宮崎駿とスタジオジブリ

『ホーホケキョ となりの山田くん』映画鑑賞日記

Photo_2  いしいひさいちの四コマ漫画作品を20億円の制作費をかけて高畑勲監督が映画化した本作品。スタジオジブリとしては初のセル画制作アニメを用いないフルデジタル処理で制作されています。高畑監督は水彩画のような手描き調の画面にこだわり、通常のアニメ映画の約3倍17万枚もの作画を行っています。(ジブリ作品の中で一番の作画枚数だそうです。)

 私は公開と同時に劇場に足を運んで鑑賞したのですが、水彩画のような映像のクオリティは流石ジブリと思いましたが、ストーリーが起伏がなく淡々としており映画として1時間40分見るには辛かったです。
 一般庶民の何気ない日常生活を哀愁と笑いを交えて描いている点は悪くはないのですが、わざわざ映画館で見る必要が感じられず、『サザエさん』のようにテレビで毎週放映した方が楽しく見れるのではと思いました。

 ただ、矢野顕子の音楽はとても素晴らしく、聞いていて心が落ち着きます。

製作国    日本
上映時間 104分
製作年度 1999年
監督:高畑勲   
絵コンテ:田辺修、百瀬義行   
原作:いしいひさいち   
脚本:高畑勲   
作画監督:小西賢一   
音楽:矢野顕子   
声の出演:
    朝丘雪路   
    益岡徹   
    荒木雅子   
    五十畑迅人   
    宇野なおみ   
    矢野顕子

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『おもひでぽろぽろ』映画鑑賞日記

Photo  岡本螢と刀根夕子による同名原作コミックを高畑勲監督がアニメ化した本作品。原作は小学生時代のエピソードのみですが、高畑監督はそこに27歳の主人公が田舎の農村を訪ねるエピソードを独自に追加。現代から過去を回想する形で物語が展開します。

 私は本作品を中学校時代に初めて見たのですが、淡々とした展開が退屈で途中睡魔に襲われたほどでした。
 映像はジブリだけあって現代のパートは実写かと思えるほど緻密で素晴らしいのですが、主人公たちの顔の皺はやり過ぎで違和感がありました。
 また、高畑監督の田舎や有機農業を礼賛するメッセージも田舎育ちの私には都会から見た理想にしか見えず共感できませんでした。
 ただ、ベット・ミドラーの名曲「The Rose」を都はるみが歌った主題歌「愛は花、君はその種子」はとても素晴らしく、それを聞きたいがためにサントラを買ったほどでした。

 最近久しぶりに本作品をふと見返したのですが、中学校の時の比べると興味深く見ることができました。

 私は本作品を昔を懐かしむことが主題の映画だとずっと思っていました。しかし、改めて見ると、自分の過去と今の自分の繋がりを自覚することで主人公が成長する姿を描いた映画であることに気づきました。
 ラストシーンで主人公が結婚を決めて引き返すシーンは本作品のいわばクライマックスでありますが、小さい頃の自分や友だちが未来に向かう主人公を見送る姿は過去との繋がりや和解を見事に表現しています。
 過去のエピソードは時代は違うとは言え、どれも自分も経験したことがあるようなエピソードが多く共感できます。個人的には分数の割り算のエピソードが一番共感できました。
 本作品は子どもの時の見るより、社会人になってから見た方がいろいろ感じることが多い作品です。

 ただ、何度見ても登場人物の顔の皺と高畑監督の田舎賛美には共感できませんでした。

上映時間 118分
製作国    日本
製作年度 1991年
監督:    高畑勲   
原作:    岡本螢   
    刀根夕子   
脚本:    高畑勲   
作画監督:近藤喜文   
    近藤勝也   
    佐藤好春   
特殊効果:谷藤薫児   
美術監督:男鹿和雄   
撮影監督:白石久男   
編集:    瀬山武司   
    金子尚樹   
    木田伴子   
    毛利安孝   
音楽:    星勝   
場面設計・絵コンテ:百瀬義行   
声の出演:今井美樹   
    柳葉敏郎   
    本名陽子   
    寺田路恵   
    伊藤正博   
    北川智絵   
    山下容里枝   
    三野輪有紀   
    飯塚雅弓   
    押谷芽衣   
    小峰めぐみ   
    滝沢幸代   
    石川匡
    増田裕生   
    佐藤広純

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『借りぐらしのアリエッティ』映画鑑賞日記

Photo  イギリスの児童文学『床下の小人たち』をスタジオジブリがアニメ映画化した『借りぐらしのアリエッティ』。宮崎駿が企画・脚本を担当し、スタジオジブリの原画スタッフの米林宏昌を監督として大抜擢して製作されました。宮崎駿以外が監督するスタジオジブリの作品は『耳をすませば』を除いて個人的にはイマイチなのですが、予告編の映像の美しさに惹かれ劇場まで足を運びました。

 絵と音楽の美しさはさすがジブリ、申し分ありませんでした。特に小人目線で描いた人間世界は新鮮で、前半の主人公アリエッティが初借りに父と出かけるシーンは大変ワクワクして見ることが出来ました。音響もこだわっており、小人にはこの世界の音がどのように聞こえているのかを巧みに表現していたと思います。セシル・コルベルのアイリッシュな音楽も映画の世界観にとてもマッチしていました。

 ただ、ストーリーと人物描写に関してはイマイチでした。
 ストーリーは郊外のある広大な古い屋敷の床下に父ポッドと母ホミリーと住む14歳の少女アリエッティと病気療養のためにやって来た12歳の少年・翔の出会いから別れまでを描くというシンプルな内容です。
 しかし、登場人物は少ない割りに、一人一人の描写が浅いため、いまいちドラマに共感できませんした。翔がアリエッティに庭で滅び行く種族を語る場面も別れ際のセリフも、人物描写が浅いために唐突な印象を受けて上滑りに終わっていたような気がします。
 お手伝いのハルさんも小人をなぜ捕獲しようとするのかよく分からないため、単なる憎々しい敵役に終わってしまって後味が悪かったです。
 あとスピラーも物語の展開に大きく絡むキャラクターかと思いきや登場シーンも少なく残念でした。
 また、舞台設定を日本に変更したのも意味があまり感じられず、原作どおりにしても良かったのではと思いました。

 最近のジブリは映像のクオリティの高さに比べて脚本の練りこみが不足しており、物足りなさを感じます。
 本作品も『ゲド戦記』に比べれば良く出来ていると思いますが、完成度は悪くもないけどそれほど良くもないといったところでした。

上映時間:94分
製作国:日本
製作年度:2010年
監督:米林宏昌   
企画:宮崎駿   
原作:メアリー・ノートン   
『床下の小人たち』(岩波少年文庫刊)
脚本:宮崎駿   
    丹羽圭子   
作画監督:賀川愛、山下明彦   
美術監督:武重洋二、吉田昇   
色指定:森奈緒美   
音楽:セシル・コルベル   
主題歌:セシル・コルベル   
    『Arrietty's Song』
声の出演:志田未来
    神木隆之介
    大竹しのぶ
    竹下景子
    藤原竜也
    三浦友和
    樹木希林

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『久石譲 in 武道館 ~宮崎アニメと共に歩んだ25年間~』

Photo  昨年に『崖の上のポニョ』の公開を記念して、8月に2日間で合計3回にわたって日本武道館にて公演された『久石譲 in 武道館 ~宮崎アニメと共に歩んだ25年間~』。
 『風の谷のナウシカ』から『崖の上のポニョ』まで久石譲が手がけてきた宮崎駿作品の音楽を武道館で演奏するという宮崎&久石ファンには夢のような企画で、チケットもすぐに完売したほどです。
 私も武道館のコンサートに喉から手が出るほど行きたかったにも関わらず都合上断念。以前NHKでやっていた番組を録画して何度も見たものでした。
 そして今回『崖の上のポニョ』のDVD発売に合わせて、コンサートの様子が完全収録されたDVD(NHKの放送では『MADNESS』が未収録でした。)が発売されるということで私も『ポニョ』とあわせて手に入れ、自宅で鑑賞しました。

  200名の大オーケストラに800人の大合唱団、そして160人のマーチングバンドと総勢1160人もの超大規模編成による演奏は圧巻で見ていて鳥肌が立ったものでした。また、同時に何度見ても武道館に行けなかったことが悔やまれます。
 今回のコンサートでは作品ごとに様々な趣向を凝らしており、見ていて楽しく感動的で、2時間飽きることがありません。
 オープニングは2人が始めてコンビを組んだ『風の谷のナウシカ』が演奏されるのですが、壮大なオケの響きと美しいメロディーにいきなり心が鷲づかみにされます。
 続いて演奏される『もののけ姫』ではコーラスも加わった「アシタカせっき」の壮大な音楽に鳥肌が立ちまくり完全ノックアウトです。
 重量級の作品に続いて演奏されたのが『魔女の宅急便』。本作品の曲は明るく軽快で聴いていて心地よいです。特に印象的だったのがバイオリンソロの美しさが際立った「傷心のキキ」と「かあさんのホウキ」です。
 『崖の上のポニョ』では大橋のぞみちゃんが歌う「崖の上のポニョ」を始め、ボーカル曲が4曲披露されます。林正子さんが歌う「海のおかあさん」は最後の「覚えていますか、兄弟たちを~」の高い歌声に圧倒されました。また、久石さんの娘さんである麻衣さんが歌う「ひまわりの家の輪舞曲」は個人的にイメージアルバムが発売された時から大好きな歌だったので聴けてうれしかったです。
 『天空の城ラピュタ』は地元の中高生160人のマーチングバンドによって演奏されるのですが、凄い迫力です。個人的に『ラピュタ』の曲が一番好きなので、聞いていて胸が熱くなりました。
 『紅の豚』は久石さんのピアノとホーンとのアンサンブルでの演奏。ジャズ調にアレンジされており、『ラピュタ』から一転して大人のムードが漂います。
 『ハウルの動く城』は組曲で演奏されます。映画でもクライマックスに流れて印象的だったトランペットを中心にすえた名曲「Cave of Mind」。本コンサートではトランペットとトロンボーンを中心にすえ演奏しており、美しい音色が耳に残ります。
 『千と千尋の神隠し』は平原綾香をゲストに迎えてボーカル曲が2曲披露されます。「いのちの名前」は映画ではピアノソロで何度も演奏されるメインテーマに歌詞を付けたものですが、平原さんの情感溢れる歌声が素敵でした。「ふたたび」は映画のクライマックスで流れる曲で今回のコンサートのために新たに歌詞を付けています。
 そしてコンサートの最後を飾るのは誰もが知っている『となりのトトロ』。個人的に「風の通り道」が大好きだったので、本コンサートでは少ししか演奏されなかったのが残念でした。もっと聞かせて欲しかったです。「さんぽ」、「となりのトトロ」はもはや誰もが知っている歌であり、会場が大いに盛り上がっているのが見ていても伝わってきます。
 アンコールは久石さんのコンサートでは毎回欠かせない「MADNESS」と『もののけ姫』のラストに流れる美しいピアノ音色が印象的な「アシタカとサン」が演奏されます。「アシタカとサン」は久石さんの数ある曲の中でも1、2位を争う美しいメロディーだと思うので、今回の最後がこの曲で締められるのはうれしい限りです。

 私はDVDを見るたびに、生で見られなかったことを後悔しつつ、宮崎さんと久石さんが生み出した名作と名曲の数々に感動させられます。
 本DVDは宮崎ファン及び久石ファンにはたまりません。

収録曲
    *  【風の谷のナウシカ】
          1.オープニング「風の伝説」
          2.レクイエム~メーヴェとコルベットの戦い
          3. 遠い日々
          4. 鳥の人
    * 【もののけ姫】
          5. アシタカせっき
          6. タタリ神
          7. もののけ姫
    * 【魔女の宅急便】
          8. 海の見える街
          9. 傷心のキキ
          10. かあさんのホウキ
    * 【崖の上のポニョ】
          11.深海牧場~海のおかあさん
          12. 波の魚のポニョ~フジモトのテーマ
          13. ひまわりの家の輪舞曲
          14. 母の愛~いもうと達の活躍~母と海の讃歌
          15. 崖の上のポニョ
    * 【天空の城ラピュタ】
          16. ハトと少年
          17. 君をのせて
          18. 大樹
    * 【紅の豚】
          19. 帰らざる日々
    * 【ハウルの動く城】
          20. Symphonic Variation“Merry-go-round”~Cave of Mind
    * 【千と千尋の神隠し】
          21. あの夏へvocal version「いのちの名前」
          22. ふたたび
    * 【となりのトトロ】
          23.風のとおり道
          24. さんぽ
          25. となりのトトロ
    * 【アンコール】
          26.MADNESS
          27.アシタカとサン

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『宮崎駿の雑想ノート』街を捨て書を読もう!

『宮崎駿の雑想ノート』 著:宮崎駿 大日本絵画; 増補改訂版版
Photo  今回紹介する本は宮崎駿監督の戦争兵器とそれに携わる人たちに対する愛情とこだわりが感じられる『宮崎駿の雑想ノート』です。本書は『月刊モデルグラフィックス』 という雑誌で1984年~1990年にかけて不定期で連載された宮崎監督の第1次大戦から第2次大戦にかけての古今東西の軍事兵器に関する虚実入り交ざったイラストエッセイ及びマンガが収録されています。
 『となりのトトロ』や『崖の上のポニョ』などの宮崎監督のほのぼのとした作品が好きな人にとっては本書を読んでも面白くないかもしれません。本書は宮崎監督のミリタリーマニアとしての溢れんばかりの思いが詰まった非常にマニアックな内容となっています。近代の陸海空の今から見ればアナログな兵器とそれを操る人間の奮闘や悲喜劇が水彩画の優しいタッチで描かれており、好きな人は何度読んでも飽きることがありません。本書の特長は何と言っても兵器に対する緻密な設定と描写。本当にそんな兵器があったのかなと読む者に思わせるだけの説得力があります。
 また、本書は決して単純に戦争を賛美しているわけではありません。戦争という狂気の時代の中で兵器を扱う人々の悲喜劇なドラマを通して、戦争というものの愚かさや空しさまで描いています。

 個人的には「多砲塔の出番」と「豚の虎」というエピソードが一番好きです。どちらも戦車を扱った作品ですが、両作品をぜひ宮崎監督にアニメ化してほしいです。

 あと、本書には『紅の豚』の原作も収録されています。ストーリーは大きく変わっていませんが、ジーナは登場しません。

 ちなみに本書の続編として『宮崎駿の妄想ノート』という作品が出版されています。

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『プロフェッショナル仕事の流儀 宮崎駿のすべて』

Ponyo  8月5日にNHKのドキュメンタリー番組『プロフェッショナル仕事の流儀』で放送された『宮崎駿のすべて』。

 同番組では昨年の3月にも宮崎監督に密着取材して『崖の上のポニョ』のイメージボードの作成過程を追ったドキュメンタリーを放映しています。普段見ることのできない宮崎監督のイメージボードの制作過程が丹念に描かれており、宮崎ファンとしては大変見ごたえのある番組でした。

 今回の番組は前回からの続きということで、絵コンテの作成過程や原画の修正作業を追ったドキュメンタリーとなっており、『崖の上のポニョ』のキャラクターや各シーンに宮崎監督がこめた思いが大変良く分る番組となっていました。

 特に私が今回のドキュメンタリーを見て、映画の気になった点に関して「そういう意味だったのか!」と納得したのが以下の2点でした。
 
 一つ目が映画の後半に宗介とポニョが不機嫌な赤ん坊に出会うシーン。映画の中でも大変印象的なシーンなのですが、宮崎監督はやんちゃでわがままなポニョが人間になった後も優しく思いやりのある女の子として生きていけることを伝えるためにあのシーンを挿入したそうです。宮崎監督の自らが生み出したキャラクターに対する愛情というものが良くわかりました。

 2つ目が映画のクライマックスに活躍するトキという老婆の存在。今回の番組では宮崎監督の母に対する思いというものが後半に語られ、トキという老婆が宮崎監督の亡き母をイメージして描いたキャラクターであることが明かされます。映画のクライマックスにはトキが宗介を抱きしめるシーンにこめた宮崎監督の亡き母への思いには胸が熱くなりました。

 また番組の中で宮崎監督が久石譲さんが映画のイメージアルバムの収録曲として製作した『ひまわりの家の輪舞曲』を聴いて、亡き母を思い出して涙するシーンも大変印象的でした。(ちなみに『ひまわりの家の輪舞曲』は『イメージアルバム 崖の上のポニョ』に収録されています。とても良い歌なので是非聴いてみてください。)

 今回の番組を見て改めて思ったのが、宮崎監督の自分の作品に対する飽くなきこだわりと愛情の深さ。監督自身が作品の中にのめりこんでいき、どうストーリーを展開させていくか格闘して、自分を追いこんでいく姿には周囲を圧倒する気迫を感じました。




 

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『崖の上のポニョ サウンドトラック』

お気に入りのCD NO.24 『崖の上のポニョ サウンドトラック』久石譲
Photo_2  今週土曜日から公開される『崖の上のポニョ』。そのサウンドトラックが公開に先駆けて今日発売されました。

 音楽を手がけるのはナウシカ以降の全ての宮崎さんの長編アニメを担当している久石譲さん。今回の作品ではフルオーケストラとコーラスをフューチャーして、宮崎さんが作り出した不思議な海の世界を音楽で壮大かつカラフルに表現しています。

 私は公開に先駆け一足先に試写会で鑑賞してきたのですが、冒頭は映像とオーケストラによる音楽のみで話しが進んでいきます。その際の映像と音楽がぴったり合っていて、さすが長年コラボレーションを続けてきた宮崎さんと久石さんだなと改めて思いました。
 
 本作品は宮崎作品としては『魔女の宅急便』以来久しぶりにオープニングタイトルの後にスタッフとキャストのクレジットがあり、『海のおかあさん』という歌がバックに流れます。
 この歌は宮崎さんは本作品のために「海そのもの」を歌った唄を作りたいという思いから制作されたものです。『千と千尋の神隠し』の主題歌「いつでも何度でも」の作詞を手がけた覚和歌子さんの詩「さかな」を元に宮崎さんが歌詞を書き上げ、久石さんが曲をつけ、ソプラノ歌手の林正子さんが歌っています。
 歌詞・メロディー・声ともに透明感に溢れた美しさに満ちており、全ての命の源である母なる海への賛歌となっています。

 映画の中で奏でられる曲の多くは『崖の上のポニョ・イメージアルバム』の音楽から発展したもので、優しく温かなメロディーとオーケストラとコーラスが奏でる重厚かつ繊細な音が、海の雄大さと繊細さ、主人公たちのストレートな思いと行動を見事に表現しています。
 特に印象的だったのが大津波のシーンで流れる金管をメインにした「ワルキューレの騎行」に似た音楽!映像の迫力を倍増させる勇ましい音楽はとても印象に残ります。

 エンディングにはテレビでもよく流れているので知っている人も多いであろう主題歌『崖の上のポニョ』が流れますが、映画の明るく楽しい雰囲気にピッタリ合う主題歌です。ちなみに映画の中でもこのメロディーがアレンジされて随所に登場します。

 サントラは映画で使用された音楽の内、36曲が収録されています。映画を見た後にサントラを聴くと名シーンが次から次へと頭の中に思い浮かんできますよ! 

  1 深海牧場 
  2 海のおかあさん 
  3 出会い 
  4 浦の町 
  5 クミコちゃん 
  6 ポニョと宗介 
  7 からっぽのバケツ 
  8 発光信号 
  9 人間になる! 
  10 フジモト 
  11 いもうと達 
  12 ポニョの飛行 
  13 嵐のひまわりの家 
  14 波の魚のポニョ 
  15 ポニョと宗介Ⅱ 
  16 リサの家 
  17 新しい家族 
  18 ポニョの子守唄 
  19 リサの決意 
  20 グランマンマーレ 
  21 流れ星の夜 
  22 ポンポン船 
  23 ディプノリンクスの海へ 
  24 船団マーチ 
  25 赤ちゃんとポニョ 
  26 船団マーチⅡ 
  27 宗介の航海 
  28 宗介のなみだ 
  29 水中の町 
  30 母の愛 
  31 トンネル 
  32 トキさん 
  33 いもうと達 
  34 母と海の讃歌 
  35 フィナーレ 
  36 崖の上のポニョ(映画バージョン) 

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『崖の上のポニョ』この映画を見て!

第210回『崖の上のポニョ』
Photo  今回紹介する作品は7月19日から公開される宮崎駿監督の最新作『崖の上のポニョ』です。
 現在テレビでは予告編がオンエアーされており、女の子がたどたどしく歌う「ポーニョ、ポーニョ~」という主題歌が印象に残っている人も多いかと思います。

 私は運良く試写会のペアチケットを手に入れることが出来て、パートナーと共に一足先に見に行くことができました。

 映画のあらすじ
「海辺の小さな町。

崖の上の一軒家に住む5歳の少年・宗介は、
ある日、クラゲに乗って家出したさかなの子・ポニョと出会う。
アタマをジャムの瓶に突っ込んで困っていたところを、
宗介に助けてもらったのだ。

宗介のことを好きになるポニョ。
宗介もポニョを好きになる。
「ぼくが守ってあげるからね」

しかし、かつて人間を辞め、
海の住人となった父・フジモトによって、
ポニョは海の中へと連れ戻されてしまう。

人間になりたい!
ポニョは、妹たちの力を借りて父の魔法を盗み出し、
再び宗介のいる人間の世界を目指す。

危険な力を持つ生命の水がまき散らされた。
海はふくれあがり、嵐が巻き起こり、
妹たちは巨大な水魚に変身して、
宗介のいる崖へ、大津波となって押し寄せる。

少年と少女、愛と責任、海と生命。
神経症と不安の時代に、
宮崎駿がためらわずに描く、母と子の物語」(映画チラシより) 
 

まだ公開前なので映画の詳細に関しては何も言いませんが、衰えを知らない宮崎監督の想像力の豊かさに圧倒されました。

 CGを使わず手描きにこだわった映像は躍動感と温かみに溢れており、見ていて楽しく飽きることがありません。
 特に海の映像はとても力が入っており、デフォルメされた波の描写や海中を泳ぎ回る色とりどりな魚たちの姿を見ていると海自体が重要な主人公であることに気づくでしょう。
主人公たちの動きや仕草も可愛くコミカルですし、中盤に『カリオストロの城』のカーチェイスを彷彿させるようなシーンもあります。
 また中盤にある大津波のシーンの音楽との相乗効果も相まって鳥肌が立つほど迫力があります。

 ストーリーは最近のジブリ作品の中ではいたってシンプルで、人間になりたい金魚姫「ポニョ」とそんなポニョを守ろうとする5歳の少年「宗介」の絆と冒険を描いています。
ただ、前回の「ハウルの動く城」と同じく映画の舞台となっている世界に関する説明は必要最小限に抑えられているため、今どういうことが起こっているのか良く分からない部分はいくつかあります。
 最近の宮崎監督は世界観の説明より、主人公たちの感情や行動に焦点を当てて話しを進めていきますが、本作品もポニョと宗介のストレートな思いや行動にのみ焦点を当てて話しを進めています。その為、世界観の説明を求める大人には不満があるかもしれませんが、そんな世界をありのまま受け止めることができる大人や子どもたちは感情移入して楽しく見ることができます。
一緒に見た私のパートナーは「ストーリーは良くわからなかったが主人公である宗介の純粋な思いに泣きそうになった」と言ってました。
 
 試写会には子どもたちもたくさん来ていましたが、見ている最中に主人公たちの何気ない仕草や行動に何度も笑っていました。宮崎監督は子どもたちが楽しんでくれるかどうかとても気になっているようですが、試写会での反応を見る限りは子どもたちの心をつかんでいると思いました。

 あと本作品を語る上で外せないのが一度聞いたら頭から離れない主題歌。映画ではエンドロールで流れるのですが、『となりのトトロ』以来のインパクトのある主題歌です。
 なおエンドロール自体も近年の映画では稀に見るコンパクトなもので、子どもを退屈させない配慮がなされており好感がもてました。

 本作品は『風の谷のナウシカ』や『天空の城ラピュタ』などのスケールの大きな冒険活劇を求める人が見るとイマイチかもしれませんが、『となりのトトロ』のようなこじんまりとした温かいファンタジーを求める人が見ると非常に楽しめると思います。

上映時間 101分
製作国 日本
製作年 2008年
監督: 宮崎駿 
プロデューサー: 鈴木敏夫 
原作: 宮崎駿 
脚本: 宮崎駿 
作画監督: 近藤勝也 
色彩設計: 保田道世 
美術監督: 吉田昇 
編集: 瀬山武司 
音楽: 久石譲 
主題歌: 藤岡藤巻と大橋のぞみ『崖の上のポニョ』、林正子 『海のおかあさん』
声の出演:長嶋一茂 、天海祐希、所ジョージ、土井洋輝、 奈良柚莉愛、柊瑠美、矢野顕子、吉行和子、奈良岡朋子

公式サイト:http://www.ghibli.jp/ponyo/

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『ジブリ実験劇場 On Your Mark』この映画を見て!

第204回『ジブリ実験劇場 On Your Mark』
On_your_mark  今回紹介する作品は宮崎駿監督の隠れた名作『On Your Mark』です。本作品はCHAGE and ASKAのコンサートツアー『SUPER BEST3』のオープニング・フィルムとして企画、制作され、コンサート会場で初公開されました。その後、『耳をすませば』の公開時に同時上映という形で一般にも公開されました。
私が本作品を始めて見たのも『耳をすませば』を見に行った際でした。その時は約7分という短い上映時間ながら、宮崎監督のエッセンスが詰め込まれた内容の濃さに圧倒されたとものでした。

ストーリー:「放射能で汚染され、人類がシャルターに住むようになった未来。武装警官隊たちがカルト教団の施設を武力制圧する。その中にいた警官2人は教団施設で翼の生えた少女を発見する。少女はすぐに研究施設に送られるが、彼女に惹かれた2人は研究施設から救助しようと奮闘を始めるが・・・。」

 本作品が公開された1995年というとオウム真理教の地下鉄サリン事件の年でもあり、本作品を始めてみた時はカルト教団が出てくる内容に衝撃を覚えたものでした。私は宮崎監督がオウム事件にインスパイアされて本作品を製作したものだと思ったものでした。しかし、調べたところ、宮崎監督はオウム事件前に本作品のシナリオを考えていたとのことで重なったのは全くの偶然だそうです。

 宮崎監督は本作品に関して以下のようなコメントをしています。
「『位置について』という意味のタイトルだけれど、その内容をわざと曲解して作っています。いわうる世紀末の後の話。放射能があふれ、病気が蔓延した世界。実際、そういう時代がくるんじゃないかと、僕は思っていますが。そこで生きるということはどういうことかを考えながら作りました」(『出発点』,宮崎駿,1996年,徳間書店,556p)
 
 宮崎監督の作品には『未来少年コナン』や『風の谷のナウシカ』等に見られるように人間の文明が一度崩壊した後の世界を描いたものがありますが、本作品もその系統の一つです。
 閉塞され追い詰められた人間社会の中で主人公たちが生きる希望を翼の生えた少女に見出そうとするストーリー展開は非常に解放感に溢れています。
 もちろん良く考えるとラストの展開も必ずしも主人公たちの今後は決してハッピーエンドとは言えません。少女は解放できても、自らは放射能まみれの大地でお尋ね者として生き続けていくしかないという暗い未来が待っているわけで・・。
 本作品はどんな状況下においても絶望と体制に身を寄せるのでなく、希望を見出し積極的に生き死んでいくことの大切さを謳った内容となっています。

「彼女が救世主だったり、救出を通して彼女と心の交流があったというわけではないんです。ただ、状況に全面降伏しないで、自分の希望、ここだけは誰にも触らせないぞというものを持っているとしたら、それを手放さなければならいのなら、誰の手にも届かないところに放してしまおうおいう。そういうことですよ」(『出発点』,宮崎駿,1996年,徳間書店,557p)

 宮崎監督の映画が好きなら本作品は絶対見逃すことの出来ない傑作です。現在、『ジブリがいっぱいSPECIALショートショート』というDVDに収録されているので是非見てください!

上映時間 6分40秒
製作国 日本
製作年度 1995年
監督: :宮崎駿 
脚色::宮崎駿 
原作::宮崎駿 
撮影監督:奥井敦 
作画監督: 安藤雅司 
美術監督::武重洋二
音楽:「On Your Mark」  by CHAGE&ASKA

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『オーケストラストーリーズ となりのトトロ 』

お気に入りのCD NO.23 『オーケストラストーリーズ となりのトトロ 』久石譲
Photo_2  今回紹介する作品は『となりのトトロ』の音楽を交響組曲にした『オーケストラストーリーズ となりのトトロ 』です。
 本作品は映画本編の音楽も担当している久石譲さんがオーケストラに初めて接する子どもや大人のために編曲されたもので、ブリテンの「青少年のための管弦楽入門」という曲を参考にしているそうです。

 私は2003年の久石譲さんのコンサートツアーで本作品を始めて聞いたのですが、その時はオーケストラの繊細かつ迫力のある音が奏でるおなじみの美しいメロディーに鳥肌が立つほど大変感動しました。
 
 本作品は映画でお父さん役を務めたコピーライター・糸井重里によるナレーションが付いたヴァージョンと交響組曲ヴァージョンと2バージョン収録されています。
私のお勧めはナレーション付きのバージョンです。糸井重里さんの優しく温かみのある声による情景の説明と音楽を聴くと映画の一場面が自然と脳裏に浮かんできます。

 新日本フィルハーモニーによる演奏も大変素晴らしく完成度も高いので、自宅で聞く時も許す限り大音量で聞いてほしいです。

 トトロが好きな人、オーケストラに興味のある人には絶対お勧めのアルバムです!

1. さんぽ 
2. 五月の村 
3. ススワタリ~お母さん 
4. トトロがいた! 
5. 風のとおり道 
6. まいご 
7. ネコバス 
8. となりのトトロ
〈となりのトトロ組曲〉 
9. さんぽ 
10. 五月の村 
11. ススワタリ~お母さん 
12. トトロがいた! 
13. 風のとおり道 
14. まいご 
15. ネコバス 
16. となりのトトロ 

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