お気に入りのCD

『Minima_Rhythm』

お気に入りのCD NO.27『Minima_Rhythm』

Photo  久石譲が2009年に発売したミニマルミュージックをテーマにしたアルバム『Minima_Rhythm』。
久石譲のデビュー作ともいえる『MKWAJU』から新作『Sinfonia』までミニマルの手法を取り入れた楽曲が、ロンドン交響楽団の演奏とロンドン・ヴォイシズのコーラスで収録されいます。

 一般的に久石さんというと親しみやすく心を和ませるメロディーを生み出す作曲家という印象が強いですが、若い頃はミニマルミュージックの作曲家として活躍されていました。本アルバムは久石さんが原点に返ってミニマルミュージックを追求した仕上がりになっています。どの曲もメロディーを抑えてリズムやハーモニーを重視しています。 
 宮崎駿映画の久石ミュージックが好きな人が聞くと最初違和感があるかもしれませんが、何度も聞いていると何とも癖になる心地良さがあります。

【収録曲】
1. Links
2. Sinfonia for Chamber Orchestra I.Pulsation
3. Sinfonia for Chamber Orchestra II.Fugue
4. Sinfonia for Chamber Orchestra III.Divertimento
5. MKWAJU 1981-2009
6. The End of the World I.Collapse
7. The End of the World II.Grace of the St.Paul
8. The End of the World III.Beyond the World
9. DA・MA・SHI・絵

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『Melodyphony』

お気に入りのCD NO.26『Melodyphony』
Melodyphony  ロンドン交響楽団の演奏による久石譲のベストアルバム『Melodyphony』が発売されました。今回はインターネットの人気投票を参考に収録曲が選ばれたそうで『となりのトトロ』から『坂の上の雲』まで久石さんの代表作が幅広くセレクトされています。

 今回のアルバムは久石ファンには馴染みの曲が多く、新鮮味には欠けるので正直期待はしていませんでした。しかし、聞いてみるとアレンジがかなり凝っており、ロンドン交響楽団の演奏も大変重厚かつ繊細で、どの曲も外れがなく非常に聞き応えありました。
 特に私のお薦めは7曲目の『Orbis』です。この曲は12月に毎年開催される「サントリー1万人の第九」の25周年を記念して久石さんが作曲したのですが、他の収録曲と違ってミニマルかつクラシカルな雰囲気が漂っています。この曲を聴くだけでも本アルバムは価値があります。

【収録曲】
1. Water Traveller (映画「水の旅人」メインテーマ)
2. Oriental Wind (サントリー「伊右衛門」CM)
3. Kiki’s Delivery Service (映画「魔女の宅急便」より『海の見える街』)
4. Saka No Ue No Kumo (NHKスペシャルドラマ「坂の上の雲」より)
5. Departures (映画「おくりびと」より)
6. Summer (映画「菊次郎の夏」メインテーマ/トヨタ「カローラ」CM)
7. Orbis (サントリー「1万人の第九」委嘱作品)
8. One Summer’s Day (映画「千と千尋の神隠し」より『あの夏へ』)
9. My Neighbor TOTORO (映画「となりのトトロ」より『となりのトトロ』)

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『真夜中の動物園』中島みゆきのアルバム紹介

中島みゆきのアルバム紹介No.10『真夜中の動物園』

Photo  今回紹介するアルバムは中島みゆき通算37枚目のアルバム『真夜中の動物園』です。3年ぶりのオリジナルアルバムですが、公式サイトには本アルバムに関して以下のようなコメントが掲載されています。
「あの『夜会』「今晩屋」シリーズをはさんで、3年ぶりにお送りする、オリジナル・ニュー・アルバム『真夜中の動物園』。魚類・鳥類・哺乳類………可笑しくて、トホホで、やがて愛しき、動物たちの、音楽図鑑。懐かしいのに、アグレッシヴ。繊細なのに、プリミティヴ。心に沁みるソフトロックの真骨頂。」

 ハリネズミにサメに鷹と動物の名前がタイトルについた歌が多いので一体どんな歌なのか発売前から私はあれこれ想像していました。
 ここ最近のアルバムはメッセージ性が強い直球勝負な歌が多かったので、今回はタイトルだけ見て少し変化球をつけてくるのかとなと思っていました。

 私は発売当日に購入して繰り返し聞いているのですが、今回は歌詞・歌い方・アレンジ共にバラエティに富んでおり非常に聞きやすく、弱い人間たちが明日に向かって生きることをそっと励ましてくれる素晴らしいアルバムです。

 1曲目の「今日以来」は求めることもばかり望んでいた人間が過去を反省して与える側に回ろうと決意する歌ですが、吉田拓郎チックな曲調とみゆきさんの軽快な歌い方で歌詞が心にすっと染み入ってきます。

 2曲目の「真夜中の動物園」は今回のアルバムのタイトルにもなっている歌ですが、とても抽象的で幻想的な歌詞です。聴く人によって様々な感想のある歌だと思うのですが、私は滅んでいった命に対するレクイエムのような印象を受けました。

 3曲目の「まるで高速電車のようにあたしたちは擦れ違う」はテンポ良く軽快な曲調です。忙しくあっという間に過ぎ去っていく日々の中で自分たちの生き方や社会に潜む欺瞞を何とか感じ取ろうとする反骨精神を歌った曲だと私は感じました。

 4曲目の「ハリネズミだって恋をする」は傷つけまいと臆病になっている女性に対する応援歌です。

 5曲目の「小さき負傷者たちの為に」は幼児虐待や動物虐待に対するみゆきさんの憤りが伝わってくるヘビーな歌です。ただ卑怯者を糾弾するだけでなく、お前は卑怯者に立ち向かえるかと問うてくる歌詞は胸に突き刺さります。

 6曲目の「夢だもの」は明るい感じの曲ですが、歌詞はとても切ない歌です。

 7曲目の「サメの歌」は過去にこだわらず前に向かってとにかく進めと背中を押してくれる歌です。

 8曲目の「ごまめの歯ぎしり」は日本のことわざを引用したタイトルですが、その意味は『力のないものが、どんなにがんばってもどうにもならない』というものです。人生の酸いも甘いも知って希望も期待も持てなくなった大人の哀愁をジャズスイングにのせて軽快に歌っています。

 9曲目の「鷹の歌」は本作品ハイライトとも言える歌です。道を示して年老い亡くなっていった先人たちへの畏怖と残された者たちの使命を力強い歌声で歌っています。

 10曲目の「負けんもんね」はみゆきさんらしい応援歌です。人生は良い結果が出ず徒労に終わることが多いけどめげずに生きていこうと励ましてくれる名曲です。

 11曲目の「雪傘」は工藤静香に提供した曲です。みゆきさんらしい切ない失恋ソングです。

 12曲目の「愛だけを残せ」は昨年に公開された映画『ゼロの焦点』の主題歌として発表された曲でシングルとしても発売されましたが、今回はアルバムバージョンとしてシングルとは全く違うアレンジ・歌い方で収録されています。シングル版が力強い歌い方だったとすれば、アルバム版はしっとりとした歌い方です。

 今回のアルバムは肩の力を抜いて聞ける曲が多いですが、聞いていて自分の人生をはっと振り返させられます。

 10月24日から4年ぶりのコンサートツアーもスタートします。私も神戸のツアーのチケットを手に入れたのですが、私としては「鷹の歌」と「負けんもんね」は生で是非聞きたいです。

1.今日以来
2.真夜中の動物園
3.まるで高速電車のようにあたしたちは擦れ違う
4.ハリネズミだって恋をする
5.小さき負傷者たちの為に
6.夢だもの
7.サメの歌
8.ごまめの歯ぎしり
9.鷹の歌
10.負けんもんね
(ボーナストラック)
11.雪傘
12.愛だけを残せ(Album Version)

YCCW-10121/3,150円(税込)
ヤマハミュージックコミュニケーションズ

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『DRAMA!』中島みゆきのアルバム紹介

中島みゆきのアルバム紹介No.9『DRAMA!』

Drama  今回紹介するアルバムは中島みゆき通算36枚目のアルバム『DRAMA!』です。本アルバムは吉川晃司主演で昨年公演されたミュージカル『SEMPO』と『夜会VOL.15~夜物語~元祖・今晩屋』の楽曲が収録されています。

 『SEMPO』は第2次世界大戦中にナチスに追われていたユダヤ人に対してビザを発行して救った外交官・杉原千畝の姿をミュージカルにしたものです。吉川晃司が主演することやみゆきさんがミュージカルに始めて楽曲を提供することで話題になりました。
 杉原千畝は第二次世界大戦勃発時、リトアニアの日本領事代理を務めていた時に、ソ連より領事館閉鎖命令が出たにもかかわらず、ユダヤ人のビザを発給を不眠不休で行い、6000人近いユダヤ人の命を救ったそうです。当時、人々が千畝をチウネと発音できないため、杉原は“SEMPO”と呼ばせており、海外では東洋のシンドラーと高く評価されています。
 みゆきさんはユダヤ人迫害という重いテーマの劇中歌を制作するにあたって、制作発表の際に以下のようなコメントをしています。
 「現代の民族紛争にも通ずるデリケートな作品ですが、私はただ1点、『人間として』という立場を貫いたSEMPO氏への敬意に基づいてのみ詞曲を書かせていただきました。この素晴らしい機会を与えていただいたことに感謝しています。」
 本アルバムでは前半に公演で歌われた6曲が収録されていますが、どの歌もみゆきさんらしい繊細で力強い言葉遣いとメロディーの美しさがとても印象に残ります。
 1曲目の「翼をあげて」は少し「銀の龍の背に乗って」に似た部分がありますが、サビの部分でグッと盛り上がるところが大好きです。
 2曲目の「こどもの宝」は子ども時代を振り返り今を見つめる内容の歌詞ですが、みゆきさんの優しい歌声とバイオリンソロの部分の美しい音色が印象に残ります。
 3曲目の「夜の色」は故郷に対する思いを歌っています。中村哲さんのアルト・サックスの音色が良いですね。
 4曲目の「掌」も2曲目同様に子ども時代を振り返り、今の自分の非力さに苦悩する心情を歌っています。
 5曲目の「愛が私に命ずること」は他者を労わり守ろうとする愛の大切さをみゆきさんらしい力強い言葉で表現した歌です。
 6曲目の「NOW」は前半のクライマックスとも言えるスケールの大きな歌です。男性コーラスから始まるので最初聞いた時はびっくりしましたが、みゆきさんの全身全霊を込めた歌い方は鳥肌が立ちます。

15  本アルバムの後半は昨年から今年の冬にかけて公演された『夜会VOL.15~夜物語~元祖・今晩屋』と今年の11月から東京で公演される『夜会VOL.16~夜物語~本家・今晩屋』で歌われる7曲が収録されています。

 夜会『今晩屋』は森鴎外の小説でも有名な「山椒大夫」をモチーフにしており、主人公である安寿と厨子王と母の来生での苦悩と魂の救済を描いていきます。今までの夜会の中では一番難解であり、ファンの間でも賛否両論ある作品です。

 私は今年2月の大阪公演を鑑賞したのですが、みゆきさんの力強い歌声とオーラに圧倒され、そして未練を残したまま輪廻転生する主人公たちの苦悩に胸が締め付けられ、クライマックスの魂の救済に鳥肌が立つほど感動しました。歌詞が難解な部分があり、一度聴いただけでは分からないところも多かったので今回のCD化はうれしい限りです。ただ、個人的に好きだった「有機体は過去を喰らう」、「十文字」、「紅蓮は目を醒ます」、「赦され河、渡れ」が収録されなかったのが残念です。前回か今回の公演がDVD化され、全曲聴けるようになると言いのですが・・。

 7曲目の「十二天」は仏教の護法神である「天」の諸尊12種を組み合わせたものを言います。東西南北と東北・東南・西北・西南の八方を護る諸天に、天・地・日・月にかかわる神を加えて十二天としています。東北は伊舎那天、東は 帝釈天、東南は 火天、南は 閻魔天、西南は 羅刹天、西は水天、西北は風天、北は毘沙門天、天は梵天、地は地天、 日は日天、月は月天となっています。
 夜会の中でも印象的だった十二天。本アルバムでもは2番でみゆきさんが十二天の名を讃えるかのごとく力強く歌い上げ、聴いていて魂が揺さぶられます。
 8曲目の「らいしょらいしょ」は前世・現世・来世の関係について日本の伝統的な手まり歌にあわせて歌った曲です。「前生から今生見れば来生」というフレーズがとても印象に残ります。
 9曲目の「暦売りの歌」は時間の流れの中で生きる人間の姿を暦に喩えて歌っています。軽快なメロディーで聴きやすい歌ですが、歌詞をじっくり読むと「今」とは何かについて考えさせられます。
 10曲目の「百九番目の除夜の鐘」は『今晩屋』のテーマ曲ともいえる歌です。百八の煩悩を大晦日の除夜の鐘で払い落として新しい年を迎えたいのに百九番目の除夜の鐘が鳴る。百九番目の煩悩とは何か?前世の未練を残し引きずった魂が、来世に行けず今生を彷徨う哀しみ、苦しみ。非情にインパクトの強い歌です。
 11曲目の「幽霊交差点」は簡単に過去から逃れることはできず、浮かばれない魂が今の自分を呼んでいることを歌っています。
 12曲目の「海に絵を描く」は前回の夜会ではコーラスの宮下文一さんが歌っていたのですがメロディーと歌詞が痺れるほど格好良かったので、本アルバムでみゆきさん本人が歌ってくれたのはうれしい限りです。サビの「海に絵を描く 絵の具は涙」の部分が何度聴いても良いですね。
 13曲目の「天鏡」は前回の夜会でもラストに本物の水の流れる舞台の上でみゆきさんが熱唱して鳥肌が立ったのを今でも覚えています。本アルバムでも最後を締めくくっていますが、人の愚かさや悲しみを壮大なスケールで歌っており、聴いていて心が浄化される名曲です。

 本アルバムはみゆきさんの力強く繊細な歌詞と歌声が十二分に堪能でき、舞台を見ていない人でも十分に聴き応えがあります。

1,翼をあげて
2,こどもの宝
3,夜の色
4,掌
5,愛が私に命ずること
6,NOW
7,十二天
8,らいしょらいしょ
9,暦売りの歌
10,百九番目の除夜の鐘
11,幽霊交差点
12,海に絵を描く
13,天鏡

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『短篇集』中島みゆきのアルバム紹介

中島みゆきのアルバム紹介No.8『短篇集』
Photo  今回紹介するアルバムは中島みゆき通算28作目のアルバム『短篇集』です。本アルバムはタイトルの通り、それぞれの歌が独立した世界観を描いており、どの歌から聴いても良い作りになっています。また、全曲通して聞くと、良質の短編小説集を読んだかのような充実感を得ることができます。

 1曲目の『地上の星』と11曲目の『ヘッドライト・テールライト』はNHKで放映されて大反響を呼んだドキュメンタリー番組『プロジェクトX』のオープニングテーマとエンディグテーマとして使用され、知っている方も多いかと思います。
 シングルカットもされ、中高年世代を中心にじわじわと人気を広げ、オリコンシングルチャートで初登場から130週をかけて1位を獲得。さらに139週目にはミリオンセラーを達成するという偉業を成し遂げました。
 「地上の星」はまるで不動明王のごとく力強く、「ヘッドライト・テールライト」は観音菩薩のように優しく、どんな困難があっても乗り越え生きていく者たちにエールを送ってくれます。

 2曲目の『帰省』は由紀さおり&安田祥子に提供した楽曲のセルフカヴァーです。日本人の盆と正月の帰省をテーマにしており、8月と1月になると聴きたくなる名曲です。私も故郷から離れて生活しているので、この曲を聴くといつも胸がジーンとします。

 3曲目の『夢の通り道を僕は歩いている』は夢に向かって歩んできた人に向けた応援ソングです。軽快な曲とみゆきさんの柔らかな歌声が聞いていて心地よいです。

 4曲目の『後悔』は叶わなかった恋に対する女性の後悔を綴った歌で、これぞみゆきさんという歌詞と後半のみゆきさんの絶唱が印象に残ります。
 続く5曲目の『MERRY-GO-ROUND』も叶わぬ恋をメリーゴラーンドに喩えて歌っています。

 6曲目の『天使の階段』と9曲目の『粉雪は忘れ薬 』は夜会11&12『ウィンターガーデン』のために作られた歌です。『天使の階段』は天空から地上に光が降り注ぐ荘厳な情景が聴いていて思い浮かんできます。『粉雪は忘れ薬』は忘れたくても忘れられない記憶を抱えた人たちの心情と願いを情感たっぷりに歌っています。

 7曲目の『過ぎゆく夏』は吉田拓郎風のフォークロックで、ひと夏の恋を軽快に歌っています。

 8曲目の『結婚』は本アルバム一番の異色作であり、子どもたちのやり取りから結婚についてコミカルに語る歌です。2分弱の短い歌ですが、聴いたあとクスッと笑って結婚とは何かについて考えさせられます。

 10曲目の『Tell Me,Sister 』は個人的に一番本アルバムで好きな歌です。劣等感を持つ主人公の女性の前に現われる完璧な女性。その女性は全てを兼ね備えているにもかかわらず、いやそれ故にこの世の中に達観していて、主人公に「そのままでいいのに」と伝える。そして時が経ち、完璧な女性が亡くなったことを知る主人公。「人生に必要なものは何か?」、そして、「何が幸せなのか」を聴く者に問いかけてくる歌です。
 あと、私はこの歌を聞くときに「Sister」とは一体誰を指しているのかいつも考えてしまいます。妹なのか、それとも教会のシスターなのか、はたまた友人なのか。聴いたことある皆さんはどう思われますか?

 本アルバムはみゆきさんのアルバムでも大変聞きやすく、初心者の人にもお奨めのアルバムです。みゆきさんが綴った11の短篇集はさらりとしていながら大変味わい深いですよ。

1. 地上の星    
2. 帰省    
3. 夢の通り道を僕は歩いている    
4. 後悔    
5. MERRY-GO-ROUND    
6. 天使の階段    
7. 過ぎゆく夏    
8. 結婚    
9. 粉雪は忘れ薬    
10. Tell Me,Sister    
11. ヘッドライト・テールライト

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『心守歌』中島みゆきのアルバム紹介 

中島みゆきのアルバム紹介No.7『心守歌』 
Photo   今回紹介するアルバムは中島みゆき通算29作目のアルバム『心守歌』です。本アルバムはシングル曲が全く収録されておらず、夜会『ウィンターガーデン』で発表された2曲を除いて、全てオリジナルです。

 1曲目の「囁く雨 」は雨の音のSEが最初30秒以上続きます。そして、いきなり飛び込んでくるみゆきさんの迫力のある歌声に心が鷲づかみにされます。激しい雨の振る中で、彼氏が別れ話しの途中で泣き出し困惑する彼女。以前のみゆきさんなら女性が泣く歌詞になるところを、今回は敢えて男性が泣く設定にしたところが印象的でした。

 2曲目の「相席」は酸いも甘いも知った大人の恋愛をジャジーな感じに歌っており、心地よい歌声とメロディーに酔いしれます。

 3曲目の「樹高千丈 落葉帰根 」は恋愛の歌から一転、人の故郷や母への憧れについて歌っています。歌のタイトルの「樹高千丈 落葉帰根 」は中国の諺から引用されており、「たとえ樹木がどんなに高くなっても、落ちた葉はいずれ根元に帰る」という意味があります。親元を離れ遠い地で過ごす心細さや孤独、そして懐かしく思う生まれ故郷と母の懐。みゆきさんは優しい歌声で故郷を離れた者たちの心情を歌い上げます。
 歌の後半の「木の根はゆりかごになって抱きとめる」というフレーズはみゆきさんの母性愛に自然と涙が溢れてきます。

 4曲目の「あのバスに」はロック調の曲で、せきたてられるように未来に向かって飛び出した過去を振り返る歌になっています。

 5曲目の「心守歌 」は今回のアルバムのタイトルにもなっています。みゆきさんらしい独特の言い回しが印象に残る歌です。自分が歩んできた過去を振り返り、愛してきた人々たちの平安を祈る歌詞に心が癒され励まされます。

 6曲目の「六花」は夜会『ウィンターガーデン』のために作られた曲です。果てしない空と大地の間で生きるものたちの罪やけがれの浄化を祈る歌詞は聴く者の心をも浄化します。

 7曲目の「カーニヴァルだったね 」は吉田拓郎調の曲です。今までの愚かで無様な生き方に後悔しながらも、しぶとく生きる人を力強く歌っています。

 8曲目の「ツンドラ・バード」は夜会『ウィンターガーデン』のために作られた曲です。この曲の歌詞は難解で、みゆきさんが大地の全てを見抜くオジロワシに何の意味をこめたのか考えてしまいます。

 9曲目の「夜行」は個人的に本アルバムで一番好きな曲です。夜の世界で傷つきながらも心優しく生きる人々にスポットライトを当てた曲であり、みゆきさんの力強い歌声が聞く者の心にある偏見を打ち砕き、不器用な人間たちの背中を力強く押してくれます。

 10曲目の「月迎え」は何とも幻想的で不思議な曲です。しかし、聞いているとなぜか心がときほぐれて落ち着きます。

 11曲目の『LOVERS ONLY 』はみゆきさんとしては珍しいクリスマスソングです。しかし、そこはみゆきさん。甘いクリスマスソングではなく、失恋した女性のほろ苦いクリスマスソングです。

 今回のアルバムはみゆきさんの様々な歌声が聞けますし、歌詞も聴く人や聴く時によって、様々なイメージができる奥行きがあり、何回聞いても飽きることがありません。言葉の使い方もみゆきさんらしく洗練されており、聴いていて自然と言葉が胸に染み渡っていきます。
 派手な曲はありませんが、みゆきさんの近年のアルバムでは完成度の高いアルバムです。

1. 囁く雨    
2. 相席    
3. 樹高千丈 落葉帰根    
4. あのバスに    
5. 心守歌    
6. 六花    
7. カーニヴァルだったね    
8. ツンドラ・バード    
9. 夜行    
10. 月迎え    
11. LOVERS ONLY

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『恐山/銅之剣舞』

お気に入りのCD NO.26『恐山/銅之剣舞』 芸能山城組
Photo_2  今回紹介するCDはアニメ映画『AKIRA』の音楽を担当した芸能山城組が初めて発表したアルバム『恐山/銅之剣舞』です。日本の伝統音楽、アジアの民族音楽、そしてロック音楽を融合したジャンルを超越した作品であり、その強烈なインパクトは一度聞いたら忘れられません。
 芸能山城組は1974年に 山城祥二氏が主宰したアマチュアの音楽集団で、民族音楽からクラシックまで幅広い音楽を独自の解釈でパフォーマンスすることで有名です。
 本作品は2曲収録されています。
 1曲目の「恐山」は青森県の恐山で活躍するイタコの口寄せを題材に、合唱パフォーマンスとロック音楽を融合した作品です。いきなり女性の叫び声から始まるので驚くかもしれませんが、生々しく迫力のある声は不気味でありながら、惹きつけられるところがあり、聞いていて心が激しく揺さぶられます。
 2曲目の「銅之剣舞」は山城氏が創作した神話をバリ島のケチャと日本の古典芸能で表現した作品です。こちらも男性の迫力ある声が印象的で、聞いていて独特な高揚感があります。

 万人受けする作品ではありませんが、人間の声の持つ力を体感することが出来るアルバムです。

 

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『おとぎばなし』中島みゆきのアルバム紹介 

中島みゆきのアルバム紹介No.6『おとぎばなし』 
Photo  今回紹介するアルバムは中島みゆきが2002年に発表した通算30作目のオリジナル・アルバム『おとぎばなし』です。今回は「夜会」で発表された曲や、他のアーティストに提供した曲を集めた、セルフカヴァー・アルバムです。
 
 1曲目「陽紡ぎ唄」は夜会VOL.11&12「ウィンター・ガーデン」のために書き下ろされた歌です。時計の振り子の音から始まる歌ですが、おとぎばなしのような不思議な歌詞が印象に残ります。
 
 2曲目「シャングリラ」は夜会VOL.6「シャングリラ」のために書き下ろされた歌です。二胡の懐かしい音色とみゆきさんの歌声がとてもマッチしています。
 
 3曲目「おとぎばなし」は1988年に薬師丸ひろ子に提供した歌です。叶わぬ恋に対する女性の心情をみゆきさんらしい歌詞で見事に綴っています。
 
 4曲目「雪・月・花 」は1998年に工藤静香に提供した歌です。工藤静香の甘い歌い方と違って、みゆきさんの歌い方は切なさが前面に出ています。
 
 5曲目「匂いガラス~安寿子の靴」は1984年にNHKドラマとして制作された「匂いガラス」、「安寿子の靴」の主題歌です。歌詞は唐十郎さんが手がけていると言うこともあり、独特な言い回しが味わい深いです。。
 
 6曲目「あの人に似ている」は高倉健&裕木奈江のためにみゆきさんとさだまさしが共同で作詞・作曲を手がけた異色のデュエットソングです。本アルバムでは何とさだまさしを共演に迎えてデュエットしています。このコンビがデュエットするなんて二度とないと思います。そういう意味で本アルバム一番の目玉です。二人の声が交錯する形で歌われていくのですが、何を歌っているか少し聞き取りにくかったのが残念です。
 
 7曲目「みにくいあひるの子」は1978年に研ナオコに提供した歌です。好きな男に相手にされない女のつらい思いをラテン調にアレンジされた曲で一気に歌い上げています。
 
 8曲目「愛される花 愛されぬ花」は1986年に三田寛子に提供した歌です。これも好きな男に相手にされない女の心情をしっとりと歌い上げています。
 
 9曲目「裸爪(はだし)のライオン」は再び工藤静香に提供した歌です。作曲は後藤次利が手がけており、力強い歌声とポップなメロディーが印象的です。
 
 10曲目「紫の桜」は夜会VOL.10「海嘯」のために書き下ろされた歌です。夜会では迫力満点のうなり声で観る者を圧倒しましたが、本アルバムでは歌い方を180度変えています。優しく包容力のある歌い方は聞いていて心洗われます。
 
 11曲目「海よ」はデビューアルバム『私の声が聞こえますか』に収録されていた歌です。私は発売当時にこの歌を聞いて、2001年にハワイ沖で愛媛県立宇和島水産高等学校の練習船「えひめ丸」が浮上してきたアメリカ海軍の原子力潜水艦「グリーンビル」に衝突され沈没した事件が頭をよぎりました。みゆきさんがそれを意図して、本作品に収録したのか分かりませんが、私はこの歌をきくとえひめ丸の事件が思い出されてしまいます。

 今回のアルバムはタイトルの通り、静かで優しい感じの歌が多いです。 みゆきさんの力強い歌声が好きな人には物足りないかもしれませんが、聞けば聞くほど心に染み入る味わい深いアルバムです。    

1. 陽紡ぎ唄 
2. シャングリラ   
3. おとぎばなし   
4. 雪・月・花    
5. 匂いガラス 安寿子の靴   
6. あの人に似ている    
7. みにくいあひるの子   
8. 愛される花 愛されぬ花   
9. 裸爪(はだし)のライオン   
10. 紫の桜 
11. 海よ 

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『Another Piano Stories ~The End of the World~』

 お気に入りのCD NO.25 『Another Piano Stories ~The End of the World~』
Another_piano_stories  約3年ぶりとなる久石譲のソロアルバム「Another Piano Stories ~The End of the World~」。今回のアルバムはボーナストラックを含めると14曲収録されており、久石さんが最近手がけた映画やCMの曲、そして本アルバムのために書き下ろされた新曲を聴くことができます。演奏は久石さんのピアノ、12名のチェリスト、ハープ、コントラバス、マリンバ、パーカッションのアンサンブルとなっています。

 1曲目の『Woman』は「レリアン」のCMテーマ曲で、聞いていて街を颯爽と歩く女性が思い浮かんできます。
 2曲目の『Love Theme of Taewangsashingi』はぺ・ヨンジュンが主演して話題となった韓国大河ドラマ「太王四神記」でスジニのテーマとして書き下ろされた曲です。主人公を愛するスジニの思いを切ない音楽で見事に表現しています。
 3曲目『Les Aventuriers』はアラン・ドロン主演の映画「冒険者たち」にインスパイアされた曲です。5拍子のメロディーが何とも言えないスリリングな印象を与えています。
 4曲目~6曲目は今年アカデミー賞で外国映画賞を受賞した『おくりびと』のサントラを14分の組曲にしたものです。サントラ同様にチェロの力強く優しい音色で奏でられる美しい久石メロディーが印象に残る名曲です。
 7曲目『Ponyo on the Cliff by the Sea』は昨年大ヒットした宮崎アニメ『崖の上のポニョ』の主題歌を軽快かつ可愛くアレンジした曲です。
 8曲目『Destiny of Us 』は昨年に赤坂ACTシアターの杮落とし公演として宮本亜門演出でプッチーニの遺作を現代の視点で甦らせたオリジナル・ミュージカル「祝祭音楽劇トゥーランドット」のために書き下ろされた曲です。
 9曲目~12曲目は本アルバムのための新曲で、9.11テロ以降の不安と混沌に満ちた世界を描いています。9曲目~11曲目はミニマル色の強い曲となっています。12曲目はジュリー・ロンドンの歌った「The End of the World」に感銘を受けた久石さん自らカバーして歌っています。
 13曲目には昨年にSMAPの中居君主演で公開され話題となった『私は貝になりたい』のメインテーマをピアノソロにアレンジして、久石さん自ら演奏しています。
 14曲目『I will be』は日産スカイラインのテーマ曲で、娘である麻衣さんが作詞とボーカルを担当しています。収録されている他の曲とは系統が違いますが、麻衣さんの透き通る歌声と心地よいリズムと美しいメロディーが大変印象的です。

 本作品は久石さんが生み出す美しいメロディーと心地よいアレンジがじっくりと堪能できます。久石ファンはもちろんのこと、そうでない方も何回聞いても飽きることない仕上がりとなっています。
 また初回限定版にはレコーディング風景が収録されたDVDも特典で付いており、久石さんや演奏家たちがいかに演奏しているのかを見ることができますよ。

1. Woman
2. Love Theme of Taewangsashingi
3. Les Aventuriers

Departures
4. Prologue~Theme
5. Prayer
6. Theme of Departures

7. Ponyo on the Cliff by the Sea
8. Destiny of Us (from Musical Turandot)

The End of the World
9. I. Collapse
10. II. Grace of the St. Paul
11. III. Beyond the World
12. IV. The End of the World

bonus track
13. I'd rather be a Shellfish
14. I will be

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久石譲とミニマル・ミュージック

   久石譲の音楽というと、多くの人は宮崎アニメで流れてくるような美しく心温めるメロディーが頭に浮かぶと思います。
 しかし、久石さんは元々ミニマル・ミュージックの音楽家として活動していました。ミニマル・ミュージックとは、音の動きを最小限に抑えてパターン化された音型を反復させる音楽で、音の微妙な変化を楽しみます。

 久石さんは宮崎駿監督や北野武監督の映画音楽でもミニマル・ミュージックの手法を良く使っており、美しい久石メロディーとは別に独特な印象を映画に与えています。映画の中で使用されたミニマル・ミュージックで代表的なものは、『となりのトトロ』でバス停でメイとサツキがトトロに出るときに流れる曲や『ソナチネ』のテーマ曲などがあります。

 また、初期のソロアルバムはミニマル・ミュージック路線であり、最近のオーケストラやピアノを中心とした最近のアルバムが好きな人が聞くと違和感があるかもしれません。

 そこで、今回は久石さんのミニマル・ミュージック関係のソロアルバムでお薦めのアルバムを5枚紹介します。

・『ムクワジュ』
Photo  本作品は高田みどりを中心とするパーカッション・トリオ“ムクワジュ・アンサンブル”に、YMOの松武秀樹、ラテンパーカッションの名手ペッカー、そして久石譲が参加して制作されたミニマルミュージックのアルバムです。作曲は久石さんが全て手がけており、久石さんのソロアルバムと言っても差し支えありません。アフリカの民族音楽にインスパイアされた繰り返される短いフレーズは聴いているといつの間にか何ともいえない高揚感に包まれます。

・『INFORMATION』
Information  久石さん初のソロアルバムであり、全8曲シンセによるミニマル・ミュージックです。ちななみに久石さんがボーカルを担当した曲も5つあります。
 感想としては軽快でポップな音とリズムがとても心地よく、何度聞いても飽きることがありません。
 ちなみに本作品を聞いて高畑勲と宮崎駿は『風の谷のナウシカ』の音楽に起用することを決めたそうです。

・『α・BET・CITY』
Alpha_bet_city  久石さん2枚目のソロアルバムであり、全曲シンセによるミニマル・ミュージックですが『INFORMATION』よりさらに刺激的で前衛的な曲が多いです。特にお薦めは6曲目と10曲目に就労されている「DA・MA・SHI・絵」です。
  好き嫌いは分かれると思いますが、テクノサウンドが好きな人にはお薦めです!

・『ヴィオリストを撃て』
Photo_3 久石さんが2000年に発売したソロアルバムですが、イギリスの弦楽四重奏団“バラネスク・カルテット”をゲストに迎え、一時期遠ざかっていたミニマル・ミュージックを中心とした作品が数多く収録されています。初期のアルバムに収録されていたミニマル・ミュージックの作品の他に、「DEAD Suite」というミニマル色の強い新作が収録されているのですが、この組曲は久石さんの曲の中でも大変聴き応えのある名曲です。


・『Asian X.T.C.』
Asian_xtc  アジアをテーマにした久石さんの一番新しいソロアルバムですが、ミニマル・ミュージックテイストの新曲がいくつか収録されています。ピアノと弦楽にサックスやマリンバ、さらにアジアの民族楽器によって奏でられるミニマルな旋律はアジアの悠久の時と大地を彷彿させます。
 ミニマルな曲としてお薦めは「Asian Crisis」です。

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