『十三人の刺客』(2010年版)この映画を観て!
第303回『十三人の刺客』(2010年版)
今回紹介する作品は1963年に工藤栄一監督が片岡千恵蔵を主演に製作した傑作時代劇を『ヤッターマン』の三池崇史監督が豪華キャストでリメイクした『十三人の刺客』です。
ストーリー:「時は江戸時代末期、明石藩江戸家老間宮図書が将軍・家慶の弟で明石藩主・松平斉韶の暴君ぶりを訴え自決する。松平斉韶は老中への就任も決まっている男だが、その極悪非道かつ無慈悲な振る舞いは目に余るものがあった。幕府の存亡に危機感を募らせる老中の土井利位は御目付役の島田新左衛門に斉韶の暗殺命令を下す。松平斉韶の極悪非道ぶりに怒り心頭の島田新左衛門は暗殺のための計画を練る。そして、腕に覚えある侍たちを集め、参勤交代で帰る途中の斉韶一行を中山道の落合宿で討つ作戦を立てる。」
日本ホラー映画の傑作『オーディション』の脚本家・天願大介と監督・三池崇史がコンビを組んだ作品ということもあり劇場に足を運んで鑑賞しました。前半は松平斉韶のこれでもかという極悪非道ぶりに、後半は13人対200人の激しい立ち回りに目が釘付けになり、2時間半近い上映時間があっという間でした。ここまで派手で面白い時代劇は久しくなかったので大変満足しました。
まず、私が度肝を抜いたのは稲垣吾郎演ずる暴君の常軌を逸した振る舞いの数々です。子どもを矢で射殺すわ、娘の両腕両足を切断するわの鬼畜ぶりで、近年の邦画で一番インパクトのある悪役だといっても過言でありません。前半で敵の非道さをしっかり見せつけることで、主人公たちの暗殺作戦に観客も感情移入することができたと思います。
また、十三人の刺客たちの人間ドラマにも敢えて触れず、ひたすら目的を達成しようとする主人公たちと何とかそれを阻止しようとする鬼頭半兵衛の姿だけに絞ったところも緊張感があって良かったと思います。(逆にそれが物足りないという人もいるかと思いますが)
後半は約50分間延々と戦闘シーンが続くのですが、血と泥にまみれながら侍たちが刀で殺しあう姿は見ている側もヘトヘトになるほどです。
三池監督の演出はリアリズムとケレン味に溢れており見応えがあります。落合宿のセットも生活の息吹が感じられるほど凝っていますし、室内や夜など暗い場面も変に明るくせず暗く撮影しているところもリアリティを感じました。
役者に関して言うと、役所広司や市村正親の演技が素晴らしいのはもちろんの事ですが、予想以上に稲垣吾郎のクールな顔立ちに狂気を秘めた演技がインパクトがありました。国民的アイドルであるSMAPのメンバーがこんな悪役を演じられるとは正直驚きました。ある意味、助演男優賞ものです。
また、松方弘樹もさすが時代劇出身だけあって、殺陣の切れが他の役者とは違います。彼の殺陣がスクリーンで見られるだけでも本作品は価値があります。
ただ、伊勢谷友介演じる山の民に関しては賛否両論あるかと思いますが、個人的には三池さんらしいキャラクター造形で好感が持てました。劇場でも彼が登場するシーンでは笑いが起こっており、一服の清涼剤としての役割を見事に果たしていたと思います。ただラストでの登場に関してはあまりにも非現実的で違和感ありました。
本作品は久しぶりに邦画が本気を出して製作した娯楽時代劇です。ぜひ大画面で見ることをお薦めします。
ちなみに三池監督は3Dで小林正樹監督の『切腹』もリメイクすることになったそうで、そちらも大変楽しみです。
上映時間 141分
製作国 日本
製作年度 2010年
監督: 三池崇史
原作: 池宮彰一郎
脚本: 天願大介
撮影: 北信康
美術: 林田裕至
編集: 山下健治
音楽: 遠藤浩二
出演: 役所広司
山田孝之
伊勢谷友介
沢村一樹
古田新太
高岡蒼甫
六角精児
波岡一喜
石垣佑磨
近藤公園
窪田正孝
伊原剛志
松方弘樹
吹石一恵
谷村美月
斎藤工
阿部進之介
内野聖陽
光石研
岸部一徳
平幹二朗
松本幸四郎
稲垣吾郎
市村正親
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