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2009年5月31日 - 2009年6月6日

『オーメン』この映画を見て!

第256回『オ-メン』
Photo_2  今回紹介する作品は6月6日6時に産まれた悪魔の子ダミアンがもたらす恐怖を描いた作品『オーメン』です。

  ストーリー:「アメリカ人外交官であるロバート・ソーンは、妻には内緒で死産してしまった子どもの代わりに、ローマの産院で孤児を養子として引き取る。ダミアンと名づけた子は大きな病気一つすることなく育っていく。しかし、乳母の自殺をきっかけに息子の周囲で奇妙な出来事が起こり始める。そして妻は次第に精神的に不安定になっていく。
 その頃、ソーンの前に『あの子どもは悪魔だと』言う神父が現れる。最初は神父の言うことを信じなかったソーンだが、奇怪な出来事の連続に次第にダミアンに疑問を持ち始める。」

  本作品を私が始めてみたのがテレビで小学生の時でした。その時はジェリー・ゴールドスミスの不気味なスコアも相まって大変怖い印象があったのですが、最近見返してみるとそれほど怖くはなく、むしろオカルト映画としての完成度の高さに感心しました。

 本作品の見せ場は何と言っても登場人物たちの派手な死に方です。不謹慎ですが、次は誰がどういった死に方をするのかが本作品で見ている側が一番気になるところであり、期待しているところでもあります。そういった意味では期待を裏切らない出来となっています。特にガラスで首が吹っ飛ぶシーンは強烈なインパクトを見ている側に与えてくれます。

 ストーリーはこじんまりとしていますが、次々と謎が明かされていく展開は最後まで飽きることなく見ることが出来ます。特にダミアンの母の正体が実は○○だったと分かるシーンは結構ショッキングです。

 キャストもこの手の作品としては珍しく、名優グレゴリー・ペックが主演を務めています。彼の重厚な演技が本作品の質を格段に高めています。また、ダミアンを演じた子どももかわいらしく無垢な表情をしている分、逆に恐ろしさを感じさせます。

 あと、アカデミー最優秀音楽賞も受賞したジェリー・ゴールドスミスのスコアが最高に素晴らしいです。特にテーマ曲である「アヴェ・サターニ」の迫力と恐ろしさは鳥肌が立つほどです。彼のスコアが本作品の完成度を一気に上げたと思います。

 本作品は怖すぎることもなく、グロすぎることもなく、比較的誰でも見ることが出来る格調高いオカルトホラー映画だと思います。暑い夏にぜひご覧ください。

 なお、本作品は大ヒットしてシリーズ化されました。『オーメン2』では13歳になったダミアンが自分の正体に気づき、『オーメン3最後の闘争』では32歳になったダミアンが英国で誕生する救世主の抹殺をもくろみます。また、『オーメン4』ではダミアンの娘ディーリアが主役となります。しかし、残念なことにシリーズを重ねるごとに、内容は面白くなく、映画としての質も低下しています。ただ、2作目は死に方の派手さにおいては1作目を上回っていますが。
 また、2006年にはリメイクもされましたが、オリジナルに比べると出来はイマイチです。

上映時間 111分
製作国    アメリカ
製作年度 1976年
監督:    リチャード・ドナー   
脚本:    デヴィッド・セルツァー   
撮影:    ギルバート・テイラー   
音楽:    ジェリー・ゴールドスミス   
出演:    グレゴリー・ペック   
    リー・レミック   
    デヴィッド・ワーナー   
    ハーヴェイ・スティーヴンス   
    ビリー・ホワイトロー   
    ホリー・パランス   
    レオ・マッカーン   
    アンソニー・ニコルズ

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『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』この映画を見て!

第255回『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』
Photo  今回紹介する作品は1972年の連合赤軍あさま山荘立てこもり事件の舞台裏を赤軍派の若者たちの視点から描いた『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』です。監督は日本赤軍とも関係のあった若松孝二が担当。連合赤軍の成立から山岳ベースでの集団リンチ殺人事件そして浅間山荘での立てこもり事件に至るまでを史実に基づいて丁寧に描いていきます。
 低予算で製作された映画なので映像的にはこじんまりしていますが、役者たちの迫真の演技と監督のドキュメンタリータッチの生々しい演出で3時間以上の上映時間飽きることがありません。
 第58回ベルリン国際映画祭では最優秀アジア映画賞(NETPAC賞)と国際芸術映画評論連盟賞(CICAE賞)をダブル受賞しました。

 本作品は大きく分けて3つのパートに分かれています。
 最初の1時間は当時の社会状況や学生運動の中で連合赤軍が結成されるまでの過程が当時のニュースフィルムを盛り込みながら描いていきます。革命を目指す若者たちの国家権力との戦いや党派同士の争いの歴史をテンポ良く描いており、当時を知らない人間には勉強になります。ただ、登場人物が多く、次々と場面も変わっていくので、正直ドラマとしては退屈でした。

 中盤は連合赤軍の山岳ベースでの軍事訓練において「総括」の名の下で集団リンチが繰り広げられていく様が克明に描かれていきます。山に入ってからは登場人物も限られてきて、ドラマとしても一気に緊迫感を増します。社会から隔絶された状況で、冷静さを失い、過激になっていく指導者とその集団。自分たちが置かれている状況を客観視できず、精神主義だけで乗り切ろうとしていく中で起こる「自己批判」や「総括」の名の下の集団リンチと殺人。1時間以上にわたって延々と繰り広げられるリンチシーンは凄惨で、見ていて辛く疲れました。
 「化粧をしているから」、「男女交際をしているから」、「勝手に銭湯に入ったから」と言った理由で総括を求められ殺されていくシーンは「誰もが幸せになる社会を目指した集団」が「誰もが不幸になる非人間的な集団」になってしまう恐怖や悲劇を特に強く感じました。脆弱になった組織が内部や外部に敵を作ることで先鋭化して立て直しを図ることはオウム真理教や北朝鮮など見ても分かるように良くある事です。集団や組織が先鋭化すると常に個人を抑圧・抹殺する危険性があることを常に肝に銘じておかないといけないなと本作品を見て思いました。
  また、山岳ベースで指揮を執っていた森や永田の姿を見ていると組織のリーダーになる人間の責任の重さを感じました。彼らはもともと組織の指導者だった人たちが警察に検挙される中で、指導者にのし上がった人間であり、リーダーとしての己の振る舞いに自信がなかったのではと思います。その結果、己の弱さや自信のなさを隠すために、先鋭化して独裁者のごとく振る舞い、組織を崩壊へと導いてしまったのでしょう。精神主義だけで乗り切ろうとした森や永田を見ていると太平洋戦争末期の日本軍の上層部と何ら変わらないなと思います。

 後半はいよいよ浅間山荘での立てこもり事件が描かれています。連合赤軍の視点から終始描かれるので、警察等外部の動きは全く分かりません。それが見たい方は原田眞人監督の『突入せよ!あさま山荘事件』をご覧ください。両作品を見るとあさま山荘事件の全体像が一番良く分かります。
 本作品では浅間山荘内での連合赤軍の若者たちの追い詰められた心情がじっくりと描かれていきます。印象的だったのは人質の女性に対して「革命」を熱く語る若者たちの姿でした。自分たちは一般市民を救うためと思っている行為が外から見れば単なる迷惑にしか見えない。彼らの革命の敗北が痛々しく伝わってくるシーンでした。

 私にとって本作品は当時の学生運動の敗北よりも閉鎖された集団や組織の恐ろしさが強く印象に残りました。
 本作品は気楽に見られる映画ではありませんが、近年の邦画では一番強烈で骨太な映画だと思います。

上映時間 190分
製作国    日本
製作年度 2008年
監督:    若松孝二   
企画:    若松孝二   
原作:    掛川正幸   
脚本:    若松孝二   
    掛川正幸   
    大友麻子   
撮影:    辻智彦   
    戸田義久   
美術:    伊藤ゲン   
音楽:    ジム・オルーク   
照明:    大久保礼司   
録音:    久保田幸雄   
ナレーション: 原田芳雄   
出演:    坂井真紀
    ARATA   
    並木愛枝
    地曵豪   
    伴杏里   
    大西信満
    中泉英雄
    伊達建士
    日下部千太郎
    椋田涼   
    粕谷佳五
    川淳平   
    桃生亜希子
    本多章一
    笠原紳司
    渋川清彦
    RIKIYA

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『スラムドッグ$ミリオネア』この映画を見て!

第254回『スラムドッグ$ミリオネア』
Photo  今回紹介する作品は今年のアカデミー賞で最多8部門を受賞したダニー・ボイル監督のインドを舞台にした青春映画『スラムドッグ$ミリオネア』です。1996年『トレインスポッティング』(以下、『トレスポ』と省略。)が大ヒットして一躍有名になったダニー・ボイル監督。その後、SFからホラーまで幅広いジャンルの作品を手がけるものの、どれも完成度はイマイチなものばかりでした。『トレスポ』のような作品はもう撮らない(撮れない?)のかなあと思っていたのですが、本作品を見て久しぶりに監督の持ち味である疾走感や躍動感を味わうことが出来て嬉しかったです。

ストーリー:「青年ジャマールはインドで人気のあるテレビ番組“クイズ$ミリオネア”に出場。次々と問題を解答して、ついに最高金額一歩手前になる。しかし、1日目の収録終に、詐欺の容疑で警察に逮捕されてしまう。スラム育ちで教育を受けたこともないジャマールがクイズを解答できたのはイカサマだと決めつける警察。ジャマールは自らの無実となぜ解答できたのか、警察に対して過酷な過去を語り始める。」

 本作品のストーリーは主人公の一途な恋愛を描いたストレートでシンプルな内容です。ただ、語り方はクイズ番組の問題を通して主人公の過酷な過去が語られていくというユニークな構成となっています。ここまでクイズの問題と主人公の現実がリンクしていると話しが出来すぎているような気もしますが、華やかなクイズ番組を通してインドの貧困層の過酷な現実を力みすぎることなくスムーズに観客に伝える効果を果たしていたと思います。
 ラストも予想通りのハッピーエンドである意味爽快でした。現実はこんなに甘くないかもしれませんが、だからこそ映画くらいは夢や希望を与えて欲しい。そんな観客の期待に応えたラストだと思います。本作品がアカデミー賞で作品賞を受賞したのも、未曾有の不景気に苦しんでいる今のアメリカ人の願望が反映されていたのでしょうね。

 前半のインドのスラム街の子どもたちの悲惨な状況の描写は見ていてつらいものがありましたが、反面、どん底の生活から何とか這い上がろうとする子どもたちの姿はキラキラと輝いても見えました。
 後半は主人公の恋愛や兄との確執が描かれますが、個人的には兄弟の生き方の違いが印象的でした。どん底から這い上がるために2人が選んだ正反対の道。兄が弟のために最後に取った行動は哀しくもありカッコよくもありました。

 また、ダニー・ボイル監督だけあって映像はスタイリッシュで美しいですし、A・R・ラーマンが手がけた音楽もカラフルかつポップで耳に残ります。特にアカデミー賞を受賞した主題歌の『Jai-Ho』の躍動感や疾走感は大変素晴らしく、何度でも聞きたくなります。

 映画のエンディングはインド映画を意識してか主人公と恋人のダンスシーンが流れますが、本作品の持つ勢いのあるエネルギーを見事に表現していると思いました。

 本作品は最近アカデミー賞を受賞した作品の中では一番見ていて明るい気分になれる作品だと思います。本年度一押しの作品です。 

上映時間 120分
製作国    イギリス/アメリカ
製作年度 2008年
監督:    ダニー・ボイル   
原作:    ヴィカス・スワラップ『ぼくと1ルピーの神様』
脚本:    サイモン・ボーフォイ   
撮影:    アンソニー・ドッド・マントル   
プロダクションデザイン:    マーク・ディグビー   
衣装デザイン:    スティラット・アン・ラーラーブ   
編集:    クリス・ディケンズ   
音楽:    A・R・ラーマン   
出演:    デヴ・パテル   
    マドゥル・ミッタル   
    フリーダ・ピント   
    アニル・カプール   
    イルファン・カーン   
    アーユッシュ・マヘーシュ・ケーデカール   
    アズルディン・モハメド・イスマイル   
    ルビーナ・アリ

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