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2008年9月28日 - 2008年10月4日

『七人の侍』この映画を見て!

第221回『七人の侍』
Photo  今回紹介する作品は世界中の映画関係者に多大な影響を与えた日本映画の最高傑作の一つ『七人の侍』です。
 本作品は当時としては破格の費用(当時で2億円、現在の価格で約30億円)と約1年という長い期間をかけて製作されました。当初は3ヶ月で製作される予定がセットや天候の関係、そして黒澤監督の完璧主義で大幅に延びてしまったそうです。
 なかなか完成しないので会社から文句も出たそうですが、その時は会社の役員向けに野武士が山の斜面を駆け下り場面まで試写をしたそうです。試写を見た役員たちは「これの続きは?」と黒澤監督に尋ねて、「ここから先はひとコマも撮っていません」と言って、早く続きの見たい役員たちに追加予算を認めてもらったそうです。
 本作品はリアリティを追求して、農村のオープンセットを作り、衣装もわざと汚くしたり、国宝級の兜を使用したりとあれこれ工夫したそうです。  
 シナリオも黒澤監督を始めとして3人でシーンごとにアイデアを出し合って書いています。その為、無駄なシーンが一切なく、全ての登場人物たちにスポットが当てられているので、3時間半という長い上映時間飽きることなく見ることができます。

ストーリー:「戦国時代のとある農村。麦の収穫を控えた農民たちは野武士たちの愁ゲ毛に脅えていた。百姓たちは麦と村を守るため侍を雇うことを決断する。そして農村から4人の男が代表として侍を探しに街に繰り出す。しかし、腹いっぱいご飯を食べられるという報酬では侍はなかなか見つからなかった。
 そんな中、子どもを人質にとった盗人を退治した勘兵衛の姿を見て、助けてほしいと頼み込む。最初は困惑していた勘兵衛だが彼らのために人肌脱ごうと決心する。そして、村を守るためには7人侍が必要だと考えて、村人と侍探しを始める。
そして勘兵衛の人柄に惚れた参謀格の五郎衛、陽気な平八、弟子入り志願の新人・勝四郎、勘兵衛の古女房の七郎次、剣の達人の久蔵、野生児の菊千代が勘兵衛の下に集まる。村に入った七人の侍は野武士との決戦に向けて農民たちと準備を開始する。」
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 本作品のストーリーは七人の侍が集まるまでの前半、野武士との戦いに向けて侍と農民が準備する中盤、そして野武士との戦いを描く後半と大きく分けて3部構成となっています。話し自体はとてもシンプルで、戦闘シーンも思っているほど多くはありません。有名なラストの雨の中での決闘シーンも実は5分くらいしかありません。
 本作品が面白いのは戦闘シーンももちろんですが、それ以上に登場する人間たちの個性やドラマがきちんと描かれていることです。戦う者たちのドラマや個性が描かれているからこそ戦闘シーンにも観客は感情移入ができる。本作品はその良いお手本だと思います。

 私は本作品の侍が集まるまでの前半のエピソードが大好きです。それぞれの侍の戦い方や生き方が上手に描き分けされているので、何度見てもワクワクします。特に宮口精二
演じる剣の達人である久蔵が初めて登場するシーン。その無駄のない剣さばきは何回見ても惚れ惚れします。

 映画の中盤は侍たちが農村に入り村人と戦に向けての準備をするのですが、この下りで印象的だったのが農民たちの生き方です。最初はただ怯えているだけの弱いに見えた農民たちの意外なしたたかさが垣間見えるシーンがいくつかあるのですが、それを見るたびに人が懸命に生きるということは美しいことばかりではないという現実を実感させられます。
 武士階級と農民階級という生き方も生活も全く違う人間たちの違いや三船敏郎演じる菊千代がこの2つの階級の人間たちを上手く結び付けていたところが印象的でした。
 また、戦に備えて状況を判断して的確に周囲に指示・指揮する勘兵衛の姿は見ていて、リーダーとはどういう存在であるべきか何度見ても非常に勉強になります。

 映画の後半は戦闘シーンがメインとなりますが、とてもリアルで迫力があります。CGも何もない時代、生身の人間たちがこなすアクションの数々は今見ても非常に手に汗握ります。
 特にクライマックスの土砂降りの中での戦いは凄い迫力です。真冬に撮影されたということですが、キャスト・スタッフの熱意というものが見ていてひしひしと伝わってきます。
 映画では4人の侍が戦いの末に命を落とすのですが、4人とも刀でなく鉄砲で殺されるところもとても印象的でした。

 映画のラストは勘兵衛が農民たちの田植えを見つめながら「勝ったのは百姓たちだ」というセリフを言って立ち去るシーンで幕を閉めます。私はそのシーンを見る度にこの国を根底で支えてきたのは米を粘り強く作ってきた百姓たちであるという当たり前といえば当たり前のことを再認識させられます。
 また、生きるとはこの映画に登場する農民たちのように決して美しいことばかりでなく醜さやずる賢さも必要であり泥臭い故にこそ、七人の侍のカッコよさや潔さが光り輝き、見る人の心をつかんで離さないのだと思います。

 本作品は日本人なら一度は見て損はない傑作です。古いし、長いしと敬遠なさらず、ぜひ見てください! 

上映時間 207分
製作国 日本
製作年 1954年
監督: 黒澤明 
製作: 本木荘二郎 
脚本: 黒澤明、橋本忍、小国英雄 
撮影: 中井朝一 
美術: 松山崇 
音楽: 早坂文雄 
監督助手: 堀川弘通、田実泰良 
照明: 森茂 
録音: 矢野口文雄 
出演: 三船敏郎、志村喬、津島恵子、藤原釜足、加東大介、木村功 
千秋実、宮口精二、小杉義男、左卜全、稲葉義男、土屋嘉男、高堂国典

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『隠し砦の三悪人』この映画を見て!

第220回『隠し砦の三悪人』
Photo_2  今回紹介する作品は黒澤明監督が戦国時代を舞台に描く痛快娯楽時代劇『隠し砦の三悪人』です。

 ストーリー:「戦国時代、百姓の太平と又七は、一攫千金を夢見て戦に参加したが、何も出来ず全てを失って途方に暮れていた。そんな時、偶然に砦近くの川辺で木の棒に挟まっていた金を発見する。金を見つけて大喜びする二人。そんな前に謎の男が現れる。
 男は秋月家の武将・真壁六郎太で、山名家に敗れた秋月家の雪姫を擁して、お家再興のための軍資金の黄金と共に隠し砦にこもっていたのだった。

 六郎太は太平と又七に金のことについて問い詰めた時、彼らが苦し紛れに話したことをヒントに敵地を通って、友好国の早川領へ抜ける作戦を思いつく。そして六郎太は、二人の欲に付け入って黄金を背負わせ、雪姫の身を守りながら敵陣を突破する旅に出る。」
 
 本作品は黒澤作品の中では娯楽色が強く分かりやすい話しなので、黒澤作品初心者でも楽しんで見ることが出来ます。
 
 黒澤監督含めて4人の脚本家によって練られたシナリオは大変緻密で、主人公たちがどうやって危機を乗り切るのか最後まで手に汗握る展開です。
 特に敵の関所を通り抜ける場面はそういう方法で切り抜けるのかと見ていて感心しました。
 また、ラストの絶体絶命の状況において思わぬ味方の登場で危機を脱するシーンも「裏切り御免!」という名セリフと共に思わず拍手喝采してしまう清々しい展開です。

 キャラクターの配置も巧みで、無骨な侍と気丈な姫の逃避行に農民2人を対置させることで物語りに奥行きを与えています。映画の冒頭から登場する農民2人は小心者で狡賢く欲望丸出しで時には逃避行の足を引っ張るのですが、彼らの人間臭さは見ていて非常に微笑ましいです。農民たちの人間臭さに笑い共感しながら、武士階級に生きる人間たちのカッコ良さに憧れる。それが本作品の面白さであり魅力です。

映像も黒澤監督としてはシネマスコープを初めて採用してダイナミックな仕上がりとなっています。特に群集シーンや馬が駆け回るシーンは横長の映像の魅力が最大限活かされています。
 アクションシーンでは三船敏郎が馬を走らせながら敵兵をばっさりと斬るシーンが本作品最大の見せ場。複数のカメラを使い一気に撮影しただけあって、そのスピード感と迫力は鳥肌が立ちます。このシーンをスタントなしで演じた三船敏郎は本当に凄い役者です。
 また、主人公の三船敏郎と敵方の侍大将が槍で一騎打ちをする場面も終始緊張感が漲っており、見ている側にも闘う人間の気迫が伝わってきます。

 あと私が本作品で特に印象的だったのが火祭りのシーン。北野武監督の『座頭市』のラストはこのシーンに影響を受けたのではないかと思いました。

 今年の5月には『隠し砦の三悪人 THE LAST PRINCESS』というタイトルで樋口真嗣が監督、松本潤と長澤まさみが主演でリメイクもされました。ただ、その仕上がりはオリジナルの足元にも及びませんが・・・・。
 また有名な話ですが、ジョージ・ルーカスも本作品が大好きで、『スター・ウォーズ』にも随所にその影響が感じられます。C3POとR2-D2のタトゥーン星での登場シーンは本作品の冒頭の農民二人の掛け合いシーンと展開が似ていますし、レイア姫のキャラクターは本作品のヒロイン・雪姫にそっくりです。

 ジョージ・ルーカスにも影響を与えた本作品。50年前の古い作品ですが、今見てもスケールが大きく、話しも起伏に富んで大変面白いです。是非一度ご覧ください!

上映時間 139分
製作国 日本
製作年 1958年
監督: 黒澤明 
脚本: 黒澤明、菊島隆三、小国英雄、橋本忍 
撮影:山崎市雄 
美術:村木与四郎 
音楽:佐藤勝 
特殊技術:東宝技術部 
助監督:野長瀬三摩地 
出演:三船敏郎、千秋実、藤原釜足、藤田進、志村喬、上原美佐
三好栄子、樋口年子、藤木悠、笈川武夫、土屋嘉男

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『粘土でにゃにゅにょ―土が命のかたまりになった! 』街を捨て書を読もう!

『粘土でにゃにゅにょ―土が命のかたまりになった!  』 著:田中敬三 岩波ジュニア新書
Photo  今回紹介する本は滋賀県にある「第二びわこ学園」という施設(現在は、びわこ学園医療福祉センター野洲に改称)で生活されている心身に重い障がいのある方たちが粘土を通して自分を表現していく姿を記した『粘土でにゃにゅにょ―土が命のかたまりになった!  』です。
 著者の田中敬三さんは第2びわこ学園の職員として約40年前から粘土活動に取り組み始めます。障害ゆえに粘土という素材に戸惑いのあった方たちが、如何にして粘土に親しみ、粘土に自分の思いをこめるようになってきたのか?その過程でのドラマが本書では丹念に描かれています。

 上手く自分のことを周囲に表現できないが故に自らの思いやエネルギーを粘土に注ぎ込む姿は、人間という生き物が持つ自己表現力の素晴らしさや可能性を再認識させられました。

 また本書を読んで、重い障がいのある方たちの支援をする際に支援者側が急いで結果を求めず、じっくりと腰を据えて工夫しながら関わることの大切さを改めて痛感しました。 

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