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2008年3月16日 - 2008年3月22日

『ジブリ実験劇場 On Your Mark』この映画を見て!

第204回『ジブリ実験劇場 On Your Mark』
On_your_mark  今回紹介する作品は宮崎駿監督の隠れた名作『On Your Mark』です。本作品はCHAGE and ASKAのコンサートツアー『SUPER BEST3』のオープニング・フィルムとして企画、制作され、コンサート会場で初公開されました。その後、『耳をすませば』の公開時に同時上映という形で一般にも公開されました。
私が本作品を始めて見たのも『耳をすませば』を見に行った際でした。その時は約7分という短い上映時間ながら、宮崎監督のエッセンスが詰め込まれた内容の濃さに圧倒されたとものでした。

ストーリー:「放射能で汚染され、人類がシャルターに住むようになった未来。武装警官隊たちがカルト教団の施設を武力制圧する。その中にいた警官2人は教団施設で翼の生えた少女を発見する。少女はすぐに研究施設に送られるが、彼女に惹かれた2人は研究施設から救助しようと奮闘を始めるが・・・。」

 本作品が公開された1995年というとオウム真理教の地下鉄サリン事件の年でもあり、本作品を始めてみた時はカルト教団が出てくる内容に衝撃を覚えたものでした。私は宮崎監督がオウム事件にインスパイアされて本作品を製作したものだと思ったものでした。しかし、調べたところ、宮崎監督はオウム事件前に本作品のシナリオを考えていたとのことで重なったのは全くの偶然だそうです。

 宮崎監督は本作品に関して以下のようなコメントをしています。
「『位置について』という意味のタイトルだけれど、その内容をわざと曲解して作っています。いわうる世紀末の後の話。放射能があふれ、病気が蔓延した世界。実際、そういう時代がくるんじゃないかと、僕は思っていますが。そこで生きるということはどういうことかを考えながら作りました」(『出発点』,宮崎駿,1996年,徳間書店,556p)
 
 宮崎監督の作品には『未来少年コナン』や『風の谷のナウシカ』等に見られるように人間の文明が一度崩壊した後の世界を描いたものがありますが、本作品もその系統の一つです。
 閉塞され追い詰められた人間社会の中で主人公たちが生きる希望を翼の生えた少女に見出そうとするストーリー展開は非常に解放感に溢れています。
 もちろん良く考えるとラストの展開も必ずしも主人公たちの今後は決してハッピーエンドとは言えません。少女は解放できても、自らは放射能まみれの大地でお尋ね者として生き続けていくしかないという暗い未来が待っているわけで・・。
 本作品はどんな状況下においても絶望と体制に身を寄せるのでなく、希望を見出し積極的に生き死んでいくことの大切さを謳った内容となっています。

「彼女が救世主だったり、救出を通して彼女と心の交流があったというわけではないんです。ただ、状況に全面降伏しないで、自分の希望、ここだけは誰にも触らせないぞというものを持っているとしたら、それを手放さなければならいのなら、誰の手にも届かないところに放してしまおうおいう。そういうことですよ」(『出発点』,宮崎駿,1996年,徳間書店,557p)

 宮崎監督の映画が好きなら本作品は絶対見逃すことの出来ない傑作です。現在、『ジブリがいっぱいSPECIALショートショート』というDVDに収録されているので是非見てください!

上映時間 6分40秒
製作国 日本
製作年度 1995年
監督: :宮崎駿 
脚色::宮崎駿 
原作::宮崎駿 
撮影監督:奥井敦 
作画監督: 安藤雅司 
美術監督::武重洋二
音楽:「On Your Mark」  by CHAGE&ASKA

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『カルテット』映画鑑賞日記

Photo  今回紹介する作品は宮崎駿や北野武の映画音楽で有名な久石譲が初監督した映画『カルテット』です。
  私は昔から久石さんの音楽が大好きだったので、本作品が劇場公開された時は真っ先に劇場に駆けつけ鑑賞したものでした。
 
 ストーリーは弦楽四重奏団を組んだ4人の若者が挫折を乗り越えて再起していくまでを描くという青春映画にありがちな展開で特に目新しいものはありませんでしたが、劇中の音楽が素晴らしく最後まで飽きることなく見ることができました。
 久石さんは本作品を撮るにあたって劇中に流れる40曲もの音楽を作曲し、映画の撮影時も譜面を絵コンテ代わりに利用して俳優の演技やカメラの構図を考えたそうです。
 それだけの甲斐あって、映像と音楽が大変マッチしており、見ていて大変心地よいです。特にコンサートのシーンは演奏の臨場感が見ている側にも伝わってきます。
 また『となりのトトロ』や『天空の城ラピュタ』・『HANABI』など久石さんが今まで手がけてきた映画音楽も随所に使用されており、久石ファンにはたまりません。
 
 映像自体も予想以上に美しく、主人公たちがドサ回りのツアーに日本の田舎を回るシーンや浜辺で主人公たちが演奏するシーンは大変印象的でした。(ただ浜辺のシーンは映像自体は美しいのですが、弦楽器みたいな繊細なものを湿度が高く潮風が吹くような場所に持っていって大丈夫なのか気になりました。)

 ただ音楽の素晴らしさは別として映画の完成度で言うと今ひとつです。その理由は演出がベタというか下手だからです。主人公が葛藤するシーンで雷が鳴って雨が降りだす演出やクライマックスの主人公がカルテットの演奏会に間に合うかどうかの演出も安っぽくて白けてしまいました。
 また本格的な音楽映画を目指しなが、音楽家がバイオリンケースで人を殴ったり、雨の中でケースを濡らす場面など如何なものかと思いました。
 あと役者の演奏シーンも本物のチェリストである久木田薫以外は頑張ってはいるけど指の動きを見ると素人であるということが丸分かりでした。これはある意味、主役に1人本物の音楽家を入れたことが失敗だったと思います。久木田さんの演奏が上手すぎる分、他の人の演奏がどうしても見劣ってしまし気になってしまいました。

 本作品は演出がもっと上手ければ、日本映画を代表する青春音楽映画となっていただけに少し残念でした。 

上映時間 113分
製作国 日本
製作年 2001年
監督: 久石譲 
脚本: 長谷川康夫,久石譲 
撮影: 阪本善尚 
美術: 及川一 
編集: 奥原好行 
音楽: 久石譲 
出演: 袴田吉彦  桜井幸子 大森南朋  久木田薫   藤村俊二 三浦友和

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『オーケストラストーリーズ となりのトトロ 』

お気に入りのCD NO.23 『オーケストラストーリーズ となりのトトロ 』久石譲
Photo_2  今回紹介する作品は『となりのトトロ』の音楽を交響組曲にした『オーケストラストーリーズ となりのトトロ 』です。
 本作品は映画本編の音楽も担当している久石譲さんがオーケストラに初めて接する子どもや大人のために編曲されたもので、ブリテンの「青少年のための管弦楽入門」という曲を参考にしているそうです。

 私は2003年の久石譲さんのコンサートツアーで本作品を始めて聞いたのですが、その時はオーケストラの繊細かつ迫力のある音が奏でるおなじみの美しいメロディーに鳥肌が立つほど大変感動しました。
 
 本作品は映画でお父さん役を務めたコピーライター・糸井重里によるナレーションが付いたヴァージョンと交響組曲ヴァージョンと2バージョン収録されています。
私のお勧めはナレーション付きのバージョンです。糸井重里さんの優しく温かみのある声による情景の説明と音楽を聴くと映画の一場面が自然と脳裏に浮かんできます。

 新日本フィルハーモニーによる演奏も大変素晴らしく完成度も高いので、自宅で聞く時も許す限り大音量で聞いてほしいです。

 トトロが好きな人、オーケストラに興味のある人には絶対お勧めのアルバムです!

1. さんぽ 
2. 五月の村 
3. ススワタリ~お母さん 
4. トトロがいた! 
5. 風のとおり道 
6. まいご 
7. ネコバス 
8. となりのトトロ
〈となりのトトロ組曲〉 
9. さんぽ 
10. 五月の村 
11. ススワタリ~お母さん 
12. トトロがいた! 
13. 風のとおり道 
14. まいご 
15. ネコバス 
16. となりのトトロ 

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『女王陛下の007』この映画を見て!

第203回『女王陛下の007』
Photo  今回紹介する作品は世界一有名なスパイであるジェームス・ボンドが結婚するという異色の展開が印象的な『女王陛下の007』です。
 本作品は007シリーズ6作目として主演をショーン・コネリーからモデル出身のジョージ・レーゼンビーに交代して製作されました。公開当時はショーン・コネリーが主演を務めていた今までの作品に比べると全体的に地味な印象であったために評判は今ひとつだったのですが、最近は一番原作に近い雰囲気を持っているということで再評価をされています。

 私は007シリーズは昔から大好きで全て鑑賞しているのですが、初めて本作品を見た時は他の作品に比べて秘密兵器も出てこないし、アクションやストーリー展開もこじんまりしているので余り好きになれませんでした。
 しかし、最近改めて見てみると、予想以上に面白く見ることができ、最後の切ないシーンなど思わず胸がジーンと熱くなりました。

ストーリー:「宿敵ブロフェルドを追っていたボンドは、ポルトガルで偶然う若い女性と知り合った。彼女は犯罪組織ユニオン・コルスのボスであるドラコの一人娘テレサだった。ボンドはドラコからテレサの将来のために結婚してくれるように頼まれる。ボンドはこの機会を利用し、ドラコからブロフェルドの情報を得ようとするが、いつしかテレサに恋に落ちてしまう。
 その頃、ブロフェルドアルプス山上に構えたアレルギーの研究所で謎の計画を企てていた。その事を知ったボンドは変装して研究所に潜入する。ブロフェルドは美しい女性たちに催眠術をかけ、殺人ウィルスを世界中にばら撒こうとしていた。」

 本作品は他の作品に比べると派手さには欠けますが、その分ドラマに奥行きがあり、アクションにも緊張感があります。
 
 ドラマとしての本作品の魅力は何といってもプレイボーイであったボンドが本気で1人の女性に恋をして結婚してしまうというところです。ボンドの結婚式が見られる作品は後にも先にも本作品のみです。ルイ・アームストロングの主題化が流れる中で2人がデートする甘いシーンなど恋愛映画をまるで見ているかのようです。
 そんなボンドを待ち受けるラストの切なく哀しい展開は他の作品では感じることのない深い余韻が漂っています。007シリーズで唯一悲劇的ともいえるラストシーンを見るだけでも本作品は価値があると思います。

 アクションシーンも荒唐無稽なシーンが少なく、リアルでハードなアクションが多いです。特にアルプスの雪山が舞台になっているだけあり、スキーやボブスレーなどウィンタースポーツを活かした緊張感溢れるアクションの数々は大変見ごたえがあります。

 役者に関しては、本作品で2代目ボンドを演じたジョージ・レーゼンビーはショーン・コネリーのようなスマートさやロジャー・ムーアのようなユーモアには欠け、今ひとつパッとしない役者でボンドとしての魅力や印象は正直薄いです。ただアクションシーンはなるべくスタントなしで自らこなしただけあり、他のボンドよりも動きにキレがあります。
 宿敵ブロフェルドを演じたのは『刑事コジャック』で有名なテリー・サヴァラスで、迫力と風格のある悪役を見事に演じていました。

 007シリーズの中で異彩を放っている本作品ですが、一度は見て損のない作品だと思います。

上映時間 143分
製作国 イギリス
製作年度 1969年
監督 ピーター・ハント   
原作 イアン・フレミング 
脚本 ウォルフ・マンキウィッツ、リチャード・メイボーム 、サイモン・レイヴン 
撮影 マイケル・リード 、エグリ・ウォックスホルト 
音楽 ジョン・バリー 
主題歌 ルイ・アームストロング 
出演 ジョージ・レーゼンビー、ダイアナ・リグ 、テリー・サヴァラス 、ガブリエル・フェルゼッティ 、 ベッシー・ラヴ、ジョアンナ・ラムレイ、カトリーヌ・シェル、バーナード・リー 

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