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2009年7月26日 - 2009年8月1日

『ゴジラ』(1954年版)この映画を見て!

第264回『ゴジラ』
Photo_2  今回紹介する作品は日本人なら誰もが知っている怪獣映画『ゴジラ』の記念すべき1作目です。公開当時は観客動員数961万人を誇り、単純計算で日本人の10人に1人が見たほどの大ヒットを記録しました。

ストーリー:「太平洋上で貨物船「栄光丸」が原因不明の沈没事故を起こした。その後、救出に向かった貨物船や大戸島の漁船も沈没。生き残った船員は怪物に襲われたと証言する。そのことを聞いた大戸島の老人は伝説の怪物「ゴジラ」ではないかと周囲に話す。その後、大戸島をゴジラが襲撃して多大な被害をもたらす。政府は事態を究明するため、生物学者の山根恭平博士を団長とした調査チームを結成して、大戸島での調査を行う。その際に調査団はゴジラと遭遇。その姿を見た山根博士は核実験によってジュラ紀の恐竜が甦ったのではないかと推測する。それから数日後、ついに東京にもゴジラが上陸。街は壊滅状態となる。」

 私は初めて本作品を見たとき、その完成度の高さに驚きました。確かに特撮は今見ると明らかにミニチュアと分かる箇所が多いですが、それを補って余りあるほどの臨場感と迫力があります。
 本作品の特長はゴジラを強調せず、あくまでゴジラに襲撃される人間に焦点を当てているところです。2作目以降のゴジラは人間にとって親しみやすいキャラクターになりますが、1作目は巨大な力を持つ怖い存在として終始描かれています。ゴジラによって東京が破壊するシーンは明らかに東京大空襲をイメージして描かれており、被災者たちの描写は生々しく見ていて恐ろしく痛ましいです。
 また、本作品は当時の日本人の核に対する恐怖と脅威をゴジラという怪獣に象徴させて表現しているところが巧みで、娯楽映画でありながら製作者たちの反戦・反核のメッセージが見ていてひしひしと伝わってきます。特にラストのゴジラが死んでいくシーンはハッピーエンドというには後味が重く、ゴジラも実は核による犠牲者であり、核の脅威は決して終わっていないことを観客に強烈アピールして締めくくっています。

 ゴジラはその後シリーズ化され、日本だけでも2004年までに28作品が製作されました。また、ハリウッドでもローランド・エメリッヒ監督が『GODZILLA』というタイトルで製作されました。しかし、1作目と比較すると質はどれも低いです。
 私は以前から本作品を当時の設定のまま現代の技術でリメイクしたら面白い作品になるのではと思っていましたが、最近はリメイクしてもつまらない作品になるだろうなと思うようになりました。敗戦から10年後という時代だからこそ生まれた作品であり、戦争を経験した人間が製作したからこそ単なる怪獣映画を超えた格調高い反戦映画に仕上がったのだと思います。二度と本作品を越える怪獣映画が製作されることはないでしょう。

上映時間 97分
製作国    日本
製作年度 1954年
監督:    本多猪四郎   
製作:    田中友幸   
原作:    香山滋   
脚本:    村田武雄   
    本多猪四郎   
撮影:    玉井正夫   
美術:    中古智   
美術監督: 北猛夫   
編集:    平泰陳   
音楽:    伊福部昭   
音響効果:    三繩一郎   
特技・合成:    向山宏   
特技・美術:    渡辺明   
特殊技術:    円谷英二   
出演:    志村喬   
    河内桃子   
    宝田明   
    平田昭彦   
    堺左千夫   
    村上冬樹   
    山本廉   
    鈴木豊明   
    馬野都留子   
    岡部正   
    小川虎之助   
    手塚勝己   
    中島春雄   
    林幹   
    恩田清二郎   
    菅井きん   

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『久石譲 in 武道館 ~宮崎アニメと共に歩んだ25年間~』

Photo  昨年に『崖の上のポニョ』の公開を記念して、8月に2日間で合計3回にわたって日本武道館にて公演された『久石譲 in 武道館 ~宮崎アニメと共に歩んだ25年間~』。
 『風の谷のナウシカ』から『崖の上のポニョ』まで久石譲が手がけてきた宮崎駿作品の音楽を武道館で演奏するという宮崎&久石ファンには夢のような企画で、チケットもすぐに完売したほどです。
 私も武道館のコンサートに喉から手が出るほど行きたかったにも関わらず都合上断念。以前NHKでやっていた番組を録画して何度も見たものでした。
 そして今回『崖の上のポニョ』のDVD発売に合わせて、コンサートの様子が完全収録されたDVD(NHKの放送では『MADNESS』が未収録でした。)が発売されるということで私も『ポニョ』とあわせて手に入れ、自宅で鑑賞しました。

  200名の大オーケストラに800人の大合唱団、そして160人のマーチングバンドと総勢1160人もの超大規模編成による演奏は圧巻で見ていて鳥肌が立ったものでした。また、同時に何度見ても武道館に行けなかったことが悔やまれます。
 今回のコンサートでは作品ごとに様々な趣向を凝らしており、見ていて楽しく感動的で、2時間飽きることがありません。
 オープニングは2人が始めてコンビを組んだ『風の谷のナウシカ』が演奏されるのですが、壮大なオケの響きと美しいメロディーにいきなり心が鷲づかみにされます。
 続いて演奏される『もののけ姫』ではコーラスも加わった「アシタカせっき」の壮大な音楽に鳥肌が立ちまくり完全ノックアウトです。
 重量級の作品に続いて演奏されたのが『魔女の宅急便』。本作品の曲は明るく軽快で聴いていて心地よいです。特に印象的だったのがバイオリンソロの美しさが際立った「傷心のキキ」と「かあさんのホウキ」です。
 『崖の上のポニョ』では大橋のぞみちゃんが歌う「崖の上のポニョ」を始め、ボーカル曲が4曲披露されます。林正子さんが歌う「海のおかあさん」は最後の「覚えていますか、兄弟たちを~」の高い歌声に圧倒されました。また、久石さんの娘さんである麻衣さんが歌う「ひまわりの家の輪舞曲」は個人的にイメージアルバムが発売された時から大好きな歌だったので聴けてうれしかったです。
 『天空の城ラピュタ』は地元の中高生160人のマーチングバンドによって演奏されるのですが、凄い迫力です。個人的に『ラピュタ』の曲が一番好きなので、聞いていて胸が熱くなりました。
 『紅の豚』は久石さんのピアノとホーンとのアンサンブルでの演奏。ジャズ調にアレンジされており、『ラピュタ』から一転して大人のムードが漂います。
 『ハウルの動く城』は組曲で演奏されます。映画でもクライマックスに流れて印象的だったトランペットを中心にすえた名曲「Cave of Mind」。本コンサートではトランペットとトロンボーンを中心にすえ演奏しており、美しい音色が耳に残ります。
 『千と千尋の神隠し』は平原綾香をゲストに迎えてボーカル曲が2曲披露されます。「いのちの名前」は映画ではピアノソロで何度も演奏されるメインテーマに歌詞を付けたものですが、平原さんの情感溢れる歌声が素敵でした。「ふたたび」は映画のクライマックスで流れる曲で今回のコンサートのために新たに歌詞を付けています。
 そしてコンサートの最後を飾るのは誰もが知っている『となりのトトロ』。個人的に「風の通り道」が大好きだったので、本コンサートでは少ししか演奏されなかったのが残念でした。もっと聞かせて欲しかったです。「さんぽ」、「となりのトトロ」はもはや誰もが知っている歌であり、会場が大いに盛り上がっているのが見ていても伝わってきます。
 アンコールは久石さんのコンサートでは毎回欠かせない「MADNESS」と『もののけ姫』のラストに流れる美しいピアノ音色が印象的な「アシタカとサン」が演奏されます。「アシタカとサン」は久石さんの数ある曲の中でも1、2位を争う美しいメロディーだと思うので、今回の最後がこの曲で締められるのはうれしい限りです。

 私はDVDを見るたびに、生で見られなかったことを後悔しつつ、宮崎さんと久石さんが生み出した名作と名曲の数々に感動させられます。
 本DVDは宮崎ファン及び久石ファンにはたまりません。

収録曲
    *  【風の谷のナウシカ】
          1.オープニング「風の伝説」
          2.レクイエム~メーヴェとコルベットの戦い
          3. 遠い日々
          4. 鳥の人
    * 【もののけ姫】
          5. アシタカせっき
          6. タタリ神
          7. もののけ姫
    * 【魔女の宅急便】
          8. 海の見える街
          9. 傷心のキキ
          10. かあさんのホウキ
    * 【崖の上のポニョ】
          11.深海牧場~海のおかあさん
          12. 波の魚のポニョ~フジモトのテーマ
          13. ひまわりの家の輪舞曲
          14. 母の愛~いもうと達の活躍~母と海の讃歌
          15. 崖の上のポニョ
    * 【天空の城ラピュタ】
          16. ハトと少年
          17. 君をのせて
          18. 大樹
    * 【紅の豚】
          19. 帰らざる日々
    * 【ハウルの動く城】
          20. Symphonic Variation“Merry-go-round”~Cave of Mind
    * 【千と千尋の神隠し】
          21. あの夏へvocal version「いのちの名前」
          22. ふたたび
    * 【となりのトトロ】
          23.風のとおり道
          24. さんぽ
          25. となりのトトロ
    * 【アンコール】
          26.MADNESS
          27.アシタカとサン

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『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序 (EVANGELION:1.11)』映画鑑賞日記

111  今年の夏大ヒットを飛ばしている『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』。その公開に併せて前作の『序』が新作カットを追加してデジタルマスター版としてリリースされました。私は以前発売された特装版を購入したので、本作品のリリースを知ったときは憤慨して絶対買わないし見ないと誓ったものでした。しかし、追加カットがどうしても気になり、レンタルで借りてきて、鑑賞してしまいました。

 まず、新作カットに関しては序盤に結構追加されていました。私が確認した追加シーンは以下の通りです。
①冒頭からミサトが車でシンジを迎えに行くシーン
②シンジとミサトの車内での会話シーン
③第4の使徒に関して冬月とゲンドウが話すシーン
④ネルフ本部でミサトが迷うシーン
⑤赤木リツコが水着で登場するシーン
⑥初号機に乗るかどうかゲンドウに迫られるシンジを周囲の人間が見つめるシーン
 上記以外にも風景描写が随所で追加されていました。
 また、細かな修正も随所にされており、使徒が登場する際に天使の輪が追加されていたり、第6使徒が崩壊する際に虹が浮かび上がるように修正されていました。
 特にストーリーを語る上で重要なものはありませんが、物語の奥行きに深みを与えたり、次回作以降との整合性を保つためのシーンが多かったように思います。

 映像に関してはレンタルしたのがDVDなのでBDほどではないのでしょうが、前回リリースされたものより鮮明に感じました。前回はテレシネ方式でデジタルデータから一旦35mmフィルムにプリントしてDVD用の映像を作り出しているのに対して、今回はデジタルデータをそのまま使っています。BD版を持っている人の感想を聞くと前回のDVDとは比較にならないほど綺麗と言っているので、BDプレイヤーを購入した暁には購入して視聴したいと思います。

 ところで『破』のDVDはどのように発売されるのか気になるところです。前作同様に劇場公開テレシネ版と追加カット付きデジタルリマスター版が分けて発売されるのか、いきなりデジタルリマスター版が出るのか。ファンはどちらも買ってしまうのでしょうが・・・。

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『アキレスと亀』この映画を見て!

第263回『アキレスと亀』

Photo  今回紹介する作品は北野武監督が芸術を追い求める男の人生を描いた『アキレスと亀』です。前作、前々作と実験色が強く難解な作品が続きましたが、今回は比較的分かりやすい作品となっています。

 

ストーリー:「裕福な家庭に生まれた真知寿は絵を描くことが大好きで、将来は画家になるつもりだった。しかし、父の会社が倒産したことで状況は一変。貧しい叔父の家に預けられ、辛い生活を送る。

 青年になってからも画家を目指す真知寿は昼間働きながら芸術学校に通う。仲間と芸術に取り組む毎日。職場の幸子は絵を描くことしか知らない純朴な真知寿に惹かれていく。やがて2人は結婚。真知寿は幸子の支えの下、画家として成功を掴むため様々なアートに挑戦していくが芽が出ない日々が続く。」

 

本作品は少年時代、青年時代、中年時代と3つのパートに分かれています。

少年時代は主人公とその家族が転落していく姿が描かれていくのですが、抑制の効いた静謐な演出が主人公を襲う悲劇を際出せています。また、主人公が仲良くなる山下清のような絵を描く知的障害の男性も深く印象に残りました。

 青年時代は芸術学校で仲間と芸術を追い求める姿が淡々と描かれていきます。このパートで一番印象的だったのが本筋とは全く関係ない電撃ネットワークの登場シーン。彼らのアバンギャルドな芸風はある種芸術の域に達しています。

 中年時代は北野監督が主人公としても出演するパートですが、それまでの落ち着いた雰囲気から一転してコミカルかつ哀愁漂う雰囲気が前面に押し出されます。このパートは北野監督のコメディアンとしての色が大変強く出ており、樋口可南子とのコントのような芸術活動は見ていて大変面白かったです。また同時に芸術を追い求めていくにつれて、社会から逸脱していく主人公の姿は真剣であるが故に滑稽でした。

本人は芸術に身を捧げられて幸せな一生なのかもしれませんが、社会的に評価されない限り周囲からは哀れな変人にしか見られない芸術の世界の残酷さというものを感じました。

 

 また、本作品で印象的だったのが主人公の周囲で次々に起こる死です。北野作品はどれも死が描かれることが多いですが、本作品はそれが特に際立っていました。生のすぐ裏に潜む死。淡々と描かれる死の数々は芸術や人生の無常さを見事に表現していたと思います。

 

 映画のラストは今までの北野作品なら死で終わるところですが、今回は生で終わるところが良かったです。あのラストシーンを見て、今回の映画のタイトルがなぜ『アキレスと亀』なのか分かりました。

 

 芸術なんて本来は自己の表現欲を満足させるための行為であり、本当は自分が納得すればそれで良い筈なのに、そこに社会的評価や成功を求めるために追い詰められていく。本作品は芸術家になりたかった男の悲劇を喜劇的に描いた傑作です。 

 

上映時間 119

製作国 日本

製作年度 2008

監督: 北野武

脚本: 北野武

撮影: 柳島克己

美術: 磯田典宏

編集: 北野武

太田義則

音楽: 梶浦由記

音響効果: 柴崎憲治

記録: 谷恵子

照明: 高屋齋

挿入画: 北野武

録音: 堀内戦治

助監督: 松川嵩史

出演: ビートたけし

 樋口可南子

柳憂怜

麻生久美子

中尾彬

伊武雅刀

大杉漣

 筒井真理子

吉岡澪皇

円城寺あや

徳永えり

大森南朋

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