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2008年8月10日 - 2008年8月16日

『回路』この映画を見て!

Photo 第213回『回路』
 残暑厳しい夏、見た後に背筋が寒くなるジャパニーズホラー『回路』を紹介します。本作品はハリウッドでも『パルス』という題名でリメイクされ、続編も制作されています。(日本では残念ながら劇場未公開ですが、DVDにて現在販売されています。)

ストーリー:「観葉植物販売の会社に勤務するミチの周りで、家族や同僚が黒い影を残して消える奇妙な出来事が続発する。
 同じ頃、大学生の亮介のパソコンが勝手に「幽霊に会いたいですか」と問うサイトにアクセスする不気味な現象が起こっていた。同じ大学の春江に相談をするが、彼女もある日姿を消してしまう。」

 私は劇場で公開されていた時に本作品を鑑賞したのですが、レイトショーで私以外にお客が全くいない貸しきり状態で見て、本気で怖かったのを今でも覚えています。

 本作品は『リング』や『呪怨』のような単なる幽霊が出てきて登場人物を怖がらせるホラー映画を期待して見ると、かなり肩透かしを食らうと思います。もちろんホラー映画なので、頭に黒いビニール袋をかぶった不気味な幽霊等が登場しますし、飛び降り自殺をワンカットで見せるショッキングなシーンもあります。
 しかし、本作品の怖さはそんなショック描写とは別のところにあります。それは何かというと、「生きていくこと」そして「死んでいくこと」の孤独に対する恐怖です。

 本作品はネットを媒介にして霊界から溢れた死者たちが人間界を侵食していく恐怖を描いていきます。いつの間にか身近な人がいなくなり、気づいた時には多くの人間がいなくなり、静かに崩壊していく人間社会。映画の後半はホラー映画というより、人類の終末を描いたSF映画のような展開になっていきます。

 黒沢監督は幽霊によって侵食され滅び行く人間社会を通して、現代社会を生きる人間たちの孤独の苦しみと人間の存在の意味について描こうとします。「生と死の境界線はどこにあるのか?」、「どうやったら孤独から逃れられるか?」を本作品は真正面から描いた非常に哲学的な映画です。

 ラストは客観的に見ると絶望的な状態と言えますが、ポジティブで希望のある終わり方をします。

 皆さんも本作品を見て、冷や汗をかきながら、人間という孤独な存在について考えてみてください! 

上映時間 118分
製作国 日本
製作年 2001年
監督: 黒沢清 
脚本: 黒沢清 
撮影: 林淳一郎 
美術: 丸尾知行 
編集: 菊池純一 
音楽: 羽毛田丈史 
出演: 加藤晴彦、麻生久美子、小雪、有坂来瞳、松尾政寿 
武田真治、風吹ジュン、菅田俊、哀川翔、役所広司

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『パルプ・フィクション』この映画を見て!

第212回『パルプ・フィクション』
Photo  今回紹介する作品はタランティーノ監督の名を一躍有名にしたバイオレンス・アクションの傑作『パルプ・フィクション』です。

 本作品のストーリーはLAのギャングのボス・マーセルスを軸とした3つの犯罪ドラマが描かれます。
・1つ目はボスの盗まれたトランクを取り戻そうと敵のアジトへと向かう二人組のギャング・ビンセントとジュールのエピソード。
・2つ目はボスの妻と一晩のデートをするハメになるビンセントのエピソード。
・3つ目はボクシングの八百長試合で金を受け取るボクサーのブッチのエピソード 

 これら3つのドラマを時間軸を前後して描いており、最後まで見ると各ドラマのつながりが分かるというユニークな構成となっています。

 私は映画好きの友人が本作品を「凄い作品だ!」と絶賛していたので、一体どんな映画なのかと思って、ビデオを借りて見ました。
 正直言って始めて見たときは面白いことは面白いけど絶賛するほどの作品とまでは思えませんでした。
 そこで、もう一度見直したのですが、2回目に見た時の方が各シーンのつながりや主人公たちが話していた会話の意味が分かり、非常に楽しんで見ることができました。
 さらに再び見直したときには、登場人物たちがテンポ良く繰り広げる本筋と関係のない雑談の面白さと非日常的な展開の中で右往左往する主人公たちの間抜けさとカッコ良さに本作品の虜になってしまいました。
 
 本作品はかなり見る人を選ぶ作品です。映画に感動や意味を求める人が見ると下らない話しばかりなので退屈でしょうし、良識的な人が見ると過激な暴力描写や不健全な登場人物のオンパレードに眉をひそめることでしょう。
 映画の題名である『パルプ・フィクション』(三文小説)が示すとおり、重厚なテーマを描く作品ではありません。お洒落な雰囲気の映像や音楽、豪華で個性的な役者たちの絶妙かつ軽妙な演技、そして伏線と無駄な会話がふんだんに織り込まれたストーリーの面白さ。本作品はタランティーノ監督のセンスの良さを味わう作品です。

 お気に入りのシーンはいくつもありますが、何といっても一番印象的なのはジョン・トラボルタ演じるビンセントとマーセルスの妻ミアがレストランのツイスト大会で踊るシーン。一時期低迷していたジョン・トラボルタが見事復活を果たした名シーンです。
 他にも、ブルース・ウィリス演じるブッチが日本刀を持って暴れるシーンやサミュエル・L・ジャクソン演じるジュールが聖書の一説を語るシーンのカッコよさも印象に残ります。
 また登場シーンは短いですが、クリストファー・ウォーケンとハーヴェイ・カイテルの存在感ある演技も忘れられません。

 あと、私は本作品を見る度に気になることが3つあります。5ドルシェイクの味、ボスのトランクに入っていた輝く物の正体、そしてジュールが奇跡の後に犯罪から足を洗ったのかどうか。見た後、毎回この3つのことを考えてしまいます。

 お洒落で面白いバイオレンス映画を見たいなら、本作品はお勧めです。

上映時間 154分
製作国 アメリカ
製作年度 1994年
監督: クエンティン・タランティーノ 
原案: クエンティン・タランティーノ、ロジャー・エイヴァリー 
脚本: クエンティン・タランティーノ 
撮影: アンジェイ・セクラ 
編集: サリー・メンケ 
出演: ジョン・トラヴォルタ、サミュエル・L・ジャクソン、ユマ・サーマン、
ハーヴェイ・カイテル 、ティム・ロス、アマンダ・プラマー、マリア・デ・メディロス
ヴィング・レイムス、 エリック・ストルツ。、 ロザンナ・アークエット、クリストファー・ウォーケン 、クエンティン・タランティーノ、スティーヴ・ブシェミ、ブルース・ウィリス

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