ゾンビ映画

『サバイバル・オブ・ザ・デッド』映画鑑賞日記

Photo  ゾンビ映画の巨匠ジョージ・A・ロメロ監督が前作『ダイアリー・オブ・ザ・デッド』に登場した脇役を主役に据えて製作した続編とも言える作品『サバイバル・オブ・ザ・デッド』。本作品はグレゴリー・ペック主演の傑作西部劇『大いなる西部』をモチーフにして、西部劇タッチのゾンビ映画に仕上がっています。

 本作品は前作で主人公たちの物資を略奪した州兵たちが主人公です。ゾンビを倒しながら生き延びていた主人公たちがゾンビのいない安全な島があると聞き、島を目指します。しかし、たどり着いた島は2つの一家がゾンビをめぐって抗争を繰り広げており、主人公たちも人間たちの不毛な抗争に巻き込まれていきます。 

 本作品は人間とゾンビとの激しい攻防戦を期待して見ると肩透かしを喰らいます。本作品はゾンビのいる世界を舞台にしていますが人間同士の愚かな争いに対して警鐘を鳴らす社会派作品です。人間世界が崩壊に近づいていても、主義思想の違いや欲望のために争い続け自滅していく人間たちの姿をシニカルに描いています。そういう意味ではロメロ監督らしいゾンビ映画です。
 また、西部劇をモチーフにしていることもあり、馬に乗っているゾンビが登場したり、銃による決闘シーンなども盛り込まれています。そういう意味ではクラシカルな仕上がりになっています。

 もちろんゾンビ映画に欠かせない残酷描写も満載ですし、『死霊のえじき』でも描かれていたゾンビを飼いならす描写もあります。個人的にはロメロ監督らしいゾンビ映画だったので最後まで飽きることなく見ることが出来ました。

 ただ、残念な点もいくつかあり、低予算のためかスケールが小さく、ゾンビの数も少なすぎます。セットや演出も所々チープな印象を受けました。また世界の崩壊を描いているにもかかわらず、終末感や緊張感といったものがあまり伝わってきません。また、ラストの馬をゾンビが食べるシーンは正直どうかと思いました。

 本作品は誰にでもお薦めできる作品とは言いがたいですが、ロメロ監督のゾンビシリーズが好きなら見て損はないと思います。

上映時間 90分
製作国    アメリカ/カナダ
製作年度 2010年
監督:ジョージ・A・ロメロ   
脚本:ジョージ・A・ロメロ   
撮影:アダム・スウィカ   
特殊効果メイクアップ:グレッグ・ニコテロ   
プロダクションデザイン:アーヴ・グレイウォル   
衣装デザイン:    アレックス・カヴァナー   
編集:マイケル・ドハティ   
音楽:ロバート・カーリ   
出演:    アラン・ヴァン・スプラング   
    ケネス・ウェルシュ   
    キャスリーン・マンロー   
    デヴォン・ボスティック   
    リチャード・フィッツパトリック   
    アシーナ・カーカニス   
    ステファーノ・ディマッテオ   
    ジョリス・ジャースキー   
    エリック・ウールフ   
    ジュリアン・リッチングス   
    ウェイン・ロブソン

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『ダイアリー・オブ・ザ・デッド』この映画を見て!

第265回『ダイアリー・オブ・ザ・デッド』
Photo  今回紹介する作品はゾンビ映画の帝王ジョージ・A・ロメロが『ランド・オブ・ザ・デッド』から3年ぶりに放つゾンビ映画『ダイアリー・オブ・ザ・デッド』です。
 本作品は『クローバーフィールド/HAKAISHA』のように主人公の手持ちカメラによる主観映像を中心にドキュメンタリータッチでゾンビの襲撃を描いていきます。

ストーリー:「ジェイソンを始めとする映画学科の学生グループは卒業制作のため、ペンシルヴェニア州の山でホラー映画を撮影していた。その最中、ラジオから死体が人間を襲撃しているというニュースを聞く。ニュースを聞いたジェイソンたちは山を下りたところ、ゾンビが人を襲う光景を目の当たりにする。
 ジェイソンたちは、この惨劇をビデオカメラで記録して伝えようと決意し、絶えず身の危険が迫る状況下で撮影を始める。」

 本作品は劇場公開せずDVD発売のみを予定して低予算で製作されており、映像はこじんまりとしていましたが、ロメロ監督だけあってゾンビの描写や随所に散りばめられた社会風刺など大変見応えがありました。
 本作品は前作『ランド・オブ・ザ・デッド』の続編というより、『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』と同様に現代にゾンビが発生した時の人々の様々な行動を描いています。そういう意味では新シリーズの展開と考えていいのかのしれません。
 主観映像で製作された映画はどれも視点や描写が制限されがちですが、本作品は手持ちカメラで撮影している人が2人いたり、YouTubeなどの動画や監視カメラの映像も盛り込まれ、主人公たちの行動や世界の状況が見ている側に分かりやすいです。
 残酷描写に関しては控えめですが、ゾンビを酸で溶かしたり、自分の顔面に大カマをぶち込み背後のゾンビを倒すなど、オリジナリティ溢れる描写が随所にありました。

 登場人物に関しては主人公たちよりも、いざとなったら冷静に物事に対処するアル中の大学教授と、ダイナマイトでゾンビを吹き飛ばす過激な耳の遠い老人が印象的でした。

 ロメロ監督のゾンビ映画は毎回その時代の社会情勢を反映させた作りになっていますが、今回は技術の進歩による情報化社会に対して警鐘を鳴らす作品となっています。
 デジタルメディアとネットの普及で誰もが多くの情報に触れ、そして自らも情報の発信者になれる時代。そんな時代のモラルの低下や情報操作の危険性、そして冷静な判断力の必要性に関して本作品は観客に問いかけます。
 「カメラで撮っていると人間はすべて傍観者になってしまう。」という映画の中のセリフはとても印象的でした。
 ラストは『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』と同様に人間によるゾンビ狩りのシーンが描かれるのですが、最後の1カット頭部だけになったゾンビの描写は監督が本作品で伝えたかったことを見事に映像で表現しています。

 ロメロ監督は今年新作である『サバイバル・オブ・ザ・デッド』を公開する予定になっています。今度ある島を舞台にゾンビの襲撃から生き延びようとする人間たちを描くそうですが、どんな作品になるのか今から楽しみです。

 本作品は賛否両論ありますが、ゾンビ映画好きの方は押さえておいて損のない作品ですよ! 

上映時間 95分
製作国    アメリカ
製作年度 2008年
監督:    ジョージ・A・ロメロ   
脚本:    ジョージ・A・ロメロ   
撮影:    アダム・スウィカ   
プロダクションデザイン:    ルパート・ラザラス   
衣装デザイン:    アレックス・カヴァナー   
編集:    マイケル・ドハティ   
音楽:    ノーマン・オレンスタイン   
出演:    ミシェル・モーガン   
    ジョシュ・クローズ   
    ショーン・ロバーツ   
    エイミー・ラロンド   
    ジョー・ディニコル   
    スコット・ウェントワース   
    フィリップ・リッチョ    リドリー
    クリス・ヴァイオレット   
    タチアナ・マスラニー   
    ジョージ・A・ロメロ   

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『28週後』この映画を見て!

第244回『28週後』  

28_2  今回紹介する作品は5年前に公開されて世界中でヒットした世紀末パニックホラーの傑作『28日後』の続編『28週後』です。
前作は今年度アカデミー最優秀監督賞を受賞したダニー・ボイルが監督をしていましたが、今回はスペインのフアン・カルロス・フレスナディージョ監督に交代しています。

ストーリー:「感染すると凶暴性になり他の人間に襲いかかる新種ウイルス“RAGE”が猛威をふるったイギリス。ウイルス感染発生から5週後に最後の感染者が死亡して、11週後にアメリカ軍主導でNATO軍が派遣され、ロンドンの再建が始まった。
スペイン旅行中で感染を逃れたタミーとアンディの姉弟も帰国し、父親ドンと久しぶりの再会を果たす。しかし、母のアリスはドンと田舎のコテージに立て籠もっていた時に感染者の襲撃をうけて生死が分からなかった。
母を恋しがる姉弟はこっそり軍の監視区域外の我が家へと向かう。そこで姉弟は何と生き延びていた母親と再会する。しかし、そこにNATO軍がやって来て、姉弟と母は一時的軍の施設に隔離される。
軍の施設で母親はウイルスに感染しながらも発病していないキャリアだと判明。軍医スカーレットはワクチン開発への期待を持つ。
そんな折、ドンが軍の施設に侵入して、アリスと接触して感染して発病してしまう。」

 本作品は個人的に最近見たパニックホラー映画の中ではベスト3に入る面白さと完成度でした。前前作と比べるとスケールやグロさも一段とアップしていますし、ストーリーも終末観漂う絶望的な展開でジョージ・A・ロメロのゾンビ映画が好きな私にはたまりませんでした。(本作品は厳密に言うとゾンビ映画ではありませんが…)

本作品の特長は全編にわたって非情なところです。冒頭から夫が最愛の妻を見捨て一人逃げ出しますし、中盤に夫と妻が再開することで感染が再発・拡大し、主人公の姉弟を助けようとする人たちは次々に死んでいく。ラストも子供たちを救おうとする行為が世界を破滅に導くという皮肉な結末を迎えます。ここまで愛や人間性が否定された救いようのないリアルなストーリーはなかなかお目にかかれません。結局、人間を破滅させるのは人間なんですよね・・・・。

 また、狙撃部隊による無差別攻撃シーンやナパーム弾で市街地を焼き尽くすシーンなど、アメリカ軍のアフガン・イラク侵攻を痛烈に皮肉るシーンが随所に盛り込まれているところも大変印象的でした。

 グロシーンではヘリコプターによる感染者虐殺シーンが一番の見所でした。あと、前作同様に荒廃したロンドンの街の空虚な美しさも見応えがありました。

 ただ、本作品で唯一残念だったのは設定にいくつかご都合主義な点がいくつかあったところです。特に夫が隔離された妻に会うシーンや中盤の軍の対応、そして後半の父が主人公の姉弟を追うシーン等はリアリティに欠けていたような気がします。

 あと、主人公の姉弟にあまり感情移入できないシナリオや演出だったのもマイナスでした。

 いろいろ注文をつけたくなるところもありますが、本作品は近年のパニックホラーの中では間違いなく傑作の部類に入ると思います。家族や恋人と見るような作品では決してありませんが、この手の映画が好きな人なら一度は見て損はないと思います!

上映時間 104分
製作国 イギリス/スペイン
製作年度 2007年
監督: フアン・カルロス・フレスナディージョ 
製作総指揮: ダニー・ボイル 
アレックス・ガーランド 
脚本: フアン・カルロス・フレスナディージョ 
ローワン・ジョフィ 
ヘスス・オルモ 
E・L・ラビニュ 
撮影: エンリケ・シャディアック 
プロダクションデザイン: マーク・ティルデスリー 
衣装デザイン: ジェーン・ペトリ 
編集: クリス・ギル 
音楽: ジョン・マーフィ 
出演: ロバート・カーライル 
ローズ・バーン 
ジェレミー・レナー
ハロルド・ペリノー
キャサリン・マコー
マッキントッシュ・マグルトン 
イモージェン・プーツ
イドリス・エルバ 
アマンダ・ウォーカー
シャヒド・アハメド

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『プラネット・テラー in グラインドハウス』この映画を見て!

第223回『プラネット・テラー in グラインドハウス』
Photo  B級映画を何本か連続して上映するアメリカで流行った映画館“グラインドハウス”。それを現代に甦らせるべく、クエンティン・タランティーノ監督とロバート・ロドリゲス監督が競作した2本立てムービー『グラインドハウス』。
 アメリカでは2本同時公開で上映されたのですが、それ以外の国ではそれぞれ独立した作品として上映されました。
 今回紹介する作品はその内のロドリゲス監督が担当した作品『プラネット・テラー 』です。

ストーリー:「テキサスの田舎町にある軍事基地で科学者と軍が取引しようとしていた生物化学兵器DC2が流出して町中に拡散する。そのガスを浴びた人々は体中の皮膚が腐り始め、次々と凶暴なゾンビへ姿を変えていく。」

 本作品、ゾンビ映画好きの私にとっては最高に面白い作品でした。劇場で公開されていた時は機会なく見逃してしまったのですが、今となっては大変悔やまれます。

 ゾンビ映画好きの私には過去の名作ゾンビ映画に対するオマージュを捧げたシーンが随所にあり、見ていてニヤリとしますし、ゾンビ映画好きが求めるお決まりの展開やスプラッターシーンがこれでもかと繰り広げられるので大変満足します。
 特に私が受けたのは80年代のゾンビ映画のような効果音や音楽と、サンゲリアを彷彿させるタランティーノが登場するシーン、そしてヘリを利用した思わぬゾンビ撃退方法です。
(まあ、厳密に言えば本作品に出るゾンビは正式にはゾンビではなく感染者ですが・・・。)

 また、70年代のグラインドハウスでのB級映画上映を彷彿させるために、わざとフィルムに傷やノイズを入れたり、そして「リール喪失」のテロップを一番いいところで入れるという演出が心憎いです。

 はっきり言って、本作品は見る人を選びます。ストーリーは荒唐無稽でナンセンスですし、エログロ描写も満載です。ホラー映画が苦手な人や映画に感動や格調の高さを求める人には全くもって不向きです。
 逆にホラー映画や下らないB級作品好きの人は本作品を大いに楽しむことが出来るでしょう!

 私が本作品で一番はまったのがDVDのジャケットにもなっている片足がマシンガンの女戦士。映画のクライマックスは彼女の人間離れしたアクションのオンパレードで見ていて思わず拍手してしまいます。

 あとバーベキューソースをめぐる兄弟間のやり取りも見ていて面白く、そのベタな展開の結末に少し感動したりもしました。

 出演している役者も豪華で、ブルース・ウィリスや今となっては懐かしいマイケル・ビーンが登場します!
 また、ジョージ・A・ロメロの『ゾンビ』で特殊メイクを担当したトム・サビーニが登場しているのもゾンビファンとしては嬉しいかぎりです。

 本作品はゾンビ映画好きにとっては外すことの出来ない作品です。15歳以上で興味のある方はぜひご覧ください!

 あと映画の冒頭に「マチェーテ」というフェイクの予告編が流れるのですが、その作品もぜひ見てみたいです! 

上映時間 105分
製作国 アメリカ
製作年 2007年
監督: ロバート・ロドリゲス 
脚本: ロバート・ロドリゲス 
撮影: ロバート・ロドリゲス 
編集: ロバート・ロドリゲス 
音楽: グレーム・レヴェル 
出演: ローズ・マッゴーワン、フレディ・ロドリゲス、ブルース・ウィリス、ジョシュ・ブローリン
マーリー・シェルトン、ジェフ・フェイヒー、ステイシー・ファーガソン、ナヴィーン・アンドリュース 、マイケル・ビーン、レベル・ロドリゲス、トム・サヴィーニ

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『ブレインデッド』この映画を見て!

第200回『ブレインデッド』
Photo  このコーナー記念すべき200回目に紹介する作品は史上最高のスプラッターコメディホラー『ブレインデッド』です。

 私が本作品を始めてみたのは10年くらい前です。レンタルビデオ店のホラー映画コーナーで看護師がゾンビの赤ちゃんを抱えてイスに縛られている強烈なパッケージに目を奪われ思わず借りてしました。
 映画の本編にパッケージのようなエロティックなシーンこそありませんでしたが、こちらの期待をはるかに上回るパワフルかつ過激なシーンの連続で最初から最後まで画面に釘付けでした。

 見所は何といっても300ℓの血糊を使用したスプラッターシーン!特にラスト30分の阿鼻叫喚の地獄絵図は他の映画の追随を許さないほど強烈です。特に芝刈り機を使ったゾンビ撃退シーンのすざましさは気持ち悪いを通り越して、痛快さすら感じてしまいます。本作品を見た後ではどんなスプラッター映画を見ても物足りなさを覚えてしまうことでしょう。
 
 またコメディ映画としても最高に面白く、腹を抱えて笑えるシーンが満載です。下品かつ悪趣味なネタが多いのですが、あっけらかんとした描き方は見る者に不快な印象を全く感じさせません。

 ストーリー:「ニュージーランドに暮らすマザコンのライオネルは雑貨屋の娘パキータと運命的な出会いをする。二人は意気投合しデートに動物園へ出掛ける。息子が心配なライオネルの母親は二人の後をこっそり追跡して動物園へ向かうが、スカル島で捕獲された謎の生物「ラット・モンキー」に噛まれてしまう。その後、母親は体調を崩して寝こみ、ライオネルは懸命に介護する。しかし、母に容態は瞬く間に悪化、そしてゾンビになってしまう。
 ライオネルは仕方なく母親を埋葬するが、埋葬地の墓場にいた人々が次々に感染してゾンビ化。ライオネルは仕方なく自宅の地下室にゾンビを隔離して生活させる。しかし、ゾンビの存在を知らない叔父が自宅でパーティを開いてしまいゾンビを解放させたことから、血みどろの惨劇が始まる。」

 本作品に登場するキャラクターは皆ぶっ飛んだ人ばかりです。マザコンの主人公、過保護な母親、カンフーが得意な牧師、ベビーゾンビ・・・。強烈なキャラクターたちが織り成す濃厚かつ強烈な世界は一度見たら病みつきになります。

 全編にわたってハチャメチャな映画なのですが、ラストは上手くまとまり主人公は成長してハッピーエンドを迎えます。そのストーリー構成の上手さも本作品の魅力です。

 こんな素晴らしいスプラッターコメディー映画を監督したのは何と『ロード・オブ・ザ・リング』『キング・コング』など数々のファンタジー映画の傑作を手がけたピーター・ジャクソンです。『ブレインデッド』を撮った監督と『ロード・オブ・ザ・リング』を撮った監督が同じ人とは驚く限りです。
 しかし、本作品の徹底したスプラッター描写への監督のこだわりを見ると、後に『ロード・オブ・ザ・リング』での中つ国という架空の世界の描写へのこだわりとつながっていたのだなと思います。 

 『ロード・オブ・ザ・リング』にはまった人でスプラッター描写が苦手でない人はぜひ本作品を見ていただきたいと思います。

 ちなみに本作品のDVDは発売されてからすぐに廃盤となってしまい、現在アマゾンの中古コーナーやヤフーのオークションで8万円~10万円という法外な値段で取引されています。私もDVDを購入する時期を逃してしまい、非常に悔やんでいます。しょうもないB級ホラーが販売されて、このような傑作が手に入らないのはおかしいです。是非とも早期の再販を望んでいます。


上映時間 104分
製作国 ニュージーランド
製作年度 1992年
監督: ピーター・ジャクソン 
脚本: ピーター・ジャクソン、スティーヴン・シンクレア、フランシス・ウォルシュ 
撮影: マレイ・ミルン 
音楽: ピーター・ダゼント 
出演: ティモシー・バルム、ダイアナ・ペニャルヴァー、エリザベス・ムーディ、イアン・ワトキン、ブレンダ・ケンドール 
スチュアート・デヴァニー、 ジェド・ブロフィー

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『ゾンビ』(ダリオ・アルジェント版)この映画を見て!

第193回『ゾンビ』(ダリオ・アルジェント版)
Zombie  今回紹介する作品は以前にも一度紹介した『ゾンビ』のダリオ・アルジェントが監修した119分のヴァージョンです。
 ゾンビはいくつものバージョンがあることで有名です。今回紹介するバージョンの他に、アメリカで公開された127分のバージョン、アメリカ公開版をバースにカンヌ映画祭出品用に編集されたディレクターズカット版と称される139分のバージョン、テレビ東京で初放映されたサスペリアバージョン、テレビ東京で再放映されたバージョンがあります。
 日本で1979年に初公開されたバージョンは今回紹介するダリオ版を5分短縮したものでした。
 ダリオ版『ゾンビ』の最大の特長はロメロが監修したヴァージョンと違ってイタリアのプログレッシブバンド「ゴブリン」の激しいサウンドが全編にわたって鳴り響いているところです。ロメロ版『ゾンビ』は音楽があまり使われておらず見る者に静謐かつ空虚な印象を与えますが、ダリオ版『ゾンビ』はゴブリンサウンドの効果で見る者のテンションが上がります。音楽の使い方で同じ映画にも関わらず印象が全く違います。 
 編集もロメロ版は人間ドラマや空虚な終末世界の描写に重点が置かれているのに対して、ダリオ版は主人公たちのサバイバルアクションに重点が置かれています。
 私は今までロメロが監修したアメリカ公開版とディレクターズカット版しか見た事がなかったのですが、長らく絶版となっていたダリオ版が12月に低価格DVDとして再販されたのを機に見ることができました。
 ダリオ版はゾンビと人間との死闘に重点を置き、テンポよく話しが進んでいくので、手に汗握って最後まで飽きることなく見ることができます。またロメロ版には出てこないシーンも幾つかあり、見ていて「あっ」と思いました。
 ロメロ版、ダリオ版どちらが良いかといわれると迷うところで、ロメロ版のドキュメンタリータッチの淡々かつダラダラとした雰囲気も捨てがたいです。スカッと楽しみたいならダリオ版、じっくり楽しみたいならロメロ版といったところでしょうか。 

上映時間 119分
製作国 アメリカ/イタリア
監督: ジョージ・A・ロメロ 
脚本: ジョージ・A・ロメロ 
撮影: マイケル・ゴーニック 
特殊メイク: トム・サヴィーニ 
音楽: ゴブリン,ダリオ・アルジェント 
出演: デヴィッド・エムゲ, ケン・フォリー, スコット・H・ライニガー, ゲイラン・ロス

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『バタリアン』この映画を見て!

第178回『バタリアン』
Batariann  今回紹介する作品は日本でもブームを巻き起こしたコメディホラーの傑作『バタリアン』です。本作品の邦題である『バタリアン』は日本の配給会社が独自に付けたタイトルです。原題は『リターン・オブ・ザ・リビング・デッド』というタイトルで、ジョージ・A・ロメロ監督によるゾンビ映画の名作『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』のパロディ作品となっています。

ストーリー:「ケンタッキー州のとある医療倉庫で働くフランクとフレディは地下室に保管されているゾンビの話題で盛り上がる。1969年に軍人病院の薬品事故が原因で蘇生した死体を保管した容器が軍の間違いでこの倉庫に送られてきたのだった。二人はその箱を覗こうと容器を叩いてみると突然謎のガスが噴出。医療倉庫に保管されていた解剖用の死体の数々が動き出す。動き出した死体を処理しようと社長のバートは友人の葬儀屋で火葬をする。しかし、煙が混じった雨のせいで近隣の墓地の死体までどんどん蘇ってしまう。」

 本作品は私が小学生だった頃に金曜ロードショーで何回も放映されるほど人気がありました。小学校でも本作品が放映された後は男の子の間で話題になったものでした。当時の私は怖がりであったにも関わらずホラー映画が大好きで、本作品も恐る恐る見たものでした。今見ると笑える作品なのですが、当時はタールマンやオバンバなどのゾンビの造形の気持ち悪さや生きながら死んでいく登場人物たちの姿に背筋が凍る思いをしたものでした。映画のラストもあっけないというか強引というか、予想もしない展開だったので子どもながらに驚いたものでした。

 最近、本作品のDVDを購入し20年ぶりに見返したのでしたが、改めてみると非常に完成度の高いゾンビ映画だということが分りました。上映時間も90分と短い分テンポが良く見れますし、気持ち悪い描写のオンパレードの割りに笑える場面も多いので後味もよく、公開当時人気が出たのも頷ける出来でした。
 また『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』に対するオマージュのセリフやシーンも随所に見られ、ロメロゾンビファンはニヤッと笑いながら見ることができます。
ただ予算不足で主役級のゾンビを除くとメイクがしょぼいのが残念なところです。

 ちなみに本作品のゾンビは私が見たゾンビ映画の中では最強だと思います。頭部を破壊しても、身体をバラバラにしても動きますし、知能も高く、走ることもできる。こんなゾンビに襲われたらどうすこともできませんね。
 
 私が本作品の中でお気に入りのシーンはフランクが自ら焼却炉に入っていくところです。あのシーンだけは何回見て切ないです。

 本作品は現在5作目までシリーズ化されていますが、続編はどれもゾンビ映画としては普通の出来です。1作目だけ見れば十分です。

製作年度 1985年
製作国・地域 アメリカ
上映時間 91分
監督 ダン・オバノン 
脚本 ダン・オバノン 
音楽 マット・クリフォード 
出演 クルー・ギャラガー 、ジェームズ・カレン 、ドン・カルファ 、トム・マシューズ 、ビヴァリー・ランドルフ 、ジョン・フィルビン 、リネア・クイグリー

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私の映画遍歴8「ゾンビ映画」

Zombie  私の映画遍歴を語る上で外せないジャンルとしてゾンビ映画があります。ゾンビ映画というとB級感が漂い、良識的な映画ファンからは見向きもされないジャンルでありますが、一度はまると病みつきになる魅力があります。
 私が初めてゾンビ映画と出会ったのは小学生の時にテレビで見た『バタリアン』でした。この映画はゾンビ映画の名作『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』の続編という形で制作された映画でした。この映画はコメディタッチで描かれており、今見ると大して怖くないのですが、当時は死人が襲ってくる状況が怖くて震え上がったものでした。この映画を見て初めてゾンビ映画というものを意識したものでした。
 そして中学生の時に私をゾンビ映画の虜にしてしまったゾンビ映画の最高傑作『ゾンビ』にめぐりあいました。初めてこの映画に出会ったときは非常に衝撃を受けました。過激なゴアシーン、現代社会を風刺したストーリー、サバイバルアクションとしての面白さ、そして終末観に満ちた雰囲気。今まで見たホラー映画にはない風格といったものを感じ、ビデオを購入して何回も見直したものでした。(恐らく今までに50回以上は見ていると思います。)ショッピングセンターでの人間とゾンビの攻防戦と生き残った人間たちがショッピングモールを占拠する場面はこの映画最大の見所であり、魅力でもあります。私自身この映画を見るたびに自分がショッピングモールに立て籠もったらどう行動すべきかシュミレーションしたものでした。この映画を見ずしてゾンビ映画を語ることはできないと思います。
 『ゾンビ』を見た後、『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』・『死霊のえじき』とジョージ・A・ロメロのゾンビ映画を見まくったものでした。ロメロのゾンビ映画は基本的にゾンビが襲う恐怖よりも人間の愚かさや醜さに焦点をあてて描いており、他のゾンビ映画にはない奥の深さがあります。昨年20年ぶりの新作『ランド・オブ・ザ・デッド』が公開されロメロファンを喜ばせした。映画の完成度はもう一つでしたが、ロメロらしい社会風刺が見られ、他のゾンビ映画にはない風格がありました。
 ロメロのゾンビにはまってから、他の監督のゾンビ映画も片っ端からレンタルビデオで借りて見たのですが、『サンゲリア』や『ブレインデッド』など少数の作品を除いては、シナリオがちゃちかったり、ゴアシーンが手抜きだったり外れの作品が多かったものでした。ゾンビ映画で面白いと思える作品はグログロなゴアシーンと大量のゾンビが人間を襲うシーン、そして終末観漂う雰囲気がきちんと描かれています。
 『バイオハザード』や『ドーン・オブ・ザ・デッド』など近年ゾンビ映画が再びブームとなり劇場公開されており、ゾンビ映画ファンとしては嬉しい限りです。特にジョージ・A・ロメロの作品をリスペクトしたコメディタッチのゾンビ映画『ショーン・オブ・ザ・デッド』は久々の傑作でした。
 ゾンビ映画には人間の死に対する恐怖や人間の本来持つ暴力性・残酷さといった面を刺激し、人間の歪んだ欲望を満たしてくれます。
 

 私のお気に入りゾンビ映画 Best5

5位 『バタリアン』
バタリアン
見所:ユニークなゾンビの面々たち。そして衝撃の結末

4位  『サンゲリア』 
サンゲリア
見所:海中でのサメ対ゾンビの対決、目玉串刺しシーン。

3位 『ショーン・オブ・ザ・デッド』
ショーン・オブ・ザ・デッド

見所:イギリスらしいウエットとブラックに富んだユーモアの数々。

2位 『ブレインデッド』
ブレインデッド
見所:プール一杯の血糊を使ったラスト30分の展開の怒濤の展開。

1位 『ゾンビ』 
ゾンビ 米国劇場公開版 GEORGE A ROMERO’S DAWN OF THE DEAD ZOMBIE
見所:この映画を見ずゾンビ映画は語れません!全て見所です。

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『死霊のはらわた』この映画を見て!

第85回『死霊のはらわた』
Evildead  今回紹介する映画は80年代を代表するスプラッター映画『死霊のはらわた』です。この映画は『スパイダーマン』シリーズを大ヒットさせたサム・ライミー監督のデビュー作です。低予算で作られた作品ながら、過激なスプラッター描写とサム・ライミー監督の演出の巧みさから今見ても十分楽しめる作品となっています。
 ストーリー:「アッシュ(ち5人の若者は、休日を郊外で過ごそうと、山奥にある貸別荘へとやってくる。そこで、彼らはテープ・レコーダーを発見し、テープを再生する。そのテープには死霊を解き放つ呪文が録音されていた。次々と死霊にとりつかれていくアッシュの仲間。倒すには怪物となった友達の体をバラバラにするしかないないのだが・・・。」
 この映画の見所はずばり過激なスプラッター描写です。死霊にとりつかれた友人たちの豹変した白目の醜い顔、ばらばらに切り刻まれる身体、つぶされる目玉、そしてラストの崩壊する死霊たち。低予算でありながら、ここまで気持ち悪く、それでいて迫力のあるを映像を作り上げたことに驚きます。(もちろん安っぽさはありますがね・・・)ラストはクレーアニメを利用して撮影されたそうですが、その気持ち悪さは最高です!
 またサム・ライミのパワフルなシナリオや演出も見る者を画面に釘付けにします。カメラワークは大胆で面白く、特に死霊の視点で捉えた映像は独特な緊張感と恐怖を観客に与えてくれます。また木が人間を襲うシーンも、独特な恐怖とエロティシズムに満ちています。シナリオも巧みで、死霊になった友達を倒そうと思ったら突然人間に戻ったりと、主人公が死霊に翻弄されるシーンは見応えがあります。そしてラスト。助かったと思った主人公に猛烈なスピードで襲い掛かる死霊のシーンは強烈なインパクトを残す結末でした。
 この映画は続編がさらに2本制作されていますが、だんだんコメディーホラー路線となっていき、1作目にあった恐怖や緊張感は薄れていきました。サム・ライミは今ではすっかりハリウッドのヒットメーカーとなってしまいしたが、私は彼の代表作は『スパイダーマン』ではなく、『死霊のはらわた』だと今でも思っています。ぜひまたパワフルなスプラッター映画を彼には撮ってもらいたいです。
 暑い夏、ぜひこの傑作スプラッター映画を見て、涼んでください。

製作年度 1983年
製作国・地域 アメリカ
上映時間 86分
監督 サム・ライミ 
製作総指揮 ブルース・キャンベル 、ロバート・G・タパート 、サム・ライミ 
脚本 サム・ライミ 
音楽 ジョー・ロ・ドゥカ 
出演 ブルース・キャンベル 、エレン・サンドワイズ 、ベッツィ・ベイカー 、ハル・デルリッチ 、サラ・ヨーク 

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『ドーン・オブ・ザ・デッド』この映画を見て!

第84回『ドーン・オブ・ザ・デッド』
Dawn_of_the_dead  今回紹介する映画はカルト的人気のあるジョージ・A・ロメロの『ゾンビ』をリメイクした『ドーン・オブ・ザ・デッド』です。ロメロの『ゾンビ』は私の大好きな映画でもう何十回と見ていますが、何回見ても飽きることなく見られるゾンビ映画史に残る大傑作です。『ゾンビ』は突然蘇った死者によって埋め尽くされた世界の中で、無人のジョッピングセンターに立てこもった3人の人間の姿を描いた作品ですが、トム・サービニによる生々しい残酷描写とロメロ監督の人間に対するシニカルな視点、そしてショッピングセンターに立てこもるという設定がとても魅力的な作品でした。3年前に『ゾンビ』をリメイクすると聞いたとき、私はあの名作をいまさらどうリメイクするのか興味と不安を感じたものでした。映画が公開されるとすぐに劇場に見に行ったのですが、見終わった後の印象としては予想以上に面白い作品に仕上がっていると思いました。確かにロメロの『ゾンビ』に比べるとイマイチなのは仕方ないとしても、最近公開されたゾンビ映画の中ではダントツの面白さでした。
  リメイク版はショッピングセンターに立てこもるという設定を除いて、ストーリーは全く違うものに改変されています。ロメロ版は状況説明や人間関係に重点を置きゆっくりと話しが進行していくのですが、リメイク版は人間関係はあっさりと描き、テンポ良く話しが進んでいきます。またロメロ版にあった文明批判や人間に対するシニカルな視点はほとんどなく、痛快なサバイバルアクションとして一気に最後まで見させてくれます。
 ゾンビ映画ファンの間では走って襲ってくるゾンビという設定に賛否両論がありましたが、私としては走って襲ってくるのもアリかなと思いました。この映画では走ってくるゾンビという設定がロメロ版にはない緊張感を出していたと思います。ただあんな足の速いゾンビだと、かつてのゾンビにあった何とか逃げられるのではないかという余裕が人間にもてないですよね。
 私がリメイク版で特に気に入ったのは、オープニングの10分間とラストの装甲バスによる脱出シーンです。オープニングは主人公の看護師アナが突然ゾンビに襲われ街から脱出するまでを描いているのですが、突然ゾンビによって街が混乱に陥った状況がリアルに表現されていたと思います。またラストの装甲バスによる脱出シーンは圧倒的なゾンビの数による終末観と絶望感が伝わってきました。またラストのバッドエンディングもゾンビ映画ならではの結末といった感じで良かったです。
 この映画で残念だったのは残酷描写と中盤のストーリです。ゾンビ映画にも関わらず、カニバリズムのシーンがほとんどないのはもう一つでした。(その分、誰でも見られる作品になっていますが・・・)また中盤に出てくる登場人物が多く、主人公たちに感情移入ができないところがありました。もう少し登場人物を減らして、何人かに焦点を絞ったほうが、後半もっと盛りあがったと思います。あと、ラストの犬を助けに女性がガンショップに行く展開は強引というか無理を感じてしまいました。
 この映画はロメロの『ゾンビ』と別物だと思ってみれば、かなり楽しめる作品です。人間ドラマはいまいちですが、サバイバルアクションホラーとして見れば、手に汗握る2時間をすごすことができますよ。

製作年度 2004年
製作国・地域 アメリカ
上映時間 98分
監督 ザック・スナイダー 
製作総指揮 アーミアン・バーンスタイン 、トーマス・A・ブリス 、デニス・E・ジョーンズ 
脚本 ジェームズ・ガン 
音楽 タイラー・ベイツ 
出演 サラ・ポーリー 、ヴィング・レイムス 、ジェイク・ウェバー 、メキー・ファイファー 、タイ・バーレル

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