『短篇集』中島みゆきのアルバム紹介
中島みゆきのアルバム紹介No.8『短篇集』
今回紹介するアルバムは中島みゆき通算28作目のアルバム『短篇集』です。本アルバムはタイトルの通り、それぞれの歌が独立した世界観を描いており、どの歌から聴いても良い作りになっています。また、全曲通して聞くと、良質の短編小説集を読んだかのような充実感を得ることができます。
1曲目の『地上の星』と11曲目の『ヘッドライト・テールライト』はNHKで放映されて大反響を呼んだドキュメンタリー番組『プロジェクトX』のオープニングテーマとエンディグテーマとして使用され、知っている方も多いかと思います。
シングルカットもされ、中高年世代を中心にじわじわと人気を広げ、オリコンシングルチャートで初登場から130週をかけて1位を獲得。さらに139週目にはミリオンセラーを達成するという偉業を成し遂げました。
「地上の星」はまるで不動明王のごとく力強く、「ヘッドライト・テールライト」は観音菩薩のように優しく、どんな困難があっても乗り越え生きていく者たちにエールを送ってくれます。
2曲目の『帰省』は由紀さおり&安田祥子に提供した楽曲のセルフカヴァーです。日本人の盆と正月の帰省をテーマにしており、8月と1月になると聴きたくなる名曲です。私も故郷から離れて生活しているので、この曲を聴くといつも胸がジーンとします。
3曲目の『夢の通り道を僕は歩いている』は夢に向かって歩んできた人に向けた応援ソングです。軽快な曲とみゆきさんの柔らかな歌声が聞いていて心地よいです。
4曲目の『後悔』は叶わなかった恋に対する女性の後悔を綴った歌で、これぞみゆきさんという歌詞と後半のみゆきさんの絶唱が印象に残ります。
続く5曲目の『MERRY-GO-ROUND』も叶わぬ恋をメリーゴラーンドに喩えて歌っています。
6曲目の『天使の階段』と9曲目の『粉雪は忘れ薬 』は夜会11&12『ウィンターガーデン』のために作られた歌です。『天使の階段』は天空から地上に光が降り注ぐ荘厳な情景が聴いていて思い浮かんできます。『粉雪は忘れ薬』は忘れたくても忘れられない記憶を抱えた人たちの心情と願いを情感たっぷりに歌っています。
7曲目の『過ぎゆく夏』は吉田拓郎風のフォークロックで、ひと夏の恋を軽快に歌っています。
8曲目の『結婚』は本アルバム一番の異色作であり、子どもたちのやり取りから結婚についてコミカルに語る歌です。2分弱の短い歌ですが、聴いたあとクスッと笑って結婚とは何かについて考えさせられます。
10曲目の『Tell Me,Sister 』は個人的に一番本アルバムで好きな歌です。劣等感を持つ主人公の女性の前に現われる完璧な女性。その女性は全てを兼ね備えているにもかかわらず、いやそれ故にこの世の中に達観していて、主人公に「そのままでいいのに」と伝える。そして時が経ち、完璧な女性が亡くなったことを知る主人公。「人生に必要なものは何か?」、そして、「何が幸せなのか」を聴く者に問いかけてくる歌です。
あと、私はこの歌を聞くときに「Sister」とは一体誰を指しているのかいつも考えてしまいます。妹なのか、それとも教会のシスターなのか、はたまた友人なのか。聴いたことある皆さんはどう思われますか?
本アルバムはみゆきさんのアルバムでも大変聞きやすく、初心者の人にもお奨めのアルバムです。みゆきさんが綴った11の短篇集はさらりとしていながら大変味わい深いですよ。
1. 地上の星
2. 帰省
3. 夢の通り道を僕は歩いている
4. 後悔
5. MERRY-GO-ROUND
6. 天使の階段
7. 過ぎゆく夏
8. 結婚
9. 粉雪は忘れ薬
10. Tell Me,Sister
11. ヘッドライト・テールライト
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