映画・テレビ

『トゥルー・ロマンス』この映画を見て!

第311回『トゥルー・ロマンス』
Photo_3  今回紹介する作品はクエンティン・タランティーノ脚本、トニー・スコット監督によるバイオレンスアクション映画の傑作『トゥルー・ロマンス』です。
 本作品は脇役が大変豪華で、デニス・ホッパー、ヴァル・キルマー、ゲイリー・オールドマン、ブラッド・ピット、クリストファー・ウォーケン、サミュエル・L・ジャクソンと錚々たる顔ぶれが出演しています。

ストーリー:「ビデオショップに働く映画オタクの青年クラレンスは、誕生日に店長が紹介したコールガール・アラバマと出会う。互いに一目ぼれした二人は即座に結婚。アバラマは元ヒモの男に会いに行き殺されかけるが逆に男を殺害。逃げる際に衣装ケースと思って奪ってきたカバンには大量のコカインが入っていた。」

 私は高校生のときに本作品を劇場で見たのですが、激しいバイオレンス描写と純度100パーセントのラブストーリーとの絶妙なブレンドが大変印象に残りました。
 特に私が印象に残ったシーンはデニス・ホッパー演ずる主人公の父とクリストファー・ウォーケン演ずる主人公を追うギャングが対峙するシーン。短いシーンではありますが、2人の会話は緊張感が漲っており見ていて手に汗握ります。
 他にもゲイリー・オールドマンの常軌を逸した演技やダメ男を嬉しそうに演じるブラッド・ピット、ヒロインがぼこぼこに拷問されながら反撃するシーンなど見所は随所にあります。

 本作品はタランティーノの初脚本だそうで、彼の趣味嗜好や恋愛に対する妄想が詰め込まれた内容となっています。ストーリー展開は特にひねりもなく王道の展開ですが、タランティーノだけあって随所に過激な暴力シーンがあり、登場人物の台詞や言い回しも独特で印象に残ります。

 トニー・スコット監督の演出もテンポ良くタランティーノの脚本の持つ魅力を引き出すことに成功していると思います。タランティーノ自身が監督していたら良くも悪くも更に濃い作品になっていたと思うのですが、ハリウッドの職人気質の監督であるトニー・スコットが手がけたことにより万人受けしやすいテイストになったと思います。  

 ラストはタランティーノの脚本では主人公の2人は死ぬ予定だったそうですが、監督が2人をどうしても生き残らせたいと熱望してハッピーエンドに変更したそうです。ここは賛否両論分かれるところだと思いますが、個人的にはハッピーエンドになって良かったかなと思います。

上映時間 121分
製作国    アメリカ
製作年度 1993年
監督:トニー・スコット   
脚本:クエンティン・タランティーノ   
撮影:ジェフリー・L・キンボール   
音楽:ハンス・ジマー   
出演:クリスチャン・スレイター   
   パトリシア・アークエット   
   デニス・ホッパー   
   ヴァル・キルマー   
   ゲイリー・オールドマン   
   ブラッド・ピット   
   クリストファー・ウォーケン   
   サミュエル・L・ジャクソン   
   マイケル・ラパポート   
   ブロンソン・ピンチョット   

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『アンストッパブル』この映画を見て!

第310回『アンストッパブル』
Photo_2  今回紹介する作品はアメリカで実際に起きた貨物列車の暴走事故をもとに製作されたパニックアクション映画『アンストッパブル』です。
 トニー・スコット監督とデンゼル・ワシントンが『サブウェイ123 激突』に続いてタッグを組み、『スタートレック』で主演を務めたクリス・パインも参加。 暴走した列車を如何に止めるかにのみ焦点を当てた直球勝負の作品に仕上げています。

ストーリー:「ペンシルベニア州にある操車場で39両編成の貨物列車777号が運転士のミスによって無人のまま暴走を始めた。この列車には危険な化学物質とディーゼル燃料を積んでおり、暴走を止めなければ1時間40分後に人口密集地帯で脱線転覆する事態に陥る。鉄道会社は様々な手を使って列車を止めようとするが失敗。そんな中、貨物列車1206号を運転した勤続28年のベテラン機関士フランクと職務経験4ヶ月の新米車掌ウィルが777号を止めるべく立ち上がる。」

 年末年始ということもあり数多くの大作や話題作が公開されていますが、個人的には一番面白い作品でした。今どき珍しいくらいシンプルかつテンポの良いパニックアクション映画です。実話でもあり結末は列車が止まるのは分かっているにも関わらず、見せ方が上手いこともあり、最後まで手に汗握って見ることができました。

 本作品は始まって15分も経たない内に列車が暴走。その後は暴走する列車の脅威と何とか列車を止めようとする主人公たちの奮闘が描かれます。
 主人公2人の私生活のドラマも時折描かれますが、無駄に長くなく映画の程良いアクセントになっています。
 暴走する列車の描き方も重量感があり、全てのものを蹴散らし突っ走る姿は巨大なモンスターのようで迫力満点です。

 ここ最近パニック映画はスケールが大きい割りにストーリーが大味でイマイチなものが多かったのですが、本作品は小粒ながら満足感が高いです。

上映時間 99分
製作国    アメリカ
製作年度 2010年
監督:トニー・スコット   
脚本:マーク・ボンバック   
撮影:ベン・セレシン   
プロダクションデザイン:クリス・シーガーズ   
衣装デザイン:ペニー・ローズ   
編集:クリス・レベンゾン   
   ロバート・ダフィ   
音楽:ハリー・グレッグソン=ウィリアムズ   
出演:    デンゼル・ワシントン   
    クリス・パイン   
    ロザリオ・ドーソン   
    イーサン・サプリー   
    ケヴィン・ダン   
    ケヴィン・コリガン   
    ケヴィン・チャップマン   
    リュー・テンプル   
    T・J・ミラー   
    ジェシー・シュラム   
    デヴィッド・ウォーショフスキー   
    アンディ・アンバーガー   
    エリザベス・マシス   
    ディラン・ブルース

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『スカーフェイス』この映画を見て!

第309回『スカーフェイス』
Photo  今回紹介する作品はハワード・ホークスの『暗黒街の顔役』をアル・パチーノ主演、ブライアン・デ・パルマ監督でリメイクした『スカーフェイス』です。『プラトーン』のオリバー・ストーンが脚本を担当。音楽は『フラッシュダンス』のジョルジオ・モロダーが手がけています。

ストーリー:「1980年にキューバから反カストロ主義者として追放されマイアミへ逃げてきたトニー・モンタナはアメリカでの成功を夢見て、麻薬王フランクの下で麻薬の取り引きを行っていく。トニーは麻薬の取り引きで徐々に頭角を現していく。そんなトニーの姿にフランクは危険を感じるようになり、殺害を試みる。しかし、殺害は失敗して、逆にトニーにフランクは殺されてしまう。
 トニーはフランクの豪邸と愛人エルヴィラを手に入れ、マイアミの麻薬王として君臨して、巨万の富を手に入れる。しかし、警察による脱税の摘発をきっかけにトニーは次第に追い詰められていく。」

 本作品は3時間近い上映時間ですが、アル・パチーノのギラギラとした存在感と迫真の演技で最後まで飽きることなく見ることが出来ます。アル・パチーノは『ゴッドファーザー』を始めとして数多くの映画に出演していますが、個人的には本作品での演技が最高だと思います。本作品では乱暴で下品で傲慢だが極悪非道になりきれない弱さもある男を見事に演じきっています。

 デ・パルマ監督はアメリカの裏世界で成功して頂点を極めながらも破滅していく男の壮絶な生き様と死に様をストレートに描いています。デ・パルマ監督らしい凝ったカメラワーク等は見られませんが、過激な暴力描写が随所に盛り込まれています。特に前半の風呂場での電動のこぎりを使った拷問シーンは強烈なインパクトがあります。

 私は本作品で印象的だったのは何と言ってもラストの銃撃戦による主人公の壮絶な死に方です。破滅に向かって自ら突き進んでいく主人公の姿は哀れでもあり、潔くもあり、見ていて胸が締めつけられると同時に鳥肌が立ちました。

 本作品はマフィア映画の傑作であり、アル・パチーノの最高の演技を見ることが出来ます。

上映時間 170分
製作国    アメリカ
製作年度 1983年
監督:ブライアン・デ・パルマ   
製作:マーティン・ブレグマン   
脚本:オリバー・ストーン   
撮影:ジョン・A・アロンゾ   
編集:ジェラルド・B・グリーンバーグ   
音楽:ジョルジオ・モロダー   
出演:アル・パチーノ   
   スティーヴン・バウアー   
   ミシェル・ファイファー   
   ポール・シェナー   
   ロバート・ロジア   
   メアリー・エリザベス・マストラントニオ   
   F・マーレイ・エイブラハム   
   ミリアム・コロン   
   ラナ・クラークソン   
   ハリス・ユーリン   
   リチャード・ベルザー

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『バトル・ロワイアル』この映画を見て!

第308回『バトル・ロワイアル』
Photo  今回紹介する作品は中学生同士が殺しあうという過激なストーリーが話題になったバイオレンスアクション映画『バトル・ロワイアル』です。
 公開にあたって青少年への悪影響を与えるのではと国会でも議論になり、15歳未満は劇場で鑑賞できないR15指定となったこともマスコミで大きく取り上げられました。

ストーリー:「不況によるによる失業者たちの増加や多発する少年犯罪で荒廃した近未来の日本。
大人たちが自信を取り戻すために新世紀教育改革法・通称(BR法)が可決。その法律の内容は全国の中学3年生の中から無作為に選ばれた1クラスを最後の1人になるまで殺し合わせるという残酷なものだった。
 そして、城岩学園中学校3年B組が今回選ばれ、生徒42人が無人島に拉致され、最後の一人になるまで3日間殺しあうことになる。」

 私は公開当時に劇場まで見に行ったのですが、ストーリーや演出は突っ込みどころもありますが、テンポの良さと派手なアクションは見応えがあり、最後まで楽しんで鑑賞できました。

 本作品は深作欣二監督の実質的な遺作ですが、監督当時すでに70歳と高齢ながら演出はとてもエネルギッシュでケレン味があります。私が一番印象に残ったエピソードは灯台での殺し合いのシーン。仲の良かった友達同士が一人の死をきっかけに疑心暗鬼になり全員死んでいく様は見ていて非常に哀しかったです。
 本作品は残酷な殺し合いの中に中学生たちの青春模様や深作監督の閉塞社会で生きる若者たちへの熱いメッセージが込められていて、後味はとても爽やかです。
 ただ、所々リアリティにかけていて興ざめだったり、台詞や演出が臭すぎて見ていて恥ずかしくなる場面がいくつかありました。 

 役者の演技も主役である藤原竜也や前田亜季よりも、脇役の栗山千明や柴咲コウそして安藤政信の方がインパクトがありました。主役の2人は必死に逃げ惑うだけですが、脇役たちは己のために積極的に闘おうとするので、見ていてギラギラしていて痛快です。
 あと、学校の教師役を演じた北野武の演技も他の役者を圧倒する存在感があり、本作品の完成度を上げています。

 翌年に追加シーンを入れた特別篇も公開されています。クラスメートがバスケットをしているシーンや柴崎コウ演ずる光子の小さい頃のおぞましいエピソードなどが追加されています。光子のエピソードはよかったのですが、ラストにダラダラ続く追加カットは蛇足だったような気がします。

 本作品は賛否両論ありますが、バイオレンス青春映画として見るとなかなか面白いです。

上映時間 114分
製作国    日本
製作年度 2000年
監督:深作欣二   
原作:高見広春『バトル・ロワイアル』(太田出版刊)
脚本: 深作健太   
撮影:柳島克己   
美術:部谷京子   
編集:阿部浩英   
音楽:天野正道   
録音:安藤邦男   
出演:   藤原竜也   
    前田亜季   
    山本太郎   
    栗山千明   
    塚本高史   
    高岡蒼佑   
    石川絵里   
    神谷涼   
    柴咲コウ   
    安藤政信   
    日下慎   
    松沢蓮   
    宮村優子   
    美波   
    山村美智子   
    谷口高史   
    深浦加奈子   
    岩村愛   
    竜川剛   
    中井出健   
    ビートたけし   
     前田愛   

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『大地震』映画鑑賞日記

Photo 1970年代にハリウッドでブームになったパニック映画の代表的作品の一つである『大地震』。公開当時は地震を疑似体験するために開発された音響効果「センサラウンド」が大変話題になりました。また、出演者もチャールトン・ヘストン、エヴァ・ガードナー、ジョージ・ケネディと豪華な顔ぶれです。
 私はパニック映画が昔から好きでよく見ていて、本作品も小学校の頃に見たのですが、『ポセイドン・アドベンチャー』や『タワーリング・インフェルノ』と比べると印象が薄いです。

 最近久しぶりにDVDを借りて見返したのですが、今見ても地震のシーンはそれなりに迫力がありました。まだ、CGもない時代にミニチュアやセットや合成技術を駆使して、地震やダムの決壊による洪水で市街地が崩壊する様を克明に描こうとしています。

 ただ、肝心のストーリーがイマイチでした。脚本は『ゴッドファーザー』の原作者のマリオ・プーゾが手がけているのですが、主人公と妻と愛人との間で繰り広げられるメロドラマのパートがチープな上に退屈です。
 個人的にはメインのストーリーよりも州兵が混乱のの中で嫌いな人間を射殺したり、好きな女性を襲おうとするシーンの方がインパクトがありました。
 本作品は高層ビルや船という限定された空間でなく、街全体と舞台が大きくなったために、ストーリーも拡散してしまい登場人物たちへの感情移入しにくかったです。

上映時間 122分
製作国    アメリカ
製作年度 1974年
監督:マーク・ロブソン   
脚本:マリオ・プーゾ   
    ジョージ・フォックス   
撮影:フィリップ・H・ラスロップ   
特殊効果:アルバート・ホイットロック   
音楽:ジョン・ウィリアムズ   
出演:チャールトン・ヘストン   
      エヴァ・ガードナー   
      ジュヌヴィエーヴ・ビジョルド   
      ジョージ・ケネディ   
      リチャード・ラウンドトゥリー   
      ローン・グリーン   
      バリー・サリヴァン   
      マージョー・ゴートナー   
      ロイド・ノーラン   
      ヴィクトリア・プリンシパル   
      モニカ・ルイス   
      ペドロ・アルメンダリス・Jr   
      タイガー・ウィリアムズ

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『ポルノ時代劇 忘八武士道』この映画を見て!

第307回『ポルノ時代劇 忘八武士道』
Photo  今回紹介する作品は小池一雄・小島剛夕の同名原作をを日本映画の鬼才・石井輝男監督が完全映画化した『ポルノ時代劇 忘八武士道』です。

ストーリー:「“人斬り死能"と恐れられている明日死能は役人に追われていたが、吉原遊廓の忘八者に命を助けられる。“忘八者"とは、「孝、悌、忠、信、礼、義、廉、恥」を全て捨てた無法者で、人にして人に非ず、人たる姿を忘れた鬼畜外道の集りであった。明日は忘八者の仲間入りを勧められる。吉原の総名主・大門四郎兵衛に気に入れられた明日は客分として扱われる。
 この頃の江戸は湯女や茶屋女などの幕府非公認の性風俗が流行し、幕府の公認を受けている吉原は経営を圧迫されていた。それらをつぶす機会を狙っていた大門は明日を利用して湯女や茶屋女を潰す行動に出るのだが・・・」

 本作品は35年以上前の作品でありますが、今見ても強烈なインパクトがあります。長髪の丹波哲郎の切れのある殺陣、次々と登場する全裸の女性、そして激しく噴出す血と飛んでいく首や腕。エログロ・バイオレンスのオンパレードで一瞬たりとも目が離せません。

 ストーリーは荒唐無稽ではありますが、吉原などのセットは凝っていますし、江戸時代の性風俗の丁寧に描写していますし、時代劇に欠かせない立ち回りは迫力満点ですし、見ていて飽きません。
 登場する役者の演技やメイクも大変濃く、小池監督の演出もサイケでケレン味に溢れており、見る者を独特の世界に引きずり込んでくれます。

 私が一番印象に残ったシーンは主人公を助けるための女性たちが着物を着て火の中に飛び込み転げまわって消火活動をして、鎮火後に火照った体を冷やすために着物を脱いで素っ裸で水浴びをするところです。そのぶっ飛んだ演出とサービス満点の映像に見ていてお腹がいっぱいになります。

 また、『ウルトラセブン』のアンヌ隊員役で人気のある女優・ひし美ゆり子が惜しげもなく裸体を披露しており、ストーリーとは無関係な白人女性に対する拷問シーンを迫力満点に演じています。

 ラストのアヘンで意識が朦朧とした主人公が雪の降る中で彼を捕らえようとする幕府の人間たちを斬りまくるシーンは日本映画史に残るほどスプラッターな立ち回りが繰り広げられます。血が飛び、腕や首が水平に飛んでいく演出は残酷さを超えたカタルシスがあります。

 本作品はR18指定であり、18歳以下の方は見られませんが、カルト映画好きなら一度は見て損はないと思います。

上映時間 81分
製作国    日本
製作年度 1973年
監督:    石井輝男   
原作:    小島剛夕   
    小池一雄   
脚本:    佐治乾   
撮影:    鈴木重平   
美術:    吉村晟   
編集:    市田勇   
音楽:    鏑木創   
出演:    丹波哲郎   
    伊吹吾郎   
    遠藤辰雄   
    内田良平   
    久野四郎   
    深江章喜   
    ひし美ゆり子   
    相川圭子   
    池島ルリ子   
    一の瀬レナ   
    佐藤京一   
    原田君事   
    小林千枝   
    北川マキ   
    笹木俊志   

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『サバイバル・オブ・ザ・デッド』映画鑑賞日記

Photo  ゾンビ映画の巨匠ジョージ・A・ロメロ監督が前作『ダイアリー・オブ・ザ・デッド』に登場した脇役を主役に据えて製作した続編とも言える作品『サバイバル・オブ・ザ・デッド』。本作品はグレゴリー・ペック主演の傑作西部劇『大いなる西部』をモチーフにして、西部劇タッチのゾンビ映画に仕上がっています。

 本作品は前作で主人公たちの物資を略奪した州兵たちが主人公です。ゾンビを倒しながら生き延びていた主人公たちがゾンビのいない安全な島があると聞き、島を目指します。しかし、たどり着いた島は2つの一家がゾンビをめぐって抗争を繰り広げており、主人公たちも人間たちの不毛な抗争に巻き込まれていきます。 

 本作品は人間とゾンビとの激しい攻防戦を期待して見ると肩透かしを喰らいます。本作品はゾンビのいる世界を舞台にしていますが人間同士の愚かな争いに対して警鐘を鳴らす社会派作品です。人間世界が崩壊に近づいていても、主義思想の違いや欲望のために争い続け自滅していく人間たちの姿をシニカルに描いています。そういう意味ではロメロ監督らしいゾンビ映画です。
 また、西部劇をモチーフにしていることもあり、馬に乗っているゾンビが登場したり、銃による決闘シーンなども盛り込まれています。そういう意味ではクラシカルな仕上がりになっています。

 もちろんゾンビ映画に欠かせない残酷描写も満載ですし、『死霊のえじき』でも描かれていたゾンビを飼いならす描写もあります。個人的にはロメロ監督らしいゾンビ映画だったので最後まで飽きることなく見ることが出来ました。

 ただ、残念な点もいくつかあり、低予算のためかスケールが小さく、ゾンビの数も少なすぎます。セットや演出も所々チープな印象を受けました。また世界の崩壊を描いているにもかかわらず、終末感や緊張感といったものがあまり伝わってきません。また、ラストの馬をゾンビが食べるシーンは正直どうかと思いました。

 本作品は誰にでもお薦めできる作品とは言いがたいですが、ロメロ監督のゾンビシリーズが好きなら見て損はないと思います。

上映時間 90分
製作国    アメリカ/カナダ
製作年度 2010年
監督:ジョージ・A・ロメロ   
脚本:ジョージ・A・ロメロ   
撮影:アダム・スウィカ   
特殊効果メイクアップ:グレッグ・ニコテロ   
プロダクションデザイン:アーヴ・グレイウォル   
衣装デザイン:    アレックス・カヴァナー   
編集:マイケル・ドハティ   
音楽:ロバート・カーリ   
出演:    アラン・ヴァン・スプラング   
    ケネス・ウェルシュ   
    キャスリーン・マンロー   
    デヴォン・ボスティック   
    リチャード・フィッツパトリック   
    アシーナ・カーカニス   
    ステファーノ・ディマッテオ   
    ジョリス・ジャースキー   
    エリック・ウールフ   
    ジュリアン・リッチングス   
    ウェイン・ロブソン

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2010年劇場公開映画マイベスト5

 今年も数多くの映画が公開されました。そこで私が今年公開された映画の中で特に印象に残った&満足した映画ベスト5を紹介したいと思います。

5位『十三人の刺客』
Photo  1963年に工藤栄一監督が片岡千恵蔵を主演に製作した傑作時代劇を三池崇史監督が豪華キャストでリメイクした『十三人の刺客』。前半は稲垣吾郎演ずる暴君のこれでもかという極悪非道ぶりに、後半は13人対200人の激しい立ち回りに目が釘付けになり、2時間半近い上映時間があっという間でした。役者も豪華で、セットもリアルであり、三池監督の演出もエネルギッシュで見応え満点です。ここまで派手で面白い時代劇は久しくなかったので私としては大変満足しました。

4位『インビクタス/負けざる者たち』
Photo_2  マンデラ大統領就任後の南アフリカで開催されたラグビーワールドカップを巡る実話をクリント・イーストウッド監督が映画化した『インビクタス/負けざる者たち』。ここ最近公開される作品全て傑作のクリント・イーストウッド監督。今回もまたまた傑作でした。実話でスポーツものという下手すると安っぽいお涙頂戴のドラマになりがちな素材ですが、そこはイーストウッド監督。抑制された手堅い演出で見事にまとめあげ、希望に満ちた爽やかな感動作に仕上げてくれました。

3位『第9地区』
9  異星人を難民として受入れることになった南アフリカを舞台に、異性人を専用の居住区域に強制移住させる計画に関わった主人公が思わぬ事件に巻き込まれていくというストーリーのSFアクション映画『第9地区』。映画の前半はドキュメンタリータッチで人間と異性人の間で起こる摩擦や差別をシニカルに描き、中盤以降は主人公の逃亡劇がスリリングに描かれ、ラストは手に汗握るド派手なアクションが展開。一瞬たりとも画面から目を離すことが出来ません。

2位『インセプション』
Photo_3  クリストファー・ノーラン監督が10年ほど前から構想していた夢を舞台にしたSF超大作『インセプション』。夢が幾層にも重なっている複雑な設定と夢の中で繰り広げられる迫力満点のアクションの連続に圧倒される作品です。私は劇場で2回見たのですが、2回目の方がある程度ストーリーが分かった状態で見ているので、監督が随所に仕込んだ伏線の発見や主人公の妻に対する葛藤のドラマをじっくり味わうことが出来ました。メジャー系のハリウッド映画では久しぶりにクオリティが高い作品だと思いました。

1位『告白』
Photo_4  湊かなえの同名ベストセラーを『嫌われ松子の一生』の中島哲也監督が完全映画化した『告白』。生徒に子どもを殺された教師の恐るべき復讐と子どもを殺した生徒の過酷な顛末をダークな映像と演出で描いています。私は原作未読で内容も良くを知らないまま、中島哲也監督の最新作ということで見に行ったのですが、衝撃的な内容と映画としての完成度の高さにスクリーンに釘付けになりました。人間の醜いエゴイズムや悪意そして脆さを真正面から描いており、後味も決して良くはないのですが、命の重さと人の心の闇について考えさせられる作品です。

・2009年劇場公開映画マイベスト5
・2008年劇場公開映画マイベスト5
・2007年劇場公開映画マイベスト5
・2006年劇場公開映画マイベスト5
・2005年劇場公開映画マイベスト5

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『トロン:レガシー』映画鑑賞日記

Photo  1982年にジェフ・ブリッジス主演でディズニーが製作した『トロン』の続編となるSF映画『トロン:レガシー』。私は予告編を見たときから、そのスタイリッシュな映像と音楽に公開をとても楽しみにしていました。

 公開翌日に映画館に足を運んで鑑賞したのですが、率直な感想としては微妙でした。前半の主人公がサイバーワールドに取り込まれて突然闘う破目に陥るまでは映像の圧倒的な迫力に見ていてかなり面白かったのですが、中盤以降は会話シーンが多くなりストーリーのテンポも単調かつスローペースで正直ウトウト寝かけてしまいました。ラストの敵とのバトルも華麗な映像の割りにアクションの盛り上がりに欠けていて、見ていて不完全燃焼でした。

 本作品のストーリーはとてもシンプルです。主人公がサイバーワールドに入り込み、行方不明になった父と出会い、プログラムたちの人間世界への反乱を防ぐという展開です。悪い敵を親子で力をあわせて退治するというディズニーらしい王道の話しであり誰が見ても一定楽しめますが、特にひねりやどんでん返しもなくSF映画として見るとありきたりで退屈です。
 また、サイバーワールドと現実世界との関係性がいまいち分からず、人間がどうやってプログラム内に入っていくのか、またプログラムがどうやって現実世界に実体を持って出てこようとしているのか疑問に思ってしまいました。それは突っ込んではダメなところかもしれませんが、そこをもう少しきちんと説明しないと映画の世界観に説得力がないような気がしました。

 本作品で話題になっている3D映像も2D映画より映像全体に多少奥行き感はあるものの、正直そこまで3Dの効果を感じるシーンはありませんでした。別にこの程度なら3Dでなくても良かったのではと思いました。もともと暗い映像が3Dメガネのため、さらに暗く見えにくかったです。
 サイバーワールドの描写はスタイリッシュではありますが、目新しさはなく、ずっと同じような光景ばかりで中盤からは飽きてしまいました。
 映像としてはサイバーワールドの3D映像よりもオスカー俳優の60代のジェフ・ブリッジスがCGを駆使して30代の姿で違和感なく登場させ悪役も演じているところの方が凄いと思いました。(若い人がメイク等で老けた役を演じることは今までもありましたが、逆はなかったので・・・)

 結構批判的に書いてしまいましたが、ダフト・パンクのエレクトロニック・ミュージックは映画の世界観にとてもマッチしていました。私は見終わってサントラが思わず欲しくなりました。
 また、オリヴィア・ワイルド演じるヒロインのクオラが非常に美しく魅力的なキャラクターで、見ていて主人公よりも存在感がありました。

 本作品は期待を煽る予告編と比べると本編は残念な出来でした。ただ、見るならDVDよりは大画面で見た方が迫力はあるかと思います。 

上映時間  125分
製作国    アメリカ
製作年度 2010年
監督:    ジョセフ・コシンスキー   
製作:    ショーン・ベイリー   
    ジェフリー・シルヴァー   
    スティーヴン・リズバーガー   
脚本:    エディ・キッツィス   
    アダム・ホロウィッツ   
撮影:    クラウディオ・ミランダ   
プロダクションデザイン:    ダーレン・ギルフォード   
衣装デザイン:    マイケル・ウィルキンソン   
音楽:    ダフト・パンク   
出演:    ギャレット・ヘドランド   
    ジェフ・ブリッジス   
    オリヴィア・ワイルド   
    マイケル・シーン   
    ボー・ガレット   
    ブルース・ボックスライトナー   
    ヤヤ・ダコスタ   
    セリンダ・スワン   
    ジェームズ・フレイン   
    エリザベス・マシス   

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『SPACE BATTLESHIP ヤマト』映画鑑賞日記

Space_battleship  日本アニメの名作「宇宙戦艦ヤマト」を実写映画化した『SPACE BATTLESHIP ヤマト』。監督にVFXでは定評のある「ALWAYS 三丁目の夕日」の山崎貴、主題歌にスティーヴン・タイラー、そして主演にSMAPの木村拓哉という豪華スタッフ・キャストで製作された本作品。私は公開前から壮大かつ長大な物語をどう実写化して映画としてまとめるのか非常に興味がありました。今まで日本のアニメを実写化して成功した作品はほとんどないと言っても過言ではない中、今回の『ヤマト』も失敗に終わるのではと見るまで思っていました。実際、私の周りでも別に劇場で見なくても良いかなと言う意見が大半でした。
 ただ、邦画が本格的なSF映画を手がけたということもあり出来が気になって、先週の土曜日に劇場まで足を運んで見てきました。
 感想としては脚本とキムタクの演技はイマイチでしたが、映像に関しては予算の少ない邦画にしてはなかなかの完成度だったと思います。(ただ、映像もハリウッド映画に比べるとリアリティ度はどうしても下がりますが。)

 ストーリーは基本は「宇宙戦艦ヤマト劇場版」で、クライマックスは「さらば宇宙戦艦ヤマト」のエピソードを強引に足した感じです。長大な物語を2時間ちょっとにいろいろなエピソードを詰め込み強引にまとめていることもあり、登場人物たちのドラマが表面的なものになってしまっています。その為、後半の登場人物たちが次々死んでいくシーンもいまいち胸に迫ってくるものがありません。
反面、古代と森雪のベタな恋愛模様がダラダラと描かれ、地球の存亡という緊張感溢れるはずのストーリーが弛緩しています。
 また、船内での主人公たちが交わす会話は見ている側が恥ずかしくなるほどチープで古臭いです。

 古代を演ずるキムタクの演技は普段テレビドラマで見せるいつもの演技と変わらず、本作品にはあっていないような気がしました。

 演出に関してはハリウッドのSF映画を彷彿させるシーンが数多く、もう少しオリジナリティを出した方が良かったのではと思いました。ラストにスティーヴン・タイラーの主題歌がかかるのも『アルマゲドン』のパクリっぽくて嫌でした。
 また、ヤマト艦内や荒廃した地球のセットもこじんまりとしてとしてリアリティにかけていたような気がします。もう少しお金をかけてセットを作りこんで欲しかったです。
 あと、地球を離れて、14万8千光年という長い旅をしているにも関わらず、その時間経過や苦労があまり描かれていないため、感動が薄れてしまっているような気がしました。

 いろいろ不満ばかり書きましたが、日本のSF映画としてはかなり頑張っていると思います。個人的に良いと思った点は宮川奏さんの有名なBGMがかかるカットとアナライザーの予想外の活躍。この2つに関しては燃えました。

上映時間 138分
製作国    日本
製作年度 2010年
監督:山崎貴   
原作:西崎義展   
脚本:佐藤嗣麻子   
撮影:柴崎幸三   
美術:上條安里   
編集:宮島竜治   
音楽:佐藤直紀   
音響効果:柴崎憲治   
主題歌:スティーヴン・タイラー『LOVE LIVES』
VFX:山崎貴   
照明:吉角荘介   
出演:    木村拓哉
    黒木メイサ   
    柳葉敏郎   
    緒形直人   
    西田敏行   
    高島礼子   
    堤真一   
    橋爪功   
    池内博之   
    マイコ   
    矢柴俊博   
    波岡一喜   
    三浦貴大   
    斎藤工   
    山崎努

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