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2009年8月9日 - 2009年8月15日

『心守歌』中島みゆきのアルバム紹介 

中島みゆきのアルバム紹介No.7『心守歌』 
Photo   今回紹介するアルバムは中島みゆき通算29作目のアルバム『心守歌』です。本アルバムはシングル曲が全く収録されておらず、夜会『ウィンターガーデン』で発表された2曲を除いて、全てオリジナルです。

 1曲目の「囁く雨 」は雨の音のSEが最初30秒以上続きます。そして、いきなり飛び込んでくるみゆきさんの迫力のある歌声に心が鷲づかみにされます。激しい雨の振る中で、彼氏が別れ話しの途中で泣き出し困惑する彼女。以前のみゆきさんなら女性が泣く歌詞になるところを、今回は敢えて男性が泣く設定にしたところが印象的でした。

 2曲目の「相席」は酸いも甘いも知った大人の恋愛をジャジーな感じに歌っており、心地よい歌声とメロディーに酔いしれます。

 3曲目の「樹高千丈 落葉帰根 」は恋愛の歌から一転、人の故郷や母への憧れについて歌っています。歌のタイトルの「樹高千丈 落葉帰根 」は中国の諺から引用されており、「たとえ樹木がどんなに高くなっても、落ちた葉はいずれ根元に帰る」という意味があります。親元を離れ遠い地で過ごす心細さや孤独、そして懐かしく思う生まれ故郷と母の懐。みゆきさんは優しい歌声で故郷を離れた者たちの心情を歌い上げます。
 歌の後半の「木の根はゆりかごになって抱きとめる」というフレーズはみゆきさんの母性愛に自然と涙が溢れてきます。

 4曲目の「あのバスに」はロック調の曲で、せきたてられるように未来に向かって飛び出した過去を振り返る歌になっています。

 5曲目の「心守歌 」は今回のアルバムのタイトルにもなっています。みゆきさんらしい独特の言い回しが印象に残る歌です。自分が歩んできた過去を振り返り、愛してきた人々たちの平安を祈る歌詞に心が癒され励まされます。

 6曲目の「六花」は夜会『ウィンターガーデン』のために作られた曲です。果てしない空と大地の間で生きるものたちの罪やけがれの浄化を祈る歌詞は聴く者の心をも浄化します。

 7曲目の「カーニヴァルだったね 」は吉田拓郎調の曲です。今までの愚かで無様な生き方に後悔しながらも、しぶとく生きる人を力強く歌っています。

 8曲目の「ツンドラ・バード」は夜会『ウィンターガーデン』のために作られた曲です。この曲の歌詞は難解で、みゆきさんが大地の全てを見抜くオジロワシに何の意味をこめたのか考えてしまいます。

 9曲目の「夜行」は個人的に本アルバムで一番好きな曲です。夜の世界で傷つきながらも心優しく生きる人々にスポットライトを当てた曲であり、みゆきさんの力強い歌声が聞く者の心にある偏見を打ち砕き、不器用な人間たちの背中を力強く押してくれます。

 10曲目の「月迎え」は何とも幻想的で不思議な曲です。しかし、聞いているとなぜか心がときほぐれて落ち着きます。

 11曲目の『LOVERS ONLY 』はみゆきさんとしては珍しいクリスマスソングです。しかし、そこはみゆきさん。甘いクリスマスソングではなく、失恋した女性のほろ苦いクリスマスソングです。

 今回のアルバムはみゆきさんの様々な歌声が聞けますし、歌詞も聴く人や聴く時によって、様々なイメージができる奥行きがあり、何回聞いても飽きることがありません。言葉の使い方もみゆきさんらしく洗練されており、聴いていて自然と言葉が胸に染み渡っていきます。
 派手な曲はありませんが、みゆきさんの近年のアルバムでは完成度の高いアルバムです。

1. 囁く雨    
2. 相席    
3. 樹高千丈 落葉帰根    
4. あのバスに    
5. 心守歌    
6. 六花    
7. カーニヴァルだったね    
8. ツンドラ・バード    
9. 夜行    
10. 月迎え    
11. LOVERS ONLY

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『PERFECT BLUE』この映画を見て!

第266回『PERFECT BLUE』
Perfect_blue  今回紹介する作品は今や日本を代表するアニメ監督となった今敏が本格的なサイコサスペンスをアニメで描いた意欲作『PERFECT BLUE』です。
 本作品は実写作品として当初企画されていたそうですが、途中からアニメ作品に変更して製作されました。キャラクター原案に江口寿史、企画に大友克洋が参加。今敏監督のデビュー作品でもあります。

ストーリー:「アイドルグループ『チャム』のメンバーである未麻はグループ脱退を宣言し、女優への転身を計る。アイドルから女優を目指すためにドラマ出演でレイプシーンを演じたり、ヘアヌードの撮影に応じたりする。次第に注目されていく未麻だが、人気とは裏腹に現状への不満を募らせる。そんな中、ネットで自分の行動が詳細に書かれたホームページを知る。未麻はストーカーに監視されていることに気づき恐怖に怯える中、周辺で関係者が次々と殺される事件が発生する。」

  今見るとネットやストーカーを扱った点など少し古臭いところはありますが、日本のサイコサスペンス映画の中では5本の指に入るほど面白い作品です。アニメでないと出来ない表現を駆使して、現実と妄想が錯綜する世界を見事に表現しています。アイドルから女優に転身した主人公がストレスから自分を見失い、現実と非現実の境界が曖昧になる展開は見ている側もどこまでが現実なのか分からず最後まで画面に釘付けになります。また、主人公が芸能界という厳しい世界で追い込まれていく心情が見ている側にも良く伝わってきます。
 サスペンスとしてもシナリオが練りこまれており、ラストのオチを初めてみた時は「そういうことだったのか」と感心しました。(多少突っ込みどころはありますが)

 過激な暴力及び性的描写があるので、万人受けする作品ではないですが、サスペンス映画好きなら一度は見て損のない作品だと思います。

上映時間 81分
製作国    日本
製作年度 1998年
監督:    今敏   
演出:    松尾衝   
原作: 竹内義和   
脚色: 村井さだゆき   
作画監督: 浜州英喜   
特殊効果: 真田祥子   
ビュジュアル・ワークショプ   
美術監督: 池信孝   
撮影監督: 白井久男   
編集:    尾形治敏   
音楽:    磯見雅博   
声の出演:岩男潤子
    松本梨香   
    辻親八   
    大倉正章   
    秋元洋介   
    塩屋翼   
    堀秀行   
    篠原恵美   
    古川恵実子   
    新山志保   
    江原正士   
    梁田清之   
    津久井教生   
    古澤徹

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『ダイアリー・オブ・ザ・デッド』この映画を見て!

第265回『ダイアリー・オブ・ザ・デッド』
Photo  今回紹介する作品はゾンビ映画の帝王ジョージ・A・ロメロが『ランド・オブ・ザ・デッド』から3年ぶりに放つゾンビ映画『ダイアリー・オブ・ザ・デッド』です。
 本作品は『クローバーフィールド/HAKAISHA』のように主人公の手持ちカメラによる主観映像を中心にドキュメンタリータッチでゾンビの襲撃を描いていきます。

ストーリー:「ジェイソンを始めとする映画学科の学生グループは卒業制作のため、ペンシルヴェニア州の山でホラー映画を撮影していた。その最中、ラジオから死体が人間を襲撃しているというニュースを聞く。ニュースを聞いたジェイソンたちは山を下りたところ、ゾンビが人を襲う光景を目の当たりにする。
 ジェイソンたちは、この惨劇をビデオカメラで記録して伝えようと決意し、絶えず身の危険が迫る状況下で撮影を始める。」

 本作品は劇場公開せずDVD発売のみを予定して低予算で製作されており、映像はこじんまりとしていましたが、ロメロ監督だけあってゾンビの描写や随所に散りばめられた社会風刺など大変見応えがありました。
 本作品は前作『ランド・オブ・ザ・デッド』の続編というより、『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』と同様に現代にゾンビが発生した時の人々の様々な行動を描いています。そういう意味では新シリーズの展開と考えていいのかのしれません。
 主観映像で製作された映画はどれも視点や描写が制限されがちですが、本作品は手持ちカメラで撮影している人が2人いたり、YouTubeなどの動画や監視カメラの映像も盛り込まれ、主人公たちの行動や世界の状況が見ている側に分かりやすいです。
 残酷描写に関しては控えめですが、ゾンビを酸で溶かしたり、自分の顔面に大カマをぶち込み背後のゾンビを倒すなど、オリジナリティ溢れる描写が随所にありました。

 登場人物に関しては主人公たちよりも、いざとなったら冷静に物事に対処するアル中の大学教授と、ダイナマイトでゾンビを吹き飛ばす過激な耳の遠い老人が印象的でした。

 ロメロ監督のゾンビ映画は毎回その時代の社会情勢を反映させた作りになっていますが、今回は技術の進歩による情報化社会に対して警鐘を鳴らす作品となっています。
 デジタルメディアとネットの普及で誰もが多くの情報に触れ、そして自らも情報の発信者になれる時代。そんな時代のモラルの低下や情報操作の危険性、そして冷静な判断力の必要性に関して本作品は観客に問いかけます。
 「カメラで撮っていると人間はすべて傍観者になってしまう。」という映画の中のセリフはとても印象的でした。
 ラストは『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』と同様に人間によるゾンビ狩りのシーンが描かれるのですが、最後の1カット頭部だけになったゾンビの描写は監督が本作品で伝えたかったことを見事に映像で表現しています。

 ロメロ監督は今年新作である『サバイバル・オブ・ザ・デッド』を公開する予定になっています。今度ある島を舞台にゾンビの襲撃から生き延びようとする人間たちを描くそうですが、どんな作品になるのか今から楽しみです。

 本作品は賛否両論ありますが、ゾンビ映画好きの方は押さえておいて損のない作品ですよ! 

上映時間 95分
製作国    アメリカ
製作年度 2008年
監督:    ジョージ・A・ロメロ   
脚本:    ジョージ・A・ロメロ   
撮影:    アダム・スウィカ   
プロダクションデザイン:    ルパート・ラザラス   
衣装デザイン:    アレックス・カヴァナー   
編集:    マイケル・ドハティ   
音楽:    ノーマン・オレンスタイン   
出演:    ミシェル・モーガン   
    ジョシュ・クローズ   
    ショーン・ロバーツ   
    エイミー・ラロンド   
    ジョー・ディニコル   
    スコット・ウェントワース   
    フィリップ・リッチョ    リドリー
    クリス・ヴァイオレット   
    タチアナ・マスラニー   
    ジョージ・A・ロメロ   

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