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2008年9月14日 - 2008年9月20日

『パコと魔法の絵本』この映画を見て!

第219回『パコと魔法の絵本』
Photo_2  今回紹介する作品は『下妻物語』や『嫌われ松子の一生』での独特な映像表現とテンポの良い演出で高い評価を受けている中島哲也監督の最新作『パコと魔法の絵本』です。
 本作品は2004年に全国8都市で公演された後藤ひろひと原作の舞台『MIDSUMMER CAROL ガマ王子vsザリガニ魔人』をCGを大胆に取り入れて映像化しています。

ストーリー:「とある時代のとある場所に患者も医者も看護師も変な人ばかりが集まる病院があった。
 特に偏屈なクソジジイの大貫は病院内での嫌われ者だった。大貫はある日病院の庭で入院しているパコという少女と出会う。彼女にも意地悪にしか接することができない大貫は、ある日パコが自分の大切なライターを盗んだと勘違いして頬っぺたを殴ってしまう。しかし、パコは1日しか記憶を保てない病気のために昨日拾ったライターのことを忘れていたのだった。
 大貫はパコの病気を知り、ひどく後悔する。パコは翌日も何事もなかったようにケロっとして大貫に近づく。さすがに反省した大貫はパコに謝ろうとほっぺに触れた瞬間、「おじさん、昨日もパコのほっぺに触ったよね?」と昨日のことを覚えていた。大貫はパコのために何かをしてあげたいと思い始め、病院の皆に一緒にパコの愛読する絵本「ガマ王子vsザリガニ魔人」を演劇として演じてくれと懇願する。」

 今年の秋は日本映画が秀作ぞろいです。先日見た『おくりびと』も素晴らしかったですが、本作品も負ける劣らず素晴らしい作品でした。

 本作品は日本映画としては珍しいファンタジー映画ですが、個性的な登場人物が色彩豊かな映像の中で繰り広げる物語は見ていて飽きることがなく、前半は大いに笑って後半は涙を抑えることができませんでした。

 中島哲也監督というとCGやセットを巧みに駆使した独自の映像表現が有名ですが、本作品では日本映画では初となる3D-CGと実写の合成した映像が後半登場します。その出来栄えは大変素晴らしく、まさしく飛び出す絵本!映画のクライマックスを見事に盛り上げてくれます。CG以外にもセットや衣装そしてメイクもカラフルかつ奇抜で見ていて楽しいです。
 
 また、登場人物たちの舞台を見ているかのような大げさな演技も本作品の作風にはとてもマッチしていると思いました。
役所広司はさすがベテランだけあって大貫という偏屈なおじいさんを悠々と演じていましたし、パコを演じるアヤカ・ウィルソンは見ていて本当に愛くるしく可愛いです。脇役の山内圭哉や國村隼のあくの強い演技も見ていて楽しいです。
 また、上川隆也と小池栄子に関しては普段テレビで見慣れている雰囲気とは全く違う強烈なキャラクターとして登場するので正直驚きましたし、妻夫木聡にいたっては途中まで演じているのが妻夫木聡と分からないほどの怪演でした。
 ただ、阿部サダヲの演技は終始ハイテンション過ぎて、見ていて時折少しうっとうしくなることがありましたが・・・。

ただ、本作品で唯一惜しかったのが、大貫がなぜパコに思い入れをするようになったのか心情の変化の描写が薄かったこと。大貫の心理描写をもう少し丹念にしたら、より素晴らしい作品になったと思います。

 映画のラストは予想していた展開と違っていたので少々驚き、そして涙しました。てっきりあの人がああなると思ったもので。

 本作品は今までの日本映画にはないタイプの作品ですが、見て損はしない仕上がりとなっていますよ! 

公式サイト:http://www.paco-magic.com/index.html

上映時間 105分
製作国 日本
製作年度 2008年
監督: 中島哲也 
原作: 後藤ひろひと 
脚本: 中島哲也、門間宣裕 
撮影: 阿藤正一、尾澤篤史 
美術: 桑島十和子 
編集: 小池義幸 
音楽: ガブリエル・ロベルト 
主題歌: 木村カエラ 
『memories』
出演: 役所広司、アヤカ・ウィルソン、妻夫木聡、土屋アンナ、 上川隆也
阿部サダヲ、加瀬亮、小池栄子、 劇団ひとり、山内圭哉、國村隼

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『菊次郎の夏』この映画を見て!

第218回『菊次郎の夏』
Photo  今回紹介する作品は北野武監督による一夏のロードムービー『菊次郎の夏』です。
 本作品はそれまでの北野映画の特長であった「死」や「暴力」を排して、『母を訪ねて三千里』のような古典的な人間ドラマとなっています。

ストーリー:「祖母と2人で暮らす小学3年生の正男は今日から夏休み。友達は親に宿題を見てもらったり、良好に連れて行ってもらう中、正男は1人でさびしく過ごしていた。そこで写真でしか見たことのない母に会いにゆく事を決意。豊橋で仕事をしているという母の元に1人で向かおうとする。そんな正男を心配した近所のおばちゃんは無職でブラブラしている自分の連れの菊次郎を同行させる。渋々引き受けた菊次郎は出発するなり競輪場で旅費を使い果たしてしまう。こうして2人の一夏の旅が始まるのだった。」

 私は本作品を劇場で公開されている時に見たのですが、その時の評価は今一つでした。緑を基調にした映像と透明感溢れる久石譲の音楽の美しさは素敵なのですが、映画の後半の主人公たちが野外で遊ぶシーンが延々と続くところが当時の私には退屈に感じました。

 しかし、最近になって深夜にテレビで放映されていたので、劇場以来久しぶりに見直したのですが、後半のまったりとした展開こそが本作品の核である事に気づきました。
 映画の中盤に正男が一生心の傷になるようなショックを受ける出来事があります。その出来事を機に二人の距離感は縮まり始めます。傷ついた正男に対して菊次郎は何とか励まし慰めようと、野外で大人たちを巻き込んで延々馬鹿騒ぎをする。そんな菊次郎の不器用な優しさが映画の後半で描かれていたのだと気づいた時、本作品の私の中での評価が変わりました。傷ついた心なんて簡単に癒せるものではない。それだったら気晴らしに馬鹿騒ぎして笑っていたほうが幾分か救われるだろうという北野監督らしいメッセージが後半のシーンには込められているような気がしました。

 主人公の菊次郎は一見すると破天荒で無責任でどうしようもない男ですが、そんな男がふと見せる優しさや寂しさ。不器用さと照れからストレートには表現できないところが何とも意地らしく切なくて、見ていてほろりとさせられます。
 特に老人ホームで生活している自分の母を遠くからそっと眺める場面は菊次郎の近づきたいけど近づけられない不器用さが見ていて伝わってくる切ないシーンです。

 旅を終えて2人が地元に戻ってくる映画のラスト。そこでの二人のやり取りは旅を通してお互いがお互いを理解して堅く結ばれた絆が強く感じられて、自然と涙が出てきます。

 本作品は北野作品の中では一番爽やかな仕上がりとなっており、北野映画はちょっと苦手という人でも安心して楽しめると思います。

 あと、本作品は久石譲の音楽がとても素晴らしいです。一時期トヨタカローラのCMでも使われていたので聞いたことある方も多いと思いますが、音楽が映像ととてもマッチしており、見ている人間の感情を揺さぶります。はっきり言って本作品は久石譲の音楽がなければ魅力は半減していたと思います。それくらい音楽が映画を支えています。ぜひ映画を見られた方は久石さんのサントラも購入してください。聞いていて心が落ち着く名盤です。

上映時間 121分
製作国 日本
製作年度 1999年
監督: 北野武 
脚本: 北野武 
撮影: 柳島克己 
美術: 磯田典宏 
編集: 北野武 
音楽: 久石譲 
照明: 高屋齋 
出演: ビートたけし、関口雄介、岸本加世子、吉行和子
細川ふみえ、大家由祐子、麿赤兒、グレート義太夫 、井手らっきょ

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『おくりびと』この映画を見て!

Photo 第217回『おくりびと』
 今回紹介する作品は遺体を清め棺に納める“納棺師”を主人公にした人間ドラマ『おくりびと』です。本作品はモントリオール映画祭でもグランプリンを受賞し、今年のアカデミー賞外国映画賞日本代表に選ばれるなど大変高い評価を得ています。
 私も劇場に足を運び鑑賞して来たのですが、この手の映画にしては珍しく満員御礼でした。観客層は比較的中高年の人が多かったのですが、劇場内は観客の笑い声とすすり泣きが絶えませんでした。私も2時間近い上映時間の間、大いに笑って大いに泣いて、見終わって久しぶりに良い邦画を見られたなと大変満足しました。私の中では今年度見た映画の中でベスト3以内に入る出来だと思います。

ストーリー:「チェロ奏者の小林大悟は所属していた楽団が突然解散してしまう。大悟はチェロ奏者を諦め、妻と故郷の山形へ帰ることに。職探しを始めた大悟は“旅のお手伝い”という求人広告を見てN・Kエージェントという会社に面接へと向かう。しかし、旅行代理店だと思って行った会社は、“旅立ち”をお手伝いする“納棺師”を生業としていた。大悟は社長の佐々木の面接で即採用されて、納棺師の見習いとして働き始める。しかし、大悟は世間の目も気になり、妻にも言い出せないままだった。」

 遺体を清め棺に納める納棺師という余り知られていない職業にスポットを当てた本作品。オープニングに納棺師の一連の仕事を紹介するシーンがあるのですが、故人の尊厳を保ちながら鮮やかな手際で遺体を清め納める納棺師の振る舞いに見入ってしまいました。
 映画の中では様々な境遇のお別れが描かれていくのですが、故人を前にした遺族たちの様々な反応が見ていて涙を誘います。死とは誰もが生きている限り出会い経験するものですが、普段はなかなか意識していません。そんな死に関して本作品はいろいろと考えさせられるきっかけを与えてくれます。

また本作品の良いところは死という暗く重い題材を扱いながら、随所にユーモアがあり笑えるところです。前半は笑わせるシーンが多く、後半になるにつれて泣かせるシーンが多くなるというストーリー構成が巧みです。

 あと印象的だったのが食べ物のシーン。本作品はいろいろな食べ物が登場するのですが、どれも大変美味しそうに撮ってあります。死と対照である生を象徴するものとして食べ物が見事に描かれています。

 音楽は宮崎アニメや北野映画で有名な久石譲さんが担当。主人公が元チェロ奏者という設定であるために、チェロを中心とした音楽となっています。チェロの優しい音色が奏でる美しいメロディは聞いていて心落ち着きます。

 役者の演技に関しては広末涼子以外は申し分ないです。広末が登場するシーンは何となく浮いていて違和感を感じてしまいました。特に本作品は山崎努、笹野高史、吉行和子の演技が素晴らしく、映画に奥行きを与えています。もちろんモックンの時にコミカル、時にシリアスな演技は主人公が納棺師として成長していく姿を見事に表現していたと思います。

 本作品は死という重い題材を扱っていますが、変に堅苦しかったり重苦しくなく、明るく優しく温かく最後まで見ることが出来ます。

 私としては本年度一押しの作品です。ぜひ、皆さん劇場に足を運んでください!

公式サイト:http://www.okuribito.jp/

製作国:日本
上映時間:131分
製作年:2008年
監督: 滝田洋二郎 
脚本: 小山薫堂 
撮影: 浜田毅 
美術: 小川富美夫 
編集: 川島章正 
音楽: 久石譲 
衣裳監修: 北村勝彦 
企画協力: 小口健二 
照明: 高屋齋 
装飾: 小池直実 
録音: 尾崎聡 
助監督: 長濱英高 
出演: 本木雅弘、広末涼子、山崎努、余貴美子、吉行和子 
笹野高史、杉本哲太、峰岸徹、山田辰夫、橘ユキコ 

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