『ダイアリー・オブ・ザ・デッド』この映画を見て!
第265回『ダイアリー・オブ・ザ・デッド』
今回紹介する作品はゾンビ映画の帝王ジョージ・A・ロメロが『ランド・オブ・ザ・デッド』から3年ぶりに放つゾンビ映画『ダイアリー・オブ・ザ・デッド』です。
本作品は『クローバーフィールド/HAKAISHA』のように主人公の手持ちカメラによる主観映像を中心にドキュメンタリータッチでゾンビの襲撃を描いていきます。
ストーリー:「ジェイソンを始めとする映画学科の学生グループは卒業制作のため、ペンシルヴェニア州の山でホラー映画を撮影していた。その最中、ラジオから死体が人間を襲撃しているというニュースを聞く。ニュースを聞いたジェイソンたちは山を下りたところ、ゾンビが人を襲う光景を目の当たりにする。
ジェイソンたちは、この惨劇をビデオカメラで記録して伝えようと決意し、絶えず身の危険が迫る状況下で撮影を始める。」
本作品は劇場公開せずDVD発売のみを予定して低予算で製作されており、映像はこじんまりとしていましたが、ロメロ監督だけあってゾンビの描写や随所に散りばめられた社会風刺など大変見応えがありました。
本作品は前作『ランド・オブ・ザ・デッド』の続編というより、『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』と同様に現代にゾンビが発生した時の人々の様々な行動を描いています。そういう意味では新シリーズの展開と考えていいのかのしれません。
主観映像で製作された映画はどれも視点や描写が制限されがちですが、本作品は手持ちカメラで撮影している人が2人いたり、YouTubeなどの動画や監視カメラの映像も盛り込まれ、主人公たちの行動や世界の状況が見ている側に分かりやすいです。
残酷描写に関しては控えめですが、ゾンビを酸で溶かしたり、自分の顔面に大カマをぶち込み背後のゾンビを倒すなど、オリジナリティ溢れる描写が随所にありました。
登場人物に関しては主人公たちよりも、いざとなったら冷静に物事に対処するアル中の大学教授と、ダイナマイトでゾンビを吹き飛ばす過激な耳の遠い老人が印象的でした。
ロメロ監督のゾンビ映画は毎回その時代の社会情勢を反映させた作りになっていますが、今回は技術の進歩による情報化社会に対して警鐘を鳴らす作品となっています。
デジタルメディアとネットの普及で誰もが多くの情報に触れ、そして自らも情報の発信者になれる時代。そんな時代のモラルの低下や情報操作の危険性、そして冷静な判断力の必要性に関して本作品は観客に問いかけます。
「カメラで撮っていると人間はすべて傍観者になってしまう。」という映画の中のセリフはとても印象的でした。
ラストは『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』と同様に人間によるゾンビ狩りのシーンが描かれるのですが、最後の1カット頭部だけになったゾンビの描写は監督が本作品で伝えたかったことを見事に映像で表現しています。
ロメロ監督は今年新作である『サバイバル・オブ・ザ・デッド』を公開する予定になっています。今度ある島を舞台にゾンビの襲撃から生き延びようとする人間たちを描くそうですが、どんな作品になるのか今から楽しみです。
本作品は賛否両論ありますが、ゾンビ映画好きの方は押さえておいて損のない作品ですよ!
上映時間 95分
製作国 アメリカ
製作年度 2008年
監督: ジョージ・A・ロメロ
脚本: ジョージ・A・ロメロ
撮影: アダム・スウィカ
プロダクションデザイン: ルパート・ラザラス
衣装デザイン: アレックス・カヴァナー
編集: マイケル・ドハティ
音楽: ノーマン・オレンスタイン
出演: ミシェル・モーガン
ジョシュ・クローズ
ショーン・ロバーツ
エイミー・ラロンド
ジョー・ディニコル
スコット・ウェントワース
フィリップ・リッチョ リドリー
クリス・ヴァイオレット
タチアナ・マスラニー
ジョージ・A・ロメロ
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