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『心守歌』中島みゆきのアルバム紹介 

中島みゆきのアルバム紹介No.7『心守歌』 
Photo   今回紹介するアルバムは中島みゆき通算29作目のアルバム『心守歌』です。本アルバムはシングル曲が全く収録されておらず、夜会『ウィンターガーデン』で発表された2曲を除いて、全てオリジナルです。

 1曲目の「囁く雨 」は雨の音のSEが最初30秒以上続きます。そして、いきなり飛び込んでくるみゆきさんの迫力のある歌声に心が鷲づかみにされます。激しい雨の振る中で、彼氏が別れ話しの途中で泣き出し困惑する彼女。以前のみゆきさんなら女性が泣く歌詞になるところを、今回は敢えて男性が泣く設定にしたところが印象的でした。

 2曲目の「相席」は酸いも甘いも知った大人の恋愛をジャジーな感じに歌っており、心地よい歌声とメロディーに酔いしれます。

 3曲目の「樹高千丈 落葉帰根 」は恋愛の歌から一転、人の故郷や母への憧れについて歌っています。歌のタイトルの「樹高千丈 落葉帰根 」は中国の諺から引用されており、「たとえ樹木がどんなに高くなっても、落ちた葉はいずれ根元に帰る」という意味があります。親元を離れ遠い地で過ごす心細さや孤独、そして懐かしく思う生まれ故郷と母の懐。みゆきさんは優しい歌声で故郷を離れた者たちの心情を歌い上げます。
 歌の後半の「木の根はゆりかごになって抱きとめる」というフレーズはみゆきさんの母性愛に自然と涙が溢れてきます。

 4曲目の「あのバスに」はロック調の曲で、せきたてられるように未来に向かって飛び出した過去を振り返る歌になっています。

 5曲目の「心守歌 」は今回のアルバムのタイトルにもなっています。みゆきさんらしい独特の言い回しが印象に残る歌です。自分が歩んできた過去を振り返り、愛してきた人々たちの平安を祈る歌詞に心が癒され励まされます。

 6曲目の「六花」は夜会『ウィンターガーデン』のために作られた曲です。果てしない空と大地の間で生きるものたちの罪やけがれの浄化を祈る歌詞は聴く者の心をも浄化します。

 7曲目の「カーニヴァルだったね 」は吉田拓郎調の曲です。今までの愚かで無様な生き方に後悔しながらも、しぶとく生きる人を力強く歌っています。

 8曲目の「ツンドラ・バード」は夜会『ウィンターガーデン』のために作られた曲です。この曲の歌詞は難解で、みゆきさんが大地の全てを見抜くオジロワシに何の意味をこめたのか考えてしまいます。

 9曲目の「夜行」は個人的に本アルバムで一番好きな曲です。夜の世界で傷つきながらも心優しく生きる人々にスポットライトを当てた曲であり、みゆきさんの力強い歌声が聞く者の心にある偏見を打ち砕き、不器用な人間たちの背中を力強く押してくれます。

 10曲目の「月迎え」は何とも幻想的で不思議な曲です。しかし、聞いているとなぜか心がときほぐれて落ち着きます。

 11曲目の『LOVERS ONLY 』はみゆきさんとしては珍しいクリスマスソングです。しかし、そこはみゆきさん。甘いクリスマスソングではなく、失恋した女性のほろ苦いクリスマスソングです。

 今回のアルバムはみゆきさんの様々な歌声が聞けますし、歌詞も聴く人や聴く時によって、様々なイメージができる奥行きがあり、何回聞いても飽きることがありません。言葉の使い方もみゆきさんらしく洗練されており、聴いていて自然と言葉が胸に染み渡っていきます。
 派手な曲はありませんが、みゆきさんの近年のアルバムでは完成度の高いアルバムです。

1. 囁く雨    
2. 相席    
3. 樹高千丈 落葉帰根    
4. あのバスに    
5. 心守歌    
6. 六花    
7. カーニヴァルだったね    
8. ツンドラ・バード    
9. 夜行    
10. 月迎え    
11. LOVERS ONLY

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