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2009年12月

『アバター』この映画を見て!

第278回『アバター』

Photo_2  今回紹介する作品はジェームズ・キャメロンが構想14年、製作に4年以上の歳月を費やして完成させたSF超大作『アバター』です。前作『タイタニック』から12年ぶりの新作長編映画となる本作品。キャメロン監督が近年関心を持って取り組んでいた3D技術や最新のVFX技術を駆使して、誰も見たことない世界をリアルに描きだすことに成功しています。

 

 ストーリー:「元海兵隊員のジェイクは下半身不随になり車いす生活を送っていた。ある時、彼は衛星パンドラでの作戦アバター・プログラムの参加者に選ばれる。パンドラの森には莫大な利益をもたらす希少な鉱物が埋蔵されており、地球人たちは採掘に力を注いでいた。しかし、森には肉体的に人間よりも能力の高い先住民ナヴィが生活しており採掘に抵抗をしていた。

地球人はパンドラでの採掘を何とか進めるために先住民ナヴィと人間のDNAを掛け合わせたアバターを造りだし、意識による遠隔操縦をしてパンドラの森に進出していた。

ジェイクはアバターを操りナヴィ族の調査と偵察をする任務を与えられ、パンドラの森に足を踏み入れる。ジェイクは森の奥深くでナヴィ族の美しい女性ネイティリと出会い、彼らの生き方や森の素晴らしさに共感を示すようになる。

やがてジェイクは地球人たちの乱開発に疑問を持つようになるのだが・・・・。」

 

私は正直言って本編を見るまで、本作品にあまり期待していませんでした。夏に解禁されたスチールや予告編を見た時はゲームのような安っぽい映像にキャメロン監督も失速したのではと心配さえしました。しかし、実際に3Dで鑑賞すると本作品の革新的な映像に鳥肌が立ちました。

 

はっきり言ってストーリーは特に目新しいものはありません。異文化との交流や自然との調和をテーマにしており、『ポカホンタス』や『ダンス・ウィズ・ウルブス』に『風の谷のナウシカ』や『もののけ姫』をミックスさせたような内容です。話しの展開も勧善懲悪で単純明快。映画好きの人なら次どうなるのか大体予測できると思います。ストーリーだけ取って見ると高い評価はできません。

 

しかし、本作品はストーリーを補って余りあるほど映像が凄いです。実写の3D映画は今までも製作されていましたが、本作品はレベルが違います。奥行きのある3D映像はまるで自分がパンドラの森に入り込んだような感覚になります。特に主人公やナヴィ達が翼竜に乗って滑空するシーンのリアリティはまるで本当に飛んでいるかのようでした。

 

また、パンドラの数々の美しい風景や森に生息する見たこともない動植物、そして青い皮膚を持つナヴィ族。全てはCGで作り出された架空のものに過ぎないはずなのに、3D映像で見るとまるで現実に存在しているのではと感じてしまうほどリアルに見えます。

 

後半はナヴィ族と地球人とのパンドラの森での大バトルが3Dを駆使して壮大かつ迫力満点のアクションシーンがこれでもかと繰り広げられます。そのアクションシーンの質と量は半端なく、見終わってお腹いっぱいになります。

また、パワーローダーや攻撃ヘリ、そして兵士が持つ銃器と随所にキャメロン監督のメカへのこだわりが見られたのも嬉しい限りでした。

 

登場するキャラクターに関しては主人公もさることながら、キャメロン監督らしく女性が活躍するところが良かったです。あと、悪役の憎々しい大佐もステレオタイプなキャラではありますが印象に残りました。

 

それにしてもキャメロン監督が創造した架空の世界をここまで実写でリアルに表現できるようになった映像テクノロジーの進歩に正直驚きました。本作品の公開をきっかけにハリウッドの大作映画はきっと3Dの方向に向かっていくのでしょうね。そういう意味で、本作品は映画史においても重要な作品となるでしょう。

 

  これから劇場で見る人は絶対3Dで見てください。そうしないと本作品の素晴らしさが分からないと思います。

 

 

上映時間 162分

製作国 アメリカ

制作年度 2009年

監督: ジェームズ・キャメロン

脚本: ジェームズ・キャメロン

撮影: マウロ・フィオーレ

プロダクションデザイン: リック・カーター、ロバート・ストロンバーグ

衣装デザイン: デボラ・スコット

編集: スティーヴン・リフキン、ジョン・ルフーア、ジェームズ・キャメロン

音楽: ジェームズ・ホーナー

視覚効果監修: ジョー・レッテリ

出演: サム・ワーシントン

ゾーイ・サルダナ

シガーニー・ウィーヴァー

スティーヴン・ラング

ミシェル・ロドリゲス

ジョヴァンニ・リビシ

ジョエル・デヴィッド・ムーア

CCH・パウンダー

ウェス・ステューディ

ラズ・アロンソ

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2009年劇場公開映画マイベスト5

 今年も数多くの映画が日本で公開されました。そこで私が今年公開された映画の中で特に印象に残った&満足した映画ベスト5を紹介したいと思います。

第5位『アバター』
Photo  ジェームズ・キャメロンが12年ぶりにメガホンを取ったSFアクション超大作『アバター』。3D吹き替え版を鑑賞したのですが、映像の奥行きの深さと緻密さ、そして美しさに圧倒された162分でした。映像革命の映画と言われていますが、確かにその通りの作品です。今までにも実写の3D映画は製作されていますが、本作品ほど3Dを活かして臨場感のある映像を作り出した作品はありません。映画のキャッチコピーは「観るのではない。そこにいるのだ。」と書かれていますが、まさしく観る者を映画の中の世界に引きずり込む3D映像です。本作品は2Dで見ては意味がありません。3Dで見てこそ価値のある作品です。

第4位『グラン・トリノ
Photo_2  クリント・イーストウッドが俳優業の引退宣言をした本作品。頑固で偏屈な白人の老人が隣に引っ越してきたアジア系の家族とある事件をきっかけに交流を深めていく話しは人種の坩堝であるアメリカの現状と今後を見事に描いた作品だと思いました。また、主人公がラストにとった行動は今までのイーストウッドが主演のアクション映画とは真逆の行動を取って問題を解決するところも胸に迫るものがありました。監督イーストウッドは本作品で役者イーストウッドに見事な引退の花道を与えたと思います。

第3位『空気人形
Photo_3  都会の片隅で心を持ってしまったダッチワイフと孤独な現代人の交流を描いた本作品。ダッチワイフという性欲処理人形が主人公ということで抵抗を示す方もいるかもしれませんが、純粋なラブストーリーです。主人公が純粋であるが故に傷つき傷つけてしまう姿は見ていて切なく涙なしで見ることはできません。人間とは何かを考えさせられる作品です。

第2位『イングロリアス・バスターズ
Photo_4  クエンティン・タランティーノ監督が第二次大戦下のフランスを舞台にナチスに家族を殺されたユダヤ人女性の復讐とナチ狩りを行うアメリカのユダヤ人部隊の活躍を描いた本作品。戦争映画でありながら、戦場での戦闘シーンはほとんどなくタランティーノお得意の会話劇が中心の構成となっています。152分と長い上映時間ですが、緊張感とメリハリのある演出であっという間に過ぎていきます。見所は何と言っても敵役のランダ大佐を演じたオーストリア出身の男優・クリストフ・ヴァルツの怪演です。彼の演技なくして本作品の成功はなかったでしょう。

第1位『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破
2  今年の1位はダントツで『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』です。テレビ版から大きく変わったストーリー展開、迫力満点のアクションシーン、強烈な印象を残す挿入歌、そしてラストの圧倒的なカタルシス。主人公の性格もテレビ版よりもポジティブになっており、シンジがレイを救おうするシーンは何度見ても目頭が熱くなります。エンドロールの後の次回作『Q』の予告編がありましたが、次作は全く予想外の展開となりそうなので今から公開が楽しみです。一刻も早い『Q』の完成を望みます。

・2008年劇場公開映画マイベスト5
・2007年劇場公開映画マイベスト5
・2006年劇場公開映画マイベスト5
・2005年劇場公開映画マイベスト5

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『カールじいさんの空飛ぶ家』この映画を見て!

第277回『カールじいさんの空飛ぶ家』
Photo  今回紹介する作品はピクサーの最新作にして初の3Dアニメに挑んだ『カールじいさんの空飛ぶ家』です。監督は「モンスターズ・インク」のピート・ドクターが担当。ガンコな老人が亡き妻との約束を果たすべく2人の思い出が詰まった我が家に大量の風船をつけて冒険に出るという本作品。カンヌ映画祭でアニメとしては初のオープニング作品として公開されました。

ストーリー:「開発で立ち退きを余儀なくされている一軒家に暮らすカールじいさん。その家は先立った最愛の妻エリーとの思い出が詰まった大切な場所だった。しかし、カールじいさんは工事現場の従業員とのトラブルから家を立ち退き、施設に入らなければならなくなる。カールじいさんは家を守り妻との約束を果たすために立ち退きの日の朝に無数の風船を使い家ごと大空へと舞いあがる。」

 ピクサーのCGアニメは毎回完成度が高く面白いので私も楽しみにしているのですが、今回の作品も期待を裏切らない出来でした。予告編を見た時は年老いた主人公の感傷的でお涙頂戴の作品になっているのかと思っていました。しかし、本編を見ると予想と違っていました。

 冒頭の10分間の主人公の回想シーンは大人が見ると涙なしでは見られないほど切ないです。妻との約束を果たすために旅立つ主人公。私は中盤までは主人公が困難を越えて妻との約束を果たすまでを描いた作品だと思って見ていたのですが、アジア系の子どもが冒険に付き添い、カラフルな鳥やしゃべる犬が登場し始めるころから話しの展開が変わってきます。悪役が登場してアクション満載のハラハラドキドキの冒険活劇へとなっていきます。この悪役が主人公同様に孤独で寂しい老人であるというところがミソです。老人同士の人生をかけた闘いはある意味手に汗握るものがありました。本作品の特長は主人公が過去の思い出をただ愛しむのでなく、決別して新たな未来を歩む姿まで描いているところだと思います。過去は大切だけど縛られず前に進むことの大切さ。それが本作品のテーマだと思いました。

 また、主人公と複雑な家庭環境のアジア系の少年との交流もとても印象に残りました。ただ、欲を言うなら、主人公の少年と出会ってからの心境の変化をもっとじっくり描いても良かったような気がします。

 映像面ではピクサー初の3Dということで楽しみにしていたのですが、スクリーンを飛び出すような派手な演出はあまりなく、どちらかというと映像に奥行きを与えるのに使われており、2Dで見ても大きく印象は変わらないような気がしました。それにしてもカラフルな風船を付けて空を飛ぶカールじいさんの家のリアルかつ幻想的な美しさは映画史に残る名シーンだと思いました。

 あと、本作品を見て宮崎駿監督の影響を随所に感じました。老人が主人公という設定は『ハウルの動く城』ですし、空飛ぶ家は『天空の城ラピュタ』ですし、最後の空中での戦いは宮崎駿監督が得意とするところです。また、主人公の雰囲気も宮崎駿監督にどことなく似ています。(どうやら宮崎駿監督も本作品を鑑賞して高く評価しているようですね。)

 本作品は予告編が与える印象と本編の内容が違うので注意が必要ですが、老人を主人公にした冒険活劇としては最高に面白く心に残ります。同時上映の短編アニメーション『晴れ ときどき くもり』も短いながらとても良い仕上がりなので必見ですよ。

上映時間 103分
製作国 アメリカ
制作年度 2009年
監督:ピート・ドクター   
原案:ピート・ドクター   
      ボブ・ピーターソン   
      トーマス・マッカーシー   
脚本:ボブ・ピーターソン   
      ピート・ドクター   
音楽:マイケル・ジアッキノ   
声の出演:エドワード・アズナー   
     ジョーダン・ナガイ   
     ボブ・ピーターソン   
     クリストファー・プラマー   
     デルロイ・リンドー   
     ジェローム・ランフト   
     エリー・ドクター   
     ジェレミー・レアリー

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