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2010年3月7日 - 2010年3月13日

『丑三つの村』この映画を見て!

第294回『丑三つの村』 
Photo_3  今回紹介する作品は昭和13年に岡山県で実際に起こった大量惨殺事件「津山三十人殺し」を描いた『丑三つの村』です。津山三十人殺しは昭和13年5月21日未明に岡山県苫田郡西加茂村において肺結核になり村人から冷たい扱いを受けた若者が2時間足らずの間に村人30名を殺戮、その後に自らも山の中で自殺するという大変衝撃的な事件でした。金田一耕助シリーズで有名な推理小説家の横溝正史も本事件を知り強い衝撃を受けて、後に『八つ墓村』という作品を発表しました。本事件の詳細に関しては以下のサイトに詳しい情報が掲載されています。
http://www.alpha-net.ne.jp/users2/knight9/tuyama.htm

 本作品はポルノ映画で活躍していた田中登監督が津山事件を扱った81年発表の西村望の小説を元に、犯人の青年が村人から追い詰められて殺戮を決行するまでの過程を丁寧に描いていきます。主役の青年役に2003年に45歳という若さで亡くなった古尾谷雅人が起用され、上手いとはいえませんがインパクトのある演技を披露しています。また、公開当時は新人だった田中美佐子が村の中で唯一青年を理解する女性役を務め、オールヌードシーンもある中で体当たりの演技を見せてくれます。さらに池波志乃や五月みどりも惜しげもなく裸体を披露して激しいセックスシーンを見せてくれます。

ストーリー:「戦時下の昭和13年山あいに数十戸が点在する閉鎖的な村に十八歳の犬丸継男は村一番の秀才として村人の尊敬と期待を集めていた。将来は軍人になることを夢見ていたが結核と診断されてしまう。その後、村人からは煙たがられ村八分にされる。追いつめられた彼は猟銃を購入して、自分を裏切り馬鹿にした村人への復讐を計画するようになる。」

 衝撃的な事件の映画化ということで暗く陰惨な雰囲気漂う作品と思って鑑賞したのですが、見終わった印象は哀切感漂う青春映画といった感じでした。
クライマックスの20分にわたる殺戮シーンは凄惨極まる描写の連続ですが、それまでの村人たちの青年への冷たい仕打ちを考えると逆に主人公に感情移入してカタルシスさえ覚えました。
神童と村人から期待されていた主人公が肺結核に罹り、夢見ていた軍人にもなれず、村人にも煙たがられて屈折して破滅していく姿は見ていて胸痛むものがありました。

また、本作品はポルノ映画並みに生々しい性描写が大変多いです。主人公が隣近所の人妻と夜這いする姿や好意を寄せている女性にセックスを求める姿は性欲盛んな20代前半の悶々とした男の姿をかなりリアルに描いています。

本作品一番の見せ場である殺戮シーンは松竹版『八つ墓村』に比べると残酷度やインパクトは低いです。ただ、主人公が殺戮に向けて武器を装着していく姿を丹念に描くところは緊張感があり画面に釘付けになりました。

映画のラストは主人公の自殺で終わりますが、自殺する前に画面に向かって呟く独白が大変印象に残りました。

脚本や音楽がもう少し深みがあれば本作品はもっと完成度は上がったと思います。

本作品は万人にお薦めできる作品ではありませんが、この手の映画が好きな人は一度見てみてください。

上映時間 106分
製作国 日本
製作年度 1983年
監督: 田中登
製作: 奥山和由
原作: 西村望「丑三つの村」
脚本: 西岡琢也
撮影: 丸山恵司
美術: 猪俣邦弘
編集: 後藤健二
音楽: 笹路正徳
出演: 古尾谷雅人
       田中美佐子
       池波志乃
       夏八木勲
       原泉
       五月みどり
       大場久美子

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『ピアノ・レッスン』この映画を見て!

第293回『ピアノ・レッスン』
Photo  今回紹介する作品はオーストラリア出身の女性監督ジェーン・カンピオンの名を一躍有名にした愛と官能の人間ドラマ『ピアノ・レッスン』です。本作品は公開と同時に幻想的な映像とマイケル・ナイマンの美しい旋律、そして繊細で力強いストーリーに世界中の映画ファンや批評家から絶賛されました。カンヌ国際映画祭ではパルムドール大賞と主演女優賞の2部門を、アカデミー賞では主演女優賞に助演女優賞そして脚本賞と3部門を受賞しました。

ストーリー:「19世紀の半ば、幼い頃から話すことができないエイダは娘のフロラを連れてスコットランドから未開の地であるニュージーランドへ嫁ぐ。話せないエイダにとってピアノが言葉であり、ニュージーランドまで運んでくる。しかし、夫のスチュアートは重すぎると浜辺に置き去りにする。原住民に同化している男ベインズはエイダのピアノを欲しがり、土地との交換条件にスチュアートから譲り受ける。さらにベインズはピアノの弾き方を習うためにエイダを家に招く。ベインズはエイダに黒鍵の数だけ自分にレッスンをしてくれたらピアノを返すと約束。エイダはベインズにレッスンするが、次第にエイダとベインズは恋に落ち体を重ね合わせるようになる。」

 私が本作品を始めて見たのは高校2年の時でした。その時はニュージーランドの海や森を幻想的に捉えた映像とマイケル・ナイマンが作曲した切なく美しいピアノのメロディーに心奪われたものでした。特に映画冒頭の波が高く打ち寄せる海岸にピアノがポツンと置き去りにされるシーンは、まるで絵画を見ているかのように美しく、そして主人公の孤独な心情を見事に表現しており、本作品の中でも一番印象に残るシーンでした。
 ストーリーに関しては男性の私から見ると主人公エイダの行動はいまいち共感できず、むしろ妻にないがしろにされるスチュアートに共感してしまいました。まあ、スチュアートは妻の分身ともいえるピアノを浜辺に置き去りにした時点で愛される資格を失ったのは致し方ありませんが、いつか愛されると思いこんでいる単細胞な夫が妻に裏切られ激情する姿は見ていてとても哀れなものを感じました。
 エイダが野性的な男であるベインズにいつの間にか惹かれて禁じられた恋に落ちていく過程はとても官能的で見ていて背筋がゾクゾクしました。女性の内に秘めた生と性に対する情熱が荒々しくも繊細な男によって徐々に開花していく展開は女性監督ならではの描写だと思いました。
 また、本作品はエイダの連れ子のフロラがストーリーのとても良いアクセントになっています。母が不倫していることを夫に告げ口するシーンは何とか自分を守ろうとする子どもの複雑な心境が見事に描かれていたと思います。
 映画のラストは主人公エイダの心の解放と成長を描き、ある意味ハッピーエンドで終わります。一度ピアノと共に死を選びながらも、やはりピアノと決別して新たな生を選択する姿は見ていて清々しく思うと共に、女性の逞しさや強かさを強く感じます。 

 ホリー・ハンターは話すことが出来ない主人公という難しい役どころでしたが、細やかな表情や仕草で心情を見事に表現しています。また、ピアノの演奏自体も吹き替えでなく自分でしているところも素晴らしいです。また、当時12歳だったアンナ・パキンの瑞々しく繊細な演技も大変素敵です。

 あと、本作品を語る上で外すことができないのがマイケル・ナイマンの音楽。彼の音楽なくしては本作品の成功はなかったと言っても過言ではありません。話せない主人公の心情を代弁するかのようなピアノの音色。聞いていて感情が揺さぶられる名曲です。

 本作品は女性の生と性を繊細かつ重厚に描いた作品です。男性と女性で評価の分かれる作品だと思いますが、一度は見て損のない作品です。

上映時間 121分
製作国    オーストラリア
製作年度 1993年
監督:    ジェーン・カンピオン   
製作:    ジェーン・チャップマン   
脚本:    ジェーン・カンピオン   
撮影:    スチュアート・ドライバーグ   
音楽:    マイケル・ナイマン   
出演:    ホリー・ハンター   
    ハーヴェイ・カイテル   
    サム・ニール   
    アンナ・パキン   
    ケリー・ウォーカー   
    ジュヌヴィエーヴ・レモン   
    タンジア・ベイカー   
    イアン・ミューン   
    ホリ・アヒペーン

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