『ブラックサンデー』この映画を見て!
第284回『ブラック・サンデー』
今回紹介する作品は過激派からの脅迫により日本では劇場未公開となった伝説のアクション映画『ブラック・サンデー』です。『羊たちの沈黙』など数々のベストセラーを生み出すトマス・ハリスの同名小説を原作にした本作品。荒々しく骨太な作風で人気のジョン・フランケンハイマー監督がドキュメンタリータッチでテンポよく描いており、終始緊張感のある仕上がりとなっています。
また、最近の超人的な主人公が活躍する見た目だけ派手なアクション映画ではなく、敵味方それぞれの人物描写も丁寧で人間ドラマとしても深みがあります。
ストーリー:「ベトナム戦争で捕虜となったマイケル・ランダーは帰国後の周囲の冷たい扱いに怒りを覚えていた。そして、パレスチナのテロリストグループ『黒い九月』の女闘士であるダーリアと手を組み、アメリカ中が熱狂するスーパーボウルの試合中に観客を大量殺戮する計画を立てる。
その計画を事前に察知したイスラエル秘密情報局のデビッド・カバコフはテロを食い止めようとアメリカに潜入したダーリアの行方を追うのだが・・。」
私は最近になって本作品をDVDで鑑賞したのですが、ストーリー・アクション共に密度の大変濃い作品で、見終わって大変満足感がありました。前半から中盤にかけてテロリストの綿密な準備と情報局の必死の追跡をクールかつスリリングに描き、後半はスケールの大きなアクションシーンが次々と展開されて飽きることがありません。特にラストのスタジアムとその周辺でのアクションシーンの迫力と緊迫感はすごいです。カットバックの編集を巧みに駆使して、見る者を手に汗握らせます。
本作品の特徴としてテロリスト側の心情や行動も中立の立場でじっくり描いている点があります。また、テロリストを演じた俳優の演技も素晴らしく、マルト・ケラーの美貌とクールな演技、帰還兵を演じたブルース・ダーンの怪しさと危うさを感じさせる演技は大変印象に残ります。その為、ラストのテロリストがテロを決行するシーンでは主人公側よりも敵側に思わず肩入れしてしまいそうになります。
主人公のイスラエル秘密情報局カバコフを演じたロバート・ショーの演技も素晴らしく、人を殺めることに嫌気をさしながらもテロを防ぐために懸命に立ち向かう主人公を熱演しています。
30年以上前の作品でありますが、911のテロを先取りしたかのような内容は今見ても決して古くはありません。これだけ硬派なアクション映画は現在なかなか製作されないので、一度は見て損はないと思います。
上映時間 143分
製作国 アメリカ
製作年度 1977年
監督: ジョン・フランケンハイマー
原作: トマス・ハリス
脚本: アーネスト・レーマン
ケネス・ロス
アイヴァン・モファット
撮影: ジョン・A・アロンゾ
音楽: ジョン・ウィリアムズ
出演: ロバート・ショウ
ブルース・ダーン
マルト・ケラー
フリッツ・ウィーヴァー
スティーヴン・キーツ
ベキム・フェーミュ
マイケル・V・ガッツォ
ウィリアム・ダニエルズ
クリスティ・マクニコル
ウォルター・ゴテル
クライド草津
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