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2009年5月17日 - 2009年5月23日

『ミラーズ・クロッシング』この映画を見て!

第252回『ミラーズ・クロッシング』

Photo  今回紹介する作品はコーエン兄弟が製作したギャング映画の傑作『ミラーズ・クロッシング』です。本作品は彼らの3本目の長編映画ですが、ストーリー・映像・音楽・演技と全てにおいて完成度が高いです。

 

ストーリー:「1929年のアメリカ東部の街。アイルランド系マフィアのレオとイタリア系マフィアのキャスパーが裏社会でしのぎを削っていた。レオにはトムという片腕がおり、厚い友情と信頼で結ばれていた。

 ある日、レオはキャスパーから、八百長を邪魔するチンピラのバーニーを始末しろと要求される。しかし、バーニーの姉であった高級娼婦ヴァーナを愛するレオはキャスパーの頼みをはねつける。

 その夜博打で負けたトムはヴァーナと出会い一夜を共にしてしまう。その翌朝、ヴァーナを尾行していたレオの用心棒ラグが殺される。

 この事件によってレオとキャスパーの間で抗争が勃発。レオは警察を使ってキャスパーのアジトに襲撃をかけるが、報復としてレオ自身がキャスパー一味からの奇襲を受ける。

 熾烈な争いの中で、トムはヴァーナと関係を持ったことをレオに告白。激怒したレオによってトムは追放されてしまう。トムはキャスパーの側に付くことにする。そしてトムはキャスパーへの忠誠を示すため、バーニーを捕らえて森の中で処刑するよう命じられるのだが・・・。」

 

 本作品を私が始めて見たのは高校生の時でしたが、主人公であるトムはあまりカッコよくないし、派手な展開があるわけでもないし、映像の美しさ以外は特に印象残らない作品でした。

しかし、最近見直して本作品の持つスタイリッシュかつクールな作りに惚れ込みました。昔はあまり共感できなかった主人公トムに対しても下手に暴力に頼らず頭脳戦で挑んでいくこと点や最後まで自分の信念やプライドを貫こうとする点がカッコよく感じるようになりました。一見すると頼りなく何を考えているか分からないトムが実は友情や愛情に熱い男であり、それ故にラストは敢えて孤独に生きることを選択する姿は渋い男の魅力に満ちています。

 

また、コーエン兄弟の作品はどれも映像にこだわっていますが、恐らく本作品が彼らの作品の中で一番映像が美しいです。特に冒頭の森の中で帽子が吹き飛ばされるシーンの美しさは格別で息を呑むほど美しいです。

 

役者の演技に関して言うと主人公トムを演じたガブリエル・バーンも難しい役を熱演していますが、それ以上にアルバート・フィニーとジョン・タートゥーロの演技が強烈です。

アルバート・フィニーはアイルランド系マフィアのボスであるレオを演じているのですが、その存在感は他を圧倒しています。特に自宅で敵に襲撃を受けるシーンでの強さやカッコよさは尋常ではなく鳥肌が立ちます。ダニーボーイが流れる中で襲撃してきた敵に向かって冷静に銃で立ち向かう姿は本作品最大の見せ場ともいえます。

ジョン・タートゥーロは本作品のキーパーソンとも言えるチンピラのバーニーを演じていますが、軽薄で軟弱で嫌らしい人間を巧みに演じています。

 

本作品はコーエン兄弟の作品の中ではコミカルなシーンが少なく、異色な作品と言えるかもしれません。しかし、圧倒的な映像美の中で繰り広げられる終始緊張感が張り詰めたストーリーは見る者を釘付けにします。

派手な映画ではないですが見れば見るほど良さが分かってくる作品だと思います。

 

 

 

上映時間 115分

製作国 アメリカ

製作年度 1991年

監督: ジョエル・コーエン

脚本: イーサン・コーエン

ジョエル・コーエン

撮影: バリー・ソネンフェルド

音楽: カーター・バーウェル

出演: ガブリエル・バーン

マーシャ・ゲイ・ハーデン

アルバート・フィニー

ジョン・タートゥーロ

ジョン・ポリト

J・E・フリーマン

マイク・スター

スティーヴ・ブシェミ

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『グラン・トリノ』この映画を見て!

第251回『グラン・トリノ』
Photo  今回紹介する作品はクリント・イーストウッド監督が真の勇気とは何かを描いた『グラン・トリノ』です。
 イーストウッド監督は本作品で俳優業を引退して今後は監督業に専念すると宣言しています。それだけあって俳優クリント・イーストウッドの総括ともいえる作品となっており、アメリカでは彼の監督作品の中で歴代ナンバー1のヒットとなっています。

ストーリー:「頑固で偏屈な老人コワルスキーは妻を失い子供たちにも煙たがられていた。彼は若い時は朝鮮戦争に出兵、その後はフォードの工場で組立工一筋の人生だった。そんな彼は退職して妻を失った今、愛犬デイジーと72年製フォード車グラン・トリノを支えに生きていた。
 人種差別主義であった彼は、住んでいた町に黒人や東洋人が増えてきたことに嫌悪感を抱いていた。そんなある時、隣に引っ越してきたモン族の気弱な少年タオが不良少年グループに絡まれているところを目撃する。コワルスキーはライフルを手に彼らを追い払おう。タオの母親と姉がこれに感謝し、何かとお礼をしてくる。最初は迷惑がっていたコワルスキーだが、次第に隣のモン族一家に親近感を抱き交流を始める。」

 私は本作品を見た時、主人公のラストの行動に自然と涙があふれてきました。かつて『荒野の用心棒』や『ダーティハリー』でアウトローなヒーローを演じてきたイーストウッド。そんな彼が本作品で演じたヒーローは今までのように暴力に対して暴力ではなく違う形で解決を図ります。老いて死が近づいた人間だからこそ考えついた解決方法とも言えますが、過去の罪を悔いた主人公が自分の人生に見事な落とし前をつけることができたという意味で、ラストシーンは悲しくも清清しく感じました。監督イーストウッドは本作品で役者イーストウッドに見事な引退の花道を与えたと思います。

 また、本作品はアメリカ合衆国の時代の変遷を自動車と人種問題をキーワードに巧みに描いている面も印象的でした。かつては世界一だった自動車産業が日本に取って代わられ、白人以外の民族が台頭するアメリカ。主人公はかつて栄光のアメリカを懐かしみ現状に苛つく姿は今のアメリカの白人保守層の姿そのものです。他民族に偏見を持ち差別していた主人公がふとしたきっかけでモン族の家族と交流して打ち解けていく姿はアメリカという国の人種問題の根深さと差別や偏見の解決の道のりは地道に付き合っていくことでしか始まらないないことを改めて認識しました。エンディングもアメリカがもはや白人中心ではなくなったことを見事に表現していると思いました。アメリカで大ヒットしたのも、不況で自動車産業が衰退していき、初の黒人大統領が誕生するという時代だったからなのでしょう。 

 それにしても先々月に公開された監督作『チェンジリング』も傑作でしたが、本作品も前作に負けず劣らずの傑作でした。1年に2作品も質の高い作品を生み出すイーストウッド監督恐るべしです。

上映時間 117分
製作国    アメリカ
製作年度 2008年
監督:    クリント・イーストウッド   
原案:    デヴィッド・ジョハンソン   
    ニック・シェンク   
脚本:    ニック・シェンク   
撮影:    トム・スターン   
プロダクションデザイン:    ジェームズ・J・ムラカミ   
衣装デザイン:    デボラ・ホッパー   
編集:    ジョエル・コックス   
    ゲイリー・D・ローチ   
音楽:    カイル・イーストウッド   
    マイケル・スティーヴンス   
出演:    クリント・イーストウッド   
    ビー・ヴァン   
    アーニー・ハー   
    クリストファー・カーリー   
    コリー・ハードリクト   
    ブライアン・ヘイリー   
    ブライアン・ホウ   
    ジェラルディン・ヒューズ   
    ドリーマ・ウォーカー

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