『ゴジラ』(1954年版)この映画を見て!
第264回『ゴジラ』
今回紹介する作品は日本人なら誰もが知っている怪獣映画『ゴジラ』の記念すべき1作目です。公開当時は観客動員数961万人を誇り、単純計算で日本人の10人に1人が見たほどの大ヒットを記録しました。
ストーリー:「太平洋上で貨物船「栄光丸」が原因不明の沈没事故を起こした。その後、救出に向かった貨物船や大戸島の漁船も沈没。生き残った船員は怪物に襲われたと証言する。そのことを聞いた大戸島の老人は伝説の怪物「ゴジラ」ではないかと周囲に話す。その後、大戸島をゴジラが襲撃して多大な被害をもたらす。政府は事態を究明するため、生物学者の山根恭平博士を団長とした調査チームを結成して、大戸島での調査を行う。その際に調査団はゴジラと遭遇。その姿を見た山根博士は核実験によってジュラ紀の恐竜が甦ったのではないかと推測する。それから数日後、ついに東京にもゴジラが上陸。街は壊滅状態となる。」
私は初めて本作品を見たとき、その完成度の高さに驚きました。確かに特撮は今見ると明らかにミニチュアと分かる箇所が多いですが、それを補って余りあるほどの臨場感と迫力があります。
本作品の特長はゴジラを強調せず、あくまでゴジラに襲撃される人間に焦点を当てているところです。2作目以降のゴジラは人間にとって親しみやすいキャラクターになりますが、1作目は巨大な力を持つ怖い存在として終始描かれています。ゴジラによって東京が破壊するシーンは明らかに東京大空襲をイメージして描かれており、被災者たちの描写は生々しく見ていて恐ろしく痛ましいです。
また、本作品は当時の日本人の核に対する恐怖と脅威をゴジラという怪獣に象徴させて表現しているところが巧みで、娯楽映画でありながら製作者たちの反戦・反核のメッセージが見ていてひしひしと伝わってきます。特にラストのゴジラが死んでいくシーンはハッピーエンドというには後味が重く、ゴジラも実は核による犠牲者であり、核の脅威は決して終わっていないことを観客に強烈アピールして締めくくっています。
ゴジラはその後シリーズ化され、日本だけでも2004年までに28作品が製作されました。また、ハリウッドでもローランド・エメリッヒ監督が『GODZILLA』というタイトルで製作されました。しかし、1作目と比較すると質はどれも低いです。
私は以前から本作品を当時の設定のまま現代の技術でリメイクしたら面白い作品になるのではと思っていましたが、最近はリメイクしてもつまらない作品になるだろうなと思うようになりました。敗戦から10年後という時代だからこそ生まれた作品であり、戦争を経験した人間が製作したからこそ単なる怪獣映画を超えた格調高い反戦映画に仕上がったのだと思います。二度と本作品を越える怪獣映画が製作されることはないでしょう。
上映時間 97分
製作国 日本
製作年度 1954年
監督: 本多猪四郎
製作: 田中友幸
原作: 香山滋
脚本: 村田武雄
本多猪四郎
撮影: 玉井正夫
美術: 中古智
美術監督: 北猛夫
編集: 平泰陳
音楽: 伊福部昭
音響効果: 三繩一郎
特技・合成: 向山宏
特技・美術: 渡辺明
特殊技術: 円谷英二
出演: 志村喬
河内桃子
宝田明
平田昭彦
堺左千夫
村上冬樹
山本廉
鈴木豊明
馬野都留子
岡部正
小川虎之助
手塚勝己
中島春雄
林幹
恩田清二郎
菅井きん
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