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2009年8月

『短篇集』中島みゆきのアルバム紹介

中島みゆきのアルバム紹介No.8『短篇集』
Photo  今回紹介するアルバムは中島みゆき通算28作目のアルバム『短篇集』です。本アルバムはタイトルの通り、それぞれの歌が独立した世界観を描いており、どの歌から聴いても良い作りになっています。また、全曲通して聞くと、良質の短編小説集を読んだかのような充実感を得ることができます。

 1曲目の『地上の星』と11曲目の『ヘッドライト・テールライト』はNHKで放映されて大反響を呼んだドキュメンタリー番組『プロジェクトX』のオープニングテーマとエンディグテーマとして使用され、知っている方も多いかと思います。
 シングルカットもされ、中高年世代を中心にじわじわと人気を広げ、オリコンシングルチャートで初登場から130週をかけて1位を獲得。さらに139週目にはミリオンセラーを達成するという偉業を成し遂げました。
 「地上の星」はまるで不動明王のごとく力強く、「ヘッドライト・テールライト」は観音菩薩のように優しく、どんな困難があっても乗り越え生きていく者たちにエールを送ってくれます。

 2曲目の『帰省』は由紀さおり&安田祥子に提供した楽曲のセルフカヴァーです。日本人の盆と正月の帰省をテーマにしており、8月と1月になると聴きたくなる名曲です。私も故郷から離れて生活しているので、この曲を聴くといつも胸がジーンとします。

 3曲目の『夢の通り道を僕は歩いている』は夢に向かって歩んできた人に向けた応援ソングです。軽快な曲とみゆきさんの柔らかな歌声が聞いていて心地よいです。

 4曲目の『後悔』は叶わなかった恋に対する女性の後悔を綴った歌で、これぞみゆきさんという歌詞と後半のみゆきさんの絶唱が印象に残ります。
 続く5曲目の『MERRY-GO-ROUND』も叶わぬ恋をメリーゴラーンドに喩えて歌っています。

 6曲目の『天使の階段』と9曲目の『粉雪は忘れ薬 』は夜会11&12『ウィンターガーデン』のために作られた歌です。『天使の階段』は天空から地上に光が降り注ぐ荘厳な情景が聴いていて思い浮かんできます。『粉雪は忘れ薬』は忘れたくても忘れられない記憶を抱えた人たちの心情と願いを情感たっぷりに歌っています。

 7曲目の『過ぎゆく夏』は吉田拓郎風のフォークロックで、ひと夏の恋を軽快に歌っています。

 8曲目の『結婚』は本アルバム一番の異色作であり、子どもたちのやり取りから結婚についてコミカルに語る歌です。2分弱の短い歌ですが、聴いたあとクスッと笑って結婚とは何かについて考えさせられます。

 10曲目の『Tell Me,Sister 』は個人的に一番本アルバムで好きな歌です。劣等感を持つ主人公の女性の前に現われる完璧な女性。その女性は全てを兼ね備えているにもかかわらず、いやそれ故にこの世の中に達観していて、主人公に「そのままでいいのに」と伝える。そして時が経ち、完璧な女性が亡くなったことを知る主人公。「人生に必要なものは何か?」、そして、「何が幸せなのか」を聴く者に問いかけてくる歌です。
 あと、私はこの歌を聞くときに「Sister」とは一体誰を指しているのかいつも考えてしまいます。妹なのか、それとも教会のシスターなのか、はたまた友人なのか。聴いたことある皆さんはどう思われますか?

 本アルバムはみゆきさんのアルバムでも大変聞きやすく、初心者の人にもお奨めのアルバムです。みゆきさんが綴った11の短篇集はさらりとしていながら大変味わい深いですよ。

1. 地上の星    
2. 帰省    
3. 夢の通り道を僕は歩いている    
4. 後悔    
5. MERRY-GO-ROUND    
6. 天使の階段    
7. 過ぎゆく夏    
8. 結婚    
9. 粉雪は忘れ薬    
10. Tell Me,Sister    
11. ヘッドライト・テールライト

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『殺し屋1』この映画を見て!

第269回『殺し屋1』
Photo_2  今回紹介する作品は「週刊ヤングサンデー」で連載された山本英夫の人気コミックをバイオレンス描写で定評のある三池崇史監督が完全映画化した『殺し屋1』です。
 本作品は原作に負けず劣らずの痛い暴力描写の連続で、映倫からR-18指定を受けたています。ストーリーはラストを除き基本的に原作に忠実に展開していきます。
 出演者は浅野忠信を始めてとして大森南朋、SABU、塚本晋也、松尾スズキ、    國村隼、寺島進と日本映画を代表する役者が集結して大変濃い演技を披露してくれます。   

ストーリー:「安生組の若頭である垣原は失踪した組長を追っていた。そんな垣原の前に謎の男・ジジイが現われる。ジジイは組の壊滅を図ろうと気弱だが強いイチという青年を操り、組員を次々と抹殺していた。垣原はジジイにガセネタをつかまされ、敵対する組員を捕まえ拷問する。それが原因で安生組を追い出された垣原は自ら組を立ち上がる。
 その後、垣原はジジイが操っているイチという殺し屋の存在を知る。イチの残虐さに究極のマゾである垣原は興奮を覚え対決に胸躍らせるのだが・・・。」

 本作品は原作ファンの人からは不評ですが、個人的には映画の出来もそんなに悪くないと思います。というか、2時間にあの原作を良くまとめたと思います。
 確かにR18指定だけあって暴力描写は過激ですが、あまりにも現実離れをしており、笑いの域に達しています。それでもスプラッターが苦手な人には耐えられないでしょうが・・・。

 ストーリーは展開がかなり早いので原作を知らないと良く分からないところが多いと思います。もう少し人物描写の掘り下げや状況描写を入れたほうが良かったかもしれません。ただ、ラストは個人的に垣原の絶望と願望が見事に表現されていたと思います。

 キャスティングに関して、垣原を浅野忠信が演じたことに関しては賛否両論ありますが、個人的には脱力系の淡々とした演技が良い味を出していたと思います。イチを演じた大森南朋は弱虫な殺し屋が見事にはまっていましたし、ジジイを演じた塚本晋也や双子の刑事を演じた松尾スズキも強烈な印象を見る者に与えてくれます。

 本作品は暴力と欲望と死の渦巻く裏社会で生きる一般社会からはみ出した変人たちの姿をシュールかつコミカルに描いています。別に深い味わいのある作品ではありませんが、この手の映画が好きなら一度は見て損はないと思います。 

上映時間 128分
製作国    日本/香港/韓国
製作年度 2001年
監督:    三池崇史   
原作:    山本英夫
脚本:    佐藤佐吉   
撮影:    山本英夫   
衣裳:    北村道子   
照明:    小野晃   
出演:    浅野忠信   
    大森南朋   
    エイリアン・サン   
    SABU
    塚本晋也   
    KEE   
    松尾スズキ   
    國村隼   
    寺島進   
    菅田俊   
    手塚とおる   
    有薗芳記   
    新妻聡   

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『片腕マシンガール』この映画を見て!

第268回『片腕マシンガール』
Photo  日本のバイオレンス映画の輸入を行っている北米のビデオメーカー「メディアブラスターズ」が、自ら製作に乗り出した新レーベル「TOKYO SHOCK」の初作品として「恋する幼虫」の奇才・井口昇を監督に迎えて製作したB級バイオレンス・アクション『片腕マシンガール』。
 北米の邦画マニアを意識して、寿司や忍者、ヤクザなどニッポン的キーワードを随所に取り込み、弟を殺された女子高生の復讐物語をハードなスプラッターを用いて描いています。YouTubeに予告編がアップされると瞬く間に100万アクセス突破。日本でも限定公開され大変話題になりました。

ストーリー:「両親が殺人容疑を掛けられ自殺に追い込まれた女子高生アミは弟のユウと2人で支え合って暮らしていた。しかし、ユウ服部半蔵の血を受け継ぐヤクザの息子・翔のグループにイジメに遭い殺されてしまう。警察はユウを自殺と断定するが、アミはユウが生前に書いていたノートを発見。そこにはイジメていた人間たちの名前が書かれていた。アミは弟の仇討ちを誓い、翔の家に向かうが捕まってしまい、残忍な拷問の末についに左腕を切り落とされてしまう。」

 久しぶりに邦画でぶっ飛んだ作品でした。内容的にはタランティーノ監督の『キル・ビル1』に似ているのですが、スプラッター描写の過激さと変な日本描写そして下らなさという意味では本作品の方が明らかに上です。

 本作品は本編前に監督によるイントロが入り、鑑賞方法をレクチャーをしてくれます。その不真面目なレクチャーからして本作品が如何に下らない映画であるか分かります。ここで引いてしまうと本作品は見ても苦痛にしかならないでしょう。

 本編は冒頭からラストまで頭部がマシンガンで吹っ飛び、電動のこぎりで体が真っ二つになったりと人体破壊描写のオンパレードです。また血しぶきも半端でなく、噴水のごとく血が飛びまくります。その描写はもはや生々しさを超えて現実離れしており、見ていても不快さはあまり感じず、むしろ笑ってします。ノリ的には『バット・テイスト』『ブレインデッド』など初期のピーター・ジャクソン監督のスプラッター映画に近い感じです。

 ストーリーは70年代テイストの復讐劇で特に目新しい内容や展開があるわけではありませんが、ぶっ飛んだ演出で最後まで飽きることがありませんでした。服部半蔵の血を受け継ぐヤクザ、高校生の忍者集団、人間をネタにした寿司や天ぷら、片腕にマシンガンを装着する主人公、そして敵のヒロインが装着するドリルブラ。こんな演出を思いつき実行できる監督の才能にはある意味脱帽です。
 また、かわいいヒロインが復讐を誓い、幾多の苦痛や苦難を乗り越え、敵を壊滅させるラストはベタですが爽快感を感じさせます。

 本作品は全体を通してチープではありますが、テンポも良いですし、パワーがあります。万人受けする作品ではないですが、B級映画やスプラッター好きなら楽しめる作品だと思いますよ。

上映時間 96分
製作国    アメリカ/日本
製作年度 2008年
監督: 井口昇   
アクション監督:    鈴村正樹   
脚本: 井口昇   
撮影: 長野泰隆   
特殊メイク: 石野大雅   
特殊造型: 石野大雅   
編集: 田辺健二   
音楽: 中川孝   
VFXスーパーバイザー: 鹿角剛司   
イラスト:    江口寿史   
サウンドデザイン: 渡部健一   
照明: 安部力   
特殊造型監督: 西村喜廣   
出演:    八代みなせ   
    亜紗美   
    島津健太郎   
    穂花   
    西原信裕
    川村亮介   
    秀平   
    石川ゆうや   
    菜葉菜   
    岸建太朗   
    岡本良史       
    諏訪太朗   

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『お葬式』この映画を見て!

第267回『お葬式』
Photo  今回紹介する作品は伊丹十三の監督デビュー作であり、公開当時大ヒットを記録した『お葬式』です。伊丹十三が妻であり女優の宮本信子の父の葬式で喪主になった経験を元にシナリオを書き上げ、1億円の予算をかけて、製作されました。ちなみに主な撮影場所である葬儀を行う家は何と実際の伊丹十三の家でロケしたそうです。日本を代表する豪華かつ個性派の俳優をキャスティングして、コミカルかつリアルに日本のお葬式の実体を描いていて、お葬式を経験したことある人なら誰もが共感して見ることが出来ます。

 ストーリー:「俳優の井上侘助と雨宮千鶴子は夫婦で共演をしていたCM撮影中に千鶴子の父が急死したという連絡を受ける。侘助は千鶴子や子どもたち、そしてマネージャーの里見共に病院へ向かう。そこで千鶴子の母であるきく江や千鶴子の妹夫婦、そして父の兄にあたる正吉と合流。遺体と初対面をする。その後、遺体を父の家に運び、葬儀屋・海老原の助けを借りながら、通夜と葬式の準備を始める。」

 私が本作品を始めてみたのは小学生の時のテレビ放映でしたが、内容云々よりも主人公演じる山崎努と愛人役の高瀬春菜との野外でのセックスシーンに目を奪われ、子どもながら見てはいけないものを見てしまったような感覚に襲われたものでした。

 大人になってから本作品を見返すと、お葬式という非日常的行為の中で見せる悲喜交々の人間模様に2時間飽きることなく見ることが出来ました。
 本作品は配役が素晴らしく、主役である山崎努と宮本信子はもちろんのこと、脇役である江戸屋猫八、笠知衆、藤原鎌足たちの軽妙な演技がとても印象に残りました。特に藤原鎌足演じる耳の遠い老人のとぼけた演技は見ていて大爆笑でした。
 また、菅井きんの最後の挨拶のシーンでの演技は大変素晴らしく、今まで抑えていた感情が一気に溢れる姿は見ていて胸に迫るものがありました。   

 ストーリーはお葬式の一部始終を淡々と描いているだけで、特にドラマチックな展開はありません。しかし、退屈せず見ることが出来るのはお葬式という普段なかなか客観的に見ることがない光景を第3者の視点で見ることができるからだと思います。またお葬式を経験したことある人は「こんな人いるよなあ」とか「こんなことあったなあ」と自分の経験と照らし合わせながら見ることができます。

 本作品はお葬式という儀式に振り回される人々を笑いながら、死と言う誰もが避けて通れない哀しみに涙することができる傑作です。

上映時間 124分
製作国    日本
製作年度 1984年
監督:    伊丹十三   
脚本:    伊丹十三   
撮影:    前田米造   
美術:    徳田博   
編集:    鈴木晄   
音楽:    湯浅謙二   
助監督:    平山秀幸   
出演:    山崎努   
    宮本信子   
    菅井きん   
    大滝秀治   
    奥村公延   
    財津一郎   
    江戸家猫八
    友里千賀子   
    尾藤イサオ   
    岸部一徳   
    津川雅彦
    横山道代   
    小林薫   
    池内万平   
    西川ひかる   
    海老名美どり   
    津村隆   
    高瀬春奈   
    香川良介   
    藤原釜足   
    田中春男   
    吉川満子
    利重剛   
    井上陽水   
    笠智衆   

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『心守歌』中島みゆきのアルバム紹介 

中島みゆきのアルバム紹介No.7『心守歌』 
Photo   今回紹介するアルバムは中島みゆき通算29作目のアルバム『心守歌』です。本アルバムはシングル曲が全く収録されておらず、夜会『ウィンターガーデン』で発表された2曲を除いて、全てオリジナルです。

 1曲目の「囁く雨 」は雨の音のSEが最初30秒以上続きます。そして、いきなり飛び込んでくるみゆきさんの迫力のある歌声に心が鷲づかみにされます。激しい雨の振る中で、彼氏が別れ話しの途中で泣き出し困惑する彼女。以前のみゆきさんなら女性が泣く歌詞になるところを、今回は敢えて男性が泣く設定にしたところが印象的でした。

 2曲目の「相席」は酸いも甘いも知った大人の恋愛をジャジーな感じに歌っており、心地よい歌声とメロディーに酔いしれます。

 3曲目の「樹高千丈 落葉帰根 」は恋愛の歌から一転、人の故郷や母への憧れについて歌っています。歌のタイトルの「樹高千丈 落葉帰根 」は中国の諺から引用されており、「たとえ樹木がどんなに高くなっても、落ちた葉はいずれ根元に帰る」という意味があります。親元を離れ遠い地で過ごす心細さや孤独、そして懐かしく思う生まれ故郷と母の懐。みゆきさんは優しい歌声で故郷を離れた者たちの心情を歌い上げます。
 歌の後半の「木の根はゆりかごになって抱きとめる」というフレーズはみゆきさんの母性愛に自然と涙が溢れてきます。

 4曲目の「あのバスに」はロック調の曲で、せきたてられるように未来に向かって飛び出した過去を振り返る歌になっています。

 5曲目の「心守歌 」は今回のアルバムのタイトルにもなっています。みゆきさんらしい独特の言い回しが印象に残る歌です。自分が歩んできた過去を振り返り、愛してきた人々たちの平安を祈る歌詞に心が癒され励まされます。

 6曲目の「六花」は夜会『ウィンターガーデン』のために作られた曲です。果てしない空と大地の間で生きるものたちの罪やけがれの浄化を祈る歌詞は聴く者の心をも浄化します。

 7曲目の「カーニヴァルだったね 」は吉田拓郎調の曲です。今までの愚かで無様な生き方に後悔しながらも、しぶとく生きる人を力強く歌っています。

 8曲目の「ツンドラ・バード」は夜会『ウィンターガーデン』のために作られた曲です。この曲の歌詞は難解で、みゆきさんが大地の全てを見抜くオジロワシに何の意味をこめたのか考えてしまいます。

 9曲目の「夜行」は個人的に本アルバムで一番好きな曲です。夜の世界で傷つきながらも心優しく生きる人々にスポットライトを当てた曲であり、みゆきさんの力強い歌声が聞く者の心にある偏見を打ち砕き、不器用な人間たちの背中を力強く押してくれます。

 10曲目の「月迎え」は何とも幻想的で不思議な曲です。しかし、聞いているとなぜか心がときほぐれて落ち着きます。

 11曲目の『LOVERS ONLY 』はみゆきさんとしては珍しいクリスマスソングです。しかし、そこはみゆきさん。甘いクリスマスソングではなく、失恋した女性のほろ苦いクリスマスソングです。

 今回のアルバムはみゆきさんの様々な歌声が聞けますし、歌詞も聴く人や聴く時によって、様々なイメージができる奥行きがあり、何回聞いても飽きることがありません。言葉の使い方もみゆきさんらしく洗練されており、聴いていて自然と言葉が胸に染み渡っていきます。
 派手な曲はありませんが、みゆきさんの近年のアルバムでは完成度の高いアルバムです。

1. 囁く雨    
2. 相席    
3. 樹高千丈 落葉帰根    
4. あのバスに    
5. 心守歌    
6. 六花    
7. カーニヴァルだったね    
8. ツンドラ・バード    
9. 夜行    
10. 月迎え    
11. LOVERS ONLY

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『PERFECT BLUE』この映画を見て!

第266回『PERFECT BLUE』
Perfect_blue  今回紹介する作品は今や日本を代表するアニメ監督となった今敏が本格的なサイコサスペンスをアニメで描いた意欲作『PERFECT BLUE』です。
 本作品は実写作品として当初企画されていたそうですが、途中からアニメ作品に変更して製作されました。キャラクター原案に江口寿史、企画に大友克洋が参加。今敏監督のデビュー作品でもあります。

ストーリー:「アイドルグループ『チャム』のメンバーである未麻はグループ脱退を宣言し、女優への転身を計る。アイドルから女優を目指すためにドラマ出演でレイプシーンを演じたり、ヘアヌードの撮影に応じたりする。次第に注目されていく未麻だが、人気とは裏腹に現状への不満を募らせる。そんな中、ネットで自分の行動が詳細に書かれたホームページを知る。未麻はストーカーに監視されていることに気づき恐怖に怯える中、周辺で関係者が次々と殺される事件が発生する。」

  今見るとネットやストーカーを扱った点など少し古臭いところはありますが、日本のサイコサスペンス映画の中では5本の指に入るほど面白い作品です。アニメでないと出来ない表現を駆使して、現実と妄想が錯綜する世界を見事に表現しています。アイドルから女優に転身した主人公がストレスから自分を見失い、現実と非現実の境界が曖昧になる展開は見ている側もどこまでが現実なのか分からず最後まで画面に釘付けになります。また、主人公が芸能界という厳しい世界で追い込まれていく心情が見ている側にも良く伝わってきます。
 サスペンスとしてもシナリオが練りこまれており、ラストのオチを初めてみた時は「そういうことだったのか」と感心しました。(多少突っ込みどころはありますが)

 過激な暴力及び性的描写があるので、万人受けする作品ではないですが、サスペンス映画好きなら一度は見て損のない作品だと思います。

上映時間 81分
製作国    日本
製作年度 1998年
監督:    今敏   
演出:    松尾衝   
原作: 竹内義和   
脚色: 村井さだゆき   
作画監督: 浜州英喜   
特殊効果: 真田祥子   
ビュジュアル・ワークショプ   
美術監督: 池信孝   
撮影監督: 白井久男   
編集:    尾形治敏   
音楽:    磯見雅博   
声の出演:岩男潤子
    松本梨香   
    辻親八   
    大倉正章   
    秋元洋介   
    塩屋翼   
    堀秀行   
    篠原恵美   
    古川恵実子   
    新山志保   
    江原正士   
    梁田清之   
    津久井教生   
    古澤徹

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『ダイアリー・オブ・ザ・デッド』この映画を見て!

第265回『ダイアリー・オブ・ザ・デッド』
Photo  今回紹介する作品はゾンビ映画の帝王ジョージ・A・ロメロが『ランド・オブ・ザ・デッド』から3年ぶりに放つゾンビ映画『ダイアリー・オブ・ザ・デッド』です。
 本作品は『クローバーフィールド/HAKAISHA』のように主人公の手持ちカメラによる主観映像を中心にドキュメンタリータッチでゾンビの襲撃を描いていきます。

ストーリー:「ジェイソンを始めとする映画学科の学生グループは卒業制作のため、ペンシルヴェニア州の山でホラー映画を撮影していた。その最中、ラジオから死体が人間を襲撃しているというニュースを聞く。ニュースを聞いたジェイソンたちは山を下りたところ、ゾンビが人を襲う光景を目の当たりにする。
 ジェイソンたちは、この惨劇をビデオカメラで記録して伝えようと決意し、絶えず身の危険が迫る状況下で撮影を始める。」

 本作品は劇場公開せずDVD発売のみを予定して低予算で製作されており、映像はこじんまりとしていましたが、ロメロ監督だけあってゾンビの描写や随所に散りばめられた社会風刺など大変見応えがありました。
 本作品は前作『ランド・オブ・ザ・デッド』の続編というより、『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』と同様に現代にゾンビが発生した時の人々の様々な行動を描いています。そういう意味では新シリーズの展開と考えていいのかのしれません。
 主観映像で製作された映画はどれも視点や描写が制限されがちですが、本作品は手持ちカメラで撮影している人が2人いたり、YouTubeなどの動画や監視カメラの映像も盛り込まれ、主人公たちの行動や世界の状況が見ている側に分かりやすいです。
 残酷描写に関しては控えめですが、ゾンビを酸で溶かしたり、自分の顔面に大カマをぶち込み背後のゾンビを倒すなど、オリジナリティ溢れる描写が随所にありました。

 登場人物に関しては主人公たちよりも、いざとなったら冷静に物事に対処するアル中の大学教授と、ダイナマイトでゾンビを吹き飛ばす過激な耳の遠い老人が印象的でした。

 ロメロ監督のゾンビ映画は毎回その時代の社会情勢を反映させた作りになっていますが、今回は技術の進歩による情報化社会に対して警鐘を鳴らす作品となっています。
 デジタルメディアとネットの普及で誰もが多くの情報に触れ、そして自らも情報の発信者になれる時代。そんな時代のモラルの低下や情報操作の危険性、そして冷静な判断力の必要性に関して本作品は観客に問いかけます。
 「カメラで撮っていると人間はすべて傍観者になってしまう。」という映画の中のセリフはとても印象的でした。
 ラストは『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』と同様に人間によるゾンビ狩りのシーンが描かれるのですが、最後の1カット頭部だけになったゾンビの描写は監督が本作品で伝えたかったことを見事に映像で表現しています。

 ロメロ監督は今年新作である『サバイバル・オブ・ザ・デッド』を公開する予定になっています。今度ある島を舞台にゾンビの襲撃から生き延びようとする人間たちを描くそうですが、どんな作品になるのか今から楽しみです。

 本作品は賛否両論ありますが、ゾンビ映画好きの方は押さえておいて損のない作品ですよ! 

上映時間 95分
製作国    アメリカ
製作年度 2008年
監督:    ジョージ・A・ロメロ   
脚本:    ジョージ・A・ロメロ   
撮影:    アダム・スウィカ   
プロダクションデザイン:    ルパート・ラザラス   
衣装デザイン:    アレックス・カヴァナー   
編集:    マイケル・ドハティ   
音楽:    ノーマン・オレンスタイン   
出演:    ミシェル・モーガン   
    ジョシュ・クローズ   
    ショーン・ロバーツ   
    エイミー・ラロンド   
    ジョー・ディニコル   
    スコット・ウェントワース   
    フィリップ・リッチョ    リドリー
    クリス・ヴァイオレット   
    タチアナ・マスラニー   
    ジョージ・A・ロメロ   

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「戦争について考えさせられる映画」私の映画遍歴16

 終戦記念日の8月はテレビ等で先の太平洋戦争にまつわる番組がよく放映されます。どんな目的であれ戦争は多くの人を巻き込み不幸にします。人類の歴史の中で戦争は幾度となく起こり、多くの人が犠牲になっています。平和を望みながらも今も世界のどこかで続いている戦争。
 映画においても戦争は幾度となく描かれてきました。『プラトーン』や『プライベート・ライアン』のように戦場の兵士たちを描いた作品。『シンドラーのリスト』や『戦場のピアニスト』のように戦争に巻きこまれた市民を描いた作品。また、『渚にて』や『黒い雨』のように核戦争の恐怖を描いた作品。そして『7月4日に生まれて』や『ジョニーは戦場へ行った』のように帰還兵の苦悩を描いた作品。映画においても色々な切り口から戦争については語られています。
 そこで今回は私が戦争について考えさせられた映画を5作品紹介します。

『ゴジラ』
Photo  日本を代表する怪獣ゴジラ。記念すべき1作目は1954年に公開され大ヒットしましたが、単なる怪獣映画を超えた反戦・反核映画に仕上がっています。まだ戦後の傷跡が残る時代に製作されただけあって、ゴジラの襲撃シーンは東京大空襲を思い起こしますし、随所に核の脅威と恐怖が描かれいます。
『スターシップ・トゥルーパーズ』
Starship_troopers   ロバート・A・ハインラインのSF小説『宇宙の戦士』を鬼才ポール・バーホーベン監督が映画化した本作品。昆虫型エイリアンと人間の壮絶な戦いを描いたSFアクション大作ですが、随所に軍国主義のプロパガンダを皮肉ったシーンがあります。また、戦争の残酷さや愚かさもしっかりと描かれていす。

『フルメタル・ジャケット』
Photo_2  普通の若者が以下にして殺人兵器へと生まれ変わり戦場で戦っていくのかを巨匠キューブリック監督が冷徹に描いた本作品。ベトナム戦争を題材に前半は海兵隊員の訓練所での若者たちの過酷な訓練を描き、後半はベトナム戦地での若者たちの激しい戦闘を描いていきます。見所は何と言っても前半の海兵隊員の訓練所の描写。若者たちが訓練を経て非人間的になっていく姿は背筋が凍ります。
・『パンズ・ラビリンス』
Photo_3  1944年のスペイン内戦下を舞台に現実とファンタジーの間で生きる少女の姿を描いた本作品。奇怪なクリーチャーたちが登場するダークなファンタジー映画でありますが、そこで描かれるテーマは戦争に巻き込まれた子どもの悲劇です。

『父親たちの星条旗』『硫黄島からの手紙』
Flags_of_our_fathers  太平洋戦争における硫黄島の戦いを日米双方の視点から描いた本作品。クリント・イーストウッドが両作品とも監督していますが、日米それぞれの兵士たちの苦悩を丁寧に描いていきます。戦争で対立している両者の姿を均等に描くことで、敵味方や国を超えた戦争の愚かさや悲しみが見る者に伝わってきます。

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『ゴジラ』(1954年版)この映画を見て!

第264回『ゴジラ』
Photo_2  今回紹介する作品は日本人なら誰もが知っている怪獣映画『ゴジラ』の記念すべき1作目です。公開当時は観客動員数961万人を誇り、単純計算で日本人の10人に1人が見たほどの大ヒットを記録しました。

ストーリー:「太平洋上で貨物船「栄光丸」が原因不明の沈没事故を起こした。その後、救出に向かった貨物船や大戸島の漁船も沈没。生き残った船員は怪物に襲われたと証言する。そのことを聞いた大戸島の老人は伝説の怪物「ゴジラ」ではないかと周囲に話す。その後、大戸島をゴジラが襲撃して多大な被害をもたらす。政府は事態を究明するため、生物学者の山根恭平博士を団長とした調査チームを結成して、大戸島での調査を行う。その際に調査団はゴジラと遭遇。その姿を見た山根博士は核実験によってジュラ紀の恐竜が甦ったのではないかと推測する。それから数日後、ついに東京にもゴジラが上陸。街は壊滅状態となる。」

 私は初めて本作品を見たとき、その完成度の高さに驚きました。確かに特撮は今見ると明らかにミニチュアと分かる箇所が多いですが、それを補って余りあるほどの臨場感と迫力があります。
 本作品の特長はゴジラを強調せず、あくまでゴジラに襲撃される人間に焦点を当てているところです。2作目以降のゴジラは人間にとって親しみやすいキャラクターになりますが、1作目は巨大な力を持つ怖い存在として終始描かれています。ゴジラによって東京が破壊するシーンは明らかに東京大空襲をイメージして描かれており、被災者たちの描写は生々しく見ていて恐ろしく痛ましいです。
 また、本作品は当時の日本人の核に対する恐怖と脅威をゴジラという怪獣に象徴させて表現しているところが巧みで、娯楽映画でありながら製作者たちの反戦・反核のメッセージが見ていてひしひしと伝わってきます。特にラストのゴジラが死んでいくシーンはハッピーエンドというには後味が重く、ゴジラも実は核による犠牲者であり、核の脅威は決して終わっていないことを観客に強烈アピールして締めくくっています。

 ゴジラはその後シリーズ化され、日本だけでも2004年までに28作品が製作されました。また、ハリウッドでもローランド・エメリッヒ監督が『GODZILLA』というタイトルで製作されました。しかし、1作目と比較すると質はどれも低いです。
 私は以前から本作品を当時の設定のまま現代の技術でリメイクしたら面白い作品になるのではと思っていましたが、最近はリメイクしてもつまらない作品になるだろうなと思うようになりました。敗戦から10年後という時代だからこそ生まれた作品であり、戦争を経験した人間が製作したからこそ単なる怪獣映画を超えた格調高い反戦映画に仕上がったのだと思います。二度と本作品を越える怪獣映画が製作されることはないでしょう。

上映時間 97分
製作国    日本
製作年度 1954年
監督:    本多猪四郎   
製作:    田中友幸   
原作:    香山滋   
脚本:    村田武雄   
    本多猪四郎   
撮影:    玉井正夫   
美術:    中古智   
美術監督: 北猛夫   
編集:    平泰陳   
音楽:    伊福部昭   
音響効果:    三繩一郎   
特技・合成:    向山宏   
特技・美術:    渡辺明   
特殊技術:    円谷英二   
出演:    志村喬   
    河内桃子   
    宝田明   
    平田昭彦   
    堺左千夫   
    村上冬樹   
    山本廉   
    鈴木豊明   
    馬野都留子   
    岡部正   
    小川虎之助   
    手塚勝己   
    中島春雄   
    林幹   
    恩田清二郎   
    菅井きん   

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『久石譲 in 武道館 ~宮崎アニメと共に歩んだ25年間~』

Photo  昨年に『崖の上のポニョ』の公開を記念して、8月に2日間で合計3回にわたって日本武道館にて公演された『久石譲 in 武道館 ~宮崎アニメと共に歩んだ25年間~』。
 『風の谷のナウシカ』から『崖の上のポニョ』まで久石譲が手がけてきた宮崎駿作品の音楽を武道館で演奏するという宮崎&久石ファンには夢のような企画で、チケットもすぐに完売したほどです。
 私も武道館のコンサートに喉から手が出るほど行きたかったにも関わらず都合上断念。以前NHKでやっていた番組を録画して何度も見たものでした。
 そして今回『崖の上のポニョ』のDVD発売に合わせて、コンサートの様子が完全収録されたDVD(NHKの放送では『MADNESS』が未収録でした。)が発売されるということで私も『ポニョ』とあわせて手に入れ、自宅で鑑賞しました。

  200名の大オーケストラに800人の大合唱団、そして160人のマーチングバンドと総勢1160人もの超大規模編成による演奏は圧巻で見ていて鳥肌が立ったものでした。また、同時に何度見ても武道館に行けなかったことが悔やまれます。
 今回のコンサートでは作品ごとに様々な趣向を凝らしており、見ていて楽しく感動的で、2時間飽きることがありません。
 オープニングは2人が始めてコンビを組んだ『風の谷のナウシカ』が演奏されるのですが、壮大なオケの響きと美しいメロディーにいきなり心が鷲づかみにされます。
 続いて演奏される『もののけ姫』ではコーラスも加わった「アシタカせっき」の壮大な音楽に鳥肌が立ちまくり完全ノックアウトです。
 重量級の作品に続いて演奏されたのが『魔女の宅急便』。本作品の曲は明るく軽快で聴いていて心地よいです。特に印象的だったのがバイオリンソロの美しさが際立った「傷心のキキ」と「かあさんのホウキ」です。
 『崖の上のポニョ』では大橋のぞみちゃんが歌う「崖の上のポニョ」を始め、ボーカル曲が4曲披露されます。林正子さんが歌う「海のおかあさん」は最後の「覚えていますか、兄弟たちを~」の高い歌声に圧倒されました。また、久石さんの娘さんである麻衣さんが歌う「ひまわりの家の輪舞曲」は個人的にイメージアルバムが発売された時から大好きな歌だったので聴けてうれしかったです。
 『天空の城ラピュタ』は地元の中高生160人のマーチングバンドによって演奏されるのですが、凄い迫力です。個人的に『ラピュタ』の曲が一番好きなので、聞いていて胸が熱くなりました。
 『紅の豚』は久石さんのピアノとホーンとのアンサンブルでの演奏。ジャズ調にアレンジされており、『ラピュタ』から一転して大人のムードが漂います。
 『ハウルの動く城』は組曲で演奏されます。映画でもクライマックスに流れて印象的だったトランペットを中心にすえた名曲「Cave of Mind」。本コンサートではトランペットとトロンボーンを中心にすえ演奏しており、美しい音色が耳に残ります。
 『千と千尋の神隠し』は平原綾香をゲストに迎えてボーカル曲が2曲披露されます。「いのちの名前」は映画ではピアノソロで何度も演奏されるメインテーマに歌詞を付けたものですが、平原さんの情感溢れる歌声が素敵でした。「ふたたび」は映画のクライマックスで流れる曲で今回のコンサートのために新たに歌詞を付けています。
 そしてコンサートの最後を飾るのは誰もが知っている『となりのトトロ』。個人的に「風の通り道」が大好きだったので、本コンサートでは少ししか演奏されなかったのが残念でした。もっと聞かせて欲しかったです。「さんぽ」、「となりのトトロ」はもはや誰もが知っている歌であり、会場が大いに盛り上がっているのが見ていても伝わってきます。
 アンコールは久石さんのコンサートでは毎回欠かせない「MADNESS」と『もののけ姫』のラストに流れる美しいピアノ音色が印象的な「アシタカとサン」が演奏されます。「アシタカとサン」は久石さんの数ある曲の中でも1、2位を争う美しいメロディーだと思うので、今回の最後がこの曲で締められるのはうれしい限りです。

 私はDVDを見るたびに、生で見られなかったことを後悔しつつ、宮崎さんと久石さんが生み出した名作と名曲の数々に感動させられます。
 本DVDは宮崎ファン及び久石ファンにはたまりません。

収録曲
    *  【風の谷のナウシカ】
          1.オープニング「風の伝説」
          2.レクイエム~メーヴェとコルベットの戦い
          3. 遠い日々
          4. 鳥の人
    * 【もののけ姫】
          5. アシタカせっき
          6. タタリ神
          7. もののけ姫
    * 【魔女の宅急便】
          8. 海の見える街
          9. 傷心のキキ
          10. かあさんのホウキ
    * 【崖の上のポニョ】
          11.深海牧場~海のおかあさん
          12. 波の魚のポニョ~フジモトのテーマ
          13. ひまわりの家の輪舞曲
          14. 母の愛~いもうと達の活躍~母と海の讃歌
          15. 崖の上のポニョ
    * 【天空の城ラピュタ】
          16. ハトと少年
          17. 君をのせて
          18. 大樹
    * 【紅の豚】
          19. 帰らざる日々
    * 【ハウルの動く城】
          20. Symphonic Variation“Merry-go-round”~Cave of Mind
    * 【千と千尋の神隠し】
          21. あの夏へvocal version「いのちの名前」
          22. ふたたび
    * 【となりのトトロ】
          23.風のとおり道
          24. さんぽ
          25. となりのトトロ
    * 【アンコール】
          26.MADNESS
          27.アシタカとサン

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