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2010年5月

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』DVD発売!

Photo  劇場公開から約1年、ついに待ちに待った『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』のDVDが発売されました!

 私も早速DVDを手に入れて、劇場で見て以来、久しぶりの『破』を堪能しました。冒頭のマリ&仮設5号機の登場から画面に釘付けで、怒涛のアクションの連続にテンションが上がりまくり、ラストの初号機の覚醒ではシンジのカッコよさに目頭と胸が熱くなりました。

 旧作に比べると登場人物たちも他者と積極的に関わっていこうとする姿が見られ、共感しやすいキャラクターになっています。特にレイはシンジに思いを寄せてご飯を作ろうとするなど旧作より人間味溢れる描写がかなり増えています。、

 アクションシーンは旧作をはるかに超えたスケールと迫力があります。特に落下してくる第8使徒をエヴァ3体が食い止めるシーンとラストの第10使徒と2号機の戦闘シーンは何度見ても鳥肌が立ちます。

 「今日の日はさようなら」と「翼をください」の選曲は賛否両論あるかと思いますが、個人的にはありだと思いました劇場で見た際に歌が流れてきた時はベタな選曲だなと思いつつも、内容にマッチしすぎて正直涙ぐんでしまいました

 今回のDVDは劇場よりも本編が4分長くなっており、シンジと加持が駅で出会うシーン等が追加されていました。また他にも細かな映像の修正や追加がいくつかありました。劇場で見たときよりも細部までじっくり見ることができ、映像のクオリティの高さは現在の日本アニメの最高峰といって過言ではありません。
 なお、音響も手直しをしているようですが、劇場で見た際よりも迫力が幾分後退しているような印象を受け、少し残念でした。

 今回『破』を見返して、次回作『Q』の劇場公開がとても待ち遠しくなりました。シンジとレイがどうなるのか、アスカはどう復活するのか、そして意味深な台詞ばかり呟くカヲル君や戦闘好きの謎の少女マリがどういう活躍するのか気になることがいっぱいです。
 

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『人狼 JIN-ROH』この映画を見て!

第296回『人狼 JIN-ROH』
Photo  今回紹介する作品は第2次世界大戦でドイツと戦い負けた架空の昭和30年代の日本を舞台にした『人狼JIN-ROH』です。
 本作品は押井守の代表作である「ケルベロス・サーガ」として製作されており、実写映画『紅い眼鏡 / The Red Spectacles』や『ケルベロス 地獄の番犬』の前史に当たる内容と内容となっています。
 押井守が原作と脚本を担当。『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』でキャラクターデザインや作画監督を務めた沖浦啓之が監督を手がけています。
 CGを極力使わず手描きにこだわった映像はリアルで大変美しく、戦後復興してきた昭和30年代の東京の雰囲気を見事に表現しています。また、溝口肇の音楽も大変素晴らしく、映画の哀しい雰囲気にマッチしています。

ストーリー:「第2次世界大戦でドイツと戦い負けた日本政府は復興するために強引な経済政策を取る。その結果、失業者と凶悪犯罪が急増、さらに反政府組織が力を伸ばし、武装闘争を東京で繰り広げる。日本政府は東京の治安回復のため、首都圏に限定した治安部隊「首都圏治安警察機構」、通称「首都警」を組織。首都警は反政府勢力と市街戦を繰り返していた。
 そのよう中、首都警の伏一貴は潜伏する地下組織の追跡で、少女が自爆する衝撃的な事件に遭遇してしまう。事件に対して強いショックを受けた伏は爆死した少女に似ている雨宮圭いう女に出会う。」

 私は公開当時に劇場に足を運んで本作品を見たのですが、その時は地味で暗いストーリーがあまり好きになれませんでした。
 しかし、最近久しぶりに見返してみると、本作品が映像・ストーリー共に緻密に作り込まれている傑作であることを認識。昔は地味で暗いと思っていたストーリーの奥深さにはまってしまいました。

 童話「赤ずきん」を引用して、獣として生きる男とそんな男を愛してしまった少女の哀しい運命を描く物語は残酷かつ切なく、見終わってやるせない気持ちになります。安易にハッピーエンドにしない締めくくり方はとても印象に残ります。

 アクションシーンは多くありませんが、静と動のメリハリがあり、緊張感が漲っています。特にラストの下水道の攻防は大変迫力がありました。

 映像も全編薄暗い感じで、都市の闇の中で生きる人間たちの悲哀を見事に表現しています。

 本作品は決して万人受けする内容ではありませんが、ハードボイルドタッチの映像とストーリーは大人向けのアニメとしては1級品です。

上映時間 98分
製作国    日本
製作年度 1999年
監督:    沖浦啓之   
演出:    神山健治   
原作:    押井守   
脚本:    押井守   
キャラクターデザイン:西尾鉄也、沖浦啓之   
作画監督:西尾鉄也   
美術監督:小倉宏昌   
色彩設定:片山由美子   
撮影監督:白井久男   
編集:掛須秀一   
音楽:溝口肇   
音響監督:若林和弘   
車輌設定:平松禎史   
銃器設定:黄瀬和哉   
製作担当:堀川憲司   
ナレーション:坂口芳貞   
声の出演:   
    藤木義勝   
    武藤寿美   
    木下浩之   
    廣田行生   
    吉田幸紘   
    堀部隆一   
    中川謙二   
    大木民夫   
    坂口芳貞   
    阿部睦子   

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『BROTHER』映画鑑賞日記

『BROTHER』
Photo_5  6月に最新作『アウトレイジ』が公開される北野武監督がアメリカを舞台にヤクザとマフィアとの抗争を描いた本作品。北野監督らしい美しい映像や激しい暴力描写で北野ファンなら最後まで飽きることなく見ることが出来ます。

ストーリーはアメリカに逃亡した日本のヤクザ・山本とその一味がマフィアと抗争して敗北して自滅していくという内容で『ソナチネ』にかなり似ています。しかし、『ソナチネ』に比べると完成度はかなり落ちます。
 海外の客を意識した「指きり」や「切腹」のシーンは取ってつけたようで不必要だと思いますし、登場人物たちが饒舌すぎて北野監督らしい沈黙が生み出す緊張感が失われているような気がしました。話し自体も寺島進が自殺してからはパワーダウンして面白くなくなり、ラストのオマー・エップスの下りも蛇足のような気がしました。
 『ソナチネ』にあったギラギラした狂気みたいなものが本作品には感じられませんでした。

 ただ、山本耀司の衣装と寺島進と加藤雅也の演技は格好良かったですね。

上映時間 114分
製作国    日本/イギリス
製作年度 2000年
監督:    北野武   
脚本:    北野武   
撮影:    柳島克己   
美術:    磯田典宏   
衣装:    山本耀司   
編集:    北野武   
    太田義則   
音楽:    久石譲   
出演:    ビートたけし   
    オマー・エップス   
    真木蔵人   
    寺島進   
    大杉漣   
    加藤雅也   
    石橋凌   
    ジェームズ繁田   
    渡哲也

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「見終わって気が滅入る映画」私の映画遍歴17

 

 2009年に英エンパイア誌が、「落ち込む映画」ランキングのトップ10を以下の通り発表しています。

1.「レクイエム・フォー・ドリーム」(00)
2.「ひとりぼっちの青春」(69)
3.「リービング・ラスベガス」(95)
4.「道」(54)
5.「21グラム」(03)
6.「火垂るの墓」(88)
7.「ダンサー・イン・ザ・ダーク」(00)
8.「冬の光」(62)
9.「リリア 4-ever」(02)
10.「ミリオンダラー・ベイビー」(04)


そこで今回は私が見終わって気が滅入った映画ベスト5を紹介します。

5位『ミリオンダラー・ベイビー』
Photo  ボクシングジムを経営する老トレーナーとボクサーを目指す女性との交流を描いた本作品。クリント・イーストウッドが主演も兼ねて監督しており、2005年のアカデミー賞で作品賞を始めとして主演女優賞ほか全4部門を受賞するなど公開当時高い評価を得ました。前半は女性ボクサーのサクセスストーリーとして見ていて爽快なのですが、中盤以降は予想外の重苦しい展開となり、賛否両論分かれる結末を迎えます。ラストの主人公の行動に私は気が滅入ってしまいました。 

4位ミスト
Photo_2  スティーブン・キングの同名原作をフランク・ダラボン監督が映画化した本作品。突然原因不明の霧に包まれスーパーマーケットに閉じ込められた人々の様々な姿を描いていきます。映画の中盤の人間同士の争いも醜いですが、原作にはない映画オリジナルの結末がとても後味がとても悪いです。守ろうとしたものを守れず生き残ってしまった主人公の今後を思うと胸が痛みます。

3位『セブン』
Photo_3  デビッド・フィンチャー監督がキリスト教の“7つの大罪”になぞらえた猟奇殺人事件を追う2人の刑事の姿を描いた本作品。終始重苦しい雰囲気が漂う作品です。ラストの結末は救いようがありませんが、人間という生き物について深く考えさせられます。
 

2位『ドッグヴィル』
Dogville  気が滅入る映画を撮ることがお得意のラース・フォン・トリアー監督。英エンパイア誌のランキングでも『ダンサー・イン・ザ・ダーク』が7位に入っていますが、個人的には本作品の方が見終わって落ち込みます。アメリカ・ロッキー山脈の村を舞台にギャングに追われて逃げ込んで来た女性に対して村人が次第に不信を抱いて奴隷のように扱うというストーリーで、人間の愚かさや醜さがこれでもかと描かれています。

1位『ソドムの市』
Photo_4  マルキ・ド・サドの「ソドムの120日」を鬼才・パゾリーニ監督が映像化を試みた本作品。第2次世界大戦末期のナチ占領下の北イタリアを舞台にファシストで権力者の男4人が美少年及び美少女を監禁して極悪非道の限りを尽くすというストーリーで、見ていて目を背けたくなるシーンのオンパレードです。見終わって、しばらく気が滅入ること間違いなしです。

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『みんな~やってるか!』映画鑑賞日記

『みんな~やってるか!』
Photo  北野武がビートたけし名義で監督したコメディ作品『みんな~やってるか!』。公開当時はくだらなさ過ぎて大不評だった本作品。

 私もDVDで本作品を視聴したのですが、確かにナンセンスかつお下劣でしょうもない糞映画でした。

 ストーリーはセックス願望のある冴えない男が何とか夢を実現しようと奮闘しているうちに大騒動?に巻き込まれるという内容です。映画の前半は下ネタが多いもののそれなりに笑えるシーンも多いのですが、ハエ男が出てくる後半になってくると下らなさ過ぎて飽きてしまいました。この内容で2時間は長すぎますね。

 個人的にネタで一番面白かったのは銀行に強盗に押し入るシーンでした。あと、俳優の小林昭二さんが地球防衛軍の司令官で出演しているのに驚きました。

 この下らなさは北野監督は確信犯的にしている部分もあるのでしょうが、テレビのコント集の域を出ておらず、映画としてみるとバランスが悪く失敗しています。後年の『TAKESHIS'』『監督・ばんざい!』は本作品のリベンジだったんでしょうね。

 ただ、本能むき出しの男を主人公にこんなストレートかつベタな笑いをそのまま映画化しようとした北野監督はある意味凄いと思います。
 本作品は万人には全くお薦めできませんが、北野映画が好きな人なら一度は見て損はないと思います。 

上映時間 110分
製作国    日本
製作年度 1994年
監督:    ビートたけし   
脚本:    ビートたけし   
撮影:    柳嶋克己   
美術:    磯田典宏   
衣裳:    岩崎文男   
編集:    ビートたけし   
    太田義則   
出演:    ビートたけし   
    ダンカン   
    左時枝   
    小林昭二   
    山根伸介   
    結城哲也   
    前田竹千代   
    志茂山高也   
    南方英二   
    大杉漣   
    上田耕一   
    白竜   
    宮部昭夫   
    ガダルカナル・タカ   
    松金よね子   
    絵沢萠子   
    寺島進   
    芦川誠   
    不破万作   
    及川ヒロヲ   
    高木均

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『エアポート'77/バミューダからの脱出』映画鑑賞日記

『エアポート'77/バミューダからの脱出』
77_2  エアポートシリーズの第3弾として製作された本作品。今回はハイジャックされたジャンボ機が“魔のバミューダ三角海域”に不時着して沈没。次第に浸水していく機体からの決死の救出劇を描いていきます。

 私は本作品を始めてみた時は海中に沈んだ飛行機から乗客をどう脱出させるのか手に汗握って見たものでした。また、本来は空を飛ぶために作られた飛行機が水中に沈没して、徐々に水が浸水していくシーンは、逃げ場もなく見ていてとても恐いものがありました。

 最近、『エアポート'75』とあわせてDVDで見返したのですが、今見ると海中でのシーンは思ったより緊張感が感じられませんでした。そもそも海中に沈んだ時点で飛行機は破損して大惨事になっていると思うのですが、それを言うと元も子もないので・・・。また、ハイジャック犯たちが海中に飛行機が沈んでから絡んでこなかったのもイマイチでした。
 ただ、ラストの飛行機が海上に浮かび上がってくるシーンは実物大の模型を使ったのか迫力満点でした。

 キャストは前作以上に豪華でジャック・レモン、ジェームズ・スチュワート、リー・グラントとオスカー俳優が名を連ねている上に、エアポートシリーズには欠かせないジョージ・ケネディも出演。しかし、ケネディは思ったより出番が少ないのが残念ですが・・・。往年のスターが大挙出演して映画を盛り立てようとしているのですが、現役の人気俳優が出ていないのでパッとしないところがあります。

 それにしても、ハイジャックされた上に海中に飛行機が沈没するというあり得ないような設定を考えつく、ハリウッドの映画製作者たちのイマジネーションには感心させられます。

上映時間 113分
製作国    アメリカ
製作年度 1977年
監督:ジェリー・ジェームソン   
脚本:デヴィッド・スペクター   
   マイケル・シェッフ   
撮影:フィリップ・ラスロップ   
特殊効果:アルバート・ホイットロック   
プロダクションデザイン:ジョージ・C・ウェッブ   
衣装デザイン:イーディス・ヘッド   
編集:ロバート・ワッツ   
   J・テリー・ウィリアムズ   
音楽:ジョン・カカヴァス   
舞台装置:ミッキー・S・マイケルズ   
出演:    ジャック・レモン   
    ジェームズ・スチュワート   
    リー・グラント   
    ブレンダ・ヴァッカロ   
    オリヴィア・デ・ハヴィランド   
    ジョセフ・コットン   
    クリストファー・リー   
    ダーレン・マクギャヴィン   
    ジョージ・ケネディ   
    ピーター・フォックス   
    チャールズ・マコーレイ   
    ダー・ロビンソン

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『エアポート75』映画鑑賞日記

『エアポート'75』
75  1970年に公開された『大空港』からスタートしたエアポートシリーズ。全部で4作製作されましたが、私は小さい頃にテレビで放映されていたのを何度も見ていたこともあり、本作品が一番愛着があります。 

ストーリーは単純明快で、セスナとの衝突によってコクピットの破損したジェット機をどう救出するかをスリリングに描いていきます。小さい時はコックピットに穴が開いてパイロットもいなくなったジャンボをどう着陸させるのか手に汗握って見たものでした。

 最近DVDで見返したのですが、今見ると少し物足りなさを覚えてしまいました。最近の映画だとテンポが早く次から次へと見せ場があるのに比べて、当時の映画はテンポもゆったりしており見せ場もそう多くないので、そう感じたのだと思います。 

ただ、ジャンボとセスナが空中で衝突するという滅多にない設定を考えついた製作者はすごいと思いましたし、ジャンボを実際に飛ばして撮影した映像もミニチュアやCGでは出せない迫力がありました。 

スチュワーデスが飛行機を操縦したり、飛行中の飛行機へパイロットが乗り移るシーンに関しては今見ても緊張感がありました。(でも、実際にあのようなアクロバットなことは可能なんでしょうかね?) 

キャストも豪華でチャールトン・ヘストンにジョージ・ケネディと大作パニック映画には欠かせない面子がそろっており、映画に大作感と安定感を与えています。また、スチュワーデス役のカレン・ブラックも迫真の演技を見せていたと思います。ちなみに『エクソシスト』で一躍有名になったリンダ・ブレアも心臓手術をする女の子の役で出演しています。

 本作品は今見ると物足りないし、突っ込みどころもありますが、パニック映画ファンには外せない1本です。

上映時間 107分
製作国    アメリカ
製作年度 1974年
監督:    ジャック・スマイト   
原作:    アーサー・ヘイリー   
脚本:    ドン・インガルス   
撮影:    フィリップ・ラスロップ   
音楽:    ジョン・カカヴァス   
出演:    チャールトン・ヘストン   
    カレン・ブラック   
    ジョージ・ケネディ   
    リンダ・ブレア   
    スーザン・クラーク   
    グロリア・スワンソン   
    マーナ・ロイ   
    ヘレン・レディ   
    エフレム・ジンバリスト・Jr   
    ダナ・アンドリュース   
    ビヴァリー・ガーランド   
    リンダ・ハリソン

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『007シリーズにはまる』私の映画遍歴17

007_2  先月にWOWOWで007シリーズ22作品を一挙公開という特集をしていて、私も昔から007シリーズが大好きだったので思わず全作品鑑賞しました。

 『007シリーズ』とはイギリスの作家イアン・フレミングが創作したスパイ小説を映画化したもので、殺しのライセンスを持った英国情報部の諜報員ジェームス・ボンドの世界を股にかけたスパイ活動を描いたシリーズです。
 始めて映画化されたのは1962年で『007/ドクター・ノオ』というタイトルで公開されました。映画が大ヒットして、ボンド役を演じたショーン・コネリーは一躍スターになりました。1作目のヒットを受けて、翌年には『007/ロシアより愛をこめて』が公開。1作名以上のヒットと高い評価を受けました。
 その後、ショーン・コネリーを主演に3作公開され、スケールの大きなストーリーとアクションが世界中で人気を博して大ヒットを飛ばします。続いてジョージ・レーゼンビーにボンド役が交代。ボンドがシリーズ中で唯一結婚する『女王陛下の007』が公開されます。しかし、レーゼンビー演じるボンドは評判が悪く、すぐに降板。コネリーが再登板して『007/ダイヤモンドは永遠に』が公開されます。
 続いてロジャー・ムーアがボンド役に就き、歴代最多の7作品に出演します。その後、ティモシー・ダルトンに交代して、2作品が公開されます。
 しかし、冷戦崩壊後の1990年代前半007シリーズは製作されず、1995年にようやくピアース・ブロスナン主演で6年ぶりの新作『ゴールデンアイ』というタイトルで公開。冷戦以降のスパイの活躍を描き、見事シリーズを復活させます。その後ブロスナン主演で3作品が公開。世界中でヒットを収めます。
 そして2006年にダニエル・クレイグに主役を交代して、原作の1作目にあたりジェームズ・ボンドの誕生を描く『007/カジノ・ロワイヤル』が公開されます。その2年後にはシリーズ初の続編である『007/慰めの報酬』が公開されます。
 本当は2011年か2012年にクレイヴ主演で23作目が公開される予定でしたが、MGMの経営難により無期限の製作延期となっており新作がいつ公開されるかは未定となっています。

 私が007シリーズを始めてみたのは小学生のときでしたが、ロジャー・ムーアがボンド役だった時代でした。Qが開発する秘密兵器や仕掛け満載のボンドカーに憧れ、そして子どもながらにボンドガールの美しさに見とれたものでした。また悪役のスケールの大きな陰謀にほぼ単身でスマートに立ち向かっているボンドの姿にカッコよさを感じたものでした。
 今まで6人の俳優がボンド役を演じていますが、小さいときから見慣れていることもあり、ロジャー・ムーアが一番好きです。ただ一番ボンド役が似合っているのは個人的にティモシー・ダルトンだと思います。

 ちなみに私がシリーズ中で特に好きな作品は下の5作品です。

Photo_4 *5位『007/死ぬのは奴らだ』
・ロジャー・ムーアが初めてボンド役を演じた作品です。巷の評価は低いですが個人的にはじめて見た作品であり、非常に印象に残っています。特に元ビートルズのポール・マッカートニーが担当した主題歌はシリーズの中でも名曲だと思います。

Photo_5 *4位『007は二度死ぬ』
・ショーン・コネリーが演じた作品の中で一番好きな作品です。完成度は『ロシアより愛をこめて』に比べると低いですが、日本を舞台に活躍しているところが気に入ってます。また、日本人なら突込みを入れたくなるおかしな場面も随所にあり、一人で見ても友だちと見ても楽しめる作品です。

007_4 *3位『女王陛下の007』
・ジョージ・レーゼンビーが唯一主演を務めた本作品。シリーズ中唯一のボンドが結婚するエピソードがとても印象的です。秘密兵器やボンドカーはほとんど出てきませんし、派手な舞台装置やアクションもありませんが、ストーリーがしっかりしておりボンドの内面も丁寧に描かれおり、完成度は高いです。

Photo_6 *2位『007/消されたライセンス』
・ティモシー・ダルトン演じるボンドが友人の仇を討つために殺しのライセンスを取り消されながらも単身で敵を追い詰めていく本作品。シリーズ中でも異色の作品でありますが、最後まで緊張感があり、アクションも地味ながら迫力があり、大変見応えがあります。

Photo_7 *1位『007/私を愛したスパイ』 
・個人的に一番好きなのはロジャー・ムーアがボンド役を務めたシリーズ10作目にあたる本作品です。水中を潜るロータス・エスプリに、敵の手下の鋼鉄の歯を持つ大男“ジョーズの登場、そして派手な舞台装置とアクション。ユーモアと緊張感のバランスも絶妙で、007の魅力が一番詰まっている作品だともいます。  

 新作の公開は未定でありますが、これからも世界を股にかけたボンドの活躍を大きなスクリーンで味わいたいですね。

 

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『第9地区』この映画を見て!

第295回『第9地区』
9  今回紹介する作品は30億円とハリウッド映画としては低予算ながら、2009年の夏にアメリカで公開され100億円以上稼ぐという大ヒットを記録したSFアクション映画『第9地区』です。 
 異星人を難民として受入れることになった南アフリカを舞台に、異性人を専用の居住区域に強制移住させる計画に関わった主人公が思わぬ事件に巻き込まれていくというストーリーです。

 私は本作品のことを当初てっきりB級のチープなSF映画だと思っていました。しかし、アメリカでの大ヒットやアカデミー賞ノミネートを知り、なぜそんなに評価が高いのかとても興味を持ち、劇場まで足を運んで鑑賞してきました。

 映画を実際に見て、本作品がなぜ高い評価を受けたのか良く分かりました。斬新でスリリングなストーリー展開に低予算とは思えないクオリティの高い映像は見る者を引きつける魅力が本作品にはあります。個人的には昨年の『エヴァンゲリヲン新劇場版・破』以来久しぶりに何度も見たいと思う作品でした。

 映画の前半はドキュメンタリータッチで人間と異性人の間で起こる摩擦や差別をシニカルに描いていくのですが、中盤からは作風が変化して主人公の逃亡劇をスリリングに描いてきます。ラストは『トランスフォーマー』『ブラックホークダウン』を足したようなド派手なアクションが展開。一瞬たりとも画面から目を離すことが出来ません。ただ結構グロい描写が多いので、その手の描写が苦手な人は注意が必要かもしれません。

 大企業の傲慢さや異文化に対する偏見や迫害そして主人公の異文化に対する理解と、映画の内容やテーマは『アバター』と似ているところが多いです。しかし、『アバター』よりも本作品の方が表現の仕方が明らかに上手です。
 まず南アフリカを舞台に異星人の迫害を描くという設定が風刺が効いています。
 また、登場する異星人がゴキブリみたいな姿で大変グロく人間の共感を得にくいところも、見た目で全て決め付けてしまう人間の愚かさを巧みに表現していたと思います。
 私も前半は異星人を気持ち悪い容姿だと思って見ていたのに、中盤以降は同じ容姿の人間たちの方が愚かで醜く感じるようになり、逆に異星人に感情移入して応援していました。

 映画のラストも安易なハッピーエンドにせず、今後も異星人との問題は続いていくことが感じられるような終わり方にしたのも良かったと思います。主人公の最後も切なくて胸が締め付けられました。 

 監督のニール・ブロムカンプは南アフリカ共和国出身で本作品が初の長編映画です。本作品が製作された経緯には『ロード・オブ・ザ・リング』のピーター・ジャクソンが深く関わっています。
 2006年にピーター・ジャクソンが大人気ゲーム『HALO』映画化のためにニール・ブロムカンプを起用したのですが、途中で頓挫。そこでピーター・ジャクソンがニール・ブロムカンプが以前監督していた短編を長編映画化する話しを持ちかけたそうです。
 新人監督が無名の俳優を起用して低予算で製作したにも関わらず、公開されるや否や大ヒットを飛ばして批評家からも大絶賛。アカデミー賞でも作品賞を始めとして4部門でノミネートとはニール・ブロンカンプ恐るべき才能の持ち主です。この監督の才能見抜いて映画化に話しを持っていったピーター・ジャクソンもさすがですね。

 個人的に本年度ベスト5に入る傑作だと思いますし、SF映画を語る上で今後外せない作品だと思います。

上映時間 111分
製作国    アメリカ/ニュージーランド
製作年度 2009年
監督:    ニール・ブロンカンプ   
脚本:    ニール・ブロンカンプ   
    テリー・タッチェル   
撮影:    トレント・オパロック   
プロダクションデザイン: フィリップ・アイヴィ   
衣装デザイン:    ディアナ・シリアーズ   
編集:    ジュリアン・クラーク   
音楽:    クリントン・ショーター   
出演:    シャールト・コプリー   
    デヴィッド・ジェームズ   
    ジェイソン・コープ   
    ヴァネッサ・ハイウッド   
    ナタリー・ボルト   
    シルヴァン・ストライク   
    ジョン・サムナー   
    ウィリアム・アレン・ヤング   
    グレッグ・メルヴィル=スミス   
    ニック・ブレイク   
    ケネス・ンコースィ

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『アリス・イン・ワンダーランド』映画鑑賞日記

『アリス・イン・ワンダーランド』

Photo_3  独特な映像センスとユニークなキャラクター描写で定評のあるティム・バートン監督がルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』と『鏡の国のアリス』をベースに19歳に成長したアリスの新たな冒険を描いた『アリス・イン・ワンダーランド』。
 私は昔からティム・バートン監督のカラフルでブラックで少し切ないファンタジー映画が大好きだったので、公開前からルイス・キャロルが生み出したあの不思議の国をどう描くのかとても楽しみにしていました。また、キャメロン監督の『アバター』に続いて3Dで公開される作品でもあったので、バートン監督が3Dを活かしてどのような映像表現を見せてくれるのかも大変期待したものでした。

 私は3Dで先日鑑賞したのですが、バートン監督だけあって美術やキャラクター造形は凝っており、不思議の国の独特な雰囲気を見事に映像化していました。特に白うさぎやチェシャ猫や青い芋虫のアブソレムなどのキャラクターたちがCGで見事に描写されており、アリスファンにはたまりませんでした。
 ただ、3Dに関しては『アバター』と違って2Dで撮影された映像をポストプロダクションで3D変換したこともあってか、飛び出してくるシーンはさて置き、全体的に映像に立体感や奥行きは余り感じませんでした。

 次にストーリーやキャラクラーの描写ですが、正直つまらなかったです。ディズニーの作品ということもあってか、勧善懲悪の分かりやすいストーリーになっており、原作が持つ毒気やシュールさが薄れてしまっています。
 大人になったアリスが再度不思議の国に迷い込み、周囲の協力を得て悪者を退治して、成長して現実に帰っていくという展開は王道ではありますが、バートン監督らしい毒気や切なさみたいなものが感じられませんでした。
 また、キャラクターの描写も見た目のインパクトはあるのですが、深みや毒に欠けます。ジョニー・デップ演じるマッド・ハンターなんて、外見同様にぶっ飛んだキャラクターだと思っていたのに思っていた以上に普通の人でした。
 頭のでかい赤の女王の描き方も以前のバートン監督なら憎々しくもどこか悲哀を感じさせるキャラクターとして描いていたと思うのですが、今回は単なる悪役としてしか描いておらずイマイチでした。

 本作品は娯楽映画としては面白いとは思うんですが、ティム・バートン監督の映画としてみるとどうしても評価は下がってしまいます。
 あと、本作品は『アバター』と違って別に3Dで見なくても良いような気がしました。

上映時間 109分
製作国    アメリカ
製作年度 2010年
監督:    ティム・バートン   
原作:    ルイス・キャロル   
    『不思議の国のアリス』/『鏡の国のアリス』
脚本:    リンダ・ウールヴァートン   
撮影:    ダリウス・ウォルスキー   
衣装デザイン:    コリーン・アトウッド   
編集:    クリス・レベンゾン   
音楽:    ダニー・エルフマン   
出演:    ミア・ワシコウスカ   
    ジョニー・デップ   
    ヘレナ・ボナム=カーター   
    アン・ハサウェイ   
    クリスピン・グローヴァー   
    マット・ルーカス   
声の出演:アラン・リックマン   
    マイケル・シーン   
    スティーヴン・フライ   
    ティモシー・スポール   
    ポール・ホワイトハウス   
    バーバラ・ウィンザー   
    マイケル・ガフ   
    クリストファー・リー

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『ハートロッカー』映画鑑賞日記

Photo_2 『ハートロッカー』
 テロが続く混沌のイラク・バグダッドを舞台にアメリカ軍爆発物処理班の男たちの死と隣り合わせの日常を描き、今年のアカデミー賞で作品賞を始めとして6部門を受賞した本作品。硬派なアクション映画を撮り続けているキャサリン・ビグローが女性初のアカデミー監督賞受賞という快挙を成し遂げました。
 

 私もアメリカでの高い評価を受けて公開と同時に期待を持って劇場に見に行きました。
 爆弾の解体シーンやテロリストとの狙撃シーンは臨場感たっぷりで手に汗握るものがありましたが、正直アカデミー賞で作品賞を取るような作品には思えませんでした。

 映画の冒頭に「戦争は麻薬だ」というテロップが出てきますが、それがこの映画の内容の全てです。生と死の狭間の非日常体験に麻薬のような刺激を覚えて平和な日常に戻れなくなる主人公の姿を通して、監督は戦地に赴いたアメリカ兵の苦悩や戦場の狂気を描こうとしたのだと思います。
 しかし、その描き方は失敗しており、主人公は最初から戦争に好きの命知らずの男にしか見えませんでした。本当はもっと普通の若者が戦争を通して徐々に心が蝕まれていく様な描き方をしたほうが良かったのではないかと思います。
確かに映画の途中で主人公が苦悩する場面も描かれてはいますが、見ていて無鉄砲で自己中心的な主人公にしか思えませんでした。

 個人的にはあまり高い評価のできる好きな作品ではありませんが、アメリカで絶賛されてアカデミー賞まで受賞したのは何となく分かるような気がしました。アメリカのイラク侵攻を声高に批判することなく、戦場に赴いたアメリカ兵の生と死の狭間の日常をリアルに描くことで、近年のアメリカ軍に対する批判にうんざりしていた多くのアメリカ人が共感したのだと思います。
 私としては本作品よりも『第9地区』に作品賞を受賞してほしかったです。

 本作品に関しては批判的な感想になってしまいましたが、ドキュメンタリータッチの乾いた映像とド迫力の音響は素晴らしかったです。

上映時間  131分
製作国    アメリカ
製作年度 2009年
監督:    キャスリン・ビグロー   
脚本:    マーク・ボール   
撮影:    バリー・アクロイド   
プロダクションデザイン:    カール・ユーリウスソン   
衣装デザイン:    ジョージ・リトル   
編集:    ボブ・ムラウスキー   
    クリス・イニス   
音楽:    マルコ・ベルトラミ   
    バック・サンダース   
出演:    ジェレミー・レナー   
    アンソニー・マッキー   
    ブライアン・ジェラティ   
    レイフ・ファインズ   
    ガイ・ピアース   
    デヴィッド・モース   
    エヴァンジェリン・リリー   
    クリスチャン・カマルゴ

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