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2008年10月19日 - 2008年10月25日

『天国と地獄』この映画を見て!

第226回『天国と地獄』
Photo  今回紹介する作品は黒澤明監督がエド・マクベインの原作を映画化した日本を代表するサスペンス映画の傑作『天国と地獄』です。

ストーリー:「ナショナル・シューズの専務である権藤は会社での権力争いをしている最中、「自分の息子を誘拐したので身代金3千万円を用意しろ」との電話が入る。しかし、実際に誘拐されたのは息子でなく、運転手の息子だった。権藤は苦悩の末に運転手のために全財産を投げ出して3千万円を用意する。」

 本作品は2部構成となっています。
 
 前半は主人公・権藤が犯人に身代金を払うまでの過程を密室劇の形式で描いていきます。会社での権力争いに勝つために主人公が用意した全財産。それがないと自分が会社の中で窮地に追い込まれる中、他人の子どものために支払うべきかどうか。主人公が子どもの命と自己保身の狭間で揺れ動く姿が緊張感たっぷりに描かれます。緻密なシナリオと三船敏郎の迫真の演技、そして長回しの演出が前半の見所です。

 中盤は本作品最大の見せ場である特急第二こだま号での身代金の受け渡し。国鉄から実物の151系電車を借りて実際に東海道本線上を走らせて撮影した映像は臨場感にあふれており、何度見ても手に汗握ります。

 後半は刑事たちが犯人を逮捕するまでの捜査過程を丹念に描いていきます。その描写はとてもリアルで、見ていて引き込まれます。また、モノクロの映像の一部を着色して見せるとても印象的な演出があります。この演出はその後の映画人にも影響を与え、スピルバーグはこの演出を「シンドラーのリスト」で使ったほどです。
 終盤の黄金町で刑事が犯人を追跡する際に登場するヘロイン中毒者の描写はまるでゾンビかと見間違うほどおどろおどろしく不気味です。
 
 ラストは犯人と権藤が刑務所にて対峙するシーンで終わりますが、犯人役を演じた山崎努が強烈な存在感を放っています。
 最初は権藤相手に強がっていたにも関わらず、最後は自分の体の震えを抑えられなくなり絶叫してシャッターが降りるシーン。罪を犯した人間の悲哀が見る者に伝わってくる名シーンです。
 私はこのラストを見るたびに『天国と地獄』というタイトルの意味を考えてしまいます。天国から地獄におちて、また這い上がろうとする主人公の権藤。権藤を天国から引きずりおろそうとして、地獄の底へと落ちていった犯人。結局、人生の天国と地獄とは貧富の差だけではなく、生き方によって決まるものだと見ていて痛感させられます。

 45年以上前の古い作品ですか、ここまで重厚で面白いサスペンス映画はなかなかお目にかかれません。未見の方はぜひ一度ご覧ください! 

上映時間 143分
製作国 日本
製作年度 1963年
監督: 黒澤明 
原作: エド・マクベイン  『キングの身代金』
脚本: 小国英雄、菊島隆三、久板栄二郎、黒澤明 
撮影: 中井朝一、斎藤孝雄 
美術: 村木与四郎 
音楽: 佐藤勝 
記録: 野上照代 
照明: 森弘充 
出演: 三船敏郎、香川京子、江木俊夫、佐田豊、島津雅彦
仲代達矢、石山健二郎、木村功、加藤武、三橋達也 
伊藤雄之助、中村伸郎、田崎潤、志村喬、藤田進 、山崎努
土屋嘉男、三井弘次、千秋実、北村和夫、東野英治郎、藤原釜足 

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『八つ墓村』この映画を見て!

第225回『八つ墓村』
Photo_5   今回紹介する作品は横溝正史ブームに乗って松竹が監督に野村芳太郎、主演に渥美清と萩原健一を据えて製作した『八つ墓村』です。
 
 『砂の器』を大ヒットさせ、当時勢いに乗っていたスタッフが再結集して、一流の役者を起用しただけあって、その完成度の高さは横溝作品の映画化したものの中ではピカイチです。
 ただ、金田一耕介役が寅さんシリーズで有名な渥美清が演じているところは評価が分かれるところです。
 特に市川崑監督の石坂浩二主演の金田一シリーズを見慣れている人からすると、背広で麦藁帽子の飄々とした金田一の姿は違和感を持つかもしれません。
 正直、私も始めてみたときは「こんなの金田一と違う」と思ってしまいました。しかし、何回か見ているうちに渥美さん演じる金田一もありかなと思うようになりました。

ストーリー:「羽田空港で誘導員をしている寺田辰弥は奇妙な新聞尋ね人欄を見ての法律事務所を訪ねる。そこで辰弥は母方の祖父井上丑松に初めて会うが、丑松はその場で誰かに毒殺される。辰弥は自分の出生の秘密を探るために故郷である八つ墓村に向かう。

 八つ墓村という不気味な名前は戦国時代に八名の落ち武者に由来していた。
 毛利に敗れた尼子義孝を始めとする8人の落ち武者は村外れの荒地を拓いて住みついたが、村民の欺し討ちにあい全滅。その時に義孝は「この恨みは末代まで崇る」と呪いの言葉を吐きながら死んだ。
 その後、落武者謀殺の中心人物であった村総代が突如発狂し村民七人を斬殺、自ら自分の首を斬り飛ばす事件が発生。村人は落武者の崇を恐れ、義孝ら八人の屍骸を改めて丁重に葬り祠をたてたことから、村は八つ墓村と呼ばれるようになった

 辰弥は村に来る途中に多治見家の後継者であることを聞かされる。村に着き、多治見家の屋敷に案内された辰弥は病弱な兄の久弥、姉の春代、この家の実権を握る双生児の伯母小竹、小梅らに会う。
 しかし、久弥は辰弥と面談中、突然吐血して死んだ。その後、次々と村人が毒殺される事件が発生する。」

 本作品は謎解きを味わうサスペンス映画というより、はっきり言って怨念を扱ったオカルトホラー映画です。 
 私は小学生の時にテレビで見たのですが、全体に漂うおどろおどろしい雰囲気とショッキングなシーンの連続にトラウマになりました。
 特に落ち武者殺戮シーン、村人三十二人殺しシーン、そしてラストの鍾乳洞のシーンは強烈で、並みのホラー映画を遥かに凌駕する恐ろしさです。
 これらのシーンに恐ろしさを与えているのが役者たちの狂気迫る演技です。夏木勲が最期に村人に向かって放つ呪いの言葉、山崎努さんが銃片手に桜並木を疾走するシーンの不気味さ、小川真由美の突如豹変した顔。この3人が出演したことが本作品の出来栄えを高めたと思います。
 
 また、映画のラストも何とも背筋が凍る終わり方で、祟りという日本人独特の思想が見事に表現されています。

 逆に謎解きを期待して、本作品を見てしまうと肩透かしを喰らうと思います。ラストの金田一耕介の事件の説明も証拠や犯人の動機なんかよりも、事件の背景にある400年前の怨念に重きを置いてます。それが本作品をサスペンスでなくホラーに仕立てているのですがね。

 映像も日本の田舎の夏のじめじめとした感覚を見事に捉えていますし、山崎努さんが銃片手に桜並木を疾走するシーンの背徳的な美しさは見ていて鳥肌が立つほどです。
 芥川也寸志さんのオケを駆使した壮大な音楽も大変美しく印象に残ります。 

 本作品は日本を代表するホラー映画の傑作です。その手の作品が好きな人で未見の人がいらっしゃったら是非ご覧ください。

2 ちなみに市川監督も豊川悦治を主演に98年に『八つ墓村』を映画化しています。市川版は原作に近い仕上がりではあるのですが、本作品を見た後ではインパクトに欠け凡長で退屈な作品でした。(それだけ本作品のインパクトが強烈なのですが・・・。)

上映時間 151分
製作国 日本
製作年度 1977年
監督: 野村芳太郎 
原作: 横溝正史 
脚本: 橋本忍 
撮影: 川又昂 
特殊メイク: マキシーン・坂田 
美術: 森田郷平 
衣装: 鈴木康之、原島正男、松竹衣装 
編集: 太田和夫 
振付: 花柳滝蔵 
音楽: 芥川也寸志 
殺陣: 菊地剣友会 
出演: 渥美清、萩原健一、小川真由美、花沢徳衛、山崎努、山本陽子
市原悦子、山口仁奈子、中野良子、加藤嘉、井川比佐志、下絛アトム 
夏木勲、田中邦衛、稲葉義男、橋本功、大滝秀治、夏純子、藤岡琢也
下絛正巳、山谷初男、浜田寅彦、浜村純、吉岡秀隆

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「あっと驚くどんでん返し映画」私の映画遍歴14

 米情報誌エンターテインメント・ウィークリー誌が、M・ナイト・シャマラン監督作「ハプニング」のDVD全米発売を記念して、あっと驚く結末が用意された「大どんでん返し映画」22本を発表しました。
 以下の22作品が紹介されていましたが、『サイコ』や『猿の惑星』の古典的名作から『シックスセンス』や『セブン』など最近の話題作まで誰もが知っている作品が数多く選ばれています。

「セブン」(95)
「シックス・センス」(99)
「ファイト・クラブ」(99)
「悪魔のような女」(55)
「メメント」(00)
「サイコ」(60)
「ユージュアル・サスペクツ」(95)
「猿の惑星」(68)
「アイデンティティー」(03)
「プレステージ」(06)
「ゲーム」(97)
「フォーン・ブース」(02)
「ドニー・ダーコ」(01)
「ソイレント・グリーン」(73)
「マルホランド・ドライブ」(01)
「スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲」(80)
「オールド・ボーイ」(03)
「キル・ビル Vol.1」(03)
「12モンキーズ」(95)
「イースタン・プロミス」(07)
「アザーズ」(01)
「エンゼル・ハート」(87)

 そこで私も個人的にどんでん返しにあっと驚いた作品BEST5を紹介します。

Photo 5位『ゾンゲリア』
 本作品は80年代前半にダノ・オバノンが脚本を務めたゾンビ映画です。かなり陰惨な残酷描写が印象に残る作品ですが、それ以上にラストの予想外のどんでん返しにはあっと驚かされます。

Gokemidoro 4位『吸血鬼ゴケミドロ』
 地球侵略を目論む謎の宇宙生命体ゴケミドロに襲われる人間たちの死闘を描いた本作品。日本を代表するSFホラーですが、ラストのシニカルで救いようの無い結末は強烈です。

Photo_23位『クライングゲーム』
 ニール・ジョーダン監督が手がけたサスペンス・ラブストーリー映画の傑作である本作品。公開当時に「決して内容を誰にも言ってはいけない」がコピーになっていましたが、本作品は一切の前情報なく見てほしいです。

Dead_or_alive 2位『DEAD OR ALIVE 犯罪者』
 日本一忙しい監督である三池崇史がVシネの帝王である哀川翔と竹内力を主演に製作した本作品。新宿を舞台に繰り広げられる男たちの熱い闘いを描いた作品なのですが、ラスト5分は見る者の想像を遥かに超える衝撃的な展開が待ち受けています。 

Photo_3 1位『シベリア超特急』
 今年の6月にお亡くなりになった映画評論家・水野晴郎が手がけたスーパーサスペンス・アクションロマン『シベリア超特急』。一部のカルト的ファンから人気を博して、映画は5本、舞台は2本製作されました。私もビデオで鑑賞したのですが、最後の何回も続くどんでん返しには呆気に取られました。

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