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2009年3月22日 - 2009年3月28日

『宮崎駿の雑想ノート』街を捨て書を読もう!

『宮崎駿の雑想ノート』 著:宮崎駿 大日本絵画; 増補改訂版版
Photo  今回紹介する本は宮崎駿監督の戦争兵器とそれに携わる人たちに対する愛情とこだわりが感じられる『宮崎駿の雑想ノート』です。本書は『月刊モデルグラフィックス』 という雑誌で1984年~1990年にかけて不定期で連載された宮崎監督の第1次大戦から第2次大戦にかけての古今東西の軍事兵器に関する虚実入り交ざったイラストエッセイ及びマンガが収録されています。
 『となりのトトロ』や『崖の上のポニョ』などの宮崎監督のほのぼのとした作品が好きな人にとっては本書を読んでも面白くないかもしれません。本書は宮崎監督のミリタリーマニアとしての溢れんばかりの思いが詰まった非常にマニアックな内容となっています。近代の陸海空の今から見ればアナログな兵器とそれを操る人間の奮闘や悲喜劇が水彩画の優しいタッチで描かれており、好きな人は何度読んでも飽きることがありません。本書の特長は何と言っても兵器に対する緻密な設定と描写。本当にそんな兵器があったのかなと読む者に思わせるだけの説得力があります。
 また、本書は決して単純に戦争を賛美しているわけではありません。戦争という狂気の時代の中で兵器を扱う人々の悲喜劇なドラマを通して、戦争というものの愚かさや空しさまで描いています。

 個人的には「多砲塔の出番」と「豚の虎」というエピソードが一番好きです。どちらも戦車を扱った作品ですが、両作品をぜひ宮崎監督にアニメ化してほしいです。

 あと、本書には『紅の豚』の原作も収録されています。ストーリーは大きく変わっていませんが、ジーナは登場しません。

 ちなみに本書の続編として『宮崎駿の妄想ノート』という作品が出版されています。

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『おとぎばなし』中島みゆきのアルバム紹介 

中島みゆきのアルバム紹介No.6『おとぎばなし』 
Photo  今回紹介するアルバムは中島みゆきが2002年に発表した通算30作目のオリジナル・アルバム『おとぎばなし』です。今回は「夜会」で発表された曲や、他のアーティストに提供した曲を集めた、セルフカヴァー・アルバムです。
 
 1曲目「陽紡ぎ唄」は夜会VOL.11&12「ウィンター・ガーデン」のために書き下ろされた歌です。時計の振り子の音から始まる歌ですが、おとぎばなしのような不思議な歌詞が印象に残ります。
 
 2曲目「シャングリラ」は夜会VOL.6「シャングリラ」のために書き下ろされた歌です。二胡の懐かしい音色とみゆきさんの歌声がとてもマッチしています。
 
 3曲目「おとぎばなし」は1988年に薬師丸ひろ子に提供した歌です。叶わぬ恋に対する女性の心情をみゆきさんらしい歌詞で見事に綴っています。
 
 4曲目「雪・月・花 」は1998年に工藤静香に提供した歌です。工藤静香の甘い歌い方と違って、みゆきさんの歌い方は切なさが前面に出ています。
 
 5曲目「匂いガラス~安寿子の靴」は1984年にNHKドラマとして制作された「匂いガラス」、「安寿子の靴」の主題歌です。歌詞は唐十郎さんが手がけていると言うこともあり、独特な言い回しが味わい深いです。。
 
 6曲目「あの人に似ている」は高倉健&裕木奈江のためにみゆきさんとさだまさしが共同で作詞・作曲を手がけた異色のデュエットソングです。本アルバムでは何とさだまさしを共演に迎えてデュエットしています。このコンビがデュエットするなんて二度とないと思います。そういう意味で本アルバム一番の目玉です。二人の声が交錯する形で歌われていくのですが、何を歌っているか少し聞き取りにくかったのが残念です。
 
 7曲目「みにくいあひるの子」は1978年に研ナオコに提供した歌です。好きな男に相手にされない女のつらい思いをラテン調にアレンジされた曲で一気に歌い上げています。
 
 8曲目「愛される花 愛されぬ花」は1986年に三田寛子に提供した歌です。これも好きな男に相手にされない女の心情をしっとりと歌い上げています。
 
 9曲目「裸爪(はだし)のライオン」は再び工藤静香に提供した歌です。作曲は後藤次利が手がけており、力強い歌声とポップなメロディーが印象的です。
 
 10曲目「紫の桜」は夜会VOL.10「海嘯」のために書き下ろされた歌です。夜会では迫力満点のうなり声で観る者を圧倒しましたが、本アルバムでは歌い方を180度変えています。優しく包容力のある歌い方は聞いていて心洗われます。
 
 11曲目「海よ」はデビューアルバム『私の声が聞こえますか』に収録されていた歌です。私は発売当時にこの歌を聞いて、2001年にハワイ沖で愛媛県立宇和島水産高等学校の練習船「えひめ丸」が浮上してきたアメリカ海軍の原子力潜水艦「グリーンビル」に衝突され沈没した事件が頭をよぎりました。みゆきさんがそれを意図して、本作品に収録したのか分かりませんが、私はこの歌をきくとえひめ丸の事件が思い出されてしまいます。

 今回のアルバムはタイトルの通り、静かで優しい感じの歌が多いです。 みゆきさんの力強い歌声が好きな人には物足りないかもしれませんが、聞けば聞くほど心に染み入る味わい深いアルバムです。    

1. 陽紡ぎ唄 
2. シャングリラ   
3. おとぎばなし   
4. 雪・月・花    
5. 匂いガラス 安寿子の靴   
6. あの人に似ている    
7. みにくいあひるの子   
8. 愛される花 愛されぬ花   
9. 裸爪(はだし)のライオン   
10. 紫の桜 
11. 海よ 

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『28週後』この映画を見て!

第244回『28週後』  

28_2  今回紹介する作品は5年前に公開されて世界中でヒットした世紀末パニックホラーの傑作『28日後』の続編『28週後』です。
前作は今年度アカデミー最優秀監督賞を受賞したダニー・ボイルが監督をしていましたが、今回はスペインのフアン・カルロス・フレスナディージョ監督に交代しています。

ストーリー:「感染すると凶暴性になり他の人間に襲いかかる新種ウイルス“RAGE”が猛威をふるったイギリス。ウイルス感染発生から5週後に最後の感染者が死亡して、11週後にアメリカ軍主導でNATO軍が派遣され、ロンドンの再建が始まった。
スペイン旅行中で感染を逃れたタミーとアンディの姉弟も帰国し、父親ドンと久しぶりの再会を果たす。しかし、母のアリスはドンと田舎のコテージに立て籠もっていた時に感染者の襲撃をうけて生死が分からなかった。
母を恋しがる姉弟はこっそり軍の監視区域外の我が家へと向かう。そこで姉弟は何と生き延びていた母親と再会する。しかし、そこにNATO軍がやって来て、姉弟と母は一時的軍の施設に隔離される。
軍の施設で母親はウイルスに感染しながらも発病していないキャリアだと判明。軍医スカーレットはワクチン開発への期待を持つ。
そんな折、ドンが軍の施設に侵入して、アリスと接触して感染して発病してしまう。」

 本作品は個人的に最近見たパニックホラー映画の中ではベスト3に入る面白さと完成度でした。前前作と比べるとスケールやグロさも一段とアップしていますし、ストーリーも終末観漂う絶望的な展開でジョージ・A・ロメロのゾンビ映画が好きな私にはたまりませんでした。(本作品は厳密に言うとゾンビ映画ではありませんが…)

本作品の特長は全編にわたって非情なところです。冒頭から夫が最愛の妻を見捨て一人逃げ出しますし、中盤に夫と妻が再開することで感染が再発・拡大し、主人公の姉弟を助けようとする人たちは次々に死んでいく。ラストも子供たちを救おうとする行為が世界を破滅に導くという皮肉な結末を迎えます。ここまで愛や人間性が否定された救いようのないリアルなストーリーはなかなかお目にかかれません。結局、人間を破滅させるのは人間なんですよね・・・・。

 また、狙撃部隊による無差別攻撃シーンやナパーム弾で市街地を焼き尽くすシーンなど、アメリカ軍のアフガン・イラク侵攻を痛烈に皮肉るシーンが随所に盛り込まれているところも大変印象的でした。

 グロシーンではヘリコプターによる感染者虐殺シーンが一番の見所でした。あと、前作同様に荒廃したロンドンの街の空虚な美しさも見応えがありました。

 ただ、本作品で唯一残念だったのは設定にいくつかご都合主義な点がいくつかあったところです。特に夫が隔離された妻に会うシーンや中盤の軍の対応、そして後半の父が主人公の姉弟を追うシーン等はリアリティに欠けていたような気がします。

 あと、主人公の姉弟にあまり感情移入できないシナリオや演出だったのもマイナスでした。

 いろいろ注文をつけたくなるところもありますが、本作品は近年のパニックホラーの中では間違いなく傑作の部類に入ると思います。家族や恋人と見るような作品では決してありませんが、この手の映画が好きな人なら一度は見て損はないと思います!

上映時間 104分
製作国 イギリス/スペイン
製作年度 2007年
監督: フアン・カルロス・フレスナディージョ 
製作総指揮: ダニー・ボイル 
アレックス・ガーランド 
脚本: フアン・カルロス・フレスナディージョ 
ローワン・ジョフィ 
ヘスス・オルモ 
E・L・ラビニュ 
撮影: エンリケ・シャディアック 
プロダクションデザイン: マーク・ティルデスリー 
衣装デザイン: ジェーン・ペトリ 
編集: クリス・ギル 
音楽: ジョン・マーフィ 
出演: ロバート・カーライル 
ローズ・バーン 
ジェレミー・レナー
ハロルド・ペリノー
キャサリン・マコー
マッキントッシュ・マグルトン 
イモージェン・プーツ
イドリス・エルバ 
アマンダ・ウォーカー
シャヒド・アハメド

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