『3-4x10月』この映画を見て!
第291回『3-4x10月』
今回紹介する作品は北野武監督の第2作目のバイオレンスドラマ『3-4x10月』です。本作品から脚本も自ら手がけるようになり、北野監督の色がより濃く反映された仕上がりとなっています。
ストーリー:「草野球チームに所属している雅樹はガソリンスタンドで働いている最中にヤクザと揉め事を起こす。雅樹は草野球のコーチであり、以前に組長と兄弟分であったスナックのマスターに相談する。マスターは組に出向き仲裁に入ろうとするが上手くいかず、逆に組員に暴行を受けて重傷を負う。雅樹はマスターの復讐に協力するために草野球のメンバーと共に沖縄へ拳銃を買うため旅立つ。」
本作品は個人的に北野武の演技が一番怖いと思った作品でした。映画に登場するのは中盤以降ですが、死の願望を持ちながら衝動的に暴力を振るう姿は狂気迫るものがありました。
本作品の構成はとてもミニマムで、BGMもなければ、セリフや状況説明も必要最低限に抑えられています。ストーリー自体も行き当たりばったりと言うか、あってないようなものです。淡々とした展開の中で突如繰り広げられる刹那的な暴力の数々。その強烈なインパクトと日常の裏に潜む非日常を味わうのが本作品の正しい鑑賞法です。
ラストのオチは予想外で賛否両論あるかと思いますが、個人的には納得できました。冴えない主人公の人生一発逆転の願望と妄想を巧みに描いた作品だと思いました。
北野監督らしい独特な構図や青を基調にした美しい映像も非常に印象に残りましたし、時折挿入されるコミカルなシーンも良いアクセントになっていたと思います。
役者に関して言うと、柳ユーレイも狂気を内に秘めた冴えない男の役がはまっていましたし、ベンガルやガダルカナルタカも良い味を出しています。あと、若い頃の豊川悦司もヤクザの親分としてちょい役ですが出演しています。
本作品はまとまりはなくストーリーに一貫性はありませんが、北野監督しか作り出せない独特な雰囲気は一度はまると何度も見たくなる不思議な魅力があります。
余談ですが、私は中島みゆきのファンなので、ダンカンがカラオケで『悪女』を歌うシーンはとてもツボにはまりました。
上映時間 96分
製作国 日本
製作年度 1990年
監督: 北野武
脚本: 北野武
撮影: 柳島克己
美術: 佐々木修
編集: 谷口登司夫
出演: 柳ユーレイ
ビートたけし
石田ゆり子
井口薫仁
飯塚実
布施絵里
芦川誠
豊川悦司
鶴田忍
小沢仁志
井川比佐志
ベンガル
ジョニー大倉
渡嘉敷勝男
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