『幻の湖』この映画を見て!
第281回『幻の湖』
今回紹介する作品は東宝創立50周年記念作品として制作された『幻の湖』です。監督を務めた橋本忍は黒澤監督の『羅生門』の脚本家としてデビュー。『私は貝になりたい』や『砂の器』など数々のヒット作品の脚本を手がけ、本作品で初めて監督を務めました。橋本監督は原作・脚本も手がけて渾身の力をこめて作った結果は1週間で上映を打ち切られ興行的にも惨敗。2003年にDVD化されるまでビデオ化やテレビ放映もされず一時期は幻の作品とまで言われていました。しかし、90年代後半から一部の映画ファンの間で取り上げられ始め、今では日本を代表するカルト映画として評価?されています。
ストーリー:「滋賀県大津市にある雄琴ソープランド街でお市と言う源氏名で働く道子は琵琶湖の西側を愛犬のシロと一緒に走ることが生きがいだった。そんなある日、愛犬のシロが和邇浜で殺される。道子はシロを殺した犯人を見つけだし仇を討つことを決意する。」
本作品さすがカルト化しているだけあって見応え十分でした。164分と長い上映時間ながら、話しの展開が唐突で全く読めず、突っ込みどころも満載で飽きることがありません。
また、私は現在滋賀県大津市で働いていることもあって、普段仕事で見ている風景が次から次へと映し出されるので思わず身を乗り出して見入ってしまいました。見ていて大津市湖西側の約30年の風景の移り変わりを感じることができ、別の意味で感動しました。私が知る限り琵琶湖をここまで大々的に取り上げた作品は後にも先にもないと思います。そういう意味では滋賀県民には必須の作品と言えるでしょう。
さて、肝心の話しの内容ですが、何度見ても良く分かりません。主人公が犬の仇を討つだけと言えばそれだけなのです。しかし、そこに雄琴のソープ街に潜入捜査をしている白人女性の諜報員や琵琶湖を見下ろす山で笛を吹く宇宙飛行士が登場するわ、400年前の戦国時代の悲恋の物語が途中唐突に展開され、挙句の果てラストはスペースシャトルに搭乗した日本人が宇宙遊泳をして琵琶湖を見下しすというぶっ飛んだ内容に見ている側は呆然とするしかありません。
主人公始め全ての登場人物の言動も変すぎて、真面目に演技していればいるほど見ていて笑ってしまいます。特に演技で印象的だったのは主人公が働くソープランドのお局役を演じたかたせ梨乃。まだ、若かりし頃の演技ですが圧倒的な存在感がありました。
本作品の一番の見所は何と言っても主人公が走るシーン。愛犬を殺した犯人を追いかけて延々と走るだけのシーンが映画の中盤とクライマックスに10分以上繰り広げられるのですが、見ている側も途中でランナーズハイになるほど迫真の描写です。
あと、本作品を見た人は誰しも気になるのは白人女性のセリフ。「ファントムではなく、イーグルだ。イーグルはすでに実戦配備についている。」このセリフは一体何を意味していたのでしょう。私は何回見ても分かりません。
私は主人公が最後に犯人を追い詰めた琵琶湖大橋を時々使いますが、通るたびに主人公のあの名(珍?)セリフを思い出して仕方ありません。
本作品は意味不明な点や突込みどころが多いですが、当時の日本映画を代表する一流のスタッフが参加しているだけあって映像や音楽はとても美しいです。(最後の特撮はショボイですが・・・。)時間と心に余裕があり、ぶっ飛んだ映画が見たい方はぜひご覧ください。
上映時間 164分
製作国 日本
制作年度 1982年
監督: 橋本忍
原作: 橋本忍
脚本: 橋本忍
撮影: 中尾駿一郎
斎藤孝雄
岸本正広
特撮監督: 中野昭慶
音楽: 芥川也寸志
出演: 南條玲子
北大路欣也
隆大介
関根恵子
宮口精二
大滝秀治
星野知子
光田昌弘
かたせ梨乃
長谷川初範
室田日出男
下絛アトム
北村和夫
谷幹一
仲谷昇
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