『自虐の詩』街を捨て書を読もう!
今回紹介する本は業田良家による泣ける4コマ漫画『自虐の詩』です。週刊宝石に1985年1月4・11日合併号~1990年8月2日号にかけて連載。その後、単行本化され口コミで人気が広がり、2007年には堤幸彦監督が中谷美紀と阿部寛を主演に映画化しました。
私は竹書房から発売されている上下巻の文庫本で読んだのですが、評判どおり後半涙なしでは見られない展開でした。話しは働かず金をせびるダメ男イサオとそんなイサオに献身的に尽くす幸江のどうしようもない日常生活をギャグ満載で描いていきます。
上巻は気にいらないことがあるとすぐにちゃぶ台をひっくり返すイサオに振り回される幸江の姿と、その周囲の人々の滑稽さと悲哀に満ちた人生がコミカルに描いており、読んでいて切ないのに笑ってしまいます。
客観的に見ればイサオと幸江の関係はDVに近い状態であり、なぜここまで幸江はイサオに愛情を持って尽くすのか不思議にすら思ってきます。
しかし、下巻を読むと、幸江がなぜイサオに愛情を持っているのかが徐々に分かってきます。下巻では幸江の不幸な生い立ちがクローズアップされ描かれていきます。ダメ親父との貧乏どん底の暮らし、学校でのイジメ、同じような境遇の熊本さんとの友情、東京への旅立ち、そしてイサオとの出会い。4コマ漫画とは思えないほどドラマチックなストーリー展開が続き、ラストは涙なしでは読めないほど感動的な人生賛歌で締めくくられます。
生まれてきたことのかけがけのなさ、生きることの意味、本当の幸せとは何かを一見不幸のどん底にいるように見える主人公たちを通して考えさせてくれます。
ここまで人間という生き物の弱さ・愚かさと強さ・逞しさを描いた漫画はそうそうないと思います。本作品を読むとどんな境遇であれ生きることに肯定的になれます。
ぜひ多くの皆さまに読んで欲しい傑作4コマ漫画です。
・出版社: 竹書房 (1996/06)
・著者:業田良家
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