『千年女優』この映画を観て!
第304回『千年女優』
今回紹介する作品は先日惜しくも亡くなった今敏監督の代表作『千年女優』です。公開されるや否や世界各国の映画祭で高い評価を受け、国内でも『千と千尋の神隠し』と同時に第5回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門大賞を受賞しています。
ストーリー:「芸能界を引退した伝説の大女優・藤原千代子は自分がかつて撮影していた撮影所の取り壊しに伴うインタビューの依頼に応じて30年ぶりにカメラの前に姿を現した。以前から千代子のファンだった立花源也とカメラマンの井田恭二は千代子の自宅を訪れて、インタビューを開始。千代子は女学生の頃に恋した名も知らぬ男性を追って映画女優になった半生を映画の記憶と交錯しながら語っていく…。」
ストーリーは主人公の女優の人生と彼女が出演した映画を重ね合わせて描いており、どこまでが現実でどこからが空想か分からない虚実入り乱れた構成となっています。始めてみた時は次々と場面が展開していくので最初戸惑いましたが、慣れてくると平沢進の音楽の効果もあってか非常に心地よく感じるようになりました。
本作品の構成で私が印象的だったのが、二人のインタビュアーが主人公の回想シーンに突如入る込むところです。一人が主人公の長年の大ファンで女優の回想の中で重要な役どころとして振る舞い、もう一人が主人公のことをあまり知らず傍観者としてカメラを回し続ける。この2人が本作品の狂言回しの役割を見事に果たしていたと思います。
戦国時代から激動の戦前戦後そして宇宙船が飛ぶ未来という壮大な時間の流れを90分という短い時間に詰め込み、一人の女優の情熱的で一途な生き様を疾走感と躍動感に満ちた演出で描き切る今敏監督の手腕は大変素晴らしいです。
また、『蜘蛛巣城』や『無法松の一生』など日本映画の名作にオマージュを捧げたシーンや昭和の大女優たちを彷彿さえるエピソードの数々も邦画ファンにはたまりません。
ラストの主人公の台詞に関しては賛否両論あるかと思いますが、個人的には賛同できます。私は本作品は一途な純愛の素晴らしさを単に描いた作品でなく、好きな男をひたすら追い続ける自分の姿に恋する女性のエゴイズムをポジティブに描いた作品だと思っていますので。
上映時間 87分
製作国 日本
製作年度 2002年
監督: 今敏
企画: 丸山正雄
原案: 今敏
脚本: 今敏
村井さだゆき
作画監督:本田雄
井上俊之
濱洲英喜
小西賢一
古屋勝悟
美術監督:池信孝
色彩設計:橋本賢
撮影監督:白井久男
音楽:平沢進
音響監督:三間雅文
声の出演:折笠富美子
小山茉美
荘司美代子
飯塚昭三
佐藤政道
小野坂昌也
津田匠子
鈴置洋孝
片岡富枝
徳丸完
京田尚子
山寺宏一
津嘉山正種
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