« 2010年8月29日 - 2010年9月4日 | トップページ | 2010年9月26日 - 2010年10月2日 »

2010年9月5日 - 2010年9月11日

『恋する幼虫』この映画を見て!

第302回『恋する幼虫』
Photo  今回紹介する作品は『片腕マシンガール』の井口昇監督による純愛コメディーホラー『恋する幼虫』です。

ストーリー:「漫画家・西尾フミオは少年の頃に抱えた性的トラウマが原因で異性とうまく付き合えずにいた。そんなフミオのもとに藤井ユキという新人編集者がやってくる。彼女には中年オヤジの恋人・木村がいたが、上手く付き合えないでいた。
 そんなある日、フミオはユキに新作のことで苦言を呈されて激情。ユキの顔にペンを突き刺してしまう。それがきっかけで仕事も恋人も失うユキ。フミオは彼女のことが心配になり、自宅を訪ねてみると顔の傷は想像以上に悪化していた。罪悪感から彼女の言いなりになるフミオ。やがて彼女の顔の傷は奇怪な吸血生命体へと変化を遂げる。血を求める彼女のために協力し始めるフミオだったが・・・。」

 本作品は見た目はチープでグロくてシュールなB級作品であるのですが、中身は純度100パーセントの恋愛映画です。バカバカしく現実離れしたシーンの連続であるにもかかわらず、登場人物の屈折した感情や恋に揺れる心が繊細に描かれており、ドラマとして見応えがあります。
 また、気持ち悪いシーンが多いにも関わらず、演出がスローでほのぼのとしており見ていて嫌悪感をそれほど抱きません。

 映画の冒頭はフミオの過去の性的トラウマが描かれるのですが、その描き方にまず度肝を抜かれました。性行為をあのような形で描く監督の発想力に感心しました。

 映画のストーリーは不器用で心を病んでいる主人公たちが出会い、傷つけあい、求め合う姿を描いていくのですが、フミオを演じた荒川良々とユキを演じた新井亜樹の演技が絶品です。
 荒川良々の独特な顔と朴訥とした台詞回しは印象に残りますし、新井亜紀の最初は暗く幸薄そうな印象の女性が次第に可愛く色っぽい女性に見えてくる演技も非常に素晴らしいです。あと、フミの元恋人を演じる松尾スズキの見た目と演技の濃さも強烈です。

 本作品は性行為そのものを描くシーンはほとんどないのですが、非常にエロティックなシーンが随所にあります。特にユキが血を吸うシーンが放つエロスは強烈です。 

 映画はクライマックスに近づくにつれて世界の崩壊をも描くぶっ飛んだ展開になるのですが、ラストはある意味でハッピーエンドな締めくくり方で、ユキが○○○がないフミオに寄り添って寝る姿を見ていて心が和みました。

 万人受けする映画ではありませんがカルト映画が好きな人はぜひ一度ご覧ください。

上映時間 110分
製作国    日本
製作年度 2004年
監督:    井口昇   
脚本:    井口昇   
撮影:    西川裕   
    太田丈   
    井口昇   
特殊メイク:西村喜廣   
音楽:北野雄二   
出演:    荒川良々   
    新井亜樹   
    乾貴美子   
    唯野未歩子   
    伊勢志摩   
    村杉蝉之介   
    松尾スズキ

| | コメント (0) | トラックバック (1)

『自虐の詩』街を捨て書を読もう!

Photo  今回紹介する本は業田良家による泣ける4コマ漫画『自虐の詩』です。週刊宝石に1985年1月4・11日合併号~1990年8月2日号にかけて連載。その後、単行本化され口コミで人気が広がり、2007年には堤幸彦監督が中谷美紀と阿部寛を主演に映画化しました。

 私は竹書房から発売されている上下巻の文庫本で読んだのですが、評判どおり後半涙なしでは見られない展開でした。話しは働かず金をせびるダメ男イサオとそんなイサオに献身的に尽くす幸江のどうしようもない日常生活をギャグ満載で描いていきます。

 上巻は気にいらないことがあるとすぐにちゃぶ台をひっくり返すイサオに振り回される幸江の姿と、その周囲の人々の滑稽さと悲哀に満ちた人生がコミカルに描いており、読んでいて切ないのに笑ってしまいます。
 客観的に見ればイサオと幸江の関係はDVに近い状態であり、なぜここまで幸江はイサオに愛情を持って尽くすのか不思議にすら思ってきます。

 しかし、下巻を読むと、幸江がなぜイサオに愛情を持っているのかが徐々に分かってきます。下巻では幸江の不幸な生い立ちがクローズアップされ描かれていきます。ダメ親父との貧乏どん底の暮らし、学校でのイジメ、同じような境遇の熊本さんとの友情、東京への旅立ち、そしてイサオとの出会い。4コマ漫画とは思えないほどドラマチックなストーリー展開が続き、ラストは涙なしでは読めないほど感動的な人生賛歌で締めくくられます。

 生まれてきたことのかけがけのなさ、生きることの意味、本当の幸せとは何かを一見不幸のどん底にいるように見える主人公たちを通して考えさせてくれます。
 ここまで人間という生き物の弱さ・愚かさと強さ・逞しさを描いた漫画はそうそうないと思います。本作品を読むとどんな境遇であれ生きることに肯定的になれます。
 ぜひ多くの皆さまに読んで欲しい傑作4コマ漫画です。

・出版社: 竹書房 (1996/06)
・著者:業田良家

| | コメント (0) | トラックバック (1)

« 2010年8月29日 - 2010年9月4日 | トップページ | 2010年9月26日 - 2010年10月2日 »