『ピアノ・レッスン』この映画を見て!
第293回『ピアノ・レッスン』
今回紹介する作品はオーストラリア出身の女性監督ジェーン・カンピオンの名を一躍有名にした愛と官能の人間ドラマ『ピアノ・レッスン』です。本作品は公開と同時に幻想的な映像とマイケル・ナイマンの美しい旋律、そして繊細で力強いストーリーに世界中の映画ファンや批評家から絶賛されました。カンヌ国際映画祭ではパルムドール大賞と主演女優賞の2部門を、アカデミー賞では主演女優賞に助演女優賞そして脚本賞と3部門を受賞しました。
ストーリー:「19世紀の半ば、幼い頃から話すことができないエイダは娘のフロラを連れてスコットランドから未開の地であるニュージーランドへ嫁ぐ。話せないエイダにとってピアノが言葉であり、ニュージーランドまで運んでくる。しかし、夫のスチュアートは重すぎると浜辺に置き去りにする。原住民に同化している男ベインズはエイダのピアノを欲しがり、土地との交換条件にスチュアートから譲り受ける。さらにベインズはピアノの弾き方を習うためにエイダを家に招く。ベインズはエイダに黒鍵の数だけ自分にレッスンをしてくれたらピアノを返すと約束。エイダはベインズにレッスンするが、次第にエイダとベインズは恋に落ち体を重ね合わせるようになる。」
私が本作品を始めて見たのは高校2年の時でした。その時はニュージーランドの海や森を幻想的に捉えた映像とマイケル・ナイマンが作曲した切なく美しいピアノのメロディーに心奪われたものでした。特に映画冒頭の波が高く打ち寄せる海岸にピアノがポツンと置き去りにされるシーンは、まるで絵画を見ているかのように美しく、そして主人公の孤独な心情を見事に表現しており、本作品の中でも一番印象に残るシーンでした。
ストーリーに関しては男性の私から見ると主人公エイダの行動はいまいち共感できず、むしろ妻にないがしろにされるスチュアートに共感してしまいました。まあ、スチュアートは妻の分身ともいえるピアノを浜辺に置き去りにした時点で愛される資格を失ったのは致し方ありませんが、いつか愛されると思いこんでいる単細胞な夫が妻に裏切られ激情する姿は見ていてとても哀れなものを感じました。
エイダが野性的な男であるベインズにいつの間にか惹かれて禁じられた恋に落ちていく過程はとても官能的で見ていて背筋がゾクゾクしました。女性の内に秘めた生と性に対する情熱が荒々しくも繊細な男によって徐々に開花していく展開は女性監督ならではの描写だと思いました。
また、本作品はエイダの連れ子のフロラがストーリーのとても良いアクセントになっています。母が不倫していることを夫に告げ口するシーンは何とか自分を守ろうとする子どもの複雑な心境が見事に描かれていたと思います。
映画のラストは主人公エイダの心の解放と成長を描き、ある意味ハッピーエンドで終わります。一度ピアノと共に死を選びながらも、やはりピアノと決別して新たな生を選択する姿は見ていて清々しく思うと共に、女性の逞しさや強かさを強く感じます。
ホリー・ハンターは話すことが出来ない主人公という難しい役どころでしたが、細やかな表情や仕草で心情を見事に表現しています。また、ピアノの演奏自体も吹き替えでなく自分でしているところも素晴らしいです。また、当時12歳だったアンナ・パキンの瑞々しく繊細な演技も大変素敵です。
あと、本作品を語る上で外すことができないのがマイケル・ナイマンの音楽。彼の音楽なくしては本作品の成功はなかったと言っても過言ではありません。話せない主人公の心情を代弁するかのようなピアノの音色。聞いていて感情が揺さぶられる名曲です。
本作品は女性の生と性を繊細かつ重厚に描いた作品です。男性と女性で評価の分かれる作品だと思いますが、一度は見て損のない作品です。
上映時間 121分
製作国 オーストラリア
製作年度 1993年
監督: ジェーン・カンピオン
製作: ジェーン・チャップマン
脚本: ジェーン・カンピオン
撮影: スチュアート・ドライバーグ
音楽: マイケル・ナイマン
出演: ホリー・ハンター
ハーヴェイ・カイテル
サム・ニール
アンナ・パキン
ケリー・ウォーカー
ジュヌヴィエーヴ・レモン
タンジア・ベイカー
イアン・ミューン
ホリ・アヒペーン
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芸能人専門サイトMUTEKIから衝撃のA Vデビューを果たした、元おはガールの石川エリこと七色あん。
アイドルグループ「フルーツポンチ」のリーダーも務めた彼女のA V転身は衝撃的だったが、そのデビュー作品がMUTEKI史上最高傑作と評判になっている。
http://nniranie.blog2.fc2.com/
投稿: 元おはガール・七色あん(石川エリ)のA Vデビュー作が大評判!! | 2010年4月 2日 (金) 17時08分