『ミスト』この映画を見て!
第248回『ミスト』
今回紹介する作品はスティーヴン・キングのパニックホラー小説『霧』を映画化した『ミスト』です。監督と脚本は『ショーシャンクの空に』『グリーンマイル』とスティーヴン・キング原作の映画化に定評のあるフランク・ダラボンが担当しています。劇場公開当時は原作と異なる衝撃的なラストが大変話題になりました。
ストーリー:「田舎町を激しい嵐が襲った翌日、映画ポスターのデザイナーであるデヴィッドは息子と共にスーパーマーケットに買い物へと出かけた。その頃、町は突如として濃い霧に飲み込まれ始めていた。そして、スーパーマーケットの周囲も濃い霧に覆われる。店に買い物に来ていた客たちは突如発生した霧に身動きが取れなくなってしまう。そんな中、デヴィッドを始めとして数人の客と店員が霧の中に潜む不気味な触手生物の襲撃に遭う。彼らは店にバリケードを作り始め、武器になる物もかき集める。その一方で、キリスト教の原理主義者であるカーモディは狂信めいた発言で人々を不安に陥れる。そして夜に店の光に集まった霧の中の生物たちが店内を襲撃。中にいた人々はパニックへと陥る。」
私は高校の時にスティーヴン・キングの小説にはまっていて、その当時に本作品の原作も読んでいました。私は原作を始めて読んだ時から、これは映画にしたら面白いだろうなと思っていました。それから15年近くたって、フランク・ダラボンが映画化する話しを知り、あの原作をどんな風に映画にするのか大変楽しみでした。
実際に映画を見ての感想ですが、ラスト近くまで基本的に原作に忠実に作られていました。(一部変更点や映画独自のエピソードが追加されている箇所はありましたが。)自分が原作を読んだときにイメージしていた映像に近いものが再現されていたのでうれしかったです。
怪物の襲撃シーンは予想以上にグロい映像も多く、ホラー映画ファンとしては見応えがありました。ただ、怪物の造形に関しては巨大な奴を除いては巨大な昆虫に過ぎないといった感じでイマイチでした。もっと私たちの想像を超えるような造形の怪物をだしてほしかったですね。
ところで本作品の魅力は異世界の怪物による襲撃の恐怖はもちろんのことですが、それ以上に極限状況下での人間描写にあります。特に印象的なのがキリスト原理主義者の女性カーモディがスーパーのお客たちを扇動して次第に狂信的な集団を作り上げていくところです。情報が遮断された中で、冷静な判断力を失った人々がカーモディにすがり、彼女の言うがままに動いていくシーンはある意味で怪物の襲撃以上に恐ろしいです。
それにしてもカーモディを演じたマーシャ・ゲイ・ハーデンの存在感と迫力に満ちた演技は最高です。ある意味、主人公よりもインパクトがありました。
さて、ラストの映画独自の追加シーンに関してですが、確かに衝撃的でしたが個人的には原作の読者の想像に任せる曖昧な終わり方の方がよかったような気がします。映画の絶望的な終わり方も嫌いではないのですが、主人公の最後の決断が話の流れからして少し唐突な気がしました。あのような極限状態では、主人公の最後の決断も止むを得ないのかもしれません。しかし、途中までかすかな希望をつかもうとした主人公があれくらいの状況であのような行動をするにはどうしても思えないんですよね。観客を驚かすために無理にバットエンドにしたような気がします。
ただ、本作品で一番冷静だと思っていた主人公も巨大な絶望の前では結局感情に動かされてしまったというところは何ともいえない皮肉ですね人間にはどうすることもできない巨大な出来事の前では何が正しくて何が間違いなのか、人間ごときの存在には正しい選択などできないのかもしれませんね。
本作品はクリーチャーの造形とラストが微妙ではありますが、それを除けば見応えのあるパニックホラーに仕上がっています。特にスパーの中での人間模様は手に汗握ります。興味のある方はぜひご覧ください。
上映時間 125分
製作国 アメリカ
製作年度 2007年
監督: フランク・ダラボン
原作: スティーヴン・キング
脚本: フランク・ダラボン
撮影: ロン・シュミット
プロダクションデザイン: グレゴリー・メルトン
編集: ハンター・M・ヴィア
音楽: マーク・アイシャム
出演: トーマス・ジェーン
マーシャ・ゲイ・ハーデン
ローリー・ホールデン
アンドレ・ブラウアー
トビー・ジョーンズ
ウィリアム・サドラー
ジェフリー・デマン
フランシス・スターンハーゲン
アレクサ・ダヴァロス
ネイサン・ギャンブル
クリス・オーウェン ノーム
サム・ウィットワー
ロバート・トレヴァイラー
デヴィッド・ジェンセン
ケリー・コリンズ・リンツ
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