« 『BS熱中夜話 中島みゆき後編』 | トップページ | 2009年劇場公開映画マイベスト5 »

『カールじいさんの空飛ぶ家』この映画を見て!

第277回『カールじいさんの空飛ぶ家』
Photo  今回紹介する作品はピクサーの最新作にして初の3Dアニメに挑んだ『カールじいさんの空飛ぶ家』です。監督は「モンスターズ・インク」のピート・ドクターが担当。ガンコな老人が亡き妻との約束を果たすべく2人の思い出が詰まった我が家に大量の風船をつけて冒険に出るという本作品。カンヌ映画祭でアニメとしては初のオープニング作品として公開されました。

ストーリー:「開発で立ち退きを余儀なくされている一軒家に暮らすカールじいさん。その家は先立った最愛の妻エリーとの思い出が詰まった大切な場所だった。しかし、カールじいさんは工事現場の従業員とのトラブルから家を立ち退き、施設に入らなければならなくなる。カールじいさんは家を守り妻との約束を果たすために立ち退きの日の朝に無数の風船を使い家ごと大空へと舞いあがる。」

 ピクサーのCGアニメは毎回完成度が高く面白いので私も楽しみにしているのですが、今回の作品も期待を裏切らない出来でした。予告編を見た時は年老いた主人公の感傷的でお涙頂戴の作品になっているのかと思っていました。しかし、本編を見ると予想と違っていました。

 冒頭の10分間の主人公の回想シーンは大人が見ると涙なしでは見られないほど切ないです。妻との約束を果たすために旅立つ主人公。私は中盤までは主人公が困難を越えて妻との約束を果たすまでを描いた作品だと思って見ていたのですが、アジア系の子どもが冒険に付き添い、カラフルな鳥やしゃべる犬が登場し始めるころから話しの展開が変わってきます。悪役が登場してアクション満載のハラハラドキドキの冒険活劇へとなっていきます。この悪役が主人公同様に孤独で寂しい老人であるというところがミソです。老人同士の人生をかけた闘いはある意味手に汗握るものがありました。本作品の特長は主人公が過去の思い出をただ愛しむのでなく、決別して新たな未来を歩む姿まで描いているところだと思います。過去は大切だけど縛られず前に進むことの大切さ。それが本作品のテーマだと思いました。

 また、主人公と複雑な家庭環境のアジア系の少年との交流もとても印象に残りました。ただ、欲を言うなら、主人公の少年と出会ってからの心境の変化をもっとじっくり描いても良かったような気がします。

 映像面ではピクサー初の3Dということで楽しみにしていたのですが、スクリーンを飛び出すような派手な演出はあまりなく、どちらかというと映像に奥行きを与えるのに使われており、2Dで見ても大きく印象は変わらないような気がしました。それにしてもカラフルな風船を付けて空を飛ぶカールじいさんの家のリアルかつ幻想的な美しさは映画史に残る名シーンだと思いました。

 あと、本作品を見て宮崎駿監督の影響を随所に感じました。老人が主人公という設定は『ハウルの動く城』ですし、空飛ぶ家は『天空の城ラピュタ』ですし、最後の空中での戦いは宮崎駿監督が得意とするところです。また、主人公の雰囲気も宮崎駿監督にどことなく似ています。(どうやら宮崎駿監督も本作品を鑑賞して高く評価しているようですね。)

 本作品は予告編が与える印象と本編の内容が違うので注意が必要ですが、老人を主人公にした冒険活劇としては最高に面白く心に残ります。同時上映の短編アニメーション『晴れ ときどき くもり』も短いながらとても良い仕上がりなので必見ですよ。

上映時間 103分
製作国 アメリカ
制作年度 2009年
監督:ピート・ドクター   
原案:ピート・ドクター   
      ボブ・ピーターソン   
      トーマス・マッカーシー   
脚本:ボブ・ピーターソン   
      ピート・ドクター   
音楽:マイケル・ジアッキノ   
声の出演:エドワード・アズナー   
     ジョーダン・ナガイ   
     ボブ・ピーターソン   
     クリストファー・プラマー   
     デルロイ・リンドー   
     ジェローム・ランフト   
     エリー・ドクター   
     ジェレミー・レアリー

|

« 『BS熱中夜話 中島みゆき後編』 | トップページ | 2009年劇場公開映画マイベスト5 »

映画・テレビ」カテゴリの記事

この映画を見て!~お奨め映画紹介~」カテゴリの記事

ファンタジー映画」カテゴリの記事

アニメ映画」カテゴリの記事

コメント

突然で申しわけありません。
現在2009年の映画ベストテンを選ぶ企画「日本インターネット映画大賞」を開催中です。
投票は1/14(木)締切です。ふるってご参加いただくようよろしくお願いいたします。
日本インターネット映画大賞のURLはhttp://www.movieawards.jp/です。
なお、twitterも開設しましたので、フォローいただければ最新情報等配信する予定です(http://twitter.com/movieawards_jp)。

投稿: 日本インターネット映画大賞 | 2009年12月21日 (月) 09時55分

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 『カールじいさんの空飛ぶ家』この映画を見て!:

» カールじいさんの空飛ぶ家 [☆彡映画鑑賞日記☆彡]
 『愛する妻が死にました─ だから私は旅に出ます。』  コチラの「カールじいさんの空飛ぶ家」は、クオリティの高いアニメーション映画を世に送り出し続けているディズニー・ピクサーが記念すべき10作目にして、初めて人間を主人公にした12/5公開のハートウォーミング....... [続きを読む]

受信: 2009年12月 7日 (月) 22時42分

» カールじいさんの空飛ぶ家 / UP  & 晴れ ときどき くもり [我想一個人映画美的女人blog]
{/hikari_blue/}{/heratss_blue/}ランキングクリックしてね{/heratss_blue/}{/hikari_blue/} ←please click ピクサー映画で一番好きなのは「モンスターズ・インク」{/heart_orange/} その監督、ピート・ドクターの最新作!ということでかなり期待してました! いよいよ来週から日本公開★試写にて鑑賞{/hikari_blue/} 妻に先立たれたカールじいさんの、想い出を解き放つ大冒険{/hikari_blue/}{/... [続きを読む]

受信: 2009年12月 8日 (火) 09時13分

» カールじいさんの空飛ぶ家 [Akira's VOICE]
喪失と再生の優しい人間ドラマ。   [続きを読む]

受信: 2009年12月 8日 (火) 10時08分

» カールじいさんの空飛ぶ家 [映画鑑賞★日記・・・]
原題:UP公開:2009/12/05製作国:アメリカ上映時間:103分監督:ピート・ドクター声の出演:エドワード・アズナー、ジョーダン・ナガイ、ボブ・ピーターソン、クリストファー・プラマーStory:いつか世界を旅して回りたいと思っていたカールも、今や78歳。最愛の妻は亡くな....... [続きを読む]

受信: 2009年12月 8日 (火) 11時22分

» カールじいさんの空飛ぶ家 [象のロケット]
長年連れ添ってきたカールと妻エリーには、いつか冒険の旅に出るという大きな夢があった。 しかし夢はついに果たせないままエリーが病気で亡くなり、78歳のカールは一人ぼっちになってしまう。 強制的に老人ホームへ入居させられそうになったカールは、思い出の詰まった家に無数の風船をつけて、大空へと旅立った。 妻と夢見た伝説の滝を目指して…。 ファンタジー・アニメ。... [続きを読む]

受信: 2009年12月 9日 (水) 00時47分

» 「カールじいさんの空飛ぶ家」いくつになっても旅に出る理由はあ... [soramove]
「カールじいさんの空飛ぶ家」★★★★オススメ ディズニー/ピクサー製作 ピート・ドクター監督、103分 、公開日:2009-12-5、2009年、アメリカ                     →  ★映画のブログ★                      どんなブログが人気なのか知りたい← 12月6日公開オープニング2日間の成績は、動員44万人、興収約6億円と、 初登場首位を獲得! 「2012」のオープニングにも負けない出足。 興収50億円が当面の目標... [続きを読む]

受信: 2009年12月 9日 (水) 08時50分

» カールじいさんの空飛ぶ家3D日本語吹き替え版 [とらちゃんのゴロゴロ日記-Blog.ver]
長年連れ添った妻を亡くして孤独になり、思い出がいっぱい詰まった家が再開発で立ち退きを求められたとき、老人が奇想天外な方法で旅に出る物語だ。カールじいさんは愛する妻がいる間は幸福だったけど、一人きりになって世間の人を寄せ付けなくなる。孤独に凝り固まった老人... [続きを読む]

受信: 2009年12月 9日 (水) 13時29分

» ★「カールじいさんの空飛ぶ家」 [★☆ひらりん的映画ブログ☆★]
今週の平日休みは・・・ 寝坊してしまったので一本のみの鑑賞・・・ しかも、上映開始時間を見て無かったので、 予定に反して吹き替え版の3Dを観る事に。 [続きを読む]

受信: 2009年12月 9日 (水) 23時58分

» カールじいさんの空飛ぶ家 [セガール気分で逢いましょう]
今年もディズニー/ピクサーの最新作がやってくる。頑固じいさん孫三人、じゃなかった、『カールじいさんの空飛ぶ家』の冒頭10分間に、滂沱の涙が流れた理由―。 [続きを読む]

受信: 2009年12月10日 (木) 00時57分

» カールじいさんの空飛ぶ家 [★YUKAの気ままな有閑日記★]
最近お気に入りの3Dで鑑賞(吹き替えです)―【story】最愛の妻を亡くしたカールは、数千の風船を家に結びつけ、空高く飛び立つことに成功。偶然居合わせた8才の少年ラッセルとともに冒険の旅へと出発するが―     監督 : ピート・ドクター 『モンスターズ・インク』【comment】偏屈そうなおじいさんが主役―ということで、イマイチそそられないなぁ〜というのが正直なところだったのですが、去年のPIXAR作品『WALL・E/ウォーリー』に続いてとてもいい映画でした〜一緒に観た子どもともども満足して鑑賞を... [続きを読む]

受信: 2009年12月10日 (木) 18時31分

» カールじいさんの空飛ぶ家 (原題:UP) [yanajunのイラスト・まんが道]
『カールじいさんの空飛ぶ家』は、『モンスターズ・インク』の監督ピート・ドクターと『ファインディング・ニモ』の脚本家ボブ・ピーターソンが共同で監督を務めた3Dアニメ映画です。ピクサー初であるディズニーデジタル3D版を鑑賞しました。●導入部のあらすじと感想... [続きを読む]

受信: 2009年12月11日 (金) 21時55分

» 「カールじいさんの空飛ぶ家」3D吹替版☆鑑賞 [帰ってきた二次元に愛をこめて☆]
大人が観るべき映画。親の離婚で居場所を失った子供。子供は納得出来ずに元の家に行ってみると、子供の部屋だった場所は新しい奥さんの連れ子に占領されていた。父親は新しい奥さんにベタ惚れだ。邪険に子供は追い払われた(というのは実話だが、同じような境遇の子供が出...... [続きを読む]

受信: 2009年12月14日 (月) 22時35分

» 「カールじいさんの空飛ぶ家」飛びます!飛びます!! [シネマ親父の“日々是妄言”]
[カールじいさんの空飛ぶ家] ブログ村キーワード  ピクサー・アニメの最新作。「カールじいさんの空飛ぶ家」(ウォルト ディズニー スタジオ モーション ピクチャーズ ジャパン)。ロボットとか車、それにネズミが主役なんてのも、過去のピクサー作品にはございましたが、今回の主役は“78歳の爺さん”。さあ、果たしてどんな“老いらくの物語”が展開されるのでしょうか?  冒険が好きなカールは、同じく冒険好きな女の子エリーと友だちになる。『いつか二人で、“伝説の場所=パラダイス・フォール... [続きを読む]

受信: 2009年12月18日 (金) 16時24分

» 映画<カールじいさんの空飛ぶ家> [美味−BIMI−]
カールじいさんの空飛ぶ家、観てきました! とにかく”切ない”映画です・・・。 愛する妻が死にました。だから私は旅に出ます。 TVから流れるこのナレーション。 世界で最も大切な人を失ったとき、あなたならどうしますか? 私なら?????なんて想像しながらの視聴でした。 とにかく始まってすぐ、ウルウルくる、みゅうみゅう。。。 子供の頃、冒険が好きだからこそ出会えたカールとエリー。 結婚してエリーが亡くなるまでのストーリーは、ほんの数分でした。 台詞は、ほとんどなし・・・。 音楽のみで流... [続きを読む]

受信: 2009年12月28日 (月) 10時46分

» カールじいさんの空飛ぶ家 [だらだら無気力ブログ]
多くの傑作を生みだしてきたディズニー・ピクサーが頑固な老人がある出来事 から冒険にでる姿を描いたアドベンチャーアニメーション。『ウォーリー』や 『モンスターズ・インク』等の多くの原案者であるピート・ドクターが監督を 努める。周りが開発ラッシュでビルが建設さ..... [続きを読む]

受信: 2009年12月30日 (水) 02時11分

» カールじいさんの空飛ぶ家 (試写会) [風に吹かれて]
冒険のページは続く大人も子供も楽しめる公式サイト http://www.disney.co.jp/m [続きを読む]

受信: 2010年1月 1日 (金) 22時55分

« 『BS熱中夜話 中島みゆき後編』 | トップページ | 2009年劇場公開映画マイベスト5 »