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2010年8月15日 - 2010年8月21日

『老人Z』この映画を見て!

第300回『老人Z』
Z  今回紹介する作品は高齢者の介護問題をテーマにしたシニカルなSFアニメ『老人Z』です。『AKIRA』の大友克洋が原作と脚本を手がけ、最新のコンピューターを搭載した高齢者の介護ベッドが暴走するというストーリーをブラックユーモアとアクション満載で描いていきます。
 キャラクター原案は漫画家・イラストレーターの江口 寿史が担当。監督は『BLOOD THE LAST VAMPIRE』の北久保弘之が手がけています。

ストーリー:「看護学校に通うハルコは高沢老人の自宅での介護をボランティアで行っていたが、ある日突然高沢老人は厚生省の開発した介護ロボット「Z-001号機」のモニターに選ばれて連れ去られてしまう。見舞いに行った先でチューブだらけになった高沢の姿を見てショックをうけるハルコ。そんな頃、ネットワークを通して高沢老人から助けて欲しいとSOSのメッセージが入る。ハルコは友だちと共に助け出そうとするが失敗。そんな頃、「Z-001号機」が高沢老人の意識とリンクして、病院から抜け出し暴走を始める。」

 本作品は約20年くらい前の作品でありますが今見ても色褪せてなく大変面白いです。ストーリーは高齢者の介護問題を題材にしていますが、コミカルにテンポ良く描いているので、スカッと笑ってみることが出来ます。
 介護ロボットが暴走してからの怒涛の展開は一瞬たりとも目を離すことが出来ません。クライマックスは『AKIRA』を彷彿させるような描写があり見応えがありました。

 あと『2001年宇宙の旅』にオマージュを捧げたネタや描写があるところも個人的にはツボでした。

 80分と短い作品でありますが、中身が濃く大変面白いです。ぜひ一度ご覧ください。

上映時間 80分
製作国    日本
製作年度 1991年
監督:    北久保弘之   
原作:    大友克洋   
脚本:    大友克洋   
キャラクター原案:江口寿史   
作画監督:飯田史雄   
美術監督:佐々木洋   
音楽:板倉文,小川美潮   
声の出演:松村彦次郎   
     横山智佐   
     小川真司   
     近石真介   
     辻谷耕史   
     佐藤智恵   
     松本梨香   
     槐柳二

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『その男、凶暴につき』この映画を見て!

第299回『その男、凶暴につき』
Photo  今回紹介する作品は北野武の初監督作品『その男、凶暴につき』です。本作品は当初の予定では深作欣二が監督することになっていたのですが、スケジュール調整が出来なかったために、主役のビートたけしが監督も務めることになりました。

ストーリー:「首都圏の警察署に勤務する我妻は捜査のためなら暴力も厭わない性格のため署内でも敬遠されていた。そんなある時、港で麻薬の売人が殺害される事件が発生。新人の菊池と捜査開始する。手荒な捜査で犯行グループの実態を暴いていくうちに、警察内部にも犯行に加担しているという事実が浮かび上がってくる。」

 北野監督は数多くのバイオレンス映画を撮っていますが、本作品は一番ドライかつクールで暴力の凄みが出ています。
 冒頭のホームレス狩りをしていた中学生の家にたけし演ずる刑事が突然のり込み暴力を振るうシーンから張り詰めた空気が漂っており、見る者を手に汗握らせます。主人公の過激な取調べシーンも迫力満点で見ていて背筋が凍ります。本作品の暴力は突発的かつ痛々しく観客に大きなインパクトを与えます。

 役者としてのビートたけしの演技は子どものような純粋さと他のものを寄せ付けない狂気のオーラを感じさせ、見ていて清々しくも怖いです。また、殺し屋を演じる白竜もたけしと同じくらい強烈な存在感のある演技を見せてくれます。この2人が対決する後半の展開は一瞬たりとも目を離すことができません。
 また、佐野史郎や岸辺一徳も人間の嫌らしさや醜さを前面に出した演技も映画に深みを与えています。

 本作品は暴力によって破滅していくことを選んだ男たちの狂気迫る姿を淡々とリアルに描いた傑作です。ただ、救いようのない映画であるので見る人を選ぶ作品でもあります。

上映時間 103分
製作国    日本
製作年度 1989年
監督:    北野武   
脚本:    野沢尚   
撮影:    佐々木原保志   
美術:    望月正照   
編集:    神谷信武   
音楽:    久米大作   
出演:    ビートたけし   
        白竜   
        川上麻衣子   
        佐野史郎   
        芦川誠   
        平泉成   
        音無美紀子   
        岸部一徳   

 

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『インセプション』この映画を見て!

第298回『インセプション』
Photo_2  今回紹介する作品は『ダークナイト』で大ヒットを収めたクリストファー・ノーラン監督が10年ほど前から構想していた夢を舞台にしたSF超大作『インセプション』です。夢を舞台にした独創的なストーリーとダイナミックな映像は多くの映画ファンを魅了し、アメリカでは3週連続で興行収入1位とヒットを飛ばし、批評家からも大絶賛されています。

 私は劇場ですでに2回鑑賞したのですが、メジャー系のハリウッド映画で久しぶりにクオリティが高い作品でした。始めてみた時は夢が幾層にも重なっている複雑な設定と夢の中で繰り広げられる迫力満点のアクションの連続に圧倒された2時間半でした。2回目はある程度ストーリーが分かった状態で見ているので、監督が随所に仕込んだ伏線の発見や主人公の妻に対する葛藤のドラマをじっくり味わうことが出来ました。

 ストーリー:「他人の夢の中に潜入してアイデアを盗み出していた企業スパイのコブは国際指名手配犯として追われていた。コブはそんなコブにサイトーと名乗る男からライバル会社の御曹司ロバートの潜在意識にアイデアを植え付ける“インセプション”の依頼が舞い込む。コブは難解な依頼であり一度断るものの、成功すれば犯罪歴を抹消して子どもたちと会わせるというサイトーの条件に引き受ける。コブはインセプションを行うための優秀なメンバー探しを行う。一緒に仕事をしてきた相棒のアーサー、“設計士”のアリアドネ、“偽造士”のイームス、“調合師”のユスフ、そしてサイトーを加えたメンバー6人でロバートの夢の中に潜入するのだったが…。」 

 本作品は一見すると複雑かつ難解な話しに思えますが、「夢の中に登場人物たちが入り込めること」と「夢が階層状態になっていること」さえ把握すれば、与えられた困難なミッションを主人公たちが夢の中でどう達成するかという非常に明快なお話しです。
 映画の前半は主人公コブと亡くなった奥さんの関係を描くシーンが長く少し退屈でしたが、中盤以降のインセプションを達成しようと主人公と仲間たちが夢の中で奮闘するシーンはスパイ大作戦や007シリーズを見ているようで手に汗握りました。
 夢が主要な舞台だけに幻想的なシーンも数多く、コブがアリアドネに夢の世界のルールを説明するシーンや道路にいきなり電車が突っ込んでくるシーン、そしてホテルでの無重力でのアクションシーンはいかにも夢ならではといった感じで印象に残りました。アクションシーンもCGに頼らず出来る限り実写で撮影したとのことで迫力満点。特に雪山でのスノーアクションは007シリーズ以上に迫力がありました。

 また、主人公コブが夢から妻を救おうとインセプションして亡くした自責の念から解放されるまでの苦悩や葛藤を丁寧に描いており、人間ドラマとしても見応えがありました。
 映画のラストは観客の解釈に委ねる曖昧なシーンで締めくくられますが、あれが夢にしろ現実にしろ、個人的にはコブにとってはハッピーエンドだと思いたいですね。

 本作品は渡辺謙が主役級で出演していたり、舞台の一部が日本で東京や新幹線でロケされたりところも、日本人としては見所の一つ。渡辺謙もレオナルド・ディカプリオ相手に堂々たる演技を披露していたと思います。日本でのロケは微妙でしたね。冒頭のお城は夢の中なので気になりませんでしたが、新幹線のシーンは現実にあんな個室車両はないので違和感がありました。(実際にあんな個室車両あったらいいなとは思いましたけど。)

 夢を題材にした映画は数多くありますが、ここまで面白く細部まで作りこまれた作品はなかなかありません。今年の夏一番必見の作品だと思います。

上映時間 148分
製作国    アメリカ
製作年度 2010年
監督:クリストファー・ノーラン   
脚本:クリストファー・ノーラン   
撮影:ウォーリー・フィスター   
プロダクションデザイン:ガイ・ヘンドリックス・ディアス   
衣装デザイン:    ジェフリー・カーランド   
編集:リー・スミス   
音楽:ハンス・ジマー   
出演:    レオナルド・ディカプリオ   
    渡辺謙   
    ジョセフ・ゴードン=レヴィット   
    マリオン・コティヤール   
    エレン・ペイジ   
    トム・ハーディ   
    ディリープ・ラオ   
    キリアン・マーフィ   
    トム・ベレンジャー   
    マイケル・ケイン   
    ピート・ポスルスウェイト   
    ルーカス・ハース   
    タルラ・ライリー   
    ティム・ケルハー   
    マイケル・ガストン

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『借りぐらしのアリエッティ』映画鑑賞日記

Photo  イギリスの児童文学『床下の小人たち』をスタジオジブリがアニメ映画化した『借りぐらしのアリエッティ』。宮崎駿が企画・脚本を担当し、スタジオジブリの原画スタッフの米林宏昌を監督として大抜擢して製作されました。宮崎駿以外が監督するスタジオジブリの作品は『耳をすませば』を除いて個人的にはイマイチなのですが、予告編の映像の美しさに惹かれ劇場まで足を運びました。

 絵と音楽の美しさはさすがジブリ、申し分ありませんでした。特に小人目線で描いた人間世界は新鮮で、前半の主人公アリエッティが初借りに父と出かけるシーンは大変ワクワクして見ることが出来ました。音響もこだわっており、小人にはこの世界の音がどのように聞こえているのかを巧みに表現していたと思います。セシル・コルベルのアイリッシュな音楽も映画の世界観にとてもマッチしていました。

 ただ、ストーリーと人物描写に関してはイマイチでした。
 ストーリーは郊外のある広大な古い屋敷の床下に父ポッドと母ホミリーと住む14歳の少女アリエッティと病気療養のためにやって来た12歳の少年・翔の出会いから別れまでを描くというシンプルな内容です。
 しかし、登場人物は少ない割りに、一人一人の描写が浅いため、いまいちドラマに共感できませんした。翔がアリエッティに庭で滅び行く種族を語る場面も別れ際のセリフも、人物描写が浅いために唐突な印象を受けて上滑りに終わっていたような気がします。
 お手伝いのハルさんも小人をなぜ捕獲しようとするのかよく分からないため、単なる憎々しい敵役に終わってしまって後味が悪かったです。
 あとスピラーも物語の展開に大きく絡むキャラクターかと思いきや登場シーンも少なく残念でした。
 また、舞台設定を日本に変更したのも意味があまり感じられず、原作どおりにしても良かったのではと思いました。

 最近のジブリは映像のクオリティの高さに比べて脚本の練りこみが不足しており、物足りなさを感じます。
 本作品も『ゲド戦記』に比べれば良く出来ていると思いますが、完成度は悪くもないけどそれほど良くもないといったところでした。

上映時間:94分
製作国:日本
製作年度:2010年
監督:米林宏昌   
企画:宮崎駿   
原作:メアリー・ノートン   
『床下の小人たち』(岩波少年文庫刊)
脚本:宮崎駿   
    丹羽圭子   
作画監督:賀川愛、山下明彦   
美術監督:武重洋二、吉田昇   
色指定:森奈緒美   
音楽:セシル・コルベル   
主題歌:セシル・コルベル   
    『Arrietty's Song』
声の出演:志田未来
    神木隆之介
    大竹しのぶ
    竹下景子
    藤原竜也
    三浦友和
    樹木希林

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