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2010年12月

『ポルノ時代劇 忘八武士道』この映画を見て!

第307回『ポルノ時代劇 忘八武士道』
Photo  今回紹介する作品は小池一雄・小島剛夕の同名原作をを日本映画の鬼才・石井輝男監督が完全映画化した『ポルノ時代劇 忘八武士道』です。

ストーリー:「“人斬り死能"と恐れられている明日死能は役人に追われていたが、吉原遊廓の忘八者に命を助けられる。“忘八者"とは、「孝、悌、忠、信、礼、義、廉、恥」を全て捨てた無法者で、人にして人に非ず、人たる姿を忘れた鬼畜外道の集りであった。明日は忘八者の仲間入りを勧められる。吉原の総名主・大門四郎兵衛に気に入れられた明日は客分として扱われる。
 この頃の江戸は湯女や茶屋女などの幕府非公認の性風俗が流行し、幕府の公認を受けている吉原は経営を圧迫されていた。それらをつぶす機会を狙っていた大門は明日を利用して湯女や茶屋女を潰す行動に出るのだが・・・」

 本作品は35年以上前の作品でありますが、今見ても強烈なインパクトがあります。長髪の丹波哲郎の切れのある殺陣、次々と登場する全裸の女性、そして激しく噴出す血と飛んでいく首や腕。エログロ・バイオレンスのオンパレードで一瞬たりとも目が離せません。

 ストーリーは荒唐無稽ではありますが、吉原などのセットは凝っていますし、江戸時代の性風俗の丁寧に描写していますし、時代劇に欠かせない立ち回りは迫力満点ですし、見ていて飽きません。
 登場する役者の演技やメイクも大変濃く、小池監督の演出もサイケでケレン味に溢れており、見る者を独特の世界に引きずり込んでくれます。

 私が一番印象に残ったシーンは主人公を助けるための女性たちが着物を着て火の中に飛び込み転げまわって消火活動をして、鎮火後に火照った体を冷やすために着物を脱いで素っ裸で水浴びをするところです。そのぶっ飛んだ演出とサービス満点の映像に見ていてお腹がいっぱいになります。

 また、『ウルトラセブン』のアンヌ隊員役で人気のある女優・ひし美ゆり子が惜しげもなく裸体を披露しており、ストーリーとは無関係な白人女性に対する拷問シーンを迫力満点に演じています。

 ラストのアヘンで意識が朦朧とした主人公が雪の降る中で彼を捕らえようとする幕府の人間たちを斬りまくるシーンは日本映画史に残るほどスプラッターな立ち回りが繰り広げられます。血が飛び、腕や首が水平に飛んでいく演出は残酷さを超えたカタルシスがあります。

 本作品はR18指定であり、18歳以下の方は見られませんが、カルト映画好きなら一度は見て損はないと思います。

上映時間 81分
製作国    日本
製作年度 1973年
監督:    石井輝男   
原作:    小島剛夕   
    小池一雄   
脚本:    佐治乾   
撮影:    鈴木重平   
美術:    吉村晟   
編集:    市田勇   
音楽:    鏑木創   
出演:    丹波哲郎   
    伊吹吾郎   
    遠藤辰雄   
    内田良平   
    久野四郎   
    深江章喜   
    ひし美ゆり子   
    相川圭子   
    池島ルリ子   
    一の瀬レナ   
    佐藤京一   
    原田君事   
    小林千枝   
    北川マキ   
    笹木俊志   

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『サバイバル・オブ・ザ・デッド』映画鑑賞日記

Photo  ゾンビ映画の巨匠ジョージ・A・ロメロ監督が前作『ダイアリー・オブ・ザ・デッド』に登場した脇役を主役に据えて製作した続編とも言える作品『サバイバル・オブ・ザ・デッド』。本作品はグレゴリー・ペック主演の傑作西部劇『大いなる西部』をモチーフにして、西部劇タッチのゾンビ映画に仕上がっています。

 本作品は前作で主人公たちの物資を略奪した州兵たちが主人公です。ゾンビを倒しながら生き延びていた主人公たちがゾンビのいない安全な島があると聞き、島を目指します。しかし、たどり着いた島は2つの一家がゾンビをめぐって抗争を繰り広げており、主人公たちも人間たちの不毛な抗争に巻き込まれていきます。 

 本作品は人間とゾンビとの激しい攻防戦を期待して見ると肩透かしを喰らいます。本作品はゾンビのいる世界を舞台にしていますが人間同士の愚かな争いに対して警鐘を鳴らす社会派作品です。人間世界が崩壊に近づいていても、主義思想の違いや欲望のために争い続け自滅していく人間たちの姿をシニカルに描いています。そういう意味ではロメロ監督らしいゾンビ映画です。
 また、西部劇をモチーフにしていることもあり、馬に乗っているゾンビが登場したり、銃による決闘シーンなども盛り込まれています。そういう意味ではクラシカルな仕上がりになっています。

 もちろんゾンビ映画に欠かせない残酷描写も満載ですし、『死霊のえじき』でも描かれていたゾンビを飼いならす描写もあります。個人的にはロメロ監督らしいゾンビ映画だったので最後まで飽きることなく見ることが出来ました。

 ただ、残念な点もいくつかあり、低予算のためかスケールが小さく、ゾンビの数も少なすぎます。セットや演出も所々チープな印象を受けました。また世界の崩壊を描いているにもかかわらず、終末感や緊張感といったものがあまり伝わってきません。また、ラストの馬をゾンビが食べるシーンは正直どうかと思いました。

 本作品は誰にでもお薦めできる作品とは言いがたいですが、ロメロ監督のゾンビシリーズが好きなら見て損はないと思います。

上映時間 90分
製作国    アメリカ/カナダ
製作年度 2010年
監督:ジョージ・A・ロメロ   
脚本:ジョージ・A・ロメロ   
撮影:アダム・スウィカ   
特殊効果メイクアップ:グレッグ・ニコテロ   
プロダクションデザイン:アーヴ・グレイウォル   
衣装デザイン:    アレックス・カヴァナー   
編集:マイケル・ドハティ   
音楽:ロバート・カーリ   
出演:    アラン・ヴァン・スプラング   
    ケネス・ウェルシュ   
    キャスリーン・マンロー   
    デヴォン・ボスティック   
    リチャード・フィッツパトリック   
    アシーナ・カーカニス   
    ステファーノ・ディマッテオ   
    ジョリス・ジャースキー   
    エリック・ウールフ   
    ジュリアン・リッチングス   
    ウェイン・ロブソン

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2010年劇場公開映画マイベスト5

 今年も数多くの映画が公開されました。そこで私が今年公開された映画の中で特に印象に残った&満足した映画ベスト5を紹介したいと思います。

5位『十三人の刺客』
Photo  1963年に工藤栄一監督が片岡千恵蔵を主演に製作した傑作時代劇を三池崇史監督が豪華キャストでリメイクした『十三人の刺客』。前半は稲垣吾郎演ずる暴君のこれでもかという極悪非道ぶりに、後半は13人対200人の激しい立ち回りに目が釘付けになり、2時間半近い上映時間があっという間でした。役者も豪華で、セットもリアルであり、三池監督の演出もエネルギッシュで見応え満点です。ここまで派手で面白い時代劇は久しくなかったので私としては大変満足しました。

4位『インビクタス/負けざる者たち』
Photo_2  マンデラ大統領就任後の南アフリカで開催されたラグビーワールドカップを巡る実話をクリント・イーストウッド監督が映画化した『インビクタス/負けざる者たち』。ここ最近公開される作品全て傑作のクリント・イーストウッド監督。今回もまたまた傑作でした。実話でスポーツものという下手すると安っぽいお涙頂戴のドラマになりがちな素材ですが、そこはイーストウッド監督。抑制された手堅い演出で見事にまとめあげ、希望に満ちた爽やかな感動作に仕上げてくれました。

3位『第9地区』
9  異星人を難民として受入れることになった南アフリカを舞台に、異性人を専用の居住区域に強制移住させる計画に関わった主人公が思わぬ事件に巻き込まれていくというストーリーのSFアクション映画『第9地区』。映画の前半はドキュメンタリータッチで人間と異性人の間で起こる摩擦や差別をシニカルに描き、中盤以降は主人公の逃亡劇がスリリングに描かれ、ラストは手に汗握るド派手なアクションが展開。一瞬たりとも画面から目を離すことが出来ません。

2位『インセプション』
Photo_3  クリストファー・ノーラン監督が10年ほど前から構想していた夢を舞台にしたSF超大作『インセプション』。夢が幾層にも重なっている複雑な設定と夢の中で繰り広げられる迫力満点のアクションの連続に圧倒される作品です。私は劇場で2回見たのですが、2回目の方がある程度ストーリーが分かった状態で見ているので、監督が随所に仕込んだ伏線の発見や主人公の妻に対する葛藤のドラマをじっくり味わうことが出来ました。メジャー系のハリウッド映画では久しぶりにクオリティが高い作品だと思いました。

1位『告白』
Photo_4  湊かなえの同名ベストセラーを『嫌われ松子の一生』の中島哲也監督が完全映画化した『告白』。生徒に子どもを殺された教師の恐るべき復讐と子どもを殺した生徒の過酷な顛末をダークな映像と演出で描いています。私は原作未読で内容も良くを知らないまま、中島哲也監督の最新作ということで見に行ったのですが、衝撃的な内容と映画としての完成度の高さにスクリーンに釘付けになりました。人間の醜いエゴイズムや悪意そして脆さを真正面から描いており、後味も決して良くはないのですが、命の重さと人の心の闇について考えさせられる作品です。

・2009年劇場公開映画マイベスト5
・2008年劇場公開映画マイベスト5
・2007年劇場公開映画マイベスト5
・2006年劇場公開映画マイベスト5
・2005年劇場公開映画マイベスト5

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『トロン:レガシー』映画鑑賞日記

Photo  1982年にジェフ・ブリッジス主演でディズニーが製作した『トロン』の続編となるSF映画『トロン:レガシー』。私は予告編を見たときから、そのスタイリッシュな映像と音楽に公開をとても楽しみにしていました。

 公開翌日に映画館に足を運んで鑑賞したのですが、率直な感想としては微妙でした。前半の主人公がサイバーワールドに取り込まれて突然闘う破目に陥るまでは映像の圧倒的な迫力に見ていてかなり面白かったのですが、中盤以降は会話シーンが多くなりストーリーのテンポも単調かつスローペースで正直ウトウト寝かけてしまいました。ラストの敵とのバトルも華麗な映像の割りにアクションの盛り上がりに欠けていて、見ていて不完全燃焼でした。

 本作品のストーリーはとてもシンプルです。主人公がサイバーワールドに入り込み、行方不明になった父と出会い、プログラムたちの人間世界への反乱を防ぐという展開です。悪い敵を親子で力をあわせて退治するというディズニーらしい王道の話しであり誰が見ても一定楽しめますが、特にひねりやどんでん返しもなくSF映画として見るとありきたりで退屈です。
 また、サイバーワールドと現実世界との関係性がいまいち分からず、人間がどうやってプログラム内に入っていくのか、またプログラムがどうやって現実世界に実体を持って出てこようとしているのか疑問に思ってしまいました。それは突っ込んではダメなところかもしれませんが、そこをもう少しきちんと説明しないと映画の世界観に説得力がないような気がしました。

 本作品で話題になっている3D映像も2D映画より映像全体に多少奥行き感はあるものの、正直そこまで3Dの効果を感じるシーンはありませんでした。別にこの程度なら3Dでなくても良かったのではと思いました。もともと暗い映像が3Dメガネのため、さらに暗く見えにくかったです。
 サイバーワールドの描写はスタイリッシュではありますが、目新しさはなく、ずっと同じような光景ばかりで中盤からは飽きてしまいました。
 映像としてはサイバーワールドの3D映像よりもオスカー俳優の60代のジェフ・ブリッジスがCGを駆使して30代の姿で違和感なく登場させ悪役も演じているところの方が凄いと思いました。(若い人がメイク等で老けた役を演じることは今までもありましたが、逆はなかったので・・・)

 結構批判的に書いてしまいましたが、ダフト・パンクのエレクトロニック・ミュージックは映画の世界観にとてもマッチしていました。私は見終わってサントラが思わず欲しくなりました。
 また、オリヴィア・ワイルド演じるヒロインのクオラが非常に美しく魅力的なキャラクターで、見ていて主人公よりも存在感がありました。

 本作品は期待を煽る予告編と比べると本編は残念な出来でした。ただ、見るならDVDよりは大画面で見た方が迫力はあるかと思います。 

上映時間  125分
製作国    アメリカ
製作年度 2010年
監督:    ジョセフ・コシンスキー   
製作:    ショーン・ベイリー   
    ジェフリー・シルヴァー   
    スティーヴン・リズバーガー   
脚本:    エディ・キッツィス   
    アダム・ホロウィッツ   
撮影:    クラウディオ・ミランダ   
プロダクションデザイン:    ダーレン・ギルフォード   
衣装デザイン:    マイケル・ウィルキンソン   
音楽:    ダフト・パンク   
出演:    ギャレット・ヘドランド   
    ジェフ・ブリッジス   
    オリヴィア・ワイルド   
    マイケル・シーン   
    ボー・ガレット   
    ブルース・ボックスライトナー   
    ヤヤ・ダコスタ   
    セリンダ・スワン   
    ジェームズ・フレイン   
    エリザベス・マシス   

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『SPACE BATTLESHIP ヤマト』映画鑑賞日記

Space_battleship  日本アニメの名作「宇宙戦艦ヤマト」を実写映画化した『SPACE BATTLESHIP ヤマト』。監督にVFXでは定評のある「ALWAYS 三丁目の夕日」の山崎貴、主題歌にスティーヴン・タイラー、そして主演にSMAPの木村拓哉という豪華スタッフ・キャストで製作された本作品。私は公開前から壮大かつ長大な物語をどう実写化して映画としてまとめるのか非常に興味がありました。今まで日本のアニメを実写化して成功した作品はほとんどないと言っても過言ではない中、今回の『ヤマト』も失敗に終わるのではと見るまで思っていました。実際、私の周りでも別に劇場で見なくても良いかなと言う意見が大半でした。
 ただ、邦画が本格的なSF映画を手がけたということもあり出来が気になって、先週の土曜日に劇場まで足を運んで見てきました。
 感想としては脚本とキムタクの演技はイマイチでしたが、映像に関しては予算の少ない邦画にしてはなかなかの完成度だったと思います。(ただ、映像もハリウッド映画に比べるとリアリティ度はどうしても下がりますが。)

 ストーリーは基本は「宇宙戦艦ヤマト劇場版」で、クライマックスは「さらば宇宙戦艦ヤマト」のエピソードを強引に足した感じです。長大な物語を2時間ちょっとにいろいろなエピソードを詰め込み強引にまとめていることもあり、登場人物たちのドラマが表面的なものになってしまっています。その為、後半の登場人物たちが次々死んでいくシーンもいまいち胸に迫ってくるものがありません。
反面、古代と森雪のベタな恋愛模様がダラダラと描かれ、地球の存亡という緊張感溢れるはずのストーリーが弛緩しています。
 また、船内での主人公たちが交わす会話は見ている側が恥ずかしくなるほどチープで古臭いです。

 古代を演ずるキムタクの演技は普段テレビドラマで見せるいつもの演技と変わらず、本作品にはあっていないような気がしました。

 演出に関してはハリウッドのSF映画を彷彿させるシーンが数多く、もう少しオリジナリティを出した方が良かったのではと思いました。ラストにスティーヴン・タイラーの主題歌がかかるのも『アルマゲドン』のパクリっぽくて嫌でした。
 また、ヤマト艦内や荒廃した地球のセットもこじんまりとしてとしてリアリティにかけていたような気がします。もう少しお金をかけてセットを作りこんで欲しかったです。
 あと、地球を離れて、14万8千光年という長い旅をしているにも関わらず、その時間経過や苦労があまり描かれていないため、感動が薄れてしまっているような気がしました。

 いろいろ不満ばかり書きましたが、日本のSF映画としてはかなり頑張っていると思います。個人的に良いと思った点は宮川奏さんの有名なBGMがかかるカットとアナライザーの予想外の活躍。この2つに関しては燃えました。

上映時間 138分
製作国    日本
製作年度 2010年
監督:山崎貴   
原作:西崎義展   
脚本:佐藤嗣麻子   
撮影:柴崎幸三   
美術:上條安里   
編集:宮島竜治   
音楽:佐藤直紀   
音響効果:柴崎憲治   
主題歌:スティーヴン・タイラー『LOVE LIVES』
VFX:山崎貴   
照明:吉角荘介   
出演:    木村拓哉
    黒木メイサ   
    柳葉敏郎   
    緒形直人   
    西田敏行   
    高島礼子   
    堤真一   
    橋爪功   
    池内博之   
    マイコ   
    矢柴俊博   
    波岡一喜   
    三浦貴大   
    斎藤工   
    山崎努

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「中島みゆきTOUR2010」に行ってきました!

Tour2010  10月24日から始まった3年ぶりのみゆきさんのコンサート「中島みゆきTOUR2010」。全27回公演の13回目にあたる神戸国際会館こくさいホール12月7日の公演に行ってきました!
 DVD化もされた前回のコンサートは『糸』に『ファイト』に『誕生』と私の好きな曲のオンパレードだったので大満足でした。今回のコンサートもネットでの感想を読むと評価が高いので、とても楽しみにコンサート当日を待ち望んでいました。

 当日はお昼には現地入りをして、開場時間の17時45分を待っていました。開場前は入場口前は老若男女多くの人でごった返しており、熱気でムンムンしていました。
 会場に入るとパンフレットをまずは購入。今回のパンフレットは動物に関する専門家の記述がとても読み応えがありました。

(ここから先はコンサートの内容のネタばれになります。まだコンサートに行っていない人で内容を知りたくない人は読まないでください。)

 開演時間となる18時30分。舞台の緞帳が上がると、ニューアルバム『真夜中の動物園』の1曲目に収録されている『今日以来』のイントロがスタート。みゆきさんは青いギターを片手に白いスーツで颯爽と登場。『夜会vol15』の大阪公演以来2年ぶりの生で見る歌うみゆきさんの姿に胸が熱くなりました。
 今回の舞台は額縁のような白い木の枠が3つ奥に向うほど小さく見えるように設置されており、舞台中央に白い階段状の通路が一直線に奥に向かって伸びているという、とてもシンプルなものでした。
 ミュージシャンは通路の左右にそれぞれ雛壇上に並んでいました。一番手前にバンマスの小林信吾さんとボーカルの坪倉唯子さん・宮下文一さん・杉本和世さん、2段目にキーボードの矢代恒彦さんとキーボード兼サックス兼ピアニカの中村哲さん、続いて3段目にギターの古川望さんと中村修司さん、そして一番奥にドラムの島村英二さんとベースの富倉安生さんという並びでした。

 1曲目が終わると同時にみゆきさんの軽妙なトークが始まり、ジェットコースターのような上がったり下がったりのコンサートが幕を開けました。

 2曲目、3曲目と昨年のアルバム『DRAMA!』に収録されていた『翼をあげて』と『愛が私に命ずること』を披露。
 そして、4曲目にコンサートでは初披露となる『二隻の舟』を披露。この選曲には正直驚くと共に、生で初めてフルコーラスこの歌を聴けたことに非常に感動しました。みゆきさんの情感のこもった力強い歌声に自然と目に涙が浮かんできました。この歌を聴けるだけで正直今回のコンサートは8400円払う価値があります。歌のラストでは舞台の背景に今まで夜会のみゆきさんのモノクロ写真が何枚か映し出されていました。

 みゆきさんはここで一旦退場。白いひらひらのドレスで再登場して、ハードロックなナンバー『サバイバルロード』を迫力満点に歌い上げていました。
 続いて、MCを挟んでみゆきさんが腕時計を見ながら現在の時刻を2回読み上げ、駅の時刻表を見上げるかのように視線を上に向けると、『時刻表』のイントロが静かに始まります。この歌はアルバム『寒水魚』に収録されている懐かしい曲ですが、みゆきさんはしっとりと歌い上げていました。

 続いて最近のコンサートでは定番の「お便りコーナー」の時間。6枚ほど以下のお便りが読み上げられていました。

①コンサートのために買った新品のシャツが着れなかったエピソード
②彼氏と一緒に来るつもりが振られたてしまい、一人だけで前から3列目という良いチケットが取れたエピソード
③2001年の神戸国際ホールでのコンサート以来3354日ぶりにみゆきさんと神戸で会えたエピソード。
④関西の有名CMソング「京橋は?ええとこだっせ?グランシャトーが?おまっせ?」と「1、2サ
ンガリア」を歌って欲しいというエピソード。
→サンガリアはみゆきさん知っているが、京橋は知らないと坪倉さんに振って替わりに歌ってもらってました。
⑤コンサートの後に深夜のフェリーで高松まで買えるエピソード
⑥みゆきさんのパスポートと間違えて、さだまさしのパスポートを持ってきてしまったエピソード。

 お便りコーナーが終わると、これまた懐かしの名曲『夜曲』を披露。この曲も夜会VOL5でしか聴いたことがなかったので、コンサートで聴けてとても嬉しかったです。

 ここで第1幕が終了。緞帳が下りて15分間の休憩となりました。コンサートで休憩は今回が初めてだと思います。

 第2幕は鐘の音が静かに鳴り始めてスタート。真っ暗なステージの中、みゆきさんの歌声が聞こえて、徐々にライトが舞台中央の階段に照らさて、まるでフラミンゴのようなピンクの衣装を纏ったみゆきさんが登場。ニューアルバムのタイトルでもある『真夜中の動物園』を熱唱します。また、舞台中央の階段をゆっくりと踊りながら通路を客席側に降りてくる姿は神々しく、その迫力満点の歌声は聞いていて鳥肌が立ちました。
 ちなみにセットも少し変わっており、白い額縁が4つから2つに減り、サイズも一回り小さくなって奥に配置されていました。

 続いてニューアルバムから『夢だもの』、そして桜田淳子に提供した『しあわせ芝居』の2曲を披露。どちらもみゆきさんらしい切ないラブソングです。
 ここで誰もが知っている有名な曲として『Dr.コトー診療所』の主題歌である『銀の龍の背に乗って』を披露。私はこの曲が大好きだったので、生で聞けてとても嬉しかったです。

 ここでバンドメンバーの紹介をした後、おもむろに手紙のような紙片を取り出し、『I Love You, 答えてくれ』に収録されている『Nobody Is Right』の歌詞を朗読した後、アカペラのゴスペル風コーラスから、歌がスタート。己の正しさを言い張る空しさや愚かさ、そして正義の名の下で行われる戦争に対するみゆきさんの憤りが、聞いていて胸に突き刺さりました。
 歌い終わると衣装を変えて、白いタンクトップとブルージーンズというシンプルな衣装で再登場。青いアコースティックギターを抱え、同じく『I Love You, 答えてくれ』に収録されている「顔のない街の中で」を披露。『Nobody Is Right』に続いてメッセージ性の高い曲で、見知らぬ他者に対する労わりや思いやりの大切さを聞いていて改めて思い起こさせてくれます。

 続いて以前に発表した『傾斜』という歌に触れ、「年を取ることも素敵なこともかも」と語るみゆきさん。『鷹の歌』を披露します。この歌を歌っている時のみゆきさんの力強い眼差しと歌声、そして凛とした姿は見ていて背筋がピンとなりました。

 いよいよコンサートも終わりが近づき、みゆきさんが観客に向かって「明日私たちはどうなるか分からないが、今日会えてうれしゅうございます」と語ります。そして、「あなたの人生に」と観客一人一人に向かって拍手を贈ってくれたかと思った次の瞬間、ギターを片手にアカペラで『時代』を歌い始めます。まさかコンサートで『時代』が聞けるとは思わなかったので、私は思わず感極まって泣いてしまいました。みゆきさんの数ある名曲の中でも『時代』は名曲の中の名曲であり、何度聞いても慰められ励まされます。聞いていて自分の今までの人生を振り返り、明日に向かって歩いていくエネルギーをもらいました。
 『時代』を歌い終わるとみゆきさんは舞台中央の白い階段を登ってゆき、一度客席を振りかえり手を振って舞台から退場しました。

 アンコールは『悪女』と『たかが愛』を披露。『悪女』はみゆきさんもノリノリで歌っていて観客も手拍子で応えていました。『たかが愛』に関しては正直披露されるとは思っていなかったので予想外でした。この曲を最後に持ってきたのもみゆきさんなりの強いメッセージがあったかと思います。
ただ、個人的にはニューアルバムからもう1曲(できれば『負けんもんね』あたり)歌ってほしかったです。

 今回のコンサートは『二隻の舟』と『時代』の2曲を生で聞けただけでも十分満足できました。できればもう1回行きたいです!
 個人的には前回のコンサートよりもメッセージ性も完成度も高く、歌も演奏も演出も密度の濃いコンサートだったと思います。個人的には前回に続いて今回もDVD化してほしいです。

【演奏曲目】
   1. 今日以来
   2. 翼をあげて
   3. 愛が私に命ずること
   4. 二隻の舟
   5. サバイバル・ロード
   6. 時刻表
   7. 夜曲
   8. 真夜中の動物園
   9. 夢だもの
  10. しあわせ芝居
  11. 銀の龍の背に乗って
  12. Nobody Is Right
  13. 顔のない街の中で
  14. 鷹の歌
  15. 時代
  16. 悪女
  17. たかが愛

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