2008年3月24日 (月)

『シックスセンス』この映画を見て!

第205回『シックスセンス』
Photo  今回紹介する作品はラストの衝撃的な結末が話題となり世界中で大ヒットしたヒューマンホラー『シックスセンス』です。
監督はインド出身のM・ナイト・シャマランが担当。本作品の成功で一躍ハリウッドを代表する監督となり、『ヴィレッジ』や『サイン』などの話題作を次々と発表しています。

ストーリー:「小児精神科医であるマルコムのもとに10年前にカウンセリングしたビンセントという青年が現れ、「自分を救ってくれなかった」と銃で撃たれてしまう。
その事件の後、妻との関係も冷え込み、自信を失ったマルコムは苦悩と悲しみに暮れていた。そんな中、マルコムはビンセントに良く似た少年、コールと出会う。マルコムはコールを救おうと奮闘する。やがてコールは隠していた秘密を打ち明ける。その秘密とは死者が見えてしまう霊感があり、霊たちに脅かされているというものだった。
 最初はコールの霊感を信じなかったマルコムだが、やがてある事実からコールの言葉を受け入れるようになる。そしてマイケルは死者がコールの前に現れる理由を共に探り始める・・・。」

 本作品を公開当時に劇場で始めて見たときは予想外の結末に驚くと同時に、深い余韻に浸ることができました。
 まだ見ていない人の為に結末に関しては言うことは差し控えますが、1度見ると、もう1度最初から見たくなると思います。 2回見るとM・ナイト・シャマランが結末に向けて随所に張り巡らした伏線やマルコムとコールの交流の意味などにも気づくことができ、より本作品を楽しむことができます。

 結末の話しばかりしましたが、幽霊が突然出てくるシーンはドキッとさせられますし、コールが車の中で母に向かって亡くなった祖母の思いを語るシーンは自然と涙があふれてきます。
 
 本作品には孤独や過去に苦しむ登場人間たちが数多く登場します。親と子、夫と妻、生者と死者、そんな彼らが心を打ち解けコミュニケーションを通して自分に気づき癒されていく姿は人と人のつながりのかけがえのなさや大切さを見る者に改めて気づかせてくれます。

 生と死を超えた人間の思い。人間は他の生命にはない思いというものを持っていて、その思いが叶うことに喜び、果たせなかったことに悔やみます。生きている内に果たせなかった死者の思いや死んだ人に果たせなかった生者の思い。本作品は果たせなかった思いを果たそうとする人間たちの悲しみや切なさを優しい語り口で描いていきます。

 本作品をまだ見たことない人は予備知識なく二度見て、一度目は結末に驚き、二度目は主人公たちの心の交流のドラマに浸ってください。
 
上映時間 107分
製作国 アメリカ
製作年度 1999年
監督:M・ナイト・シャマラン 
脚本:M・ナイト・シャマラン 
撮影:タク・フジモト 
音楽:ジェームズ・ニュートン・ハワード 
出演:ブルース・ウィリス 、ハーレイ・ジョエル・オスメント、 トニ・コレット、 オリヴィア・ウィリアムズ 、トレヴァー・モーガン、 ドニー・ウォールバーグ 、グレン・フィッツジェラルド

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2008年3月20日 (木)

『カルテット』映画鑑賞日記

Photo  今回紹介する作品は宮崎駿や北野武の映画音楽で有名な久石譲が初監督した映画『カルテット』です。
  私は昔から久石さんの音楽が大好きだったので、本作品が劇場公開された時は真っ先に劇場に駆けつけ鑑賞したものでした。
 
 ストーリーは弦楽四重奏団を組んだ4人の若者が挫折を乗り越えて再起していくまでを描くという青春映画にありがちな展開で特に目新しいものはありませんでしたが、劇中の音楽が素晴らしく最後まで飽きることなく見ることができました。
 久石さんは本作品を撮るにあたって劇中に流れる40曲もの音楽を作曲し、映画の撮影時も譜面を絵コンテ代わりに利用して俳優の演技やカメラの構図を考えたそうです。
 それだけの甲斐あって、映像と音楽が大変マッチしており、見ていて大変心地よいです。特にコンサートのシーンは演奏の臨場感が見ている側にも伝わってきます。
 また『となりのトトロ』や『天空の城ラピュタ』・『HANABI』など久石さんが今まで手がけてきた映画音楽も随所に使用されており、久石ファンにはたまりません。
 
 映像自体も予想以上に美しく、主人公たちがドサ回りのツアーに日本の田舎を回るシーンや浜辺で主人公たちが演奏するシーンは大変印象的でした。(ただ浜辺のシーンは映像自体は美しいのですが、弦楽器みたいな繊細なものを湿度が高く潮風が吹くような場所に持っていって大丈夫なのか気になりました。)

 ただ音楽の素晴らしさは別として映画の完成度で言うと今ひとつです。その理由は演出がベタというか下手だからです。主人公が葛藤するシーンで雷が鳴って雨が降りだす演出やクライマックスの主人公がカルテットの演奏会に間に合うかどうかの演出も安っぽくて白けてしまいました。
 また本格的な音楽映画を目指しなが、音楽家がバイオリンケースで人を殴ったり、雨の中でケースを濡らす場面など如何なものかと思いました。
 あと役者の演奏シーンも本物のチェリストである久木田薫以外は頑張ってはいるけど指の動きを見ると素人であるということが丸分かりでした。これはある意味、主役に1人本物の音楽家を入れたことが失敗だったと思います。久木田さんの演奏が上手すぎる分、他の人の演奏がどうしても見劣ってしまし気になってしまいました。

 本作品は演出がもっと上手ければ、日本映画を代表する青春音楽映画となっていただけに少し残念でした。 

上映時間 113分
製作国 日本
製作年 2001年
監督: 久石譲 
脚本: 長谷川康夫,久石譲 
撮影: 阪本善尚 
美術: 及川一 
編集: 奥原好行 
音楽: 久石譲 
出演: 袴田吉彦  桜井幸子 大森南朋  久木田薫   藤村俊二 三浦友和

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2008年2月26日 (火)

『細雪』この映画を見て!

第201回『細雪』
Photo_2  今回紹介する作品は先日亡くなれた名匠・市川崑監督が谷崎潤一郎の同名小説を映画化した『細雪』です。

 本作品は全てにおいて絢爛豪華で美しく、気品溢れる作品です。

 主演に岸恵子、 佐久間良子、 吉永小百合、 古手川祐子という日本映画を代表する美人女優4人を据え、脇役にも伊丹十三や石坂浩二など多数の演技派・個性派の俳優を揃えるという豪華な顔ぶれとなっています。
 特に本作品における吉永小百合の美しさは格別で、見ていてうっとりとさせられます。特に古手川祐子が吉永小百合の足の爪を切るシーンはドキッとするほど艶かしく官能的です。

 また女優たちが着こなす着物は全て着物の老舗「三松」が全面監修しており、総額1億円以上かかっているそうです。その美しさはため息が出るほどです。本作品を見て着物の美しさや素晴らしさを改めて認識させられました。

 市川監督は本作品を撮ることが長夢だったそうで、市川監督の才能が余すことなく注がれています。特に日本の美と情緒を表現した映像の美しさはため息が出るほどで、監督の才能と美的センスが最大限発揮されています。冒頭の京都嵯峨野の満開の桜の下を歩く四姉妹の艶やかな美しさは目が釘付けになります。

 また映画のほとんどは会話シーンなのですが、その見せ方が大変上手く最後まで飽きることなく見ることが出来ます。本作品では主人公たちの真正面からのクローズアップのカットがテンポ良く切り返されていく手法を多用して映画に躍動感と高揚感を与えています。
 また、突然極端なクローズアップのカットやその場の時間軸と違うカットを挿入するという演出を多用して、映画にアクセントを与えています。 

 ストーリー:「昭和13年の春。京都嵯峨の料亭で大阪の旧家である蒔岡家の4姉妹が花見の宴を催していた。長女・鶴子と次女・幸子は未婚の三女・雪子と末娘・妙子の結婚の話しばかり。そんな中、おとなしい雪子は周囲の勧めで次々と見合いをするが本人の気が進まず一向にまとまらない。一方、奔放な妙子は恋多き女性で姉たちをハラハラさせていた。」

 本作品は結婚をしていない三女と四女に対して長女と次女が気を揉むという内容ですが、三女と四女の対照的な生き方が大変印象に残りました。一見何を考えているか分からないように見えて実は内心したたかでしっかり者の三女・雪子。手に職をつけ身分の違う男と恋をして封建的な家を飛び出す妙子。一見すると四女が一番自分勝手で困り者という風に見えますが、私は四女の方が素直で、三女の方が曲者に思いました。

 あとストーリーで印象的だったのが、石坂浩二演じる次女の夫・貞之助が密かに吉永小百合演じる三女に思いを寄せているところです。自宅に同居している時の三女を見るときの貞之助の熱い視線や三女が結婚した時の何とも切ない表情。義理の妹に恋をしてしまった貞之助の複雑な心情は見ていて男として共感してしまうところがありました。吉永小百合のような美しい女性が自宅に同居していたら、それは惹かれてしまうのも分らないでもないです。

 市川監督は数多くの素晴らしい作品を手がけていますが、映像の美しさではナンバー1だと思います。また文芸作品であるにもかかわらず、堅苦しい作りになっておらず、誰が見ても楽しめる名作だと思います。

上映時間 140分
製作国 日本
製作年 1983年
監督: 市川崑 
原作: 谷崎潤一郎 『細雪』
脚本: 日高真也 市川崑 
撮影: 長谷川清 
美術: 村木忍 
編集: 長田千鶴子 
音楽: 大川新之助、渡辺俊幸 
出演: 岸恵子、 佐久間良子、 吉永小百合、 古手川祐子、 伊丹十三、 石坂浩二 
岸部一徳、 桂小米朝、 江本孟紀、 小林昭二、 辻萬長、常田富士男 

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2008年1月23日 (水)

『東京物語』この映画を見て!

第195回『東京物語』
Photo  今回紹介する作品は日本映画の最高傑作の一つであり、小津安二郎監督の代表作である『東京物語』です。

 私は今回初めて本作品を鑑賞したのですが、映画としての完成度の高さと小津監督の人間を見つめる視点の厳しさと優しさに圧倒されました。
 ローアングルの固定したカメラによって捉えられた映像の凛とした美しさと小津監督独特の間合いを取った編集が生み出す侘び寂び。笠智衆を始めとして、東山千栄子、原節子、杉村春子など芸達者な役者たちの絶妙な演技。淡々としたテンポで描かれる親子関係の隔たりや老いて時代から取り残されていく悲哀や諦観、そして生きていくことの孤独。

 戦後間もない日本でこのような素晴らしい作品が製作されていたとは驚きました。ラストの妻に先立たれた主人公がひとり佇むシーンは生きていくことの無常さが感じられ、自然と涙がこぼれてきました。

 ストーリー:「東京で独立して住む子どもたちに出会うために尾道から上京してきた老夫婦。しかし、子どもたちはそれぞれの生活に追われており、老夫婦の相手をしてくれない。そんな中で親身になって相手してくれるのは戦死した息子の未亡人だけだった。子どもにも会い、東京観光もした老夫婦は故郷に帰っていくのだが・・・。 」

 本作品は子どもが独立して生活を営む中で、親子の絆が薄れていく無常さが描かれていますが、老いた両親から離れて生活している私としては見ていて胸が痛むシーンが数多くありました。
 東京で仕事を営み生活をしている子どもたちが忙しくて田舎から出てきた両親の相手がゆっくりできない場面は見ていて切ないものがありました。また親を嫌いではないけど疎ましく思う子どもたちの心情も痛いほど分かりました。杉村春子演じる次女が老夫婦を冷たくあしらう場面を最初見た時は何て嫌な娘だなと思いながら見ていたのですが、何度か見返すうちにこの女性も決して心底悪い女性ではなく、慌しい時代の中で生きていく中であのような態度を取っているだけなのだと思うようになりました。
 子育てや仕事を終え余生を過ごす親と子育てや仕事の真っ最中にいる子ども、今という時代の真っ只中で生きる者と今という時代から一歩離れた中で生きる者の生きるテンポの差が生み出す悲しみや孤独というものを見ていて感じました。

 また本作品を語る上で外せないのが、原節子演じる戦死した次男の妻の存在です。彼女は血の繋がった子どもたちよりもはるかに優しく老夫婦に接します。血縁の人間よりもそれ以外の人間の方が血の通ったもてなしをしてくれるという皮肉と悲哀。
 そんな心優しい次男の妻がラスト近くに主人公に向かって告白するシーンは人間の複雑な心の内を見事に描いており、見ていて心が震えました。老夫婦を通して何とか亡くなった夫とのつながりを見出そうとする妻、しかし時が経つにつれて次第に夫のことを忘れていく無常という名の哀しみ。

 私は本作品はこの世の無常の悲しみを受け入れて生きていこうとする主人公の孤高な姿を描いた作品ではないかと思っています。

 本作品は時代を超えた輝きを持つ作品です。見たことのない人はぜひ一度ご覧ください。 

上映時間 136分
製作国 日本
製作年度 1953年
監督 小津安二郎 
製作 山本武 
脚本 野田高梧小津安二郎 
撮影 厚田雄春 
美術 浜田辰雄 
音楽 斎藤高順 
出演 笠智衆、東山千栄子、原節子、杉村春子、山村聡、三宅邦子、香川京子、東野英治郎、中村伸郎 
大坂志郎、十朱久雄、 長岡輝子 

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2007年11月19日 (月)

『ザ・プレイヤー』この映画を見て!

第188回『ザ・プレイヤー』
Photo  今回紹介する作品はハリウッドで数々の話題作&問題作を撮ってきたロバート・アルトマン監督がハリウッドの内幕をシニカルに描いた『ザ・プレイヤー』です。
 
ストーリー:「ハリウッドの映画スタジオの重役であるグリフィン・ミル。ヒット作を製作するために多忙な日々を送っていた。そんなある日、送り主不明の一通の脅迫状を受け取る。不安を覚えたミルは脚本を却下された脚本家・デイヴィッドが犯人だろうと目星をつけて会いに行く。しかし、ミルはデイヴッドと口論の末に逆上して殺害してしまう。ミルは証拠を隠滅して現場を立ち去るが、警察から容疑者として疑われる。その上、脅迫状も送り続けられ、ミルは不安に怯えるようになる。」

 ハリウッドの内幕を描いた作品は数多くありますが、本作品ほどハリウッドの映画製作現場の実態を皮肉たっぷりに描いた作品はないと思います。
 ブラックユーモアとサスペンスに満ち溢れたストーリー展開、総勢60名にも及ぶ豪華な顔ぶれのカメオ出演者たち、冒頭の8分間にも及ぶ長回しのシーン、皮肉たっぷりのラストと非常に見所の多い作品です。
 本作品の監督を手がけたのはハリウッドの監督の中でも毒舌家として有名なロバート・アルトマンですが、彼の経験と本領が大変発揮されています。世界中に夢と娯楽に溢れた映画を提供するハリウッドの製作現場のドロドロとした内情。ヒット作を手がけて一攫千金を狙うプロデューサーたちと自らの芸術性や創造性を売り込みたいクリエイターたちの映画をめぐる対立や駆け引き。本作品は映画業界の頂点を目指そうとする人間たちの野望が緊張感とユーモアたっぷりに描かれています。

 私が本作品で一番面白かったのは、ラストに登場する死刑囚の映画が完成するシーンでした。当初はリアリティを重視した作りを目指して無名の俳優を起用してアンチハッピーエンドの結末にする筈だったのが、完成してみると全く正反対の内容。(死刑囚映画に出演している2人の俳優が大変豪華で見たら驚くと思いますよ。)ハリウッドならこういうことはきっと日常茶飯事なんでしょうね。

 「映画は芸術であり、娯楽であり、金の成る木である」ということが本作品を見るとよく分かりますよ!
 
上映時間 124分
製作国 アメリカ
製作年度 1992年
監督: ロバート・アルトマン 
製作総指揮: ケイリー・ブロコウ 
原作: マイケル・トルキン 
脚本: マイケル・トルキン 
音楽: トーマス・ニューマン 
出演: ティム・ロビンス、グレタ・スカッキ、フレッド・ウォード、ウーピー・ゴールドバーグ、ピーター・ギャラガー ,、ブライオン・ジェームズ、ヴィンセント・ドノフリオ、ディーン・ストックウェル 
カメオ出演:ジュリア・ロバーツ、ブルース・ウィリス、バート・レイノルズ、アンジェリカ・ヒューストン、ジョン・キューザック、ジャック・レモン 

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2007年11月14日 (水)

『ショート・カッツ』この映画を見て!

Photo 第187回『ショート・カッツ』
 今回紹介する作品は鬼才ロバート・アルトマン監督がロサンゼルス郊外の住宅地に住む22人の日常を描く群像劇『ショート・カッツ』です。
 本作品は日本では村上春樹が翻訳をしているアメリカの短編小説家レイモンド・カーヴァーの9つの短編と1つの詩を原作にしています。接点がないようでどこかで繋がりあっている22人の登場人物たちの悲喜交々の日常ドラマを同時並行で描いていきます。
 公開当時はヴェネチア国際映画祭ではロバート・アルトマン監督が金獅子賞を受賞し、さらに主要キャスト22名に特別賞が授与されるなど高い評価を受けました。
 
 ストーリー:「メド・フライと呼ばれる害虫を駆除するため、農薬散布のヘリコプターが市街地を飛び回るロサンゼルス郊外の住宅地。そんな住宅地で今日も様々なドラマが展開されていた。」
 
 本作品は登場人物たちの平凡だけど満たされない日常生活の中で揺れ動く感情をドライかつシニカルに描いていきます。3時間という長丁場ですが、豪華俳優人たちの巧みな演技と監督のテンポのよい語り口で最後まで飽きることなく見ることが出来ます。

 最初見た時は同時並行で語られている複数のストーリーを一体どうやって最後をまとめるのか気になったものですが、まさかあのようなオチを持ってくるとはやられました。
  私はこのオチを見て、私は『マグノリア』という群像劇の映画を真っ先に思い出しました。『マグノリア』もロサンゼルス郊外を舞台に複雑に絡み合う10人近い登場人物たちの1日が同時並行で描かれており、ラストにあっと驚く展開があります。きっと『マグノリア』の監督は本作品に強い影響を受けたのでしょうね。
 ただ本作品と『マグノリア』の大きな違いは登場人物たちの描き方です。『マグノリア』は登場人物の感情に寄り添う視点で描いていますが、本作品は登場人物たちをどこか突き放した視点から描いています。
 また『マグノリア』ではラストの予想外のオチで登場人物たちの苦悩をリセットさせていましたが、本作品では予想外のオチも人生のイベントの一つに過ぎず、人間は苦悩を抱えて生き続けていくしかないという監督のシニカルな視線を強く感じました。

本作品は人間の中に潜む欲望と嫉妬、孤独の寂しさといったものを見ている者に強く感じさせてくる傑作です。3時間と長い作品ですが一度は見てみる価値があります。出来れば『マグノリア』とセットで見ることをお勧めします。DVDも販売されるのでこれを機会に是非ご覧ください!

製作国:アメリカ
製作年度: 1994年 
上映時間: 189分
監督 ロバート・アルトマン 
製作総指揮 スコット・ブッシュネル
原作 レイモンド・カーヴァー 
脚本 ロバート・アルトマン 、フランク・バーハイト 
音楽 ハル・ウィルナー 
出演 アンディ・マクダウェル、ブルース・デイヴィソン、ジャック・レモン、 ジュリアン・ムーア 、マシュー・モディーン、アン・アーチャー、フレッド・ウォード、ジェニファー・ジェイソン・リー、クリス・ペン  リリ・テイラー、ロバート・ダウニー・Jr、マデリーン・ストー、ティム・ロビンス

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2007年11月 6日 (火)

『花とアリス』この映画を見て!

Photo 第186回『花とアリス』
 今回紹介する作品は今テレビや映画で絵活躍中の女優・蒼井優の魅力が堪能できる『花とアリス』を紹介します。
 本作品は『リリィ・シュシュのすべて』の岩井俊二監督がキット・カットの日本発売30周年を記念してネット配信された4本の短編映画を基にしています。(短編映画のネット配信は終了していますが、DVD特別版に収録されています。)

ストーリー:「同じバレエ教室に通う親友の花とアリス。中学3年の時に花は電車の中で出会った高校生に一目惚れする。やがて高校に進学した花は、ずっと憧れていた高校生・宮本と同じ落語研究会に入る。そんなある日、いつものように落語の文庫本を片手に歩いていた宮本は不注意で転倒。花は記憶が一時的に混乱していた宮本に駆け寄り、「私はあなたの恋人で、一時的記憶喪失になっている」とウソをつく。その頃、アリスは街中でスカウトされ、芸能活動に参加し始める。花は宮本とデートするがなかなか振り向いてくれない。それどころか本当に以前恋人だったかどうか疑い始める。そこで、花はアリスが元彼女だったと更にウソをつく。しかし、それが元で花とアリスの友情がギクシャクし始める。」

 私が始めて見たのは2年前ですが、その時はクライマックスの蒼井優のバレエ姿に圧倒され、一気に彼女の虜となってしまいました。積極的に前に出ようとしないアリスがバレエという表現で自らを語ろうとする姿は美しさと力強さに溢れていて、見ていて自然と胸が高まったものでした。そのクライマックスを見たいがために私は本作品を何回も見直したものでした。
 本作品は鈴木杏演じる花と蒼井優演じるアリスの友情と恋愛が描かれているのですが、蒼井優の存在感が際立っています。本作品は蒼井優という女優の魅力を引き出すために撮られたと言っても過言でないと思います。鈴木杏さんのファンには申し訳ないですが、彼女も蒼井優という女優を引き立てるために登場しているようなものです。『リリィ・シュシュのすべて』を見たときも蒼井優の演技はとても印象に残りましたが、監督もきっと強く印象に残り、彼女を主役に据えて本作品を撮ったのでしょう。
 マイペースでいながら、どこか寂しげな感じのアリスという少女を蒼井優はナチュラルかつ繊細な演技で見事に表現しています。

 蒼井優の話しばかりになってしまいましたが、少女漫画のようなメルヘンチックでリアリティのないストーリーを違和感なく自然に見せる岩井監督の演出も素晴らしいです。
 恋や友情で揺れ動く少女たちの微妙な心の揺れを何気ない日常生活の中から描いていく演出は大げさなところがなく見ていて大変心地よいです。誰しもが思春期に経験したであろう恋や友情をめぐる葛藤を本作品は思い出させてくれます。
  
 明るめの露光で撮影された映像はきらきらとした輝きに満ちていて美しく、主人公たちの青春のきらめきを見事に表現しています。特に桜並木や降りしきる雨、秋の寂しげな浜辺等の何気ない風景の美しさは大変印象的でした。
 
 また本作品は随所に遊び心があり、駅名が有名な漫画家の名字だったり、随所に有名人がカメオ出演している等くすっと笑えるシーンが随所にあります。

 思春期の少女たちの純粋無垢さと、それゆえに持ち合わせる残酷さを見事に表現した青春ドラマの傑作です。

製作年度 2004年
製作国・地域 日本
上映時間 135分
監督 岩井俊二 
脚本 岩井俊二   
音楽 岩井俊二
出演 鈴木杏、蒼井優、郭智博、相田翔子、阿部寛、平泉成、木村多江、坂本真、大沢たかお、広末涼子

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2007年8月19日 (日)

『キャリー』この映画を見て!

第171回『キャリー』
Carrie  今回紹介する作品は超能力を持った少女の悲劇を描いた青春ホラー映画の傑作『キャリー』です。
 ホラー小説の第一人者であるスティーヴン・キングの同名長編小説を映画化した本作品。原作者のキング自身も大変気に入っており、「私の作品の中でもっとも忠実に映像化されている」と絶賛しています。
 監督は独自の映像表現で多くのファンを魅了するブライアン・デ・パルマが担当。本作品でもスローモーションや分割画面、滑らかな移動撮影などデ・パルマらしい映像表現が満載となっています。個人的には彼の監督作の中でこの作品が一番完成度は高いと思います。

 ストーリー:「狂信的なキリスト教信者である母を持つ女子高生キャリーは内気で冴えない容姿の為に学校でいじめられていた。そんなある日、体育の授業後のシャワーを浴びている最中に初潮を経験してパニックを起こす。キャリーは母から月経について今まで教えてもらったことがなかった為に病気と勘違いしていた。クラスメートの多くはパニックになったキャリーを見てバカにする。自宅でも初潮になったことを母から激しく責められるキャリー。
 そんな彼女を励まそうとする友人スーはプロムパーティーに誘おうとする。最初は渋っていたキャリーだが、次第にパーティに行くことに乗り気になる。
 その頃、キャリーをいじめたクラスメートたちは先生からプロムパーティーの出席禁止を言い渡される。キャリーのせいで出席できないと逆恨みをしたクラスメートたちは彼女にパーティで恥をかかそうと恐ろしい計画を立てる。
 パーティー当日、反対する母を押し切って出席するキャリー。クィーンにも選ばれ有頂天になるキャリー。しかし、クラスメートが仕組んだ恐ろしい罠によって、舞台に立ったキャリーに悲劇が訪れる。そして、それはクラスメートたちにとって地獄絵図の始まりだった・・・。」
 
Carrie2  私はこの作品を実際に見るまではポスターだけ見て血まみれの陰惨なホラー映画だと思っていました。しかし、映画を見た後はショッキングなシーンよりも主人公の辿る哀しい運命が記憶に残ったものでした。内気で冴えない女の子が自分の殻を破ろうパーティーに行く姿は見ていて応援したくなりましたし、パーティーでの幸せそうな姿は見ていて、ここえで映画が終わって欲しいとさえ思ってしまいました。
 
 映画のラストは阿鼻叫喚の地獄絵図が展開されるのですが、そのようなシーンも怖いというよりは切ないものを強く感じてしまいました。特に傷ついた心を慰めてもらおうと母の側に行ったにも関わらず、裏切られるシーンは見ていて辛いものがありました。

 この作品で主人公のキャリーを演じたシシー・スペイセクと狂信的な母を演じたパイパー・ローリーは迫真の演技でアカデミー賞にノミネートされました。悲劇のヒロイン役を見事に演じきったシシー・スペイセクも印象的でしたが、何といってもパイパー・ローリーの圧倒的な存在感が印象に残ります。あと、若かりし頃のジョン・トラヴォルタも登場していますので、ファンの人はお見逃しなく!

 私の中でこの作品はホラー映画というより哀しい青春映画だと思います。ホラー映画が苦手な人にも是非見てもらいたいです。 

製作年度 1976年
製作国・地域 アメリカ
上映時間 98分
監督 ブライアン・デ・パルマ 
原作 スティーヴン・キング 
脚本 ローレンス・D・コーエン 
音楽 ピノ・ドナッジオ 
出演 シシー・スペイセク 、パイパー・ローリー 、ウィリアム・カット 、ジョン・トラヴォルタ 、エイミー・アーヴィング 、ナンシー・アレン 、ベティ・バックリー 、P・J・ソールズ 、シドニー・ラシック 、プリシラ・ポインター 

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2007年7月25日 (水)

『ブルーベルベット』この映画を見て!

第169回『ブルーベルベット』
Blue_velbet  今回紹介する作品は鬼才デイヴィッド・リンチ監督が描く日常の裏に潜む狂気と暴力の世界『ブルーベルベット』です。
 ストーリー:「アメリカの典型的な田舎町ランバートン。都会の大学に通っていたジェフリーは病院に父を見舞った帰り道の野原で切り落とされた人間の片耳を見つける。ジェフリーは父の知り合いのウィリアムズ刑事に耳を届ける。切り取られた耳の謎に興味を持つジェフリー。そんな彼はウィリアム刑事の娘サンディから街のアパートに住む歌手ドロシーが耳に関係しているという話を聞く。彼は真相に近づきたく、サンディの協力を得て、ドロシーの自宅に忍び込む。そこで彼は静かな街の裏に潜むSEXとSMのアブノーマルな世界を覗いてしまう。そして、彼自身もアブノーマルな裏世界に巻き込まれてしまう。」
 
 デヴィッド・リンチ監督の作品というと悪夢のような非日常的な世界を舞台にアブノーマルな登場人物たちが織り成すシュールなストーリーが特長ですが、本作品はそんなリンチワールドが確立された記念すべき作品です。
 
 オープニングのボビー・ビントンの歌う同名ヒット曲をバックに映し出される、赤い薔薇・白いフェンス・青い空という明るく牧歌的な風景。そこから一転して映し出される草の下の蠢く虫たち。非常にインパクトのあるオープニングシーンですが、この作品のテーマである日常の中の非日常性を見事に打ち出しています。
 
 草むらに落ちていた耳を拾ったために、今まで知らなかった裏世界に足を踏みいれる主人公。そんな主人公が悪夢のような体験をして、この世界に存在する闇を知り大人として成長していく過程を描いた本作品。ストーリーは最近のリンチ作品と比べると破綻しておらず、分かりやすいです。また、ラストもカタルシスがあり、後味も悪くありません。

 もちろん、リンチ作品特有の異様な世界観もしっかりと体感できる仕上がりとなっています。主人公がクローゼットの隙間から垣間見る狂気の世界。酸素吸入機を吸いながら、放送禁止用語を連発する男が妖しい雰囲気を漂わせる女とSMプレイをする姿は強烈なインパクトを見る者に与えます。こんな世界を覗いてしまった主人公はさぞ驚いたことでしょう。その後も主人公は狂気と暴力と官能が入り混じった異様な世界を次々と体験していくのですが、監督のダークなイマジーネーションの豊かさには感心してしまいます。
 この作品の異様な世界を作り出すのに当たって一番貢献しているのは何と言ってもイザベラ・ロッセリーニとデニス・ホッパーの演技です。イザベラ・ロッセリーニの艶かしい雰囲気は見る者を惹きつけます。特に全裸での登場は強烈です!またデニス・ホッパーのエキセントリックな演技は圧巻の一言です。

 彼らの異様な演技と対照的なカイル・マクラクランやローラ・ダーンの清純な演技も印象的で、この作品の光と闇のコントラストを見事に表現していたと思います。

 この作品は誰が見ても楽しい作品とは言えませんが、好きな人ははまると思います。日常の中の非日常性を求めている人はぜひ見てください! 

製作年度 1986年
製作国・地域 アメリカ
上映時間 121分
監督 デヴィッド・リンチ 
製作総指揮 リチャード・ロス 
脚本 デヴィッド・リンチ 
音楽 アンジェロ・バダラメンティ 
出演 、イザベラ・ロッセリーニ 、デニス・ホッパー 、ローラ・ダーン 、ホープ・ラング 、プリシラ・ポインター 、ディーン・ストックウェル 、ジョージ・ディッカーソン 、ブラッド・ドゥーリフ 、ジャック・ナンス 

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2007年7月19日 (木)

『旅立ちの時』この映画を見て!

第168回『旅立ちの時』
Running_on_empty  今回紹介する作品は『セルピコ』などの社会派作品で知られる名匠シドニー・ルメットと若くして亡くなったリバー・フェニックスが組んだ青春ドラマの傑作『旅立ちの時』です。
 
 ストーリー:「ベトナム戦争当時に反戦活動家としてナパーム工場を爆破した罪でFBIに指名手配中の両親を持つ17歳の青年ダニー。彼は2歳のときからアメリカ各地を転々としていた。彼は家族と共に新しい生活の場としてニュージャージーに引っ越してくる。そこでダニーは高校の音楽教師にピアノの才能を見出され、有名な音楽大学への進学を薦められる。また音楽教師の娘ローナに恋もするようになるが、両親のことを考えて進学も恋も躊躇していた。」

 私がこの作品に出会ったのは高校生の時でした。自分の親からの自立や将来について悶々と考えていた時期だったので、この作品を見た時は大変共感したものでした。
 この作品の主人公のダニーは家族を大切にしたいという思いと自分の人生を歩みたいという思いの中での激しい葛藤に苛まされます。その葛藤が当時高校生だった私には痛いほど伝わってきたものでした。
 映画のラスト、ダニーは家族から旅立つのですが、子の旅立ちに際して両親が贈るメッセージが大変素晴らしく、自然と涙が溢れたものでした。子どもの自立に対してあのようなメッセージを贈れる両親に深い感銘を受けたものでした。(どのようなメッセージかは皆さんも映画を見て確認してください。)
 私はこの映画に出会ってから、大学受験や就職、一人暮らしなど人生の岐路に立った時には必ず見返して、ラストシーンの両親のメッセージを聞いて自分を奮い立たせたものでした。

 最近久しぶりにこの作品を見返す機会があったですが、やはりラストは泣いてしまいました。ただ、高校の時と違って主人公のダニーの自立よりも、ダニーを温かく見守ろうとする両親の姿に共感してしまいました。子が親元を離れて別の道を歩む時、それは親にとって嬉しくもあり、切なくもあり、不安でもあるでしょう。そんな親の複雑な気持ちが痛いほど伝わってきました。
 子どもとずっといることを望む父親。そんな父親の子どもを手放すことに対する激しい葛藤。そんな父親が最後の最後に子どもの自立を後押しする。高校生の時は主人公が親から旅立つ作品だと思っていたのですが、それだけではなくて、親が子どもから旅立つ子離れの作品でもあったことに今回気づきました。

 また今回久しぶりに見返して、主役のダニーを演じたリヴァー・フェニックスが若くして亡くなった事が返す返す残念に思いました。当時は『スタンド・バイ・ミー』や『インディー・ジョーンズ最後の聖戦』などに出演して大変人気があったものでした。この作品ではアカデミー主演男優賞にもノミネートされ、役者としての将来を期待されていたものでした。彼が今生きていたらどんな役者になっていたのか想像してしまいました。
 それにしても本作品のリヴァーの抑えた演技は素晴らしく、思春期の複雑な心境を見事に表現していたと思います。リヴァーの境遇自体も親がカルト教団に入っていたこともあり各地を転々としていたそうで、映画の主人公と境遇が被っていたようです。そんなこともあり、主人公にすっと感情移入して演技が出来たんだろうなと思います。

 監督のシドニー・ポラックの演出は地味で淡々としていますが、その静かで抑えた演出方法が登場人物たちの微妙な心情の揺れを捉えるにあたって成功しています。
 また映画の中の挿入歌であるジェームズ・テイラーの「FIRE AND RAIN」が映画の内容とマッチしており、観客の耳と心に深い印象を与えます。
 
 この作品はとても地味な青春映画でありますが、涙なしでは見られない傑作です。ぜひ皆さんもご覧ください!

製作年度 1988年
製作国・地域 アメリカ
上映時間 116分
監督 シドニー・ルメット 
原作 ナオミ・フォナー 
脚本 ナオミ・フォナー 
音楽 トニー・モットーラ 
出演 リヴァー・フェニックス 、クリスティーン・ラーチ 、マーサ・プリンプトン 、ジャド・ハーシュ 、アリス・ドラモンド 

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2007年7月15日 (日)

『日本沈没』この映画を見て!

第166回『日本沈没』(1973年版)
Nihon_tinbotu  今回紹介する作品は小松左京の傑作SF小説を映画化した『日本沈没』です。2005年に『ローレライ』の橋口真嗣監督が草薙剛と柴崎コウを主演に迎えてリメイクもされましたが、今回紹介するのは1973年に制作された方です。
 1973年版『日本沈没』は4ヶ月という短期間で制作されていますが、その完成度の高さは2005年のリメイク版を遥かに上回ります。特撮に関してはCGなどない時代だけあって、全てミニチュアで撮影されているのですが、意外にも迫力ある映像となっています。
 特に中盤の東京を襲う大地震のシーンはこの映画最大の見せ場であり、見る者を圧倒します。もちろんミニチュア丸分かりのシーンもあるのですが、火災の中を逃げ惑う人々やビルのガラスが突き刺さった人々、洪水に押し流される人々等の迫真の演技がリアリティーを醸し出しており、地震の恐怖といったものを見る者に強く感じさせる仕上がりとなっています。

 リメイク版はCGを多用して災害のスケールの大きさは表現できていたと思うのですが人間の演技が薄っぺらで逆に緊迫感があまり感じられませんでした。それに比べて、1973年版は映像こそ古臭さはあるものの、それを補って余りある重厚さと緊迫感がありました。
 1973年版の素晴らしいところは役者たちの熱演により人間ドラマが非常にしっかりと描かれているところです。特に小林桂樹演じる田所博士の狂気迫る演技、丹波哲郎演じる山本総理の祖国滅亡に対する葛藤を滲ませる演技は映画に非常にリアリティを与えています。
 
 私が印象的だったシーンが山本総理が日本が沈んだ場合の日本民族の将来をどうすべきか、渡老人と話し合う場面。渡老人が総理に『なにもせんほうがえぇ。このまま日本とともに海に沈むことが 日本及び日本民族にとって一番いいことじゃ。』と語り、首相が目頭を熱くして沈黙するシーン。日本国の首相である山本総理の絶望と哀しみ、そしてそれを認めたくない葛藤といったものが強く感じられ、私も涙が自然とあふれてきました。

 映画の後半は一億人の日本国民をどうやって世界各国に避難させるかが描かれていきますが、世界各国の対応や国連での話し合いなど非常にリアリティのある展開で、日本国民がどうなっていくのか見ごたえがありました。
 
 この作品は日本国民が祖国を失うことになったらどうなるかを映像面だけでなく、政治的、思想的に見事にシュミレーションした作品だと私は思います。
  
 ただ残念なのは上映時間の関係からか全体的に駆け足の展開となってしまい、ストーリーのつながりが強引で違和感を感じたところです。噂によると最初は3時間半近い作品だったところを1時間近くカットしたそうです。できれば3時間半バージョンも見てみたいものです。

 リメイク版を見て感動した人も、いまいちだった人もぜひ1973年版『日本沈没』を見てみてください!30年近く前にこのような重厚なパニック映画が制作されていたことに感動すると思います。 

製作年度 1973年
製作国・地域 日本
上映時間 140分
監督 森谷司郎 
原作 小松左京 
脚本 橋本忍 
音楽 佐藤勝 
出演 藤岡弘 、いしだあゆみ 、小林桂樹 、滝田裕介 、二谷英明 、中丸忠雄 、村井国夫 、夏八木勲 、丹波哲郎 、伊東光一 、松下達雄 、河村弘二 、山本武[俳優] 、森幹太 、鈴木瑞穂 、垂水悟郎 、細川俊夫 、加藤和夫[俳優] 、中村伸郎 、島田正吾 、角ゆり子 、梶哲也 、稲垣昭二 、内田稔 、大木史朗 、吉永慶 、宮島誠 、大杉雄二 、神山繁 、高橋昌也 、近藤準 、竹内均 、石井宏明 、今井和雄 、早川雄三 、中條静夫 、名古屋章 、斉藤美和 、大久保正信 、アンドリュウ・ヒューズ 、ロジャー・ウッド 、大類正照 、小松左京 

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2007年7月 1日 (日)

『かもめ食堂』この映画を見て!

第164回『かもめ食堂』
Kamome  今回紹介する作品はオールフィンランドロケで撮影された日本映画『かもめ食堂』です。群ようこが本作品のために書き下ろした原作を元に制作されたこの作品。最初は2館だけの上映でしたが、口コミで人気が広がり、多くの単館映画館でロングラン上映を記録しました。(私が住んでいる滋賀では7月から滋賀会館でリバイバル上映されます。)

 ストーリー:「フィンランドの日本食堂を経営しているサチエ。お客は、日本おたくの青年1人。そんな青年から聞かれた質問に答えられなかったサチエは図書館で偶然知り合ったミドリに答えを教えてもらう。そのことをきっかけにミドリも食堂の手伝いをすることになる。次第に人が集まるようになるかもめ食堂。悩みをかかえたフィンランド人や荷物が出てこなくなって困っている日本人なども集まってきて、サチエたちの温かな手料理に心が解きほぐされていく。」

 この作品は映像もストーリーも決して派手ではなく、淡々とした作品です。しかし、この淡々とした作りがとても心地よく、見た後にほっこりと幸せな気分に浸ることができます。

 主人公は3人の日本女性なのですが、なぜフィンランドにやって来たのかの説明は最小限しかありません。きっと過去にいろいろな事があったのだろうと匂わせながら、その事はほとんど語らず、主人公たちの今ここでの生活だけに焦点をあてた描き方は観客の想像力を刺激すると共に深い余韻を与えてくれます。
 普通の作品だと主人公たちの人生や感情を描こうとするのですが、この作品は生活にだけ焦点を当て、その生活の中で微妙に変化していく人たちの姿を描いていきます。何気ない日常の生活を丁寧に楽しむことが生きていくうえで如何に大切なことか、この作品は気づかせてくれます。

 この作品の大きな魅力として、小林聡美さん演じる主人公のさりげない優しさや凛とした力強さがあると私は思います。
 かもめ食堂の店主であるサチエさんは決して自分のことも多く語らず、他人のことも深く詮索はしません。余計なことはせず適度な距離感を持って、相手のペースを尊重しながら付き合っていく姿勢はとても好感が持てました。
 また自分の生活に対するこだわりや信念といったものを大切にして、自分のペースを常に乱さず生きていく姿はとても清々しいものがありました。

 もちろん片桐はいりさん演じるミドリさんやもたいまさこが演じるマサコさんも個性的で味のある演技をしています。片桐はいりさんの独特な表情や目の動き、もたいまさこさんの酸いも甘いも経験した大人の女性としての風格。3人の個性派女優の醸し出す独特な雰囲気がこの作品を成功に導いたと言っても過言でないと思います。

 あと、この作品の大きな魅力として忘れてはいけないのは美味しそうなな食べ物の数々です。淹れたてのコーヒー、鮭・梅・おかかのおにぎり、焼きたてのシナモンロール、トンカツにしょうが焼き。出てくる食べ物全てが美味しそうで、観客の胃袋を刺激します。湯気の立ち方とか食べ物をこんなに美味しそうに撮影した作品は邦画では久々だと思います。
 またかもめ食堂のインテリアも無駄がなくシンプルでありながら、とてもおしゃれであり、見ていて心落ち着くものがありました。

 私はこの作品を見て、おにぎりは日本人にとってのソウルフードであることを再認識しました。ノリのぱりっとした食感、程よい塩加減のご飯、そして中に入った鮭・おかか・梅干とご飯の相性の素晴らしさ。映画の中で「おにぎりは人に握ってもらうのが良い」というセリフがありますが、その通りだと思いました。

 日々の生活や仕事に追われてゆとりをなくしている時、この作品を見ると肩の力が抜けてほっと出来ますよ。ただお腹が空いたときに見ると、無性に和食とコーヒーが欲しくなると思うので、あらかじめ腹ごしらえをしておくか、おにぎりとコーヒーを用意しておいたほうが良いですよ。 

製作年度 2005年
製作国・地域 日本
上映時間 102分
監督 荻上直子 
原作 群ようこ 
脚本 荻上直子 
音楽 近藤達郎 
出演 小林聡美 、片桐はいり 、もたいまさこ 、ヤルッコ・ニエミ 、タリア・マルクス 、マルック・ペルトラ 

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2007年6月19日 (火)

『フラガール』この映画を見て!

第162回『フラガール』
Hulagirl  今回紹介する作品は昨年度の日本の各映画賞を総なめにした話題作『フラガール』です。この作品は福島県の炭鉱町に誕生した常磐ハワイアンセンター(現:スパリゾートハワイアンズ)にまつわる実話を基に制作されています。
 ストーリー:「時代の波で閉鎖に追い込まれつつある東北の炭坑の村。次々と炭鉱が閉鎖される中、炭鉱会社が目をつけたのは東北にハワイを持ってくることをコンセプトにしたレジャー施設『常磐ハワイアンセンター』の開設だった。ハワイといえばフラダンスということで炭鉱の女性たちをフラダンサーにしようと考えるが、集まったのは盆踊りしか知らないような女性たち。そこで東京からプロのダンサーが呼ばれ、プロのダンサーになるべく特訓が始まる。」
 
 この作品、ストーリー自体はサクセスストーリーにありがちなとてもベタな内容です。親と子の軋轢と和解、主人公の挫折と成功、友人との別れ、先生に対する生徒の反発から信頼関係への発展、全てが観客の予想を裏切ることのない王道の展開です。イギリスで制作された炭坑夫の息子がバレーダンサーを目指す『リトル・ダンサー』や炭坑夫たちが男性ストリッパーを目指す『フル・モンティ』を観た事がある人なら、この作品がどんな展開になるかすぐに察しがつくと思います。
 
 ストーリーの展開だけ見るとありがちな作品に過ぎないのですが、役者の熱演と監督の演出の巧みさで観客の心を惹きつけ、深い感動を与えます。
 役者の演技で言えば蒼井優の演技がとても素晴らしく、彼女の魅力でこの映画は支えられていると言っても過言ではないと思います。炭鉱の素朴で勝気な女子高生が母の反対を押し切ってダンスに打ち込む姿は見ていて清清しいです。また肝心のダンスのシーン自体も特訓の甲斐もあって躍動感にあふれおり、見る者を虜にします。
 東京から来た訳ありのプロダンサーを演じる松雪泰子の熱演も素晴らしく、栄光も挫折も味わった女性の逞しさと不器用さといったものが感じられました。
 また他の脇役の方の演技も素晴らしいの一言でした。特に岸部一徳と富司純子の演技は味があり、この映画に奥行きを与えたと思います。

 あとこの作品で印象的だったのが昭和40年代の炭鉱の生活をノスタルジックかつリアルに描いたところでした。石油から石炭にエネルギー政策が変わり、どんどん斜陽になっていく石炭産業。その中で何とか生活と仕事を守ろうとする人々。この部分を丁寧に描いたことで、単なるサクセスストーリーとは違う奥行きが映画に加わったと思います。
 時代の流れに抗う人たちと、時代の流れの中で何とか生き延びようとする人たち。炭鉱で働いていた男たちの誇りと、その誇りを奪う時代の流れ・・・。そんな中で若い女性たちがたくましく生き延びようとする姿は時代の変化というものにどう立ち向かっていくべきかを見事に描いていたと思います。
 
 笑って泣けて、清清しい気持ちになれる『フラガール』。多くの人にぜひ見ていただきたい作品です。  

製作年度 2006年
製作国・地域 日本
上映時間 120分
監督 李相日 
脚本 李相日 、羽原大介 
音楽 ジェイク・シマブクロ 
出演 松雪泰子 、豊川悦司 、蒼井優 、山崎静代 、池津祥子 、徳永えり 、三宅弘城 、寺島進 、志賀勝 、高橋克実 、岸部一徳 、富司純子 

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2007年6月11日 (月)

『大日本人』映画鑑賞日記

Dainippon  今回紹介する作品はダウンタウンの松本人志が企画・初監督・主演を務めた作品『大日本人』です。公開前から大変話題になっていた本作品。映画の内容に関する情報が公開直前までほとんど明らかにされなかったので、見るまではどんな内容か想像を膨らましたものでした。カンヌでは絶賛されたという報道もあれば、酷評されたという報道もあり、非常に賛否両論分かれる作りになっているのだろうと思ったものでした。
 北野監督の『監督・ばんざい!』と同じ日に公開されたので、芸人監督同士の対決とマスメディアでは大きく取り上げれてていました。私も同じ日に両作品とも鑑賞したのですが、個人的には北野監督の作品の方が面白かったです。
 ただ松本監督の作品も単に駄作と片付けるには勿体無い作品であり、非常に良い線まで言っているけど、後一歩が残念な出来の作品と言わざる得ません。

 
(ここから先はネタバレになるので、まだ見ていない人は注意してください!)
 
 ストーリー:「大佐藤大(だいさとうまさる)の日常生活を追うドキュメンタリースタッフ。彼は一見すると冴えないおじさんだが、高圧電流によって巨大化して、“獣(じゅう)”を倒していく大日本人の家系の末裔だった。かつては国民を守るヒーローとして敬われていた大日本人。しかし、時代に流れから、多くの国民の関心を失い、近隣住民からは疎まれる存在になっていた・・・。」
 
 本作品の大きな特長は全編ドキュメンタリータッチで描かれているところです。ストーリーはカメラマンが大佐藤大にインタビューする形で展開していくので、最初は彼が一体何者か全く分かりません。
 彼の正体が明らかになるのは映画が始まって30分以上経ってからなのですが、彼が巨大化するシーンは呆気にとられました。
 彼が巨大化して戦うシーンは思った以上にCGの出来がよく(もちろんハリウッドにはかないませんが・・・。)、迫力あるシーンとなっており、この作品が10億円も制作費をかけた理由も頷けました。獣のデザインも非常に気持ち悪くかつ個性的で、強烈なインパクトがありました。

 また現代の日本の家族関係の希薄さやマスメディア批判、日米関係の問題、アメリカ批判などの社会風刺が随所に見られたのも松本監督の日本人に対する思いが垣間見えれ興味深かったです。

あと俳優の使い方も予想外で、こんな形でこの人が登場するのかと驚き、そして笑ってしまいました。特に竹内力と神木隆之介の登場シーンは可笑しさの余り噴き出してしまいました。

 この作品は爆笑する作品と言うよりはクスクス笑う作品だと思います。獣と戦闘シーンや映画の随所に挿入される小ネタなども笑えます。しかし、それ以上にヒーローである主人公の情けなく哀愁漂う日常生活に共感しつつクスクス笑わせるのが監督の意図だと思いました。
 
 映画のラストは作品そのものを崩壊させるようなオチですが、ここは個人的には最後までドキュメンタリータッチで終わらせたほうが良かったと思います。何か映画でなくテレビのコントを見せられているかのようなラストは物足りませんでした。せっかく映画なのだから、テレビでは出来ないもっと予想外のオチをつけて欲しかったです。
 だらだらと続くエンドロールも面白いと言えば面白いですが、くどさも感じてしまいました。

 後、この作品で残念な点は編集です。松本監督の独特の間を尊重する編集自体は良いと思うのですが、このネタで2時間は少し長すぎました。インタビューのシーンもダラダラ過ぎて飽きてしまうところがあり、もう30分削ったほうが見やすかったと思います。
 
 ドキュメンタリータッチでヒーローの日常生活を描くという演出は面白いと思っただけに、もう少し編集やオチに工夫が欲しかったです。

製作国・地域 日本
上映時間 113分
監督 松本人志 
製作総指揮 白岩久弥 
脚本 松本人志 、高須光聖 
音楽 テイ・トウワ 
出演 松本人志 、竹内力 、UA 、神木隆之介 、海原はるか 、板尾創路 

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2007年6月 4日 (月)

『殯の森』この映画を見て!

第160回『殯の森』
Mogari  今回紹介する作品は今年度カンヌ映画祭で邦画としては10年ぶりにグランプリ(審査員特別大賞)を受賞して話題になった『殯の森』を紹介します。この作品はまだ劇場公開されていないにも関わらず、NHKハイビジョンで先行してテレビ放映されました。私もテレビで見たのですが、劇場公開よりテレビで先に放映するなんて驚いてしまいました。先にテレビで公開してしまうと劇場に足を運ぶ人が少なくなるのではと思うのですが・・・。どうもNHKが製作協力していたため、放送権をすでに獲得していて、受賞を記念して放送されたとのことです。
 
 監督の認知症老人の介護や子育てなどの経験から生まれたこの作品。愛する者に先立たれた人たちの心の回復を描いていきます。
ストーリー:「緑豊かな奈良の山村にある軽度認知症の人のグループホーム。そこで暮らす老人しげきは、33年前に妻・真子を亡くしてから、彼女と暮らした日々を心の奥にしまい込み生きてきた。
 そこにわが子を亡くした哀しみにくれる介護士の女性・真千子がスタッフとしてやってくる。真千子はしげきの部屋を掃除しているときに妻の遺品を触り突き飛ばされる。
 一時自信をなくす真千子だが、次第にしげきと打ち解けあう。
 そしてしげきの妻の墓参りに真千子が付き添うことになるが、途中でしげきは森の中へと入り込む。森の中で妻の墓、そして妻の魂を探すしげき。それに付き合う真千子。二人が森の中で彷徨い見出したものは・・・」

 この作品のタイトルである「殯」(もがり)とは「古代日本の葬祭儀礼のことで高貴な人の本葬前に、棺に死体を納めて仮に祭ること、またはその場所」を指すそうです。古代の日本人は死者を生前と同様に扱って蘇生を願いつつ、死を確認するために死体をしばらく置いていたそうです。そこには死者の魂を畏れ敬い、慰める意味があったそうです。
 この作品ではエンドロールの前に「殯」について「敬う人の死を惜しみ、しのぶ時間や場所のことである」というテロップが出てきます。妻に先立たれた男、子どもに先立たれた女、それぞれの心にある愛する者の死に対する深い喪失感。死は死んだ者よりも生き残った者に大きな意味を問いかけます。愛するものはどこに消え、そして自分はなぜ生きているのかと・・・。
 
 死というものは生きている限り避けられないものだと分かっていても、生きている者にとっては非常に恐ろしく悲しいものです。自分が死ぬのも怖いし、愛する人が死ぬのはとても悲しいです。そんな死に対して、この映画は真正面から描こうとします。死とは何か?そして生き残ったものはどう死と向き合うべきか、この作品はセリフは最小限にして静謐な映像美でそれを描き出していきます。

 私がこの作品を見て印象的だったシーンは何といっても自然の美しさです。どこまでも広がる緑の茶畑や田圃、そして森。自然が持つ安らぎが生きている者を癒し慰める力といったものを改めて感じました。
 古代から日本人は森や山を聖なる場所(魂が還る場所)として崇めてきました。その名残は今も日本の各地で見られます。この作品を見て私は森や山が日本人とって如何に大切な場所であるかを思い出させてくれました。

 映画自体は誰が見ても分かりやすいハリウッド映画の対極にあるような作品です。台詞は少なく、テンポもゆったりしていますし、キャストも無名の人ばかりです。しかし、見た後にここまで深い余韻を与える作品はなかなか出会えないと思います。未見の方はぜひ劇場で見てください!

製作年度 2007年
製作国・地域 日本/フランス
上映時間 97分
監督 河瀬直美 
脚本 河瀬直美 
音楽 茂野雅道 
出演 うだしげき 、尾野真千子 、渡辺真起子 、ますだかなこ 




 

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2007年5月20日 (日)

『ホテル・ルワンダ』この映画を見て!

第159回『ホテル・ルワンダ』
Hotel_rwanda  今回紹介する作品は1994年にアフリカのルワンダで起こった大量虐殺事件を題材にした『