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2010年9月26日 - 2010年10月2日

『東京ゴッドファーザーズ』この映画を見て!

第305回『東京ゴッドファーザーズ』
Photo_3  今回紹介する作品は先月惜しくも亡くなった今敏監督が現代の東京を舞台に描く奇跡の物語『東京ゴッドファーザーズ』です。声の出演に江守徹、梅垣義明、岡本綾が参加しています。

ストーリー:「元競輪選手のギンちゃん、元ドラッグ・クイーンのハナちゃん、家出少女のミユキの3人は、ホームレスとして新宿の公園でダンボールハウスにて共同生活をしていた。そんな彼らはクリスマスの夜にゴミ置き場の中からひとりの赤ん坊を見つける。ギンちゃんは警察に届けるべきだと主張するが、赤ん坊を欲しがっていたハナちゃんは、“清子”と勝手に命名して手放そうとしない。。ハナちゃんに押し切られる形で3人は自分たちで清子の親探しをすることにしたのだが・・・。」

 本作品を始めてみた時、まるで実写かと思うほど描きこまれた東京の街並みにまず驚きました。そんなリアルな風景の中で繰り広げられる赤ん坊をめぐる物語はあまりにも出来すぎた偶然の連続です。普通ここまでご都合主義な展開が続くとうそ臭くて白けてしまいますが、本作品はキャラクターの魅力とテンポの良いシナリオと演出で最後まで飽きることなく楽しむことができます。

 主人公の3人はそれぞれ辛い事情があって家族と別れてホームレスになっているのですが、そんな彼らが赤ん坊のために奔走する中で自分たちの人生を見つめなおしていきます。その展開はベタなのですが、なぜか感動してしまいます。

 赤ん坊の両親を探す話しも終盤に思わぬ展開となり、主人公たちがアクション映画並みの活躍をするのですが、ラストに起こる本作品最大の奇跡はアニメだから表現ができる素晴らしい締めくくり方だったと思います。

 あとオープニングのスタッフロールも東京の街並みに溶け込むよう工夫が凝らしてあって面白い試みだと思いました。

 本作品はアニメ好きでない方でも十分楽しめる作品に仕上がっています。心温まる奇跡のストーリーを是非一度ご覧になってください。  

上映時間 90分
製作国    日本
製作年度 2003年
監督:今敏   
企画:丸山正雄   
脚本:今敏、信本敬子   
キャラクターデザイン:今敏、小西賢一   
作画監督:小西賢一   
美術監督:池信孝   
色彩設計:橋本賢   
撮影監督:須貝克俊   
音楽:鈴木慶一   
音響監督:三間雅文   
声の出演:江守徹   
    梅垣義明   
    岡本綾   
    飯塚昭三   
    加藤精三   
    石丸博也   
    槐柳二   
    屋良有作   
    寺瀬今日子   
    大塚明夫   
    小山力也   
    こおろぎさとみ   
    柴田理恵   
    矢原加奈子   
    犬山犬子   
    山寺宏一   

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『千年女優』この映画を観て!

第304回『千年女優』
Photo_2  今回紹介する作品は先日惜しくも亡くなった今敏監督の代表作『千年女優』です。公開されるや否や世界各国の映画祭で高い評価を受け、国内でも『千と千尋の神隠し』と同時に第5回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門大賞を受賞しています。

ストーリー:「芸能界を引退した伝説の大女優・藤原千代子は自分がかつて撮影していた撮影所の取り壊しに伴うインタビューの依頼に応じて30年ぶりにカメラの前に姿を現した。以前から千代子のファンだった立花源也とカメラマンの井田恭二は千代子の自宅を訪れて、インタビューを開始。千代子は女学生の頃に恋した名も知らぬ男性を追って映画女優になった半生を映画の記憶と交錯しながら語っていく…。」

 ストーリーは主人公の女優の人生と彼女が出演した映画を重ね合わせて描いており、どこまでが現実でどこからが空想か分からない虚実入り乱れた構成となっています。始めてみた時は次々と場面が展開していくので最初戸惑いましたが、慣れてくると平沢進の音楽の効果もあってか非常に心地よく感じるようになりました。

 本作品の構成で私が印象的だったのが、二人のインタビュアーが主人公の回想シーンに突如入る込むところです。一人が主人公の長年の大ファンで女優の回想の中で重要な役どころとして振る舞い、もう一人が主人公のことをあまり知らず傍観者としてカメラを回し続ける。この2人が本作品の狂言回しの役割を見事に果たしていたと思います。

 戦国時代から激動の戦前戦後そして宇宙船が飛ぶ未来という壮大な時間の流れを90分という短い時間に詰め込み、一人の女優の情熱的で一途な生き様を疾走感と躍動感に満ちた演出で描き切る今敏監督の手腕は大変素晴らしいです。
 また、『蜘蛛巣城』や『無法松の一生』など日本映画の名作にオマージュを捧げたシーンや昭和の大女優たちを彷彿さえるエピソードの数々も邦画ファンにはたまりません。

 ラストの主人公の台詞に関しては賛否両論あるかと思いますが、個人的には賛同できます。私は本作品は一途な純愛の素晴らしさを単に描いた作品でなく、好きな男をひたすら追い続ける自分の姿に恋する女性のエゴイズムをポジティブに描いた作品だと思っていますので。

上映時間 87分
製作国    日本
製作年度 2002年
監督:    今敏   
企画:    丸山正雄   
原案:    今敏   
脚本:    今敏   
    村井さだゆき   
作画監督:本田雄   
    井上俊之   
    濱洲英喜   
    小西賢一   
    古屋勝悟   
美術監督:池信孝   
色彩設計:橋本賢   
撮影監督:白井久男   
音楽:平沢進   
音響監督:三間雅文   
声の出演:折笠富美子   
    小山茉美   
    荘司美代子   
    飯塚昭三   
    佐藤政道   
    小野坂昌也   
    津田匠子   
    鈴置洋孝   
    片岡富枝   
    徳丸完   
    京田尚子   
    山寺宏一   
    津嘉山正種   

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『十三人の刺客』(2010年版)この映画を観て!

第303回『十三人の刺客』(2010年版)
Photo  今回紹介する作品は1963年に工藤栄一監督が片岡千恵蔵を主演に製作した傑作時代劇を『ヤッターマン』の三池崇史監督が豪華キャストでリメイクした『十三人の刺客』です。

ストーリー:「時は江戸時代末期、明石藩江戸家老間宮図書が将軍・家慶の弟で明石藩主・松平斉韶の暴君ぶりを訴え自決する。松平斉韶は老中への就任も決まっている男だが、その極悪非道かつ無慈悲な振る舞いは目に余るものがあった。幕府の存亡に危機感を募らせる老中の土井利位は御目付役の島田新左衛門に斉韶の暗殺命令を下す。松平斉韶の極悪非道ぶりに怒り心頭の島田新左衛門は暗殺のための計画を練る。そして、腕に覚えある侍たちを集め、参勤交代で帰る途中の斉韶一行を中山道の落合宿で討つ作戦を立てる。」

 日本ホラー映画の傑作『オーディション』の脚本家・天願大介と監督・三池崇史がコンビを組んだ作品ということもあり劇場に足を運んで鑑賞しました。前半は松平斉韶のこれでもかという極悪非道ぶりに、後半は13人対200人の激しい立ち回りに目が釘付けになり、2時間半近い上映時間があっという間でした。ここまで派手で面白い時代劇は久しくなかったので大変満足しました。

 まず、私が度肝を抜いたのは稲垣吾郎演ずる暴君の常軌を逸した振る舞いの数々です。子どもを矢で射殺すわ、娘の両腕両足を切断するわの鬼畜ぶりで、近年の邦画で一番インパクトのある悪役だといっても過言でありません。前半で敵の非道さをしっかり見せつけることで、主人公たちの暗殺作戦に観客も感情移入することができたと思います。

 また、十三人の刺客たちの人間ドラマにも敢えて触れず、ひたすら目的を達成しようとする主人公たちと何とかそれを阻止しようとする鬼頭半兵衛の姿だけに絞ったところも緊張感があって良かったと思います。(逆にそれが物足りないという人もいるかと思いますが)

 後半は約50分間延々と戦闘シーンが続くのですが、血と泥にまみれながら侍たちが刀で殺しあう姿は見ている側もヘトヘトになるほどです。

 三池監督の演出はリアリズムとケレン味に溢れており見応えがあります。落合宿のセットも生活の息吹が感じられるほど凝っていますし、室内や夜など暗い場面も変に明るくせず暗く撮影しているところもリアリティを感じました。

 役者に関して言うと、役所広司や市村正親の演技が素晴らしいのはもちろんの事ですが、予想以上に稲垣吾郎のクールな顔立ちに狂気を秘めた演技がインパクトがありました。国民的アイドルであるSMAPのメンバーがこんな悪役を演じられるとは正直驚きました。ある意味、助演男優賞ものです。
 また、松方弘樹もさすが時代劇出身だけあって、殺陣の切れが他の役者とは違います。彼の殺陣がスクリーンで見られるだけでも本作品は価値があります。
 ただ、伊勢谷友介演じる山の民に関しては賛否両論あるかと思いますが、個人的には三池さんらしいキャラクター造形で好感が持てました。劇場でも彼が登場するシーンでは笑いが起こっており、一服の清涼剤としての役割を見事に果たしていたと思います。ただラストでの登場に関してはあまりにも非現実的で違和感ありました。

 本作品は久しぶりに邦画が本気を出して製作した娯楽時代劇です。ぜひ大画面で見ることをお薦めします。
 ちなみに三池監督は3Dで小林正樹監督の『切腹』もリメイクすることになったそうで、そちらも大変楽しみです。

上映時間 141分
製作国    日本
製作年度 2010年
監督:    三池崇史   
原作:    池宮彰一郎   
脚本:    天願大介   
撮影:    北信康   
美術:    林田裕至   
編集:    山下健治   
音楽:    遠藤浩二   
出演:    役所広司   
    山田孝之   
    伊勢谷友介   
    沢村一樹   
    古田新太   
    高岡蒼甫   
    六角精児   
    波岡一喜   
    石垣佑磨   
    近藤公園   
    窪田正孝   
    伊原剛志   
    松方弘樹   
    吹石一恵   
    谷村美月   
    斎藤工   
    阿部進之介   
    内野聖陽   
    光石研   
    岸部一徳   
    平幹二朗   
    松本幸四郎   
    稲垣吾郎   
    市村正親

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