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2009年1月11日 - 2009年1月17日

『バロン』この映画を見て!

第241回『バロン』
Photo  今回紹介する作品は独特なヴィジュアルセンスを持つ鬼才テリー・ギリアムが「ほら吹き男爵の物語」を映画化した『バロン』です。
本作品は巨額の制作費をかけた割に興行的に失敗して、ギリアム監督はしばらく不遇の時代を迎えることになります。
 しかし、本作品で見せてくれるギリアム監督の独創的イマジネーションの数々はギリアムファンにはたまりません。特に月面のシーンとヴィーナスが登場するシーンはそのヴィジュアルセンスに圧倒されます。
 また、モンティ・パイソンで活躍していただけあって子供が見る甘いファンタジー映画にはなっておらず、ブラックユーモアや下ネタも満載です。

ストーリー:「18世紀、トルコ軍占領下にあり戦火の広がる町。そこで「ほら吹き男爵の冒険」の演劇が上演されていた。そこへ突然本物のほら吹き男爵(バロン)が現れ、自分のせいでトルコ軍と戦争になったと言う。しかし、誰も真剣に相手をしなかったが、劇団の少女サリーだけは彼が本物のバロンであることを見抜く。サリーはバロンにトルコ軍を倒すために協力してほしいと依頼され、一緒に闘う仲間を連れてくるために気球で旅に出る。」

 本作品の最大の見所は何と言っても完璧な童話の世界の映像化です。セットとローテクな特撮で作り上げられたファンタジーの世界は見た目はいかにも作り物といった感じです。しかし、その作り込みが徹底されているので逆にCGでは出せないおとぎ話の世界のリアリティが表現できていたと思います。ファンタジー映画では細部への気配りがないと観客が入り込めなくなることが、本作品を見ると良く分かります。 

 出演者も大変豪華です。特に注目は、若き日のユマ・サーマンやサラ・ポーリーの出演と、ロビン・ウィリアムズがコメディアンとしてはじけた演技です。ユマ・サーマンはヴィーナスの役をしていますが、その美しさはため息が出るほどです。また、サラ・ポーリーも歯が抜けて幼いですが、しっかりした女の子役を見事に演じています。
 また、ギリアム監督の盟友であるエリック・アイドル、 ジョナサン・プライスが出演しているところも嬉しい限りです。 プライスに関しては『未来世紀ブラジル』とは打って変わって、がちがちの官僚役を演じていて面白かったです。

 ストーリーに関して印象的だったのは、理性の時代に対する批判。理性的と思われる行動が人を抑圧し、一見非理性的な行動が人を解放する。理性に埋め尽くされた時代に対する監督の批判精神を感じました。
 
 本作品の独創的な映像と物語をぜひ皆さんも体験して、理性の時代に息抜きをしてください!

上映時間 125分
製作国 アメリカ
製作年度 1989年
監督: テリー・ギリアム 
原作: ゴットフリート・ビュルガー 
脚本: チャールズ・マッケオン ,テリー・ギリアム 
撮影: ジュゼッペ・ロトゥンノ 
音楽: マイケル・ケイメン 
出演:
 ジョン・ネヴィル
 サラ・ポーリー
エリック・アイドル
オリヴァー・リード
ジョナサン・プライス 
  ロビン・ウィリアムズ
ユマ・サーマン 
ヴァレンティナ・コルテーゼ 
アリソン・ステッドマン
ウィンストン・デニス 
チャールズ・マッケオン 
ジャック・パーヴィス 
ビル・パターソン 
ピーター・ジェフリー
レイ・クーパー

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『乱』この映画を見て!

第240回『乱』 
Photo_2 今回紹介する作品は黒澤監督が自分のライフワークと位置づけた時代劇『乱』です。本作品はシェークスピアの悲劇『リア王』を原作に、舞台を日本の戦国時代に置き換えてシナリオが書かれました。
 非常にスケールの大きな作品だけあって、フランスの映画会社からも資金援助を受けて、日仏合作映画として製作されました。
 撮影は当時の日本映画としては大変大規模で、エキストラを1000人雇った合戦シーンや数億円かけて城を建てて燃やすなど話題になりました。

ストーリー:『3つの城を治める一文字秀虎は3人の息子たちと狩りに出かけていた。そこで秀虎は突然息子たちに家督を3人の息子に継がせ自分は隠遁することを告げる。
 しかし、父親思いの三男・三郎は父親の提案に対して反論。怒った秀虎は三郎をその場で追放した。その場にいた客人の一人である隣の国の主・藤巻は三郎を気に入り、婿として迎え入れることを申し出る。
 秀虎は長男・太郎に本丸を譲り、二の丸で隠居生活を送り始める。しかし、隠居した身とはいえ城の中で未だに影響力を持つ父親に対し、太郎は危惧して「今後は自分が領主なのだから、一切の事は自分に従うように」と迫る。そんな太郎の薄情な態度に立腹した秀虎は家来を連れて次男・次郎の所に行く。だが次郎も「家来抜きでないと迎え入れない」とそっけなく断る。家来を見捨てることなど出来ない秀虎は、野をさまよう事態に陥ってしまう。
 その頃、太郎の奥方である楓の方は親兄弟を秀虎に殺された恨みを晴らすために太郎を巧みに動かして失墜の計画を立てていた。』

 私は黒澤監督のカラー作品の中で本作品が一番見応えがあり大好きです。前作の『影武者』より映像はさらにスケールが大きく重厚ですし、因果応報のストーリーは胸を打つものがあります。
 黒澤監督の演出は『影武者』よりも一段と能の舞台を意識したものとなっており、それに合わせてメイクや衣装も大変派手なものになっています。(ちなみに本作品のカラフルな衣装でワダエミはアカデミー賞最優秀衣装賞を受賞しました。)

 本作品は戦国時代を舞台にしていますが、現在にも通ずるテーマが数多く内包されています。財産をめぐり争う子どもたち、子どもに命を狙われる父親、肉親を殺された憎しみから復讐を狙う女。いつの世も変わらぬ人間の愚かさや醜さ、そして業の深さを見ていて痛感させられます。
 また、本作品では人間の愚かな行いと対比する形で自然の雄大な景色が映し出され、神の前では人間もちっぽけな生き物に過ぎないという印象を見る者に与えます。

 役者の演技に関して言うと、仲代達矢のオーバーリアクション気味の演技は見る人によってはくどく感じるかもしれませんが、個人的には作風にあっていたと思います。
 しかし、本作品では何と言っても原田美枝子の演技がすばらしく、復讐を誓う女性の恐ろしさやしたたかさを見事に表現していました。特に刃物を突きつけるシーンと泣きながら蛾を殺すシーンの演技は強烈でした。
 また、植木等や井川比佐志も良い演技をしていたと思います。
 ピーターの起用に関しては賛否両論あるところですが、飄々と本作品の狂言回しの役割を果たしていたと個人的には思います。

 乱れた世界の中で自らの罪から狂っていく主人公。狂うことで何とか生き延びようとしながら、最後に悲惨な現実を目の当たりにして世を去っていく悲劇。神や仏は罪深い人間を見捨てたわけでなく、救いきれない人間の愚かさに涙していることを示すラストシーン。黒澤監督の晩年の人間観が垣間見れた気がします。

 本作品は賛否両論ありますが、黒澤監督を語る上では外せない作品です。また日本映画としても、ここまでのスケールの作品はなかなかありません。ぜひ一度見ることをお勧めします。

上映時間 162分
製作国 日本/フランス
製作年度 1985年 
監督: 黒澤明 
原作: ウィリアム・シェイクスピア   『リア王』
脚本: 黒澤明 , 小國英雄, 井手雅人 
撮影: 斎藤孝雄 , 上田正治 
美術: 村木与四郎, 村木忍 
音楽: 武満徹 
演奏: 札幌交響楽団 
ネガ編集: 南とめ 
衣裳デザイナー: ワダエミ 
殺陣: 久世竜 , 久世浩 
助監督: 岡田文亮 
出演:
仲代達矢
寺尾聰 
根津甚八
隆大介
原田美枝子
宮崎美子 
植木等 
井川比佐志
ピーター 
油井昌由樹
伊藤敏八 
児玉謙次 
加藤和夫 
松井範雄
鈴木平八郎 
南條礼子
古知佐和子
東郷晴子 
神田時枝 
音羽久米子
加藤武 
田崎潤 
野村武司

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『影武者』この映画を見て!

第239回『影武者』
Photo  今回紹介する作品は黒澤監督が久しぶりに挑戦した時代劇『影武者』です。黒澤監督としては前作『デルス・ウラーザ』から約5年ぶりの作品に当たります。
 莫大な制作費を調達するためにジョージ・ルーカスとフランシス・フォード・コッポラが海外版プロデューサーとして名を連ね、役者の多くを一般公募から選出するなど、製作にあたっては数多くの話題がありました。
 また、主人公を演じる予定だった勝新太郎の撮影2日目にしての突然の降板、『どん底』からコンビを組んでいた音楽家である佐藤勝の黒澤監督との意見対立による降板など完成までにトラブルも数多くありました。
 そんな中、完成した作品はカンヌ国際映画祭で最高の賞であるパルム・ドールを受賞しました。

ストーリー:「織田信長との決戦を前に敵の銃弾で負傷した武田信玄は遺言として「3年間死亡した事を隠せ」と弟の武田信廉らに告げる。そしてついに信玄が亡くなり、遺言を聞いていた者たちは影武者を立てることにする。影武者として選ばれたのは、盗みの罪で処刑されるところを信廉に助けられた男だった。
 信玄そっくりの男は最初影武者に乗り気でなかったが、次第に影武者としての役割を受け入れる。そんな中、武田家を何とか追い込もうとする織田信長と徳永家康は信玄が死んだかどうか探りを入れていた。」

 個人的に本作品は芸術映画として超一級の作品ですが、娯楽映画としては正直いまいちです。
 重厚な絵画のような映像美と終始漲る緊張感あふれる演出は大変見応えがありますし、影武者を主人公とにして動乱の戦国時代を描くという内容も悪くはありません。
 しかし、面白いかといえばテンポが悪く、様式美にとらわれすぎて、退屈なところがあります。ストーリーも登場人物の複雑な心情があまり伝わってきません。

 本作品を始めてみた時、冒頭の武田信廉が信玄に影武者を紹介するシーンの重厚な舞台劇を見ているかのような演出に、これから始まる物語に対して大きな期待感を抱きました。
 映画の前半は映像の美しさは堪能できましたが、話の展開自体は正直ワンシーンワンシーンが長すぎて眠くなるところもありました。
 中盤に入り、盗賊の男が影武者となり、重臣たちが周囲にばれないように気を配るあたりから、段々面白く見ることができるようになりました。影武者であることがばれないように取り繕う主人公や重臣たちの振る舞いは見ていて手に汗握るものがありましたし、主人公が次第に信玄が乗り移ったかのように振舞っていく姿も見応えがありました。

 ただ、影武者が夢の中で信玄と出会うシーンはセットが安っぽくて浮いていたような気がします。また、夜の戦闘シーンも暗くて何が何だが正直良く分かりませんでした。

 後半は主人公が影武者であることがばれて追い出され、武田家が長篠の合戦で滅亡するまでが描かれますが、栄枯盛衰・諸行無常を感じさせる展開が印象的でした。主人公が追い出された後も武田家が気になり後を追っていくところが何とも哀れでした。
 クライマックスの長篠の合戦も直接的な戦闘シーンを避けて、敢えて合戦後の倒れた馬や死体を見せたのも戦いの空しさや悲壮感が見ていて伝わってきました。
 
 役者の演技に関して言うと、主役の仲代達矢の演技は難しい役を見事にこなしています。ただ、時折演技が少し硬いような気もしました。勝新太郎が演じたらどんな感じになったか分かりませんが、もう少し肩の力を抜いてコミカルに演じても良い場面もあったと思います。
 他の役者に関しては山崎努や大滝秀治は手堅い演技をしていますし、新人として起用された織田信長役の隆大介の若々しい演技も印象的でした。

 本作品はカリスマ的なリーダーを失った部下たちが何とか代役を立てて、組織を守ろうとするが守りきれない悲劇を重厚に描いています。リーダーが偉大すぎるのは組織にとっては必ずしも吉とは言えないのでしょうね。
 また、どんな強い組織でも未来永劫の繁栄は続かない。私は本作品を見て、人の世の儚さを強く思いました。

 本作品はモノクロ時代の黒澤作品に比べると面白さはいまいちですが、スケールの大きな映像と緊張感漲る演出は見応え十分です。一度は見てみる価値のある作品です。

上映時間 179分
製作国 日本
製作年度 1980年
監督: 黒澤明 
脚本: 黒澤明、井手雅人 
撮影: 斎藤孝雄、 上田正治 
美術: 村木与四郎 
編集: 黒澤明 
音楽: 池辺晋一郎 
演奏: 新日本フィルハーモニー交響楽団 
アドバイザー: 橋本忍 
監督助手: 岡田文亮 
監督部チーフ: 本多猪四郎 
撮影協力者: 中井朝一 、 宮川一夫 
出演:
仲代達矢
崎努
原健一
根津甚八
大滝秀治
隆大介 
油井昌由樹 
桃井かおり 
倍賞美津子
室田日出男
志浦隆之 
清水紘治 
清水のぼる
清水利比古
志村喬
藤原釜足 
浦田保利 

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『大脱走』この映画を見て!

第238回『大脱走』
Photo  今回紹介する作品は第二次大戦中にドイツの捕虜収容所から連合軍の捕虜が大量脱走したという実話をオールスターキャストで映画化した『大脱走』です。

ストーリー:「第2次大戦も末期を迎えた頃、ドイツ北部の第3捕虜収容所に、連合軍の捕虜が移送されてくる。彼らは過去に何度も脱走を試みた強者どもで、その処遇にドイツ軍は手を焼いていた。
 彼らは収容所に入るやいなや、脱走を企てようとする。しかし、ドイツ軍の強固な監視体制の前に敢えなく失敗してしまう。
 そんな中、過去に何度も脱走計画を指揮したビックXことバートレットが収監されてくる。パートレットはトンネルを掘って250人の脱走を図る計画を立て、脱走のプロたち共に準備を始める。」

 本作品は第2次大戦の捕虜収容所を舞台にした映画でありますが、重苦しくなく、誰が見ても楽しめる娯楽映画に仕上がっています。
 上映時間は3時間近くありますが、最後まで飽きることなく手に汗握って見ることができます。
 前半は捕虜たちが看守の目を盗んでトンネルを掘って脱走するまでの過程を時にユーモアを挟みながらスリリングに描いています。それぞれの捕虜が役割を担い一致団結して脱走に取り組む姿は、見ていてチームプレイのあり方の勉強になります。また要所要所で描かれる捕虜たちの人間ドラマも印象的でした。

 後半は収容所から脱走に成功した者たちがドイツから無事脱出できるかどうかが緊張感たっぷりに描かれますが、予想以上にシビアな展開が待ち受けており、成功した人間が3人という悲しい結末を迎えます。
 しかし、ラストはスティーヴ・マックィーンの力強いショットで終わるので、見終わって清々しい気持ちになれます。
 私は本作品を見るたびに、どんな状況におかれても不屈の精神で立ち向かっていこうという気持ちにさせられます。

 また、本作品はスティーヴ・マックィーンを始めとして、ジェームズ・ガーナー、リチャード・アッテンボロー、ジェームズ・コバーン、チャールズ・ブロンソンと当時の人気若手俳優を一堂に集めて撮影しており、一人一人に映画の中で見せ場があります。
 しかし、その中でもスティーヴ・マックィーンが断トツに光り輝いています。前半の何度失敗しても諦めずに逃亡を図るシーン、後半のバイクでの逃走シーン、彼が出るシーンは全て格好良く、同じ男として憧れます。

 あと、本作品はエルマー・バーンスタインが手がけた音楽が大変すばらしいです。マーチ調のテーマ曲は明るく軽快で聞いていて心地良く、つい口ずさみたくなってしまいます。このテーマ曲のおかげで映画の雰囲気がさわやかになったところが大きいと思います。

 本作品で描かれる自由を求めて闘う男たちの姿は何度見ても格好良く痛快です。本作品をまだ見たことない方は一度ご覧になってください。その面白さにはまると思います。 

上映時間 168分
製作国 アメリカ
制作年度 1963年
監督: ジョン・スタージェス 
製作: ジョン・スタージェス 
原作: ポール・ブリックヒル 
脚本: ジェームズ・クラヴェル 
W・R・バーネット 
撮影: ダニエル・ファップ 
編集: フェリス・ウェブスター 
音楽: エルマー・バーンスタイン 
出演:
 スティーヴ・マックィーン
  ジェームズ・ガーナー 
  リチャード・アッテンボロー 
  ジェームズ・コバーン
  チャールズ・ブロンソン
  デヴィッド・マッカラム 
  ハンネス・メッセマー 
  ドナルド・プレザンス 
  トム・アダムス 
  ジェームズ・ドナルド 
  ジョン・レイトン 
  ゴードン・ジャクソン 
  ナイジェル・ストック 
  アンガス・レニー 
  ロバート・グラフ 
  ジャド・テイラー

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