2008年2月16日 (土)

『ブレインデッド』この映画を見て!

第200回『ブレインデッド』
Photo  このコーナー記念すべき200回目に紹介する作品は史上最高のスプラッターコメディホラー『ブレインデッド』です。

 私が本作品を始めてみたのは10年くらい前です。レンタルビデオ店のホラー映画コーナーで看護師がゾンビの赤ちゃんを抱えてイスに縛られている強烈なパッケージに目を奪われ思わず借りてしました。
 映画の本編にパッケージのようなエロティックなシーンこそありませんでしたが、こちらの期待をはるかに上回るパワフルかつ過激なシーンの連続で最初から最後まで画面に釘付けでした。

 見所は何といっても300ℓの血糊を使用したスプラッターシーン!特にラスト30分の阿鼻叫喚の地獄絵図は他の映画の追随を許さないほど強烈です。特に芝刈り機を使ったゾンビ撃退シーンのすざましさは気持ち悪いを通り越して、痛快さすら感じてしまいます。本作品を見た後ではどんなスプラッター映画を見ても物足りなさを覚えてしまうことでしょう。
 
 またコメディ映画としても最高に面白く、腹を抱えて笑えるシーンが満載です。下品かつ悪趣味なネタが多いのですが、あっけらかんとした描き方は見る者に不快な印象を全く感じさせません。

 ストーリー:「ニュージーランドに暮らすマザコンのライオネルは雑貨屋の娘パキータと運命的な出会いをする。二人は意気投合しデートに動物園へ出掛ける。息子が心配なライオネルの母親は二人の後をこっそり追跡して動物園へ向かうが、スカル島で捕獲された謎の生物「ラット・モンキー」に噛まれてしまう。その後、母親は体調を崩して寝こみ、ライオネルは懸命に介護する。しかし、母に容態は瞬く間に悪化、そしてゾンビになってしまう。
 ライオネルは仕方なく母親を埋葬するが、埋葬地の墓場にいた人々が次々に感染してゾンビ化。ライオネルは仕方なく自宅の地下室にゾンビを隔離して生活させる。しかし、ゾンビの存在を知らない叔父が自宅でパーティを開いてしまいゾンビを解放させたことから、血みどろの惨劇が始まる。」

 本作品に登場するキャラクターは皆ぶっ飛んだ人ばかりです。マザコンの主人公、過保護な母親、カンフーが得意な牧師、ベビーゾンビ・・・。強烈なキャラクターたちが織り成す濃厚かつ強烈な世界は一度見たら病みつきになります。

 全編にわたってハチャメチャな映画なのですが、ラストは上手くまとまり主人公は成長してハッピーエンドを迎えます。そのストーリー構成の上手さも本作品の魅力です。

 こんな素晴らしいスプラッターコメディー映画を監督したのは何と『ロード・オブ・ザ・リング』『キング・コング』など数々のファンタジー映画の傑作を手がけたピーター・ジャクソンです。『ブレインデッド』を撮った監督と『ロード・オブ・ザ・リング』を撮った監督が同じ人とは驚く限りです。
 しかし、本作品の徹底したスプラッター描写への監督のこだわりを見ると、後に『ロード・オブ・ザ・リング』での中つ国という架空の世界の描写へのこだわりとつながっていたのだなと思います。 

 『ロード・オブ・ザ・リング』にはまった人でスプラッター描写が苦手でない人はぜひ本作品を見ていただきたいと思います。

 ちなみに本作品のDVDは発売されてからすぐに廃盤となってしまい、現在アマゾンの中古コーナーやヤフーのオークションで8万円~10万円という法外な値段で取引されています。私もDVDを購入する時期を逃してしまい、非常に悔やんでいます。しょうもないB級ホラーが販売されて、このような傑作が手に入らないのはおかしいです。是非とも早期の再販を望んでいます。


上映時間 104分
製作国 ニュージーランド
製作年度 1992年
監督: ピーター・ジャクソン 
脚本: ピーター・ジャクソン、スティーヴン・シンクレア、フランシス・ウォルシュ 
撮影: マレイ・ミルン 
音楽: ピーター・ダゼント 
出演: ティモシー・バルム、ダイアナ・ペニャルヴァー、エリザベス・ムーディ、イアン・ワトキン、ブレンダ・ケンドール 
スチュアート・デヴァニー、 ジェド・ブロフィー

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2007年12月28日 (金)

『ゾンビ』(ダリオ・アルジェント版)この映画を見て!

第193回『ゾンビ』(ダリオ・アルジェント版)
Zombie  今回紹介する作品は以前にも一度紹介した『ゾンビ』のダリオ・アルジェントが監修した119分のヴァージョンです。
 ゾンビはいくつものバージョンがあることで有名です。今回紹介するバージョンの他に、アメリカで公開された127分のバージョン、アメリカ公開版をバースにカンヌ映画祭出品用に編集されたディレクターズカット版と称される139分のバージョン、テレビ東京で初放映されたサスペリアバージョン、テレビ東京で再放映されたバージョンがあります。
 日本で1979年に初公開されたバージョンは今回紹介するダリオ版を5分短縮したものでした。
 ダリオ版『ゾンビ』の最大の特長はロメロが監修したヴァージョンと違ってイタリアのプログレッシブバンド「ゴブリン」の激しいサウンドが全編にわたって鳴り響いているところです。ロメロ版『ゾンビ』は音楽があまり使われておらず見る者に静謐かつ空虚な印象を与えますが、ダリオ版『ゾンビ』はゴブリンサウンドの効果で見る者のテンションが上がります。音楽の使い方で同じ映画にも関わらず印象が全く違います。 
 編集もロメロ版は人間ドラマや空虚な終末世界の描写に重点が置かれているのに対して、ダリオ版は主人公たちのサバイバルアクションに重点が置かれています。
 私は今までロメロが監修したアメリカ公開版とディレクターズカット版しか見た事がなかったのですが、長らく絶版となっていたダリオ版が12月に低価格DVDとして再販されたのを機に見ることができました。
 ダリオ版はゾンビと人間との死闘に重点を置き、テンポよく話しが進んでいくので、手に汗握って最後まで飽きることなく見ることができます。またロメロ版には出てこないシーンも幾つかあり、見ていて「あっ」と思いました。
 ロメロ版、ダリオ版どちらが良いかといわれると迷うところで、ロメロ版のドキュメンタリータッチの淡々かつダラダラとした雰囲気も捨てがたいです。スカッと楽しみたいならダリオ版、じっくり楽しみたいならロメロ版といったところでしょうか。 

上映時間 119分
製作国 アメリカ/イタリア
監督: ジョージ・A・ロメロ 
脚本: ジョージ・A・ロメロ 
撮影: マイケル・ゴーニック 
特殊メイク: トム・サヴィーニ 
音楽: ゴブリン,ダリオ・アルジェント 
出演: デヴィッド・エムゲ, ケン・フォリー, スコット・H・ライニガー, ゲイラン・ロス

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2007年9月25日 (火)

『バタリアン』この映画を見て!

第178回『バタリアン』
Batariann  今回紹介する作品は日本でもブームを巻き起こしたコメディホラーの傑作『バタリアン』です。本作品の邦題である『バタリアン』は日本の配給会社が独自に付けたタイトルです。原題は『リターン・オブ・ザ・リビング・デッド』というタイトルで、ジョージ・A・ロメロ監督によるゾンビ映画の名作『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』のパロディ作品となっています。

ストーリー:「ケンタッキー州のとある医療倉庫で働くフランクとフレディは地下室に保管されているゾンビの話題で盛り上がる。1969年に軍人病院の薬品事故が原因で蘇生した死体を保管した容器が軍の間違いでこの倉庫に送られてきたのだった。二人はその箱を覗こうと容器を叩いてみると突然謎のガスが噴出。医療倉庫に保管されていた解剖用の死体の数々が動き出す。動き出した死体を処理しようと社長のバートは友人の葬儀屋で火葬をする。しかし、煙が混じった雨のせいで近隣の墓地の死体までどんどん蘇ってしまう。」

 本作品は私が小学生だった頃に金曜ロードショーで何回も放映されるほど人気がありました。小学校でも本作品が放映された後は男の子の間で話題になったものでした。当時の私は怖がりであったにも関わらずホラー映画が大好きで、本作品も恐る恐る見たものでした。今見ると笑える作品なのですが、当時はタールマンやオバンバなどのゾンビの造形の気持ち悪さや生きながら死んでいく登場人物たちの姿に背筋が凍る思いをしたものでした。映画のラストもあっけないというか強引というか、予想もしない展開だったので子どもながらに驚いたものでした。

 最近、本作品のDVDを購入し20年ぶりに見返したのでしたが、改めてみると非常に完成度の高いゾンビ映画だということが分りました。上映時間も90分と短い分テンポが良く見れますし、気持ち悪い描写のオンパレードの割りに笑える場面も多いので後味もよく、公開当時人気が出たのも頷ける出来でした。
 また『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』に対するオマージュのセリフやシーンも随所に見られ、ロメロゾンビファンはニヤッと笑いながら見ることができます。
ただ予算不足で主役級のゾンビを除くとメイクがしょぼいのが残念なところです。

 ちなみに本作品のゾンビは私が見たゾンビ映画の中では最強だと思います。頭部を破壊しても、身体をバラバラにしても動きますし、知能も高く、走ることもできる。こんなゾンビに襲われたらどうすこともできませんね。
 
 私が本作品の中でお気に入りのシーンはフランクが自ら焼却炉に入っていくところです。あのシーンだけは何回見て切ないです。

 本作品は現在5作目までシリーズ化されていますが、続編はどれもゾンビ映画としては普通の出来です。1作目だけ見れば十分です。

製作年度 1985年
製作国・地域 アメリカ
上映時間 91分
監督 ダン・オバノン 
脚本 ダン・オバノン 
音楽 マット・クリフォード 
出演 クルー・ギャラガー 、ジェームズ・カレン 、ドン・カルファ 、トム・マシューズ 、ビヴァリー・ランドルフ 、ジョン・フィルビン 、リネア・クイグリー

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2006年10月21日 (土)

私の映画遍歴8「ゾンビ映画」

Zombie  私の映画遍歴を語る上で外せないジャンルとしてゾンビ映画があります。ゾンビ映画というとB級感が漂い、良識的な映画ファンからは見向きもされないジャンルでありますが、一度はまると病みつきになる魅力があります。
 私が初めてゾンビ映画と出会ったのは小学生の時にテレビで見た『バタリアン』でした。この映画はゾンビ映画の名作『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』の続編という形で制作された映画でした。この映画はコメディタッチで描かれており、今見ると大して怖くないのですが、当時は死人が襲ってくる状況が怖くて震え上がったものでした。この映画を見て初めてゾンビ映画というものを意識したものでした。
 そして中学生の時に私をゾンビ映画の虜にしてしまったゾンビ映画の最高傑作『ゾンビ』にめぐりあいました。初めてこの映画に出会ったときは非常に衝撃を受けました。過激なゴアシーン、現代社会を風刺したストーリー、サバイバルアクションとしての面白さ、そして終末観に満ちた雰囲気。今まで見たホラー映画にはない風格といったものを感じ、ビデオを購入して何回も見直したものでした。(恐らく今までに50回以上は見ていると思います。)ショッピングセンターでの人間とゾンビの攻防戦と生き残った人間たちがショッピングモールを占拠する場面はこの映画最大の見所であり、魅力でもあります。私自身この映画を見るたびに自分がショッピングモールに立て籠もったらどう行動すべきかシュミレーションしたものでした。この映画を見ずしてゾンビ映画を語ることはできないと思います。
 『ゾンビ』を見た後、『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』・『死霊のえじき』とジョージ・A・ロメロのゾンビ映画を見まくったものでした。ロメロのゾンビ映画は基本的にゾンビが襲う恐怖よりも人間の愚かさや醜さに焦点をあてて描いており、他のゾンビ映画にはない奥の深さがあります。昨年20年ぶりの新作『ランド・オブ・ザ・デッド』が公開されロメロファンを喜ばせした。映画の完成度はもう一つでしたが、ロメロらしい社会風刺が見られ、他のゾンビ映画にはない風格がありました。
 ロメロのゾンビにはまってから、他の監督のゾンビ映画も片っ端からレンタルビデオで借りて見たのですが、『サンゲリア』や『ブレインデッド』など少数の作品を除いては、シナリオがちゃちかったり、ゴアシーンが手抜きだったり外れの作品が多かったものでした。ゾンビ映画で面白いと思える作品はグログロなゴアシーンと大量のゾンビが人間を襲うシーン、そして終末観漂う雰囲気がきちんと描かれています。
 『バイオハザード』や『ドーン・オブ・ザ・デッド』など近年ゾンビ映画が再びブームとなり劇場公開されており、ゾンビ映画ファンとしては嬉しい限りです。特にジョージ・A・ロメロの作品をリスペクトしたコメディタッチのゾンビ映画『ショーン・オブ・ザ・デッド』は久々の傑作でした。
 ゾンビ映画には人間の死に対する恐怖や人間の本来持つ暴力性・残酷さといった面を刺激し、人間の歪んだ欲望を満たしてくれます。
 

 私のお気に入りゾンビ映画 Best5

5位 『バタリアン』
バタリアン
見所:ユニークなゾンビの面々たち。そして衝撃の結末

4位  『サンゲリア』 
サンゲリア
見所:海中でのサメ対ゾンビの対決、目玉串刺しシーン。

3位 『ショーン・オブ・ザ・デッド』
ショーン・オブ・ザ・デッド

見所:イギリスらしいウエットとブラックに富んだユーモアの数々。

2位 『ブレインデッド』
ブレインデッド
見所:プール一杯の血糊を使ったラスト30分の展開の怒濤の展開。

1位 『ゾンビ』 
ゾンビ 米国劇場公開版 GEORGE A ROMERO’S DAWN OF THE DEAD ZOMBIE
見所:この映画を見ずゾンビ映画は語れません!全て見所です。

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2006年7月28日 (金)

『死霊のはらわた』この映画を見て!

第85回『死霊のはらわた』
Evildead  今回紹介する映画は80年代を代表するスプラッター映画『死霊のはらわた』です。この映画は『スパイダーマン』シリーズを大ヒットさせたサム・ライミー監督のデビュー作です。低予算で作られた作品ながら、過激なスプラッター描写とサム・ライミー監督の演出の巧みさから今見ても十分楽しめる作品となっています。
 ストーリー:「アッシュ(ち5人の若者は、休日を郊外で過ごそうと、山奥にある貸別荘へとやってくる。そこで、彼らはテープ・レコーダーを発見し、テープを再生する。そのテープには死霊を解き放つ呪文が録音されていた。次々と死霊にとりつかれていくアッシュの仲間。倒すには怪物となった友達の体をバラバラにするしかないないのだが・・・。」
 この映画の見所はずばり過激なスプラッター描写です。死霊にとりつかれた友人たちの豹変した白目の醜い顔、ばらばらに切り刻まれる身体、つぶされる目玉、そしてラストの崩壊する死霊たち。低予算でありながら、ここまで気持ち悪く、それでいて迫力のあるを映像を作り上げたことに驚きます。(もちろん安っぽさはありますがね・・・)ラストはクレーアニメを利用して撮影されたそうですが、その気持ち悪さは最高です!
 またサム・ライミのパワフルなシナリオや演出も見る者を画面に釘付けにします。カメラワークは大胆で面白く、特に死霊の視点で捉えた映像は独特な緊張感と恐怖を観客に与えてくれます。また木が人間を襲うシーンも、独特な恐怖とエロティシズムに満ちています。シナリオも巧みで、死霊になった友達を倒そうと思ったら突然人間に戻ったりと、主人公が死霊に翻弄されるシーンは見応えがあります。そしてラスト。助かったと思った主人公に猛烈なスピードで襲い掛かる死霊のシーンは強烈なインパクトを残す結末でした。
 この映画は続編がさらに2本制作されていますが、だんだんコメディーホラー路線となっていき、1作目にあった恐怖や緊張感は薄れていきました。サム・ライミは今ではすっかりハリウッドのヒットメーカーとなってしまいしたが、私は彼の代表作は『スパイダーマン』ではなく、『死霊のはらわた』だと今でも思っています。ぜひまたパワフルなスプラッター映画を彼には撮ってもらいたいです。
 暑い夏、ぜひこの傑作スプラッター映画を見て、涼んでください。

製作年度 1983年
製作国・地域 アメリカ
上映時間 86分
監督 サム・ライミ 
製作総指揮 ブルース・キャンベル 、ロバート・G・タパート 、サム・ライミ 
脚本 サム・ライミ 
音楽 ジョー・ロ・ドゥカ 
出演 ブルース・キャンベル 、エレン・サンドワイズ 、ベッツィ・ベイカー 、ハル・デルリッチ 、サラ・ヨーク 

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『ドーン・オブ・ザ・デッド』この映画を見て!

第84回『ドーン・オブ・ザ・デッド』
Dawn_of_the_dead  今回紹介する映画はカルト的人気のあるジョージ・A・ロメロの『ゾンビ』をリメイクした『ドーン・オブ・ザ・デッド』です。ロメロの『ゾンビ』は私の大好きな映画でもう何十回と見ていますが、何回見ても飽きることなく見られるゾンビ映画史に残る大傑作です。『ゾンビ』は突然蘇った死者によって埋め尽くされた世界の中で、無人のジョッピングセンターに立てこもった3人の人間の姿を描いた作品ですが、トム・サービニによる生々しい残酷描写とロメロ監督の人間に対するシニカルな視点、そしてショッピングセンターに立てこもるという設定がとても魅力的な作品でした。3年前に『ゾンビ』をリメイクすると聞いたとき、私はあの名作をいまさらどうリメイクするのか興味と不安を感じたものでした。映画が公開されるとすぐに劇場に見に行ったのですが、見終わった後の印象としては予想以上に面白い作品に仕上がっていると思いました。確かにロメロの『ゾンビ』に比べるとイマイチなのは仕方ないとしても、最近公開されたゾンビ映画の中ではダントツの面白さでした。
  リメイク版はショッピングセンターに立てこもるという設定を除いて、ストーリーは全く違うものに改変されています。ロメロ版は状況説明や人間関係に重点を置きゆっくりと話しが進行していくのですが、リメイク版は人間関係はあっさりと描き、テンポ良く話しが進んでいきます。またロメロ版にあった文明批判や人間に対するシニカルな視点はほとんどなく、痛快なサバイバルアクションとして一気に最後まで見させてくれます。
 ゾンビ映画ファンの間では走って襲ってくるゾンビという設定に賛否両論がありましたが、私としては走って襲ってくるのもアリかなと思いました。この映画では走ってくるゾンビという設定がロメロ版にはない緊張感を出していたと思います。ただあんな足の速いゾンビだと、かつてのゾンビにあった何とか逃げられるのではないかという余裕が人間にもてないですよね。
 私がリメイク版で特に気に入ったのは、オープニングの10分間とラストの装甲バスによる脱出シーンです。オープニングは主人公の看護師アナが突然ゾンビに襲われ街から脱出するまでを描いているのですが、突然ゾンビによって街が混乱に陥った状況がリアルに表現されていたと思います。またラストの装甲バスによる脱出シーンは圧倒的なゾンビの数による終末観と絶望感が伝わってきました。またラストのバッドエンディングもゾンビ映画ならではの結末といった感じで良かったです。
 この映画で残念だったのは残酷描写と中盤のストーリです。ゾンビ映画にも関わらず、カニバリズムのシーンがほとんどないのはもう一つでした。(その分、誰でも見られる作品になっていますが・・・)また中盤に出てくる登場人物が多く、主人公たちに感情移入ができないところがありました。もう少し登場人物を減らして、何人かに焦点を絞ったほうが、後半もっと盛りあがったと思います。あと、ラストの犬を助けに女性がガンショップに行く展開は強引というか無理を感じてしまいました。
 この映画はロメロの『ゾンビ』と別物だと思ってみれば、かなり楽しめる作品です。人間ドラマはいまいちですが、サバイバルアクションホラーとして見れば、手に汗握る2時間をすごすことができますよ。

製作年度 2004年
製作国・地域 アメリカ
上映時間 98分
監督 ザック・スナイダー 
製作総指揮 アーミアン・バーンスタイン 、トーマス・A・ブリス 、デニス・E・ジョーンズ 
脚本 ジェームズ・ガン 
音楽 タイラー・ベイツ 
出演 サラ・ポーリー 、ヴィング・レイムス 、ジェイク・ウェバー 、メキー・ファイファー 、タイ・バーレル

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2006年6月 4日 (日)

『28日後』この映画を見て!

第72回『28日後』
28日後... 特別編 今回紹介する映画は『トレインスポッテイング』で有名なダニー・ボイル監督が制作した世紀末ホラー映画『28日後』です。この映画はウィルスによって崩壊した文明社会の中で生き残った人たちの姿を捉えた作品ですが、恐怖と美しいに満ちた映像とリアルなストーリー展開がとても印象的な作品です。
 ストーリー:「怒りを抑制する薬を開発中のとある霊長類研究所。ある夜、精神を冒し即効性の怒りを発するウィルスに感染している実験用チンパンジーが、侵入した動物愛護活動家たちによって解放されてしまう。その直後、活動家の一人がチンパンジーに噛まれて豹変、仲間に襲い掛かる…。28日後。交通事故で昏睡状態に陥っていたメッセンジャーのジムは、ロンドン市内の病院の集中治療室で意識を取り戻す。ベッドから起き廊下をさまようジムだったが、院内にはまったく人の気配がなかった。28日間で広まったウイルスによって感染者は凶暴化し、世界は崩壊の危機に瀕していた。ジムは、感染者の攻撃をかいくぐりながら、わずかに残された非感染者とともに安全な場所を目指すが・・・。
 この映画を見たとき一番印象的だったのは走って襲ってくる感染者たちでした。昔のゾンビ映画などはノロノロした動作で襲ってくるので、まだ逃げれる余裕があったのですが、全力疾走で人間を襲ってこられると逃げ切るのも大変で怖いですね。また前半の誰もいないロンドンの街並みも印象的でした。人の気配が全く感じられない街を一人さまよう主人公の姿は見ていて、絶望感と不安を感じました。人によって作られた街から人ほとんどいなくなるということほど、孤独と恐怖を感じさせるものはないですよね。
 また後半の人間の敵は結局人間という救いのない展開もこの手の映画ではありがちですが、個人的には面白かったです。おそらく監督は感染の恐怖というより、人間の中に潜む暴力性や怒りというものを描きたかったのだと思います。しかし、その分後半はストーリーが尻すぼみになり、感染者の襲撃シーンが少なかったのが残念ですが・・・。
 私は昔からジョージ・A・ロメロの『ゾンビ』『死霊のえじき』が大好きなのですが、『28日後』は随所にロメロのゾンビ映画の影響が感じられました。荒廃した街、無人のスーパーマーケットでの買い物、軍人の愚かさとロメロのゾンビ映画を彷彿させるシーンが随所に見られ、ジョージ・A・ロメロ監督の影響の大きさを改めて思いました。
 この映画はダニーボイルらしく、この手の映画にしては映像・音楽共に美しいです。デジタルビデオによって撮影された映像は生々しさと独特な美しさがあります。また音楽も途中で挿入される「アヴェ・マリア」の曲もとても印象的でした。
 ちなみにこの映画はエンディングが何種類も存在しており、DVDには劇場公開された希望に満ちたエンディング以外に、3つのエンディングが入っています。劇場公開されたエンディングとはまた味わいの違うエンディングなので、興味のある人はぜひ購入するかレンタルするかして見てください。ちなみに私は劇場公開されたエンディングが一番好きです。
 この映画はホラー映画でありますが、そんなに怖くありませんし、追い詰められた人間の心理や業を描いたドラマとして見ても十分楽しめる作品となっています。ストーリー展開や設定の詰めの甘さなどあり、決して傑作とまでは言えませんが、見て損はない作品だと思います。

製作年度 2002年
製作国・地域 イギリス/アメリカ/オランダ
上映時間 114分
監督 ダニー・ボイル 
製作総指揮 グレッグ・カプラン 、サイモン・ファロン 
脚本 アレックス・ガーランド 
音楽 ジョン・マーフィ 
出演 キリアン・マーフィ 、ナオミ・ハリス 、クリストファー・エクルストン 、ミーガン・バーンズ 、ブレンダン・グリーソン

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2006年2月13日 (月)

『ショーン・オブ・ザ・デッド』この映画を見て!

第30回『ショーン・オブ・ザ・デッド』
こんな人にお奨め!「ロメロの『ゾンビ』が好きな人、最近のゾンビ映画が物足りない人ショーン・オブ・ザ・デッド
今回紹介する映画は日本では劇場未公開の傑作ゾンビ映画です。この映画はゾンビ映画好きの私にとっては久しぶりの当たりのゾンビ映画でした。
 ここ何年かゾンビ映画ブームで『バイオハザード』『ドーン・オブ・ザ・デッド』『ランド・オブ・ザ・デッド』など数々のゾンビ映画が公開されましたがどれももう一つでした。その理由として、ゾンビ映画に新しい要素を盛り込もうとしたところにあると思います。ゾンビを走らせたり、知能付けさせたりとしたせいで、ゾンビの魅力が逆に半減してるような気がします。ゾンビはやはり何考えているのか分からず、ゆっくり歩いて、人を襲わないと怖くありませんよね。
そんな中、『ショーン・オブ・ザ・デッド』は久しぶりに正当派のゾンビ映画でした。
 この映画は正統派のゾンビ映画なのですが、基本的にコメディタッチで話しが進んでいくので、怖くはありません。むしろ主人公たちのマイペースさに笑ってしまうくらいです。それでいてゾンビ映画のツボをきちんと押さえており、昔からのゾンビ映画ファンも満足させる出来となっています。もちろんゴアシーンも手を抜かずハードに描写されています。
 ストーリー「ロンドン郊外に住むショーンは彼女がいるにもかかわらず、いつもまったりと脳天気に暮らしていた。ショーンの楽しみは親友のエドとゲームをしたりパブに入り浸ること。そんなある日、ショーンは彼女のリズにあきれられてふられてしまう。何とか彼女とよりをもどしたいショーンだったが、上手くいかずパブでエドと酒を飲んで憂さを晴らしていた。そんな頃、ロンドン各地で死体が蘇り、人を襲う事件が発生。街中がゾンビに覆いつくされようとしていた。しかし、そんなこと全く気づかないショーンとエド。だが彼らもゾンビの襲撃を受け、ようやく事態を知り、家族や恋人の救出に向かうが・・・。」
 この映画はとてもまったりと話しが進んでいきます。ゾンビが街を徘徊していてもなかなか気づかず、襲われてもレコードを投げて退治しようとする姿は見ていて滑稽で笑えます。でもそれでいて、妙にリアリティも感じたりします。実際にもし街にゾンビが溢れてても、多くの人は案外この主人公のような行動を取ったりするのではと思います。世界が危機に陥っているのに、主人公2人がそんなこと全く意に介せずマイペースに行動するところがこの映画の魅力の一つであることは間違いありません。
 ゾンビとの攻防シーンも緊張感漂いながら、どこか抜けている登場人物たちの姿に笑えます。レコードを投げてゾンビを追い払うシーンで、いちいち投げていいレコードか確認するシーンは笑えました。またゾンビのまねをして、ゾンビの中を通り抜けようとしたりするシーンも最高です。また逃げ込んだ先がいつも通っていたパブという設定は、主人公たちの脳天気さがよく表れていて面白かったです。映画全編イギリスらしい皮肉とウエットに富んだユーモアの連続で、見ていてくすくす笑えます。
 それでいて、後半ドラマとしてもきちんと盛り上がりどころがあり、ぐっと胸に来るシーンもあります。ラストはゾンビ映画のセオリーに反してハッピーエンドなのですが、この終わり方が変にリアルでもあり、ユーモアにも富んでいて傑作でした。
 随所に往年のゾンビ映画のオマージュもあり、昔からのゾンビ映画ファンはにたにた笑えるシーンも多数あります。また音楽の選曲がよく、クィーンの曲がとても効果的に使われています。特にラストの歌はこの映画のオチにとても合っていて良かったです。
 この映画が劇場未公開なのはもったいないくらいです。ぜひ皆さんもレンタルでもDVD買ってもどちらでもいいので、この傑作ゾンビ映画を見てみてください。

製作年度 2004年
製作国・地域 イギリス
上映時間 100分
監督 エドガー・ライト 
製作総指揮 ティム・ビーヴァン 、エリック・フェルナー 、アリソン・オーウェン 、ナターシャ・ワートン 、ジェームズ・ウィルソン[製作] 
脚本 サイモン・ペッグ 、エドガー・ライト 
音楽 ダン・マッドフォード 、ピート・ウッドヘッド 
出演 サイモン・ペッグ 、ケイト・アシュフィールド 、ニック・フロスト 、ディラン・モーラン 、ルーシー・デイヴィス 

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2006年1月 9日 (月)

「ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド」この映画を見て!

第25回「ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド」
見所:ゾンビに囲まれた家で繰り広げられるサバイバルnotd

 今まで「ゾンビ」「死霊のえじき」「ランド・オブ・ザ・デッド」とジョージ・A・ロメロが監督したゾンビ映画を紹介してきましたが、今回は記念すべき彼が初めて監督したゾンビ映画を紹介したいと思います。
 ストーリー:「墓参りに来ていた兄妹のバーバラとジョニー。突然ゾンビの襲われ、兄はやられてしまう。バーバラは何とかゾンビの手を逃れ、一軒家に逃げ込む。しかし、いつの間にか家の周りはゾンビに取り囲まれていた。そこに現れる黒人のトラック運転手のベン。テレビではアメリカ中で死者が蘇っていることが報道されている。さらに逃げ込んでくるカップルにずっと地下の倉庫に潜んでいた家族。彼らはゾンビから家を守り、脱出して街に向かうための作戦を練るが・・。」
 この映画はジョージ・A・ロメロを中心とした映画仲間が週末に集まり、低予算で撮影されています。映画のほとんどは町はずれにある一軒家で撮影されており、ゾンビの特殊メイクも対したことなく、確かに見る限り、あまり予算はかかっていなさそうです。しかし、一軒家に立てこもった人間たちの緊迫したドラマやゾンビ対人間の壮絶な闘いなど見応えは充分です。そして衝撃的な結末。この結末の後味の重さは格別です。アメリカではドライブ・イン・シアターで公開されて、じわじわと人気を獲得していったそうです。
 ストーリー自体はとてもシンプルなものですが、終始緊迫した展開が続きます。周囲から隔絶された状況に置かれた中で、どう生き残っていくか。ゾンビとの闘いはもちろんのこと、人間ドラマとして見応えがあります。特に地下に立てこもった家族の父親と1階でゾンビと闘うベンとの確執は見ている側をいらいらさせます。
 ゾンビですが、最初墓場で出てくるゾンビの印象が強烈です。足も速いし、石を使って窓も割ろうとするしで、他のゾンビに比べて力を持っています。また後半出てくるゾンビ化
した子どもはかなり衝撃的です。あの当時にこの映画を見た人にはかなりショックを受けただろう描写があります。
(ここからネタバレあり)
 ラストは何とか夜が明け、生き残った人が窓の外を覗くのですが、ゾンビに間違われて殺されるという何とも身も蓋もない結末です。ゾンビ狩りを楽しむ人間の姿は見ていて、ゾンビより嫌悪感を抱きます。ゾンビと人間どちらが本当に恐ろしいのか分からないラストです。この映画はちょうど国外的にはベトナム戦争の真っ直中国内では公民権運動が盛んだった時代に制作されており、その時代性を見事に反映した作りとなっています。 nold

この映画は90年代に1度リメイクされています。監督は「ゾンビ」の特殊メイクを担当したトム・サヴィーニが担当しており、途中までオリジナルとほとんど変わらない展開となっています。しかし、後半の展開が大きく変わっており、オリジナルでは叫ぶだけだった女性バーバラが活躍する展開となっております。ラストもオリジナルとは違っていますが、後味の悪さでは変わりません。人間の醜さがよく出たラストとなっています。90年代にリメイクということで特殊メイクなどは見応えがあります。

notd3 あとDVDで「ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド:最終版」というのが発売されています。こちらは15分の追加シーンがありますが、はっきり言って蛇足以外の何者でもありません。ロメロも直接関わってなく、オリジナルの冒涜としか思えません。最初に墓場で出てきたゾンビが実は犯罪者であったという説明シーンと、牧師が説教をするシーンなどが追加されています。

ゾンビ映画にしては気持ち悪いシーンも少なく、サスペンスとしても一級品です。是非、皆さんもゾンビ映画の古典とも呼ばれるこの作品を見てください!

製作年度 1968年
製作国・地域 アメリカ
上映時間 96分
監督 ジョージ・A・ロメロ 
脚本 ジョン・A・ルッソ 
出演 ジュディス・オディア 、デュアン・ジョーンズ 、ラッセル・ストライナー 、カール・ハードマン 、キース・ウェイン 

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2006年1月 8日 (日)

この映画を見て!「死霊のえじき」

第24回「死霊のえじき」
見所:絶望的な終末世界、ラスト20分の地獄絵図、そしてパブの敬礼
eziki 以前に、このブログで「ゾンビ」「ランド・オブ・ザ・デッド」とジョージ・A・ロメロが監督したゾンビ映画を紹介してきましたが、今回はその3作目に当たる「死霊のえじき」を紹介します。
 ストーリー:「地球上のほとんどがゾンビによって埋め尽くされ、生き残った人間は終末の時をじりじりと迎えていた。かつて核兵器庫として使われていた軍事施設に立てこもる科学者や軍人たち。科学者はゾンビの謎を解き明かし、人間が生き残る道を探そうと研究をしている。しかし科学者たちと軍人たちはその方向性の違いから、常に対立していた。そして両者の対立が極限に達したとき、ゾンビが施設になだれ込み、悪夢のような地獄絵図が展開される。」
 この映画の最大の見所は精緻を極めたスプラッターシーンです。4部作の中、一番過激で生々しいです。ラストの20分は地獄絵図のようなシーンが延々と続くので、苦手な人は正視できないと思います。
 またパブという知能をもったゾンビが、この映画では登場するのですが、とても印象を残すゾンビキャラです。ラストでは人間よりも人間らしさが感じられ、皮肉な感じを受けます。
 ジョージ・A・ロメロが制作されるゾンビ映画は常にその時代の政治的・社会的風潮が反映されています。「死霊のえじき」では80年代の米ソ冷戦における軍事大国主義が反映された内容となっています。この映画は中盤、科学者と軍人たちが対立していがみ合うシーンがずっと続きます。軍人たちの傲慢な姿は見ていて、ゾンビの姿を見るより、気分が悪くなります。地上から多くの人間たちが消滅した後でも、生き残った数少ない人間同士がいがみ合う姿を見ると、絶望的気分に陥ります。ラスト、核を保管していた軍事施設で人間が自滅していく姿には哀れさと自業自得を感じてしまいます。
 この映画は当初の企画・脚本ではかなりの大作になる予定だったそうですが、予算が獲得できず、脚本を変更してかなりスケールダウンして制作されました。(死霊のえじき当初のシナリオに関する情報は「ゾンビ手帖」というサイトで詳細に紹介されています。そちらでオリジナルの脚本も閲覧できます。是非興味のある方は訪れてみてください。)当初のシナリオのままで制作されたら、かなり印象の違う映画になったと思います。ジャングルや村でゾンビと闘うプロットなども用意されおり、実際にセットの準備などもしていたようです。そのため、この映画は本編のほとんどが地下の軍事施設内のシーンで構成されており、とても閉塞感が漂う映画となっています。
 この映画は万人にお薦めはできませんがホラー好きな方は是非見てください!ちなみにビデオで最終版と完全版と出ていますが、最終版は重要なスプラッターシーンをカットしまくっているので見ない方が良いです。
 最近DVDでリリースされた死霊のえじき(完全版)は高画質・高音質な本編にメイキングやインタビュー、オリジナル脚本も特典で付いておりお薦めです。

製作年度 1985年
製作国・地域 アメリカ
上映時間 102分
監督 ジョージ・A・ロメロ 
製作総指揮 サラ・M・ハッサネン 
脚本 ジョージ・A・ロメロ 
音楽 ジョン・ハリソン 
出演 ロリ・カーディル 、テリー・アレクサンダー 、ジョセフ・ピラトー 、リチャード・リバティー 、アントン・ディレオ 

 
 

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2006年1月 2日 (月)

この映画を見て!「ゾンビ」(139分・完全版)

第21回「ゾンビ」(139分・ディレクターズ・カット版
見所:スーパーマーケットでの攻防戦とまったりとした終末観
ゾンビ 米国劇場公開版 GEORGE A ROMERO’S DAWN OF THE DEAD ZOMBIE

今回紹介する映画「ゾンビ」は私の人生において多大な影響を与えた映画です。以前、同じ監督によって制作された「ランド・オブ・ザ・デッド」を紹介しましたが、今回紹介する「ゾンビ」は彼の最高傑作です。この映画に始めて出会ったのは中学1年生の時。ホラー映画大好きだった私としては、「ゾンビ」という映画がすごいということは聞いていたので、どんなにすごい映画かレンタルして見てみることにしました。その時借りたのはアメリカ公開版だったのですが、見終わった後、衝撃を受けて言葉が出ませんでした。ゾンビが出てくる映画だけあって、グロイシーンが多くあるのですが、そのシーンに衝撃を受けたというより、その世界観に衝撃を受けました。ゾンビによって人間社会が混乱のうちに徐々に崩壊していく様子。倫理と秩序を失った人間たちが暴力と欲望むき出しで生きる姿。死んでも生きているときの記憶からかショッピングセンターに集まってくるゾンビ。ゾンビによって人間が滅ぶのでなく、人間同士が争い自滅していく姿に、虚しさと絶望を激しく感じました。
 ストーリー:「突然蘇った死者に為す術のない人間たち。じりじりとゾンビたちによって人間の生きる場所は包囲されていた。そんな中、放送局に勤めるフランシーンとスティーブンはヘリに乗ってゾンビのいない地域を目指そうとする。フランシーンはスティーブンとの子を妊娠していた。そこにSWATで働くピーターとロジャーも加わる。郊外では悠長に人間によるゾンビ狩りが行われているが、確実にゾンビによって人間は追いつめられていた。彼らは無人のショッピング・モールを見つけて、そこに居座ろうとする。店内のゾンビを死闘の末に追い払い、溢れかえる物の中で生活する。物質的には豊かだが、空虚さと絶望感漂う生活。そんな中、暴走族がショッピングモールに乱入してきて、モール内はスティーブンたち・暴走族・ゾンビの三つ巴の闘いになる。」
 この映画の最大の魅力はショッピング・モールを主人公たちが占拠するシーンです。始めて、この映画を見たときにモールを好き勝手に使って生活する彼らに憧れたものです。そして、自分もゾンビに襲われたら近くのスーパーかデパートに逃げこもうと思ったものです。この映画を見てから、ショッピング・モールに行くたびに、ゾンビに襲われたとき、どうこのモールまで逃げ、店内を占拠するかシュミレーションして遊ぶ癖があります。
 この映画ではショッピングセンターを先進国の消費快楽主義の象徴として映し出しています。死んでも生きているときの癖からショッピングモールに集まってくるゾンビ、世界が崩壊しようとしているにもかかわらず、モールに立てこもり消費を謳歌する主人公たち、通貨が意味をなさなくなっても、金品を求める暴走族。そこにはゾンビも人間も大差なく、むしろ人間の方が醜く感じてしまいます。現代社会で、メディアや企業に煽られて、強迫的にものを買うことを迫られて生きている私たちは、もしかしたらゾンビと変わらない存在なのではないかとこの映画を見るたびに思います。
 またこの映画を見るたびに「人間」と「非人間」との境界線は何かということを考えてしまいます。ゾンビになった人間を物のように扱い虐殺していく姿。仲間がゾンビに変わり果てようとして、殺すべきかどうか躊躇する姿。人間とは何かについていつも考えてしまいます。もしかしたら人間は「仲間」と「非仲間」という境界線で「人間」と「非人間」と分けているのではないかと思います。かつてのドイツでのユダヤ人虐殺。アメリカの大量破壊兵器での虐殺。人間は歴史上、仲間以外は物のように扱ってきたことが何回もあります。この映画で人間がゾンビを虐殺するシーンを見るたびに、現実で人間が人間を虐殺してきた事実を思い出してしまいます。
 (ここからネタバレがあります)
 私はこの映画を見たとき、ラストシーンにとても感銘を受けました。4人の登場人物の内、白人男性は全員死亡して、妊娠した女性と黒人のSWATだけが生き残るシーンはとても印象的でした。アメリカ社会の支配する側にいたマイノリティーは死に、社会の支配される側にいたマジョリティーだけが生き残る姿は何とも皮肉でした。もちろん、この映画のラストもハッピーエンドなのではなく、むしろ絶望感の方が大きいです。ただ絶望的な状況でも少しでも生き延びる方に可能性をかけた姿に感動しました。
ドーン・オブ・ザ・デッド ディレクターズ・カット プレミアム・エディション 2004年に「ゾンビ」のリメイク「ドーン・オブ・ザ・デッド」が公開されました。ストーリーはショッピングモールに立てこもる所以外、大幅に違います。映像的には面白いところが見られましたが、全体的に単なるホラーアクション映画になっており、物足りませんでした。(ただ「ゾンビ」と別物と割り切ればこの映画、爽快で面白いです。)その原因としてはゾンビ対人間という構図で話しが進められて、「ゾンビ」にあった人間対人間の構図や人間に対する皮肉や絶望感があまり描かれなかったところにあると思います。またショッピングモールに立てこもる設定があまり活かされてなかったのも残念でした。

 「ゾンビ」の魅力は人間性を剥奪する人体破壊シーン、じわじわと迫ってくる終末と人間同士の自滅していく姿、政治的・思想的メッセージが込められたストーリーにあります。是非、皆さまもゾンビワールドに足を踏み入れてもらいたいなと思います。

製作年度 1978年
製作国・地域 アメリカ/イタリア
上映時間 139分(ジョージ・A・ロメロ完全版)
監督 ジョージ・A・ロメロ 
脚本 ジョージ・A・ロメロ 
音楽 ゴブリン 、ダリオ・アルジェント 
出演 デヴィッド・エムゲ 、ケン・フォリー 、スコット・H・ライニガー 、ゲイラン・ロス 、トム・サヴィーニ 

「ゾンビ」はさまざまなバージョンが存在します。現在、日本で発売されているDVDはアメリカ公開版(127分)です。他にもプロデューサーのダリオ・アンジェルトが編集と音楽を変えたバージョン(119分)とジョージ・A・ロメロが編集したバージョン(139分)などがあります。これらのバージョンは現在輸入するか、レンタルビデオ店の在庫でしか見れません。再販をお願いします!
ちなみに私は今は廃盤のディレクターズ・カット版DVDを所有しています。

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2005年12月25日 (日)

この映画を見て!「ランド・オブ・ザ・デッド」

第14回 「ランド・オブ・ザ・デッド」
見所:久しぶりの正統派ゾンビ映画!現在の病めるアメリカの社会を揶揄した内容

ランド・オブ・ザ・デッド ディレクターズ・カット

この映画はゾンビ映画の神様といわれているジョージ・A・ロメロ監督が20年ぶりに撮った新作のゾンビ映画です。この監督は60年代に「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」という低予算のゾンビ映画を作り、熱狂的なファンを多く生みました。ロメロはこの映画でゾンビの新たなる定義を生み出し、この後作られるゾンビ映画・ゾンビゲームに多大な影響を与えました。彼の作った定義は①頭を破壊したら死ぬ②ゾンビに噛まれたらゾンビになる③走らない、この3つです。彼はその後、70年代に「ゾンビ」、80年代に「死霊のえじき」という傑作ゾンビ映画を数々生み出しました。この監督のゾンビ映画の特徴として、徹底した人体破壊シーン、人間の内輪もめによる自滅、その当時の社会情勢への批判などがあります。どの作品も過激なスプラッターシーンがあります。特に「死霊のえじき」はすざましいの一言です。この背景にはベトナム戦争の影響も強いようです。またどの作品もゾンビによって人間が自滅するのでなく、人間同士が最後までお互いの欲望で足を引っ張り合い自滅していきます。結局、人間の敵は敵という結末です。そして、毎回その当時の社会情勢を反映したような設定やシナリオになっており、それが彼の作品の質を深めています。1作目はベトナム戦争・黒人解放運動。2作目は消費文明批判。3作目は軍事大国批判という風にアメリカの病める部分を毎回取り上げて、風刺や批判をしています。3作目から、しばらくゾンビ映画を作っていなかったのですが、満を持して、今年新作が劇場で公開されました。ここ最近、「バイオハザード」、「28日後」、「ドーン・オブ・ザ・デッド」とたくさんのゾンビ映画が公開されていましたが、どれももう一つといったものが多かったので、ついに真打ち登場といった感じでした。

 さて、20年ぶりの今回の作品。ロメロらしい作品と言えばロメロらしい作品ですし、今までのロメロが制作したゾンビ映画と違うと言えば違う作品でした。今までのゾンビ映画のような終末観や閉塞感は感じられず、ある意味、ポジティブで開放的な作品です。またゾンビもある程度、知能を持ち、道具も使え、集団で行動できるくらい進化しています。それはある意味、ゾンビと人間との境界線が近くなってきており、ゾンビ側にも感情移入できるようになっています。(ここが評価の分かれ目になると思います。)グロイシーンは多々ありますが、ホラー映画としての怖さはあまりなく、アクション中心で現在のアメリカ社会を風刺した作品に仕上がっています。

 ストーリー:「全世界がゾンビによって支配された時代。富裕層は川に囲まれた町にフェンスをはり、豊かな生活をおくっている。しかし、その裏で町の片隅に貧困層は追い込まれ、富裕層が雇った兵士たちが、ゾンビがうろつく外の世界から物資を町に届けている。しかし、ある時兵士の一部が武器を奪い、町のリーダーに金を要求する。それを阻止しようと、別の兵士を送り込み、テロを押さえ込もうとする。しかしゾンビが町に進入してパニックが起こる。」

 今回の作品は今まで一番政治的メッセージの強い作品であります。現在、アメリカで進んでいる富裕層と貧困層の2極化。アメリカの富裕層を守るためのアメリカ兵やアメリカに雇われた貧困国の兵士やテロリストたち。そして、アメリカという大国を維持するためにこき使われる発展途上の国の人々。この現在のアメリカの縮図を、高層ビルに住む富裕層、スラム街に住む貧困層、富裕層に利用される兵士やテロリスト、そして街の外のゾンビたちという関係の中で描いています。この映画はアメリカの繁栄の影に潜む、二極化の問題、アメリカと発展途上国の問題、アメリカとテロリズムの関係について鋭い問題提起をしています。途中で人間がゾンビを虐殺?するシーンがあるのですが、それは現実にアメリカがイラクで行ってきた無差別攻撃と重なるものがあります。ある意味、アメリカにとって、アメリカの利害や正義を邪魔する人間たちはゾンビのような存在にすぎないということを暗喩しているような気がして、別の意味で肌寒く感じるシーンでした。
 またこの映画の冒頭、主人公の男性が「人間もゾンビもそう変わりない」ようなセリフを言うシーンがあり印象的です。知恵をつけ仲間を守るゾンビと欲望に支配、自分のことしか考えない人間、どちらが人間らしいのかよく分かりません。映画の途中で登場人物の一人がゾンビに噛まれ、自殺するか、ゾンビになるか選択を迫られ「ゾンビになるのも悪くない」というセリフをいうシーンがあります。とても印象的なセリフで、人間性とは何か考えてしまいました。この映画でロメロがあえてゾンビを人間に近づけたのは、人間らしさとは一体何かを問題提起するためだったのかもしれません。
 彼によるとゾンビとはブルーカラー(工場労働者)階級の象徴だそうです。仕事もエリートによって作られたシステムのより多くが画一化されロボットのように働き、生活スタイルもマスコミや企業に踊らされ、自分らしさを見失い行き場を探す私たち。自分の欲望を満たすことばかり追求する私たち。ある意味、もうこの世界はゾンビに満ちているのかもしれません。

私はこの映画とても楽しかったですが、あっさり終わったのが少し残念。変にこけおどしな演出や音響は彼の映画らしくなくて、いらなかったなあ。あとテンポが良すぎて、ロメロらしいまったりした閉塞感が感じられなかったり、人間関係も、もっと描いてもよかったかなあと思います。やはり彼の最高傑作は「ゾンビ」ですね。(ゾンビは後日じっくり紹介します。)

この映画、とても奥深い内容を持ちつつ、気軽に?見られるゾンビ映画です。是非見てみてください。

公式サイト:http://www.lotd-movie.jp/top.html

製作年度 2005年
製作国・地域 アメリカ/カナダ/フランス
上映時間 93分 (DVD・ビデオは97分)
監督 ジョージ・A・ロメロ 
製作総指揮 スティーヴ・バーネット 、デニス・E・ジョーンズ 
脚本 ジョージ・A・ロメロ 
音楽 ラインホルト・ハイル 、ジョニー・クリメック 
出演 サイモン・ベイカー 、デニス・ホッパー 、アーシア・アルジェント 、ロバート・ジョイ 、ジョン・レグイザモ 

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2005年9月23日 (金)

「サンゲリア」この映画を見て!

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第3回「サンゲリア」

私は中学生の時にジョージ・A・ロメロの「ゾンビ」(US公開版)に出会い、ゾンビ映画の虜となりました。(「ゾンビ」については後日詳しく紹介します。)それから「バタリアン」「ブレインデッド」「ショーン・オブ・ザ・デッド」といろいろなゾンビ映画を見えてきたわけですが、なぜかゾンビ映画の代表作と言われる「サンゲリア」だけ見逃してきました。そして遂に「サンゲリア」を見ることができました。
 この映画を見ての第一印象は、正直期待が大きかった分、肩透かしでした。緊張感のない展開のストーリー、力が入っていないけど変に耳につく音楽、グロいけどいまいち緊迫感のないゾンビとの死闘。私の脳内で『サンゲリア』=「すごいゾンビ映画」というイメージが先行していたので、すこしがっかりしました。「ゾンビ」と同レベルの映画を期待していましたが、やはり『ゾンビ』は別格ですね。
 ただ『サンゲリア』つまらないかというとそんなことはなく、見所はたくさんです。
 前半、意味もなく水着なしで、おっぱい丸出しで泳ぐヒロイン。ある意味、びっくりしました。そんなヒロインが海で鮫に襲われそうになった時に登場する水中ゾンビ。鮫と格闘を始めるですが、これにはびっくりしました。いったいこの水中ゾンビはどこからやってきたのか分かりませんが鮫と闘うとは・・・。(本物の鮫とゾンビが格闘してるのですが、これ演じる人は大変だったでしょうね。)このシーンでは鮫とゾンビどちらを応援したらいいのか困惑しましたが、インパクトは大のシーンです。
 続いて目に木が突き刺さるシーン。ここは気合の入ったグロイシーンです。本当に見ていて目が痛くなりました。
 そして、墓場から出てくる虫まみれゾンビ。最高に汚くて気持ち悪いゾンビです。ただあそこまで腐っていたら、もう動けないのではと思ったりしましたが、それは考えてはいけませんね。
 最後の病院での死闘もある意味すごかったです。主人公たちが逃げ込んだ病院にゾンビがたくさん襲いかかるのですが、なんかまったりとした展開。映像はグロイのですが、主人公たちに切迫感がないんですよね。
 ラストは衝撃的なシーンのはずが、予算不足かあれでは・・。
 この映画はとにかく汚くてグロイゾンビのメイクが一番の見所です。さすがイタリア映画といった感じの残酷描写のオンパレード。これに関しては『ゾンビ』と双璧をなしています。ただ正直ストーリーはいまいちでした。 突っ込みどころも満載ですが、ゾンビ好きは見て損はないと思います。

製作年度 1979
製作国・地域 イタリア/アメリカ
上映時間 91
監督 ルチオ・フルチ
脚本 エリザ・ブリガンティ 
音楽 ファビオ・フリッツィ 、ジョルジョ・トゥッチ
出演 イアン・マカロック 、ティサ・ファロー 、リチャード・ジョンソン 、オルガ・カルラトス 、アウレッタ・ゲイ 

関連サイト:http://www.jvd.ne.jp/hr/zombie2.htm

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