じて30年ぶりにカメラの前に姿を現した。以前から千代子のファンだった立花源也とカメラマンの井田恭二は千代子の自宅を訪れて、インタビューを開始。千代子は女学生の頃に恋した名も知らぬ男性を追って映画女優になった半生を映画の記憶と交錯しながら語っていく…。」

 ストーリーは主人公の女優の人生と彼女が出演した映画を重ね合わせて描いており、どこまでが現実でどこからが空想か分からない虚実入り乱れた構成となっています。始めてみた時は次々と場面が展開していくので最初戸惑いましたが、慣れてくると平沢進の音楽の効果もあってか非常に心地よく感じるようになりました。

 本作品の構成で私が印象的だったのが、二人のインタビュアーが主人公の回想シーンに突如入る込むところです。一人が主人公の長年の大ファンで女優の回想の中で重要な役どころとして振る舞い、もう一人が主人公のことをあまり知らず傍観者としてカメラを回し続ける。この2人が本作品の狂言回しの役割を見事に果たしていたと思います。

 戦国時代から激動の戦前戦後そして宇宙船が飛ぶ未来という壮大な時間の流れを90分という短い時間に詰め込み、一人の女優の情熱的で一途な生き様を疾走感と躍動感に満ちた演出で描き切る今敏監督の手腕は大変素晴らしいです。
 また、『蜘蛛巣城』や『無法松の一生』など日本映画の名作にオマージュを捧げたシーンや昭和の大女優たちを彷彿さえるエピソードの数々も邦画ファンにはたまりません。

 ラストの主人公の台詞に関しては賛否両論あるかと思いますが、個人的には賛同できます。私は本作品は一途な純愛の素晴らしさを単に描いた作品でなく、好きな男をひたすら追い続ける自分の姿に恋する女性のエゴイズムをポジティブに描いた作品だと思っていますので。

上映時間 87分
製作国    日本
製作年度 2002年
監督:    今敏   
企画:    丸山正雄   
原案:    今敏   
脚本:    今敏   
    村井さだゆき   
作画監督:本田雄   
    井上俊之   
    濱洲英喜   
    小西賢一   
    古屋勝悟   
美術監督:池信孝   
色彩設計:橋本賢   
撮影監督:白井久男   
音楽:平沢進   
音響監督:三間雅文   
声の出演:折笠富美子   
    小山茉美   
    荘司美代子   
    飯塚昭三   
    佐藤政道   
    小野坂昌也   
    津田匠子   
    鈴置洋孝   
    片岡富枝   
    徳丸完   
    京田尚子   
    山寺宏一   
    津嘉山正種   

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『老人Z』この映画を見て!

第300回『老人Z』
Z  今回紹介する作品は高齢者の介護問題をテーマにしたシニカルなSFアニメ『老人Z』です。『AKIRA』の大友克洋が原作と脚本を手がけ、最新のコンピューターを搭載した高齢者の介護ベッドが暴走するというストーリーをブラックユーモアとアクション満載で描いていきます。
 キャラクター原案は漫画家・イラストレーターの江口 寿史が担当。監督は『BLOOD THE LAST VAMPIRE』の北久保弘之が手がけています。

ストーリー:「看護学校に通うハルコは高沢老人の自宅での介護をボランティアで行っていたが、ある日突然高沢老人は厚生省の開発した介護ロボット「Z-001号機」のモニターに選ばれて連れ去られてしまう。見舞いに行った先でチューブだらけになった高沢の姿を見てショックをうけるハルコ。そんな頃、ネットワークを通して高沢老人から助けて欲しいとSOSのメッセージが入る。ハルコは友だちと共に助け出そうとするが失敗。そんな頃、「Z-001号機」が高沢老人の意識とリンクして、病院から抜け出し暴走を始める。」

 本作品は約20年くらい前の作品でありますが今見ても色褪せてなく大変面白いです。ストーリーは高齢者の介護問題を題材にしていますが、コミカルにテンポ良く描いているので、スカッと笑ってみることが出来ます。
 介護ロボットが暴走してからの怒涛の展開は一瞬たりとも目を離すことが出来ません。クライマックスは『AKIRA』を彷彿させるような描写があり見応えがありました。

 あと『2001年宇宙の旅』にオマージュを捧げたネタや描写があるところも個人的にはツボでした。

 80分と短い作品でありますが、中身が濃く大変面白いです。ぜひ一度ご覧ください。

上映時間 80分
製作国    日本
製作年度 1991年
監督:    北久保弘之   
原作:    大友克洋   
脚本:    大友克洋   
キャラクター原案:江口寿史   
作画監督:飯田史雄   
美術監督:佐々木洋   
音楽:板倉文,小川美潮   
声の出演:松村彦次郎   
     横山智佐   
     小川真司   
     近石真介   
     辻谷耕史   
     佐藤智恵   
     松本梨香   
     槐柳二

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『借りぐらしのアリエッティ』映画鑑賞日記

Photo  イギリスの児童文学『床下の小人たち』をスタジオジブリがアニメ映画化した『借りぐらしのアリエッティ』。宮崎駿が企画・脚本を担当し、スタジオジブリの原画スタッフの米林宏昌を監督として大抜擢して製作されました。宮崎駿以外が監督するスタジオジブリの作品は『耳をすませば』を除いて個人的にはイマイチなのですが、予告編の映像の美しさに惹かれ劇場まで足を運びました。

 絵と音楽の美しさはさすがジブリ、申し分ありませんでした。特に小人目線で描いた人間世界は新鮮で、前半の主人公アリエッティが初借りに父と出かけるシーンは大変ワクワクして見ることが出来ました。音響もこだわっており、小人にはこの世界の音がどのように聞こえているのかを巧みに表現していたと思います。セシル・コルベルのアイリッシュな音楽も映画の世界観にとてもマッチしていました。

 ただ、ストーリーと人物描写に関してはイマイチでした。
 ストーリーは郊外のある広大な古い屋敷の床下に父ポッドと母ホミリーと住む14歳の少女アリエッティと病気療養のためにやって来た12歳の少年・翔の出会いから別れまでを描くというシンプルな内容です。
 しかし、登場人物は少ない割りに、一人一人の描写が浅いため、いまいちドラマに共感できませんした。翔がアリエッティに庭で滅び行く種族を語る場面も別れ際のセリフも、人物描写が浅いために唐突な印象を受けて上滑りに終わっていたような気がします。
 お手伝いのハルさんも小人をなぜ捕獲しようとするのかよく分からないため、単なる憎々しい敵役に終わってしまって後味が悪かったです。
 あとスピラーも物語の展開に大きく絡むキャラクターかと思いきや登場シーンも少なく残念でした。
 また、舞台設定を日本に変更したのも意味があまり感じられず、原作どおりにしても良かったのではと思いました。

 最近のジブリは映像のクオリティの高さに比べて脚本の練りこみが不足しており、物足りなさを感じます。
 本作品も『ゲド戦記』に比べれば良く出来ていると思いますが、完成度は悪くもないけどそれほど良くもないといったところでした。

上映時間:94分
製作国:日本
製作年度:2010年
監督:米林宏昌   
企画:宮崎駿   
原作:メアリー・ノートン   
『床下の小人たち』(岩波少年文庫刊)
脚本:宮崎駿   
    丹羽圭子   
作画監督:賀川愛、山下明彦   
美術監督:武重洋二、吉田昇   
色指定:森奈緒美   
音楽:セシル・コルベル   
主題歌:セシル・コルベル   
    『Arrietty's Song』
声の出演:志田未来
    神木隆之介
    大竹しのぶ
    竹下景子
    藤原竜也
    三浦友和
    樹木希林

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『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』DVD発売!

Photo  劇場公開から約1年、ついに待ちに待った『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』のDVDが発売されました!

 私も早速DVDを手に入れて、劇場で見て以来、久しぶりの『破』を堪能しました。冒頭のマリ&仮設5号機の登場から画面に釘付けで、怒涛のアクションの連続にテンションが上がりまくり、ラストの初号機の覚醒ではシンジのカッコよさに目頭と胸が熱くなりました。

 旧作に比べると登場人物たちも他者と積極的に関わっていこうとする姿が見られ、共感しやすいキャラクターになっています。特にレイはシンジに思いを寄せてご飯を作ろうとするなど旧作より人間味溢れる描写がかなり増えています。、

 アクションシーンは旧作をはるかに超えたスケールと迫力があります。特に落下してくる第8使徒をエヴァ3体が食い止めるシーンとラストの第10使徒と2号機の戦闘シーンは何度見ても鳥肌が立ちます。

 「今日の日はさようなら」と「翼をください」の選曲は賛否両論あるかと思いますが、個人的にはありだと思いました劇場で見た際に歌が流れてきた時はベタな選曲だなと思いつつも、内容にマッチしすぎて正直涙ぐんでしまいました

 今回のDVDは劇場よりも本編が4分長くなっており、シンジと加持が駅で出会うシーン等が追加されていました。また他にも細かな映像の修正や追加がいくつかありました。劇場で見たときよりも細部までじっくり見ることができ、映像のクオリティの高さは現在の日本アニメの最高峰といって過言ではありません。
 なお、音響も手直しをしているようですが、劇場で見た際よりも迫力が幾分後退しているような印象を受け、少し残念でした。

 今回『破』を見返して、次回作『Q』の劇場公開がとても待ち遠しくなりました。シンジとレイがどうなるのか、アスカはどう復活するのか、そして意味深な台詞ばかり呟くカヲル君や戦闘好きの謎の少女マリがどういう活躍するのか気になることがいっぱいです。
 

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『人狼 JIN-ROH』この映画を見て!

第296回『人狼 JIN-ROH』
Photo  今回紹介する作品は第2次世界大戦でドイツと戦い負けた架空の昭和30年代の日本を舞台にした『人狼JIN-ROH』です。
 本作品は押井守の代表作である「ケルベロス・サーガ」として製作されており、実写映画『紅い眼鏡 / The Red Spectacles』や『ケルベロス 地獄の番犬』の前史に当たる内容と内容となっています。
 押井守が原作と脚本を担当。『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』でキャラクターデザインや作画監督を務めた沖浦啓之が監督を手がけています。
 CGを極力使わず手描きにこだわった映像はリアルで大変美しく、戦後復興してきた昭和30年代の東京の雰囲気を見事に表現しています。また、溝口肇の音楽も大変素晴らしく、映画の哀しい雰囲気にマッチしています。

ストーリー:「第2次世界大戦でドイツと戦い負けた日本政府は復興するために強引な経済政策を取る。その結果、失業者と凶悪犯罪が急増、さらに反政府組織が力を伸ばし、武装闘争を東京で繰り広げる。日本政府は東京の治安回復のため、首都圏に限定した治安部隊「首都圏治安警察機構」、通称「首都警」を組織。首都警は反政府勢力と市街戦を繰り返していた。
 そのよう中、首都警の伏一貴は潜伏する地下組織の追跡で、少女が自爆する衝撃的な事件に遭遇してしまう。事件に対して強いショックを受けた伏は爆死した少女に似ている雨宮圭いう女に出会う。」

 私は公開当時に劇場に足を運んで本作品を見たのですが、その時は地味で暗いストーリーがあまり好きになれませんでした。
 しかし、最近久しぶりに見返してみると、本作品が映像・ストーリー共に緻密に作り込まれている傑作であることを認識。昔は地味で暗いと思っていたストーリーの奥深さにはまってしまいました。

 童話「赤ずきん」を引用して、獣として生きる男とそんな男を愛してしまった少女の哀しい運命を描く物語は残酷かつ切なく、見終わってやるせない気持ちになります。安易にハッピーエンドにしない締めくくり方はとても印象に残ります。

 アクションシーンは多くありませんが、静と動のメリハリがあり、緊張感が漲っています。特にラストの下水道の攻防は大変迫力がありました。

 映像も全編薄暗い感じで、都市の闇の中で生きる人間たちの悲哀を見事に表現しています。

 本作品は決して万人受けする内容ではありませんが、ハードボイルドタッチの映像とストーリーは大人向けのアニメとしては1級品です。

上映時間 98分
製作国    日本
製作年度 1999年
監督:    沖浦啓之   
演出:    神山健治   
原作:    押井守   
脚本:    押井守   
キャラクターデザイン:西尾鉄也、沖浦啓之   
作画監督:西尾鉄也   
美術監督:小倉宏昌   
色彩設定:片山由美子   
撮影監督:白井久男   
編集:掛須秀一   
音楽:溝口肇   
音響監督:若林和弘   
車輌設定:平松禎史   
銃器設定:黄瀬和哉   
製作担当:堀川憲司   
ナレーション:坂口芳貞   
声の出演:   
    藤木義勝   
    武藤寿美   
    木下浩之   
    廣田行生   
    吉田幸紘   
    堀部隆一   
    中川謙二   
    大木民夫   
    坂口芳貞   
    阿部睦子   

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『カールじいさんの空飛ぶ家』この映画を見て!

第277回『カールじいさんの空飛ぶ家』
Photo  今回紹介する作品はピクサーの最新作にして初の3Dアニメに挑んだ『カールじいさんの空飛ぶ家』です。監督は「モンスターズ・インク」のピート・ドクターが担当。ガンコな老人が亡き妻との約束を果たすべく2人の思い出が詰まった我が家に大量の風船をつけて冒険に出るという本作品。カンヌ映画祭でアニメとしては初のオープニング作品として公開されました。

ストーリー:「開発で立ち退きを余儀なくされている一軒家に暮らすカールじいさん。その家は先立った最愛の妻エリーとの思い出が詰まった大切な場所だった。しかし、カールじいさんは工事現場の従業員とのトラブルから家を立ち退き、施設に入らなければならなくなる。カールじいさんは家を守り妻との約束を果たすために立ち退きの日の朝に無数の風船を使い家ごと大空へと舞いあがる。」

 ピクサーのCGアニメは毎回完成度が高く面白いので私も楽しみにしているのですが、今回の作品も期待を裏切らない出来でした。予告編を見た時は年老いた主人公の感傷的でお涙頂戴の作品になっているのかと思っていました。しかし、本編を見ると予想と違っていました。

 冒頭の10分間の主人公の回想シーンは大人が見ると涙なしでは見られないほど切ないです。妻との約束を果たすために旅立つ主人公。私は中盤までは主人公が困難を越えて妻との約束を果たすまでを描いた作品だと思って見ていたのですが、アジア系の子どもが冒険に付き添い、カラフルな鳥やしゃべる犬が登場し始めるころから話しの展開が変わってきます。悪役が登場してアクション満載のハラハラドキドキの冒険活劇へとなっていきます。この悪役が主人公同様に孤独で寂しい老人であるというところがミソです。老人同士の人生をかけた闘いはある意味手に汗握るものがありました。本作品の特長は主人公が過去の思い出をただ愛しむのでなく、決別して新たな未来を歩む姿まで描いているところだと思います。過去は大切だけど縛られず前に進むことの大切さ。それが本作品のテーマだと思いました。

 また、主人公と複雑な家庭環境のアジア系の少年との交流もとても印象に残りました。ただ、欲を言うなら、主人公の少年と出会ってからの心境の変化をもっとじっくり描いても良かったような気がします。

 映像面ではピクサー初の3Dということで楽しみにしていたのですが、スクリーンを飛び出すような派手な演出はあまりなく、どちらかというと映像に奥行きを与えるのに使われており、2Dで見ても大きく印象は変わらないような気がしました。それにしてもカラフルな風船を付けて空を飛ぶカールじいさんの家のリアルかつ幻想的な美しさは映画史に残る名シーンだと思いました。

 あと、本作品を見て宮崎駿監督の影響を随所に感じました。老人が主人公という設定は『ハウルの動く城』ですし、空飛ぶ家は『天空の城ラピュタ』ですし、最後の空中での戦いは宮崎駿監督が得意とするところです。また、主人公の雰囲気も宮崎駿監督にどことなく似ています。(どうやら宮崎駿監督も本作品を鑑賞して高く評価しているようですね。)

 本作品は予告編が与える印象と本編の内容が違うので注意が必要ですが、老人を主人公にした冒険活劇としては最高に面白く心に残ります。同時上映の短編アニメーション『晴れ ときどき くもり』も短いながらとても良い仕上がりなので必見ですよ。

上映時間 103分
製作国 アメリカ
制作年度 2009年
監督:ピート・ドクター   
原案:ピート・ドクター   
      ボブ・ピーターソン   
      トーマス・マッカーシー   
脚本:ボブ・ピーターソン   
      ピート・ドクター   
音楽:マイケル・ジアッキノ   
声の出演:エドワード・アズナー   
     ジョーダン・ナガイ   
     ボブ・ピーターソン   
     クリストファー・プラマー   
     デルロイ・リンドー   
     ジェローム・ランフト   
     エリー・ドクター   
     ジェレミー・レアリー

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