『イースタン・プロミス』この映画を見て!
第274回『イースタン・プロミス』
今回紹介する作品は『ヒストリー・オブ・バイオレンス』の監督デヴィッド・クローネンバーグと主演ヴィゴ・モーテンセンが再びタッグを組んだバイオレンスドラマ『イースタン・プロミス』です。
ロンドンに暗躍するロシアン・マフィアの人身売買に絡む事件に巻きこまれる助産婦を『キング・コング』のナオミ・ワッツが熱演。また、マフィアの一員で非情さと優しさの両面を持つ謎の男をヴィゴ・モーテンセンが好演して、アカデミー賞主演男優賞でノミネートをされています。
デヴィッド・クローネンバーグ監督は以前はドロドロとしたアブノーマルな世界を描いていましたが、21世紀に入り作風が少し変わり、前作の『ヒストリ~』からグロテスクな要素やバイオレンス描写が抑えられ硬派なドラマを正攻法に撮るようになっています。本作品も前作に似た感じの作風ですが、より研ぎ澄まされて無駄のない終始緊張感のあるバイオレンスドラマに仕上げています。
ストーリー:「クリスマスを間近のロンドンの病院に10代の幼い妊婦が運び込まれる。少女は女の子を産んだ直後に息を引き取るが少女のバッグからロシア語で書かれた日記が見つかる。助産婦のアンナは手帳を持ち帰り、孤児となった赤ちゃんのために少女の身元を調べ始める。ロシア語の分からないアンナは手帳に挟まっていたカードを頼りにロシア料理の店を訪ねる。そしてその店の前で、ロシアン・マフィアの運転手を務める運転手の男ニコライと出会う。」
本作品は100分と短い映画なのですが密度が濃くて、見終わって大変満足感があり、もう一度見たくなる魅力がありました。
冷酷な裏社会で生きる人間たちの屈折した感情や善と悪の間で揺れる葛藤に焦点を当てた作りは見ていて人間の苦悩と底知れぬ闇を強く感じました。
主人公であるナオミ・ワッツ演ずる助産婦アンナは裏社会の恐ろしさを知らずに足を深く突っ込んでいくので、見ていてハラハラしました。
しかし、途中からは彼女よりもヴィゴ・モーテンセン演じる寡黙だが優しく強いニコライの圧倒的な存在感に目を奪われ、見た後は彼のストイックな生き様が強く印象に残りました。特にラストシーンで彼が一人佇む姿は己の役割や運命を受け入れた人間の切なさや哀しみといったものが滲み出ていました。本作品を見るとヴィゴ・モーテンセンの渋く格好良い姿に誰もが魅了されると思います。アカデミー賞にノミネートされたのも納得の演技と存在感があります。
バイオレンス描写は少なめですが、その分インパクトがあります。特に全裸のヴィゴ・モーテンセンがサウナで敵と戦うシーンは強烈です。全くの無防備の状態でナイフを持った男たちに襲われ、体を切られて血が飛び散り、命からがら敵を倒すヴィゴ・モーテンセン。その姿は見ている側にも生々しい痛みや緊迫感が伝わってきます。このシーンを見るだけでも本作品は価値があります。
本作品は地味ではありますが、何度見ても深い味わいのある名作です。ハードボイルドタッチの映画が好きな人にお薦めの作品です。
上映時間 100分
製作国 イギリス/カナダ/アメリカ
製作年度 2007年
監督: デヴィッド・クローネンバーグ
脚本: スティーヴ・ナイト
撮影: ピーター・サシツキー
プロダクションデザイン: キャロル・スピア
衣装デザイン: デニース・クローネンバーグ
編集: ロナルド・サンダース
音楽: ハワード・ショア
出演: ヴィゴ・モーテンセン
ナオミ・ワッツ
ヴァンサン・カッセル
アーミン・ミューラー=スタール
イエジー・スコリモフスキー
シニード・キューザック
ミナ・E・ミナ
サラ=ジャンヌ・ラブロッセ
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