« 2009年5月 | トップページ | 2009年7月 »

2009年6月

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』この映画を見て!

第260回『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』
Photo  今回紹介する作品はTVアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』を庵野秀明監督自らが4部作の映画として再構築するシリーズの第2弾『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』です。前作は基本的にテレビ版第1話~第6話までの展開とほとんど同じでしたが「破」からはテレビシリーズと違う展開になることがアナウンスされていたので非常に楽しみでした。
 また、今回は事前情報がほとんど流れてこず、新ヒロインの名前が真希波・マリ・イラストリアスであることや、アスカの姓が式波に変更となったことくらいしか発表されませんでした。その為、エヴァファンの私としては公開まで予告編を何度も見返しては頭の中でストーリーをあれこれ想像する日々でした。
 そして、昨日ついに公開。1日遅れで映画館に見に行きました。

 ストーリーに関しては未見の方も多いと思いますので触れませんが、テレビシリーズにもあったシーンがあるものの、設定が大きく変わっています。主人公たちの性格もテレビ版より少し前向きさが感じられますし、話し自体も混沌とした中でどこか希望を感じさせます。それにしても、あのラストシーン。次回作はどのような展開になるのか全く想像がつきません。
 新キャラのマリに関しては本作品だけではどういう位置づけの人間か分からないので何とも評価しづらいです。
 映像の美しさや迫力も前作より一段と磨きがかかっています。特に使徒との戦闘シーンの躍動感と緊迫感はアニメ映画史に残るほど素晴らしい完成度を誇っています。それにしても最後に登場する使徒との戦闘シーンは圧巻の一言です。○号機がビーストモードに入ったり、○号機が○○られたりと見せ場が非常に多いです。、
 音楽も誰もが学校時代に唄ったことのある歌が挿入歌として予想外のシーンで使用されており、個人的には涙腺が緩んでしまいました。(この挿入歌に関しては賛否両論あると思いますが・・・)
 また、映画の随所に庵野監督の趣味や昭和へのオマージュが感じられるシーンがあります。

 全体を通しての感想ですが、個人的に本作品は孤独とその救済としての愛をテーマにしています。それも単なる自己愛でなく、他人との交流の中で育まれる大きな愛。エヴァがここまで愛をストレートに語る作品になっているとは正直思いませんでした。
 また、テレビシリーズが好きだった私としては予想外の展開の連続に唖然としました。まさか○○○が3号機に乗り、2号機に○○が乗るなんて思いもよりませんでした。またアスカとレイがシンジに○○○をしようとするなんて驚きました。あと、渚カヲルも登場しますが、彼が最後に言った台詞が意味深がとても気になります。

 本作品に関してはいろいろ書きたいことはあるのですが、まだ公開始まったばかりなので、もうしばらく経ってから感想等は書きたいと思います。

 エヴァファンの人は本作品は必見です。(そんなこと言われなくて分かっているし、劇場に足を運ぶと思いますが・・。)次回作がどうなるのかとても気になるところなので、できるだけ早く完成して公開されることを願っています。

上映時間 108分
製作国    日本
製作年度 2009年
監督:    摩砂雪、鶴巻和哉   
総監督:    庵野秀明   
原作:    庵野秀明   
脚本:    庵野秀明   
撮影監督: 福士享   
美術監督:加藤浩、串田達也   
編集:奥田浩史   
音楽:鷺巣詩郎   
CGI監督:鬼塚大輔、小林浩康   
キャラクターデザイン:貞本義行   
メカニックデザイン:山下いくと   
作画監督:鈴木俊二、本田雄、松原秀典、奥田淳   
色彩設計:菊地和子   
特技監督:増尾昭一   
声の出演:
    緒方恵美   
    林原めぐみ   
    宮村優子   
    坂本真綾   
    三石琴乃   
    山口由里子       
      山寺宏一   
    石田彰   
    立木文彦   
    清川元夢   
    長沢美樹   
    子安武人   
    優希比呂   
    関智一   
    岩永哲哉   
    岩男潤子   
    麦人

| | コメント (2) | トラックバック (15)

『ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!』この映画を見て!

第259回『ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!』
Photo  今回紹介する作品はゾンビ映画のパロディ『ショーン・オブ・ザ・デッド』でゾンビ映画ファンを唸らせたエドガー・ライト&サイモン・ペッグが刑事映画に挑んだ『ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!』です。
 本作品は世界中でヒットする中、日本での公開がなかなか決まらない状態が続き、劇場公開を求める映画ファンが署名運動を行い、やっと日本での公開が実現しました。映画の随所に刑事映画のパロディがあり、映画ファンにはたまりません。
 主演者は主人公の警官コンビを『ショーン・オブ・ザ・デッド』に続いてサイモン・ペッグとニック・フロストがコミカルに演じています。脇役も豪華で、4代目ジェームス・ボンドを演じたティモシー・ダルトンやアカデミー賞助演男優賞にも輝いたことのあるイギリスの名優ジム・ブロードベントが怪演しています。さらにケイト・ブランシェットとピーター・ジャクソンが一瞬ですがカメオ出演しています。

ストーリー:「ロンドン警察に勤めるエンジェルは、警察学校でもトップの成績を残し、幾度もの表彰を受けた優秀な警察官だった。ところが彼は有能であるが故に上司や同僚の反感を買って、イギリスの田舎町サンドフォードに左遷されてしまう。
 サンドフォードに到着したエンジェルを待っていたのはやる気のない警官仲間たち。彼は署長の息子である刑事映画オタクのダニーとコンビを組み、街の治安に取り組む。
 そんなある日、街で不自然な事故が立て続けに起こる。エンジェルは事故に不審を持つが、周囲は誰も彼の話しに取り合ってくれなかった。」   

 『ショーン・オブ・ザ・デッド』コンビの映画だけあって、英国らしいユーモアが全編に散りばめられており、笑って楽しむことができました。前半は少し単調でテンポが悪いところがありますが、後半は怒涛の展開で画面に釘付けになりました。
 特に映画のクライマックスの街での銃撃戦は予想以上に本格的なアクション映画に仕上がっており、見ていて爽快な気分にさせてくれます。それにしても田舎の普通のご老人たちが次々に銃をぶっ放す映画なんて私は始めて見ました。

 今回はパッと見て冴えないサイモン・ペッグが堅物で優秀な警官という設定となっているのですが、まじめすぎて周囲の空気が読めないズレたキャラであり、見ていて面白かったです。 また、後半の白馬に乗って街に戻ってくるシーンは思った以上にカッコ良かったです。
 相棒を演じたニック・フロストも『ショーン~』同様にまったりとマイペースなキャラクターで観客を笑わしてくれます。
 脇役で印象的だったのは何と言ってもティモシー・ダルトン。胡散臭い役を見事に演じていました。ラストシーンは見ているだけで口元が痛くなりました。(それにしても良くこんな役を引き受けたものです)

 本作品は『オーメン』などのホラー・サスペンス映画や『ハートブルー』などのハリウッド製アクション映画、そして日本の怪獣映画と様々な映画に対するオマージュが随所にあります。その手の映画が好きな人が見るとニヤリと笑って見ることが出来ます。個人的には『ハートブルー』の名シーンをパロった、空に向かって銃を撃つシーンが一番爆笑しました。

 あと、前半に散りばめられたネタや伏線が後半で一気に回収されていくところも好感が持てました。個人的には白鳥のエピソードが最後までストーリーに絡んでいるところが一番ツボにはまりました。

 本作品は近年のコメディ映画では一番上質で面白いと思います。但し、結構グロい描写があるので、その手の映画が苦手な人は注意して見てくださいね。

 私としてはエドガー・ライト&サイモン・ペッグのコンビが次回どのようなジャンルの作品を撮るのか今から楽しみです。

上映時間 120分
製作国    イギリス/フランス
製作年度 2007年
監督:    エドガー・ライト   
脚本:    エドガー・ライト   
    サイモン・ペッグ   
撮影:    ジェス・ホール   
プロダクションデザイン:    マーカス・ローランド   
衣装デザイン:    アニー・ハーディング   
編集:    クリス・ディケンズ   
音楽:    デヴィッド・アーノルド   
出演:    サイモン・ペッグ   
    ニック・フロスト   
    ジム・ブロードベント   
    パディ・コンシダイン   
    ティモシー・ダルトン   
    ビル・ナイ   
    ビリー・ホワイトロー   
    エドワード・ウッドワード   
    ビル・ベイリー   
    デヴィッド・ブラッドリー    ー
    ケヴィン・エルドン   
    レイフ・スポール   
    カール・ジョンソン   
    オリヴィア・コールマン   

| | コメント (0) | トラックバック (9)

『トランスフォーマー/リベンジ』この映画を見て!

第258回『トランスフォーマー/リベンジ』
Photo_2  今回紹介する作品はスティーヴン・スピルバーグとマイケル・ベイが製作して世界中で大ヒットした超大作ロボット映画の2年ぶりの続編『トランスフォーマー/リベンジ』です。
 前作の約2倍近い3億ドルの予算かけて、エジプトや上海など世界中でロケを敢行した本作品。登場するトランスフォーマーの数も第1作では13体から、何と計60体以上に大幅に増え、激しいバトルを繰り広げます。

 ストーリー「オプティマス・プライム率いるオートボットはアメリカ軍の対ディセプティコン特殊部隊の一員として世界各地に散らばっているディセプティコンの残党退治をしていた。
 そんな頃、大学生になって家を出る準備をしていたサムは前回の戦いのときに着ていた服に付いていたトランスフォーマーの生命の根源“キューブ”の破片を発見。それに手を触れてからというもの、サムは奇妙なサインが見えるようになる。」

 私は前作も劇場で見たのですが、ストーリーはさて置き、大迫力の映像にひたすら圧倒されたものでした。それから約2年、前作よりも格段にスケールアップした本作品を鑑賞してきたのですが、前作以上にひたすら圧倒されっぱなしでした。米軍の誇る数多くの兵器の登場、トランスフォーマーの華麗な変形と肉弾戦、街や古代遺跡の爆破に破壊。全編クライマックス状態とも言える映像のオンパレードです。あの『ターミネーター4』ですら本作品の前では霞んで見えるほどです。

 ストーリーもミステリーにアドベンチャーの要素も盛り込んでおり飽きることはありません。また前作以上に笑えるシーンも数多くあります。(下品な笑いも多いですが・・・・)ただ、前作同様に強引かつご都合主義的な展開や不必要なシーンも数多くあり、ストーリーの出来はそんなに良くありません。

 しかし、本作品に限ってははっきり言ってストーリーはどうでも良いです。格調高い人間ドラマを求めるのなら、本作品を見る必要はありません。本作品の正しい見方は打ち上げ花火を見るような感覚で大スケール&大迫力の映像を楽しむことです。ラストのピラミッドが見るも無残に崩れ落ちるシーンなんて呆気に取られます。

 登場人物も前作から引き続き登場しているキャラが多いですが、一番印象に残ったのはジョン・タートゥーロ演じるシモンズ元捜査官。前作では嫌な奴でしたが、本作品では主人公を助けて大活躍をします。彼には次回作にもぜひ登場して欲しいです。

 登場するロボットで印象的だったのは、味方側ではコメディリリーフのザ・ツインズとご老体のジェットファイア。ラストでパワーアップするオプティマス・プライムもカッコ良く鳥肌が立ちましたね。
 敵側では巨大ロボのデバステーターの合体シーンに興奮しましたね。またゾイドを思い起こすラヴィッジが海から登場するシーンも良かったですね。
 あと、ターミネーターのように人間に化けるロボットがいたのには驚きましたね。

 本作品は心に残る映画では全く持ってありませんが、暑い夏にスカッと爽快になれる映画です。 派手なアクション映画好きなら1,800円払っても見る価値のある作品ですよ。

上映時間 150分
製作国    アメリカ
製作年度 2009年
監督:    マイケル・ベイ   
脚本:    アーレン・クルーガー   
    ロベルト・オーチー   
    アレックス・カーツマン   
撮影:    ベン・セレシン   
プロダクションデザイン:    ナイジェル・フェルプス   
衣装デザイン:    デボラ・L・スコット   
音楽:    スティーヴ・ジャブロンスキー   
出演:    シャイア・ラブーフ   
    ミーガン・フォックス   
    ジョシュ・デュアメル   
    タイリース・ギブソン   
    ジョン・タートゥーロ   
    レイン・ウィルソン   
    イザベル・ルーカス   
    アメリカ・オリーヴォ   
    マシュー・マースデン   
    サマンサ・スミス   
    グレン・モーシャワー   
    ケヴィン・ダン

| | コメント (0) | トラックバック (10)

『ターミネーター4』映画鑑賞日記

Photo  賛否両論のあった前作から6年ぶりに製作されたターミネーターシリーズの最新作『ターミネーター4』。前作までは現代を舞台に未来から送られてきたターミネーターと人間との戦いを描いていましたが、本作品は“審判の日”以後の荒廃した世界を舞台に人類vsスカイネットとの戦争を描いています。

 私はジェームス・キャメロンが監督した1作目&2作目の大ファンだったので、3作目の出来の悪さにはかなり失望していました。さすがに続編はもうできないだろうと思っていたのですが、何年か前に“審判の日”以後を描く続編が製作されていると知り、どんな作品に仕上がるのかファンとしては興味はありました。ただ、監督を『チャーリーズ・エンジェル』のマックGが務めるという点がかなり不安ではありましたが・・・。

 また、映画の公開前には最初は出演しないと思われていたアーノルド・シュワルツェネッガーがデジタル合成で若い頃の顔を使用してT800として登場することも発表され、どんなシーンで登場するのかも興味がありました。

 アメリカで一足先に公開されましたが、制作費約2億ドル(約280億円!)をかけたにも関わらず、全米初登場は第2位で興行収入もかろうじて1億ドルを突破した程度ということで、出来が悪いのかと危惧しました。
 そして日本でも6月中旬に公開されたので、私も劇場に駆けつけ本作品を鑑賞しました。見終わっての感想は近未来の戦争映画として見ると退屈はしませんが、ターミネーターシリーズとしてみるとイマイチでした。
 映像と音響はお金をかけただけあって迫力満点です。また、今までのシリーズに対するオマージュが随所にあり、ファンとしてはニヤリと笑えるシーンがいくつもあります。

 しかし、本作品は今までのシリーズにあった緊張感や緊迫感がありません。本シリーズの魅力は主人公たちが圧倒的に不利で絶望的な状況の中で必死に闘う姿にあるのですが、本作品に限って言えば数多くのターミネーターが登場するにもかかわらず、主人公たちが追い詰められたような感じを受けません。それゆえにドラマとしても盛り上がりに欠けます。

 本作品はジョン・コナーとマーカス・ライトという2人の主人公の視点から描かれているのですが、マーカス・ライトの印象が圧倒的に強くて、本来の主人公であるジョン・コナーにあまり魅力を感じません。
 また、せっかく半分人間・半分ロボットというキャラを登場させながら、その設定をストーリーに活かしきれていないような気がします。彼の感情やバックグラウンドに関する描写が少ないために、彼の苦悩や葛藤をあまり感じることが出来ませんでした。
 そしてラストの心臓移植のシーンに関しては個人的に自己犠牲の感動よりも嫌悪感を抱いてしまいました。ロボット同様に人間もパーツを交換して生き延びるという展開は本シリーズの趣旨からして反しているような気がします。

 様々な種類のターミネーターの造形に関してもバイク型や蛇型水中ロボットはいまいち世界観とあっていないような気がします。巨大ロボにいたってはトランスフォーマーとイメージがダブってしまいました。T600は不気味で一番ターミネーターらしかったような気がします。

 ちなみに公開前から話題になったシュワちゃんの顔によるT800の登場シーンはお馴染みのテーマ曲が流れたこともあってか一瞬鳥肌が立ちましたが、思ったより活躍の場が少なく残念でした。

 本作品は新3部作の1作目と位置づけられていますが、この分だと新シリーズにはあまり期待はできませんね。改めてジェームス・キャメロンが監督した1作目&2作目の完成度の高さを思い知りました。

上映時間 114分
製作国    アメリカ
製作年度 2009年
監督:    マックG   
脚本:    ジョン・ブランカトー   
    マイケル・フェリス   
撮影:    シェーン・ハールバット   
視覚効果スーパーバイザー: チャールズ・ギブソン   
プロダクションデザイン: マーティン・ラング   
衣装デザイン: マイケル・ウィルキンソン   
編集:    コンラッド・バフ   
音楽:    ダニー・エルフマン   
出演:    クリスチャン・ベイル   
    サム・ワーシントン   
    アントン・イェルチン   
    ムーン・ブラッドグッド   
    コモン    バーンズ
    ブライス・ダラス・ハワード   
    ジェーン・アレクサンダー   
    ジェイダグレイス    スター
    ヘレナ・ボナム=カーター   
    マイケル・アイアンサイド   

| | コメント (0) | トラックバック (2)

『ポルターガイスト』この映画を見て!

第257回『ポルターガイスト』
Photo  今回紹介する作品はスティーヴン・スピルバーグが製作と脚本を担当した陽性ホラー映画『ポルターガイスト』です。監督は『悪魔のいけにえ』で一躍有名になったトビー・フーパーが抜擢。スタッフも大変豪華で、特撮に『スターウォーズ』のリチャード・エドランド、音楽に『オーメン』のジェリー・ゴールドスミスが起用されています。

ストーリー:「新興住宅地のクエスタベルデに引っ越したフリーリング一家。新居での楽しい生活を送り始めた矢先に、家の中で物が勝手に動きだす現象が起こり始める。そして、嵐の晩に庭の木が息子ロビーを襲い、次女キャロル・アンがクローゼットの中に消えてしまう。両親は霊を研究しているレシュ博士に相談して、家を調査してもらう。博士は家の中で起きている現象を目撃して、霊媒師のタンジーナにキャロル・アンの救出を依頼する。」

 スピルバーグ監督は本作品の構想を思いつくと何と10日間で脚本を作り上げたそうです。自分は『ET』の製作に追われて監督はできませんでしたが、ストーリーボードも自ら作り、撮影時には何回も現場に来て指示をしていたそうです。結果、完成した作品はスピルバーグが自分で監督したのではと思うほど、スピルバーグ色が濃い作品となっています。

 私が本作品を始めてみたのは小学生の時でした。その時は大変怖い印象があったのですが、最近改めて見直すとあまり怖くはなく、むしろ家族の強い絆が大変印象に残りました。特に私は子どもを救うために霊界に飛び込む母親の姿を見て、改めて「母は強し」と感じました。

 また本作品はホラー映画としては珍しく、残酷なシーンがほとんどなく、誰もが安心して見ることができます。描かれる心霊現象は明るく派手で、日本のホラー映画のようなじめじめと後に引くような怖さはあまりありません。ラストシーンなどは光と音と死体による一大スペクタルショーで、まるでテーマパークのアトラクションのようです。

 あと、私が本作品で好感を持ったのがジェリー・ゴールドスミスのテーマ曲です。大変優しく心温まるメロディーで、本作品が単なる怖いホラー映画でないことを見事に表現しています。

 なお、本作品はシリーズ化され3作目まで製作されましたが、出演者が映画公開後に次々と亡くなったことが大変話題になりました。3作通してキャロル・アンとして出演したヘザー・オルークも亡くなり、呪われた映画という噂が映画ファンの間で流れたほどです。ちなみに2作目、3作目は映画としての出来はイマイチです。

上映時間 115分
製作国    アメリカ
製作年度 1982年
監督:    トビー・フーパー   
原案:    スティーヴン・スピルバーグ   
脚本:    スティーヴン・スピルバーグ   
    マイケル・グレイス   
    マーク・ヴィクター   
撮影:    マシュー・F・レオネッティ   
特撮:    リチャード・エドランド   
音楽:    ジェリー・ゴールドスミス   
出演:   
    クレイグ・T・ネルソン   
    ジョベス・ウィリアムズ   
    ヘザー・オルーク   
    ビアトリス・ストレイト   
    ドミニク・ダン   
    オリヴァー・ロビンス   
    ゼルダ・ルビンスタイン   
    リチャード・ローソン   
    ジェームズ・カレン   
    マイケル・マクマナス   
    ヴァージニア・カイザー

| | コメント (0) | トラックバック (4)

『オーメン』この映画を見て!

第256回『オ-メン』
Photo_2  今回紹介する作品は6月6日6時に産まれた悪魔の子ダミアンがもたらす恐怖を描いた作品『オーメン』です。

  ストーリー:「アメリカ人外交官であるロバート・ソーンは、妻には内緒で死産してしまった子どもの代わりに、ローマの産院で孤児を養子として引き取る。ダミアンと名づけた子は大きな病気一つすることなく育っていく。しかし、乳母の自殺をきっかけに息子の周囲で奇妙な出来事が起こり始める。そして妻は次第に精神的に不安定になっていく。
 その頃、ソーンの前に『あの子どもは悪魔だと』言う神父が現れる。最初は神父の言うことを信じなかったソーンだが、奇怪な出来事の連続に次第にダミアンに疑問を持ち始める。」

  本作品を私が始めてみたのがテレビで小学生の時でした。その時はジェリー・ゴールドスミスの不気味なスコアも相まって大変怖い印象があったのですが、最近見返してみるとそれほど怖くはなく、むしろオカルト映画としての完成度の高さに感心しました。

 本作品の見せ場は何と言っても登場人物たちの派手な死に方です。不謹慎ですが、次は誰がどういった死に方をするのかが本作品で見ている側が一番気になるところであり、期待しているところでもあります。そういった意味では期待を裏切らない出来となっています。特にガラスで首が吹っ飛ぶシーンは強烈なインパクトを見ている側に与えてくれます。

 ストーリーはこじんまりとしていますが、次々と謎が明かされていく展開は最後まで飽きることなく見ることが出来ます。特にダミアンの母の正体が実は○○だったと分かるシーンは結構ショッキングです。

 キャストもこの手の作品としては珍しく、名優グレゴリー・ペックが主演を務めています。彼の重厚な演技が本作品の質を格段に高めています。また、ダミアンを演じた子どももかわいらしく無垢な表情をしている分、逆に恐ろしさを感じさせます。

 あと、アカデミー最優秀音楽賞も受賞したジェリー・ゴールドスミスのスコアが最高に素晴らしいです。特にテーマ曲である「アヴェ・サターニ」の迫力と恐ろしさは鳥肌が立つほどです。彼のスコアが本作品の完成度を一気に上げたと思います。

 本作品は怖すぎることもなく、グロすぎることもなく、比較的誰でも見ることが出来る格調高いオカルトホラー映画だと思います。暑い夏にぜひご覧ください。

 なお、本作品は大ヒットしてシリーズ化されました。『オーメン2』では13歳になったダミアンが自分の正体に気づき、『オーメン3最後の闘争』では32歳になったダミアンが英国で誕生する救世主の抹殺をもくろみます。また、『オーメン4』ではダミアンの娘ディーリアが主役となります。しかし、残念なことにシリーズを重ねるごとに、内容は面白くなく、映画としての質も低下しています。ただ、2作目は死に方の派手さにおいては1作目を上回っていますが。
 また、2006年にはリメイクもされましたが、オリジナルに比べると出来はイマイチです。

上映時間 111分
製作国    アメリカ
製作年度 1976年
監督:    リチャード・ドナー   
脚本:    デヴィッド・セルツァー   
撮影:    ギルバート・テイラー   
音楽:    ジェリー・ゴールドスミス   
出演:    グレゴリー・ペック   
    リー・レミック   
    デヴィッド・ワーナー   
    ハーヴェイ・スティーヴンス   
    ビリー・ホワイトロー   
    ホリー・パランス   
    レオ・マッカーン   
    アンソニー・ニコルズ

| | コメント (0) | トラックバック (1)

『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』この映画を見て!

第255回『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』
Photo  今回紹介する作品は1972年の連合赤軍あさま山荘立てこもり事件の舞台裏を赤軍派の若者たちの視点から描いた『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』です。監督は日本赤軍とも関係のあった若松孝二が担当。連合赤軍の成立から山岳ベースでの集団リンチ殺人事件そして浅間山荘での立てこもり事件に至るまでを史実に基づいて丁寧に描いていきます。
 低予算で製作された映画なので映像的にはこじんまりしていますが、役者たちの迫真の演技と監督のドキュメンタリータッチの生々しい演出で3時間以上の上映時間飽きることがありません。
 第58回ベルリン国際映画祭では最優秀アジア映画賞(NETPAC賞)と国際芸術映画評論連盟賞(CICAE賞)をダブル受賞しました。

 本作品は大きく分けて3つのパートに分かれています。
 最初の1時間は当時の社会状況や学生運動の中で連合赤軍が結成されるまでの過程が当時のニュースフィルムを盛り込みながら描いていきます。革命を目指す若者たちの国家権力との戦いや党派同士の争いの歴史をテンポ良く描いており、当時を知らない人間には勉強になります。ただ、登場人物が多く、次々と場面も変わっていくので、正直ドラマとしては退屈でした。

 中盤は連合赤軍の山岳ベースでの軍事訓練において「総括」の名の下で集団リンチが繰り広げられていく様が克明に描かれていきます。山に入ってからは登場人物も限られてきて、ドラマとしても一気に緊迫感を増します。社会から隔絶された状況で、冷静さを失い、過激になっていく指導者とその集団。自分たちが置かれている状況を客観視できず、精神主義だけで乗り切ろうとしていく中で起こる「自己批判」や「総括」の名の下の集団リンチと殺人。1時間以上にわたって延々と繰り広げられるリンチシーンは凄惨で、見ていて辛く疲れました。
 「化粧をしているから」、「男女交際をしているから」、「勝手に銭湯に入ったから」と言った理由で総括を求められ殺されていくシーンは「誰もが幸せになる社会を目指した集団」が「誰もが不幸になる非人間的な集団」になってしまう恐怖や悲劇を特に強く感じました。脆弱になった組織が内部や外部に敵を作ることで先鋭化して立て直しを図ることはオウム真理教や北朝鮮など見ても分かるように良くある事です。集団や組織が先鋭化すると常に個人を抑圧・抹殺する危険性があることを常に肝に銘じておかないといけないなと本作品を見て思いました。
  また、山岳ベースで指揮を執っていた森や永田の姿を見ていると組織のリーダーになる人間の責任の重さを感じました。彼らはもともと組織の指導者だった人たちが警察に検挙される中で、指導者にのし上がった人間であり、リーダーとしての己の振る舞いに自信がなかったのではと思います。その結果、己の弱さや自信のなさを隠すために、先鋭化して独裁者のごとく振る舞い、組織を崩壊へと導いてしまったのでしょう。精神主義だけで乗り切ろうとした森や永田を見ていると太平洋戦争末期の日本軍の上層部と何ら変わらないなと思います。

 後半はいよいよ浅間山荘での立てこもり事件が描かれています。連合赤軍の視点から終始描かれるので、警察等外部の動きは全く分かりません。それが見たい方は原田眞人監督の『突入せよ!あさま山荘事件』をご覧ください。両作品を見るとあさま山荘事件の全体像が一番良く分かります。
 本作品では浅間山荘内での連合赤軍の若者たちの追い詰められた心情がじっくりと描かれていきます。印象的だったのは人質の女性に対して「革命」を熱く語る若者たちの姿でした。自分たちは一般市民を救うためと思っている行為が外から見れば単なる迷惑にしか見えない。彼らの革命の敗北が痛々しく伝わってくるシーンでした。

 私にとって本作品は当時の学生運動の敗北よりも閉鎖された集団や組織の恐ろしさが強く印象に残りました。
 本作品は気楽に見られる映画ではありませんが、近年の邦画では一番強烈で骨太な映画だと思います。

上映時間 190分
製作国    日本
製作年度 2008年
監督:    若松孝二   
企画:    若松孝二   
原作:    掛川正幸   
脚本:    若松孝二   
    掛川正幸   
    大友麻子   
撮影:    辻智彦   
    戸田義久   
美術:    伊藤ゲン   
音楽:    ジム・オルーク   
照明:    大久保礼司   
録音:    久保田幸雄   
ナレーション: 原田芳雄   
出演:    坂井真紀
    ARATA   
    並木愛枝
    地曵豪   
    伴杏里   
    大西信満
    中泉英雄
    伊達建士
    日下部千太郎
    椋田涼   
    粕谷佳五
    川淳平   
    桃生亜希子
    本多章一
    笠原紳司
    渋川清彦
    RIKIYA

| | コメント (0) | トラックバック (2)

『スラムドッグ$ミリオネア』この映画を見て!

第254回『スラムドッグ$ミリオネア』
Photo  今回紹介する作品は今年のアカデミー賞で最多8部門を受賞したダニー・ボイル監督のインドを舞台にした青春映画『スラムドッグ$ミリオネア』です。1996年『トレインスポッティング』(以下、『トレスポ』と省略。)が大ヒットして一躍有名になったダニー・ボイル監督。その後、SFからホラーまで幅広いジャンルの作品を手がけるものの、どれも完成度はイマイチなものばかりでした。『トレスポ』のような作品はもう撮らない(撮れない?)のかなあと思っていたのですが、本作品を見て久しぶりに監督の持ち味である疾走感や躍動感を味わうことが出来て嬉しかったです。

ストーリー:「青年ジャマールはインドで人気のあるテレビ番組“クイズ$ミリオネア”に出場。次々と問題を解答して、ついに最高金額一歩手前になる。しかし、1日目の収録終に、詐欺の容疑で警察に逮捕されてしまう。スラム育ちで教育を受けたこともないジャマールがクイズを解答できたのはイカサマだと決めつける警察。ジャマールは自らの無実となぜ解答できたのか、警察に対して過酷な過去を語り始める。」

 本作品のストーリーは主人公の一途な恋愛を描いたストレートでシンプルな内容です。ただ、語り方はクイズ番組の問題を通して主人公の過酷な過去が語られていくというユニークな構成となっています。ここまでクイズの問題と主人公の現実がリンクしていると話しが出来すぎているような気もしますが、華やかなクイズ番組を通してインドの貧困層の過酷な現実を力みすぎることなくスムーズに観客に伝える効果を果たしていたと思います。
 ラストも予想通りのハッピーエンドである意味爽快でした。現実はこんなに甘くないかもしれませんが、だからこそ映画くらいは夢や希望を与えて欲しい。そんな観客の期待に応えたラストだと思います。本作品がアカデミー賞で作品賞を受賞したのも、未曾有の不景気に苦しんでいる今のアメリカ人の願望が反映されていたのでしょうね。

 前半のインドのスラム街の子どもたちの悲惨な状況の描写は見ていてつらいものがありましたが、反面、どん底の生活から何とか這い上がろうとする子どもたちの姿はキラキラと輝いても見えました。
 後半は主人公の恋愛や兄との確執が描かれますが、個人的には兄弟の生き方の違いが印象的でした。どん底から這い上がるために2人が選んだ正反対の道。兄が弟のために最後に取った行動は哀しくもありカッコよくもありました。

 また、ダニー・ボイル監督だけあって映像はスタイリッシュで美しいですし、A・R・ラーマンが手がけた音楽もカラフルかつポップで耳に残ります。特にアカデミー賞を受賞した主題歌の『Jai-Ho』の躍動感や疾走感は大変素晴らしく、何度でも聞きたくなります。

 映画のエンディングはインド映画を意識してか主人公と恋人のダンスシーンが流れますが、本作品の持つ勢いのあるエネルギーを見事に表現していると思いました。

 本作品は最近アカデミー賞を受賞した作品の中では一番見ていて明るい気分になれる作品だと思います。本年度一押しの作品です。 

上映時間 120分
製作国    イギリス/アメリカ
製作年度 2008年
監督:    ダニー・ボイル   
原作:    ヴィカス・スワラップ『ぼくと1ルピーの神様』
脚本:    サイモン・ボーフォイ   
撮影:    アンソニー・ドッド・マントル   
プロダクションデザイン:    マーク・ディグビー   
衣装デザイン:    スティラット・アン・ラーラーブ   
編集:    クリス・ディケンズ   
音楽:    A・R・ラーマン   
出演:    デヴ・パテル   
    マドゥル・ミッタル   
    フリーダ・ピント   
    アニル・カプール   
    イルファン・カーン   
    アーユッシュ・マヘーシュ・ケーデカール   
    アズルディン・モハメド・イスマイル   
    ルビーナ・アリ

| | コメント (0) | トラックバック (6)

« 2009年5月 | トップページ | 2009年7月 »