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『インビクタス/負けざる者たち』この映画を見て!

第292回『インビクタス/負けざる者たち』
Photo_2  今回紹介する作品はマンデラ大統領就任後の南アフリカで開催されたラグビーワールドカップを巡る実話をクリント・イーストウッド監督が映画化した『インビクタス/負けざる者たち』です。主演のモーガン・フリーマンとマット・デイモンはそれぞれ2009年度アカデミー主演男優賞と助演男優賞にノミネートされています。

ストーリー:「南アフリカ共和国では1994年にアパルトヘイト撤廃後初の全国民が参加した総選挙を実施。そしてアパルトヘイトに反対して27年間投獄されたネルソン・マンデラが初の黒人大統領に就任する。しかし、白人と黒人間の人種差別や経済格差は以前と残り続け、国家自体が非常に不安定な状況だった。そんな中、マンデラ大統領は95年に南アフリカで開催されるラグビーのワールドカップを国民の和解と融和の機会にしようと南アフリカ代表のラグビーチーム「スプリングボクス」に目をつける。負け続けで国民からも不人気だったスプリングボクスの主将フランソワ・ピナールをマンデラ大統領は官邸に招き、ラグビーで国民をまとめたいという思いを語る。マンデラの思いに感銘を受けたピナールはW杯優勝を目指してチームを強化しようと励み始める。」

 ここ最近公開される作品全て傑作のクリント・イーストウッド監督。今回もまたまた傑作を生み出してくれました。実話でスポーツものという下手すると安っぽいお涙頂戴のドラマになりがちな素材ですが、そこはイーストウッド監督。抑制された手堅い演出で見事にまとめあげ、希望に満ちた爽やかな感動作に仕上げてくれました。マンデラ大統領のことは南アフリカ初の黒人大統領でノーベル平和賞をとった人くらいの知識しかなかった私にとって、本作品は彼の偉大さを知る貴重な機会でした。自分を監獄に送った白人を寛容に許し、スポーツを通して分断した国民を一つにまとめ上げようと奮闘する姿に政治家として、そして人間として感銘を受けました。権力を取ったからといって今までの敵を排斥せず、自らの中に取り込み共に歩もうとする姿に政治家としての器の大きさを感じると共に人や国をまとめるとはどういうことかを教えられます。日本の政治家にもマンデラ大統領を見習って欲しいものです。

 私は正直スポーツにはあまり興味ない人間でありますが、本作品を見てスポーツが持つ力や役割といったものを再認識しました。最初はいがみあっていた黒人と白人がラグビーを通して次第に打ち解けあう姿に私は見ていて自然と涙がこみあげてきました。スポーツは政治に非常に利用されやすく危うい面もありますが、マンデラ大統領はスポーツの力を最大限活用して良い方向に国を持っていったと思います。

 本作品の一番の見せ場は何と言ってもラストのワールドカップ優勝戦ですが、白熱の試合シーンと国民の観戦シーンを交互に見せる正攻法な演出でありながら、見ていて胸があつくなります。特にスローモーションで見せるシーンはラグビーというスポーツの躍動感と重量感を見事に表現していたと思います。

 現実はもっと複雑でドロドロした面もあったのでしょうが、そういう部分は敢えて描かず、ラグビーを通して国がまとまる姿だけを簡潔に描いたことが本作品の完成度を高めたと思います。また、マンデラ大統領役のモーガン・フリーマンの堂々とした演技はとても素晴らしく、本物の大統領みたいな風格がありました。

 70歳を超えて毎年ハイクオリティな作品を撮り続けるクリント・イーストウッド監督は本当に凄いです。本作品もまだ早いですが今年のベスト5に入る傑作だと思います。まだ劇場公開されていますのでぜひ興味ある方はご覧ください!

上映時間 134分
製作国    アメリカ
製作年度 2009年
監督:    クリント・イーストウッド   
原作:    ジョン・カーリン   
脚本:    アンソニー・ペッカム   
撮影:    トム・スターン   
プロダクションデザイン:    ジェームズ・J・ムラカミ   
衣装デザイン:    デボラ・ホッパー   
編集:    ジョエル・コックス   
    ゲイリー・D・ローチ   
音楽:    カイル・イーストウッド   
    マイケル・スティーヴンス   
出演:    モーガン・フリーマン   
    マット・デイモン   
    トニー・キゴロギ   
    パトリック・モフォケン   
    マット・スターン   
    ジュリアン・ルイス・ジョーンズ   
    アッジョア・アンドー   
    マルグリット・ウィートリー   
    レレティ・クマロ   
    パトリック・リスター   
    ペニー・ダウニー

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コメント

ボクも「インビクタス」映画館で観ました。黒人と白人の融和というテーマがとても良く描かれていたとボクも思いました。「グラントリノ」でも異人種間交流を描いていて、人種間の融和が最近のイーストウッドの関心事なのかなぁと思いました。「スペースカウボーイ」でチャーミングなおじいちゃん達を撮ったり、時代錯誤的に太平洋戦争をアメリカと日本の立場で描いた作品を撮ったり、イーストウッドは年を取って映画的センスに益々磨きがかかっているようにボクは思います。
イーストウッドの次回作も又映画館で観たいなぁと思いました。
それでは失礼致します。

投稿: ママデューク | 2010年8月27日 (金) 21時56分

コメントありがとうがじます。
感動できる反面、実話ということもあって淡々と進むとこもあって眠くなるのかもしれませんね。

投稿: とろとろ | 2010年5月 4日 (火) 19時19分

これ、凄くヒットしてるしなかなか感動できるしw。
でも自分には『普通に感動できる』映画でした。可もなく不可もなくといったところ。ちと眠くなったw。
良い映画なんだけどね。なんでだろ?

投稿: ブリ | 2010年3月28日 (日) 07時10分

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受信: 2010年3月 1日 (月) 23時05分

» 「インビクタス 負けざる者たち」やっぱり、イイな~。 [シネマ親父の“日々是妄言”]
[インビクタス/負けざる者たち] ブログ村キーワード  “クリント・イーストウッド監督第30作”「インビクタス 負けざる者たち」(ワーナー・ブラザース)。南アフリカでの感動の実話を映画化。相変わらずエエ仕事しますな~!イーストウッド監督。  南アフリカで、アパルトヘイト政策が廃止された1990年。ネルソン・マンデラ(モーガン・フリーマン)は、27年にも及ぶ獄中生活から解放される。そして1994年に行われた、南ア史上初の全人種参加選挙により、マンデラは大統領に選出される。これまで人種差... [続きを読む]

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受信: 2010年3月 2日 (火) 01時11分

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{/hikari_blue/}{/heratss_blue/}ランキングクリックしてね{/heratss_blue/}{/hikari_blue/} ←please click クリント・イーストウッド監督、記念すべき30作目{/ee_3/} スポーツものってあまり好きじゃないし、(「少林サッカー」みたいのは別 {/warai/})。 タイトルにもポスターにもあまり惹かれなかったけど コンスタントに名作を撮り続けるイーストウッド、その作品にはハズレなし!なので見逃すわけにはいきません。 来週か... [続きを読む]

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