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2008年12月

2008年劇場公開映画マイベスト5

今年も数多くの映画が日本で公開されました。そこで私が今年公開された映画の中で特に印象に残った&満足した映画ベスト5を紹介したいと思います。

Photo 第5位『クローバーフィールド/HAKAISHA』
 ニューヨークの自由の女神が破壊される衝撃的な予告編以外公開されるまで徹底した秘密主義が貫かれて話題となった怪獣映画『クローバーフィールド/HAKAISHA』。怪獣の正体や襲撃の全貌が最後まで明かされない分、観客の想像力を刺激します。

Photo_2 第4位『パコと魔法の絵本』
 嫌われ松子の一生』での独特な映像表現とテンポの良い演出で高い評価を受けている中島哲也監督の最新作『パコと魔法の絵本』。日本映画としては珍しいファンタジー映画ですが、個性的な登場人物が色彩豊かな映像の中で繰り広げる物語は見ていて飽きることがなく、前半は大いに笑って後半は涙を抑えることができませんでした。

Photo_3 第3位『崖の上のポニョ』
 宮崎駿4年ぶりの新作となった『崖の上のポニョ』。今年の日本での興行収入1位を獲得して、宮崎映画の人気の根強さを改めて証明しました。状況説明を極力省いたストーリー展開は賛否両論ありますが、アニメでしか出来ないダイナミックかつ繊細な表現と可愛らしい主題歌が大変印象に残りました。

Photo_4第2位『ダークナイト』
 米で『タイタニック』に次いで歴代興行収入第2位という記録的大ヒットをしている『ダークナイト』。日本での興行収入は伸び悩みましたが、作品の質の高さは近年のハリウッド映画の中では群を抜いています。特にヒース・レジャー演じるバットマンの宿敵ジョーカーは映画史に残るほど極悪非道で強烈な悪役です。

Photo_5 第1位『おくりびと』
 私としては本年度一押しの作品です。遺体を清め棺に納める“納棺師”を主人公にした『おくりびと』は死という重い題材を扱っています。しかし、コミカルな描写も多く笑わせてくれますし、主人公の成長がしっかり描かれているので、最後は爽やかな涙で劇場を後にすることができました。


2007年べスト5
2006年ベスト5
2005年ベスト5

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『ハンニバル』映画鑑賞日記

Photo  『羊たちの沈黙』から10年後に発表された続編『ハンニバル』。私は本作品を公開当時に劇場まで足を運んで見たのですが、前作に比べるともう一つの出来でした。
 確かに監督がリドリー・スコットだけあって、映像はとても美しいですし、前作以上にショッキングなシーンも幾つかあり、飽きることなく最後まで見ることができます。
 
 しかし、前作にあった張り詰めた緊張感や身の毛もよだつ恐怖感がなく、人物描写も掘り下げが浅いです。
 またストーリーの展開も無理がありますし、主人公たちの内面描写がほとんど描かれていないため、ラストの晩餐シーンも見た目は強烈ですが、それ以上のものを感じませんでした。
 その為、サスペンスとしても人間ドラマとしても前作には及ばず、上品な雰囲気を漂わせたスプラッタースリラーに成り下がってしまいました。
 
 さらに前作で主人公クラリスを演じたジョディ・フォスターが降板して、ジュリアン・ムーアに交代したことも面白さを半減させています。まあ、原作を読んだらジョディ・フォスターが降板するのも無理はありませんが、・・・。。ジュリアン・ムーアも演技派の女優で頑張ってクラリス役を演じたとは思いますが、どうしても前作のジョディ・フォスターの演技が強烈で違和感がありました。
 ただ、クライマックスシーンのセクシーなドレス姿はジョディ・フォスターでは出せない大人の女性の色っぽさが出ていたとは思います。

 レクター博士を演じたアンソニー・ホプキンスの演技は落ち着きがあり、安心して見られます。特に映画の前半のイタリアでのレクター博士は知性と狂気が入り混じり、背筋がゾクッとします。
 しかし、前作ほどの迫力はなかったような気がします。レクター博士は檻の中に入っていた方が不気味で魅力的なような気がしました。

また、ゲイリー・オールドマンも特殊メイクで素顔を一切見せず、不気味な悪役を嬉しそうに演じてましたし、ジャンカルロ・ジャンニーニの人間臭い味のある演技も非常に印象的でした。

 本作品は前作と比較せず別物として見れば、芸術的な猟奇映画としてそこそこ楽しめると思います。

上映時間 131分
製作国 アメリカ
製作年度 2001年
監督: リドリー・スコット 
製作: ディノ・デ・ラウレンティス 
マーサ・デ・ラウレンティス 
原作: トマス・ハリス 
脚本: デヴィッド・マメット 
スティーヴン・ザイリアン 
撮影: ジョン・マシソン 
音楽: ハンス・ジマー 
出演:
アンソニー・ホプキンス
ジュリアン・ムーア 
ゲイリー・オールドマン 
ジャンカルロ・ジャンニーニ
フランチェスカ・ネリ 
フランキー・フェイソン 
レイ・リオッタ

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『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊2.0』映画鑑賞日記

Ghost_in_the_shell20  押井守監督が『GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊』を自らリニューアルした『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊2.0』。(以降『2.0』と表記。)
 95年に公開されたオリジナル版は世界中のアニメファンに絶賛され、アメリカではビルボード誌のビデオ週間売り上げ1位を記録したほどです。
 
 今年公開された『2.0』ではビジュアルエフェクトを駆使して、全カットをバージョンアップ。3DCGによる新作カットも随所に挿入。
 音響もドルビーサラウンドから6.1chサラウンド化され、台詞・音楽・SEなどもリニューアルされています。

 『2.0』を見ての感想ですが、ヘリコプター等の3DCG化は特に気にならなかったのですが、素子のオープニングのビルからのダイブシーンと中盤の潜水シーンは正直見ていて違和感がありすぎでした。なぜあのシーンだけ素子を3DCG化したのか意図がよく分かりません。キャラクターを3DCG化するなら、全編・全登場人物すべきだと思いました。

 映像のバージョンアップに関しては全体の色調がオリジナルの緑色からオレンジ色に変更されており、続編である『イノセンス』の雰囲気に近い感じになっています。
 またオープニングタイトルもオリジナルから変更されています。個人的にはオリジナルの方がスタイリッシュだったような気がします。

 音響に関しては『スターウォーズ』等を手がけたスカイウォーカー・サウンドが6.1chサラウンド化しただけあって、オリジナルよりも格段に素晴らしいです。特に銃撃シーンは迫力満点です。
 ただ、今回新録でアフレコされた部分に関してオリジナルの方が良かったと思います。特に「人形使い」の声優が家弓家正から榊原良子に変わったことは残念でした。オリジナルの女性型の義体でありながら、中年男性の低い声であるいうところが強烈なインパクトがあったのですが、今回の榊原良子の声はオリジナルほどのインパクトはありませんでした。ただ、人形使いの声が女性になったこと自体はそれはそれで悪くはないかなとも思いましたが。

 今回の『2.0』に関しては個人的には映像はオリジナルのままで、音響だけ6.1CH化しただけでも良かったかなと思いました。
 

上映時間:85分
製作国:日本
製作年度:2008年
監督: 押井守 
原作: 士郎正宗 
脚色: 伊藤和典 
音楽: 川井憲次 
声の出演:
 田中敦子
 大塚明夫
 山寺宏一
 仲野裕 
 大木民夫
 玄田哲章
 生木政壽
 山内雅人
 榊原良子

 

 
 

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『どですかでん』この映画を見て!

第233回『どですかでん』
Photo  今回紹介する作品は山本周五郎の原作『季節のない街』を黒澤明監督が自身初のカラー映画として製作した作品『どですかでん』です。
 黒澤監督は『赤ひげ』以降、ハリウッドで『暴走機関車』の製作頓挫や『トラ・トラ・トラ!』の監督降板などトラブルが続いていました。その為、黒澤監督は5年近く映画が撮れず、精神的にかなり追い込まれていました。
 そんな時期に製作された本作品には黒澤監督の鬱積した心情が色濃く反映されています。また作風も今までのドラマチックで重厚な娯楽作品とは打って変わって、こじんまりとしたアート調の文芸作品となっています。

 ストーリーは主人公というべき人物が存在しない群像劇で、貧民街を舞台に8つのエピソードが交錯する形で綴られていきます。
 本作品で語られるエピソードはどれも貧民街の住人たちの救いようのないどん底の日常生活の一コマであり、美しく感動的な展開や結末はあまりありません。その為、見終わっても爽快感はなく、むしろ切なくやりきれない感情が湧き上がります。
 特に飲んだくれの義理の父親から性的虐待を受ける女性のエピソードと、家を建てる妄想に逃げ込むホームレスの父親を養う健気な子のエピソードは見ていてつらくて、胸が苦しくなります。

 黒澤監督は本作品において醜くく愚かで無力な人間たちのささやかな人生を肯定もしなければ否定もせず淡々とあるがままに描いていきます。そこには黒澤監督の人間という生き物に対する絶望と諦観、そして愛情すら感じられます。

 私は本作品を始めてみたのは大学生の時ですが、赤や黄の原色を大胆に取り入れた鮮やかな色彩に目を奪われてしまいました。過酷な現実を描いているにも関わらず、色の効果がどこか非現実的な雰囲気を映画に与えています。
 
 また、武満徹の音楽もほのぼのとした温かみのあるメロディーで、重いテーマを扱った映画に対する一服の清涼剤としての役割を見事に果たしています。

 登場する人物は皆強烈なキャラクターばかりなので、出演している役者も個性派揃い。特に印象的だったのがコミカルな伴淳三郎と不気味な三谷昇の演技です。

 本作品は万人に薦められるような映画ではありませんが、黒澤ファンやアート映画好きな人、そして人生について考えたい人は是非見てみる価値のある作品だと思います。
 

上映時間 140分
製作国 日本
製作年度 1970年
監督: 黒澤明 
原作: 山本周五郎 
脚本: 黒澤明 、小国英雄、橋本忍 
撮影: 斎藤孝雄、福沢康道 
美術: 村木与四郎、村木忍 
編集: 兼子玲子 
音楽: 武満徹 
出演: 頭師佳孝
菅井きん
殿村敏之
三波伸介
橘侑子 
伴淳三郎 
丹下キヨ子
田中邦衛 
吉村実子 
井川比佐志
沖山秀子 
松村達雄 
辻伊万里 
山崎知子 
亀谷雅彦 
芥川比呂志
奈良岡朋子
三谷昇
川瀬裕之
根岸明美

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『遊星からの物体X 』この映画を見て!

第232回『遊星からの物体X』
X  今回紹介する作品はSFホラーの古典「遊星よりの物体X」をアメリカを代表するホラー映画監督ジョン・カーペンターが原作に忠実にリメイクした『遊星からの物体X』です。
 
 私が本作品を始めて見たのはテレビ放映だったのですが、その時はロブ・ボーディンのグロテスクなクリーチャーの造形と特殊効果に大変衝撃を受けました。今のようにCGもなかった時代、特撮でここまで生々しくおぞましいクリーチャーを作り上げるとは凄いものです。特に犬が変身するシーンと心肺蘇生シーンは強烈で、初めて見た時は思わず腰が浮いてしまいました。

ストーリー:「一匹の犬がノルウェーの南極隊員に追われてアメリカの南極観測基地に逃げ込む。アメリカの隊員はノルウェーの隊員が銃を乱射したので射殺する。
 アメリカ隊員たちは何が起こったのか探るためにノルウェー基地に行くがすでにノルウェーの部隊は全滅していた。
 やがてノルウェー隊の犬を媒介にしてアメリカ基地に未知の生命体が侵入。生命体は巧みに接触した人間を取り込み同化していく。やがて吹雪に閉ざされた基地内で隊員たちは互いに疑心暗鬼になっていく……。」

 本作品は誰がエイリアンに乗っ取られたか分からないというサスペンスタッチで話しが進んでいくのですが、疑心暗鬼かつ極限状態に置かれた人間の追い詰められた心理が見事に表現されています。
 誰が乗っ取られているのかを知るために血液検査をするシーンの緊張感は見ている側も息が詰まるほどです。
 ラストも安易なハッピーエンドではなく、生き残った人間同士がお互いに疑いあうという
非常に救いようのない終わり方です。

 ジョン・カーペンター監督の演出は終始静かで寒々しく重苦しい雰囲気を漂わせ、じわりじわりと緊張感や恐怖を高めていきます。

 エンニオ・モリコーネの音楽もジョン・カーペンター監督の演出を見事にサポートしており、現代音楽っぽい繰り返しの不気味なメロディは不安感と緊張感を映画に与えています。
 
 ジョン・カーペンター監督は作品によって仕上がりにばらつきがあり、面白いものもあれば、つまらないものもあるのですが、本作品は監督の最高傑作であり、SFホラーを代表する作品です。

上映時間 109分
製作国 アメリカ
製作年度 1982年
監督: ジョン・カーペンター 
原作: ジョン・W・キャンベル・Jr 
脚本: ビル・ランカスター 
撮影: ディーン・カンディ 
特撮: アルバート・ホイットロック 
特殊効果: ロブ・ボーディン 
音楽: エンニオ・モリコーネ 
出演: カート・ラッセル
A・ウィルフォード・ブリムリー
リチャード・ダイサート 
ドナルド・モファット 
T・K・カーター 
デヴィッド・クレノン
キース・デヴィッド 
チャールズ・ハラハン
ピーター・マローニー
リチャード・メイサー
ジョエル・ポリス 
トーマス・G・ウェイツ

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夜会 VOL.14 『24時着 00時発』

14  今年の冬は中島みゆきファンにとっては夜会の季節ですね。現在、東京では15回目の夜会となる 『~夜物語~ 元祖・今晩屋』が公演中で、多くのファンが鑑賞に行っていると思います。私は来年2月の大阪公演のチケットを手に入れたので、鑑賞までもうしばらく我慢しないといけない状態です。
 
 さて、今回の夜会の公演にあわせて、前回の夜会 『24時着 00時発』の大阪公演のDVDが11月に発売されました。
 前回の夜会は私も東京公演に行き、鑑賞しました。その時はみゆきさんのオーラと歌声に圧倒されて、細かいところまで覚えていませんでした。私はDVDを早速購入して再鑑賞しました。
 
 前回の夜会は13回目の夜会で公演された『24時着 0時発』の再演ということで、ストーリーの大筋は13回目と大きく変わりません。しかし、歌詞の追加や話の展開が微妙に変わっており、話しが分かりやすくなっています。
 KENJI役が13回目の詩人の三代目魚武濱田成夫さんから役者のコビヤマ洋一さんに交代したことにより、コミカルな描写も増えています。(ただ、個人的にはコビヤマ洋一さんは役者が本業だけあって演技は上手いですが、三代目魚武濱田成夫さんの方が迫力はあったかなと思います。)
 
 また前回、前々回の夜会のモチーフとなった宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』が13回目より、さらに前面に押し出された作りとなっています。賢治と思わしき姿で出演者たちが随所に登場しますし、ラストはジョバンニが銀河鉄道に乗って旅をするシーンで終わります。

 今の人生とは違う別の人生への憧れ、喪失した故郷に対する回帰の希望、そして果てしなく続く命の輪廻転生。夜会はみゆきさんの様々な思いが重層的に込められており、何回見ても新たな発見と感動があります。

 私は今回DVDで改めて前回の夜会を見直し、生きていくということは常に何かを失うことでしか何かを得ることはできず、故郷を見失うと進むべき道すら見失う恐れがあるということを感じました。
 
 夜会は見る人の数だけ様々な感じ方があります。ぜひ、多くの人に中島みゆきが生み出す夜会という不思議で感動に満ちた世界にぜひ足を踏み入れてほしいです。

1. サヨナラ・コンニチハ
2. 線路の外の風景
3. 分水嶺
4. フォーチュン・クッキー
5. パーティー・ライツ
6. 闇夜のテーブル
7. 情婦の証言
8. ティムを探して
9. 廃線のお知らせ
10. 遺失物預り所
11. 水を点して 火を汲んで
12. ミラージュ・ホテル
13. ミラージュ・ホテル
14. メビウスの帯はねじれる
15. DOORS TO DOORS
16. リゾート・ラッシュ
17. 水の線路
18. 我が祖国は風の彼方
19. 帰れない者たちへ
20. 月夜同舟
21. 命のリレー
22. サーモン・ダンス
23. 二雙の舟
24. 無限・軌道
25. ミラージュ・ホテル (Inst.)
26. サーモン・ダンス
27. 命のリレー

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『ブライアン・デ・パルマ』私の愛する映画監督7

Photo  今回はサスペンスタッチの演出と独特のカメラワークで人気のあるブライアン・デ・パルマ監督を紹介します。
 
 デ・パルマ監督は昔コロンビア大学で物理を学んでいたそうですが、大学時代に『市民ケーン』『めまい』に衝撃を受け、映画の道に進むことになります。
 
 1960年代はニューヨークを拠点に短編やドキュメンタリーを製作。そして1968年にロバート・デ・ニーロ出演の群像劇『ロバート・デ・ニーロのブルーマンハッタン』を製作。
 
 そして、1970年にはハリウッドに活躍の場を移すがパッとせず、ニューヨークに戻り、『悪魔のシスター』を監督。映画ファンに高い評価を受け、続けて監督した『ファントム・オブ・パラダイス』がカルト的人気を呼びます。そして、ハリウッドに戻り監督した1976年の『キャリー』が大ヒットし一躍有名監督になります。
 
 その後、70年後半~80年前半にかけて、次々と話題のサスペンス映画を監督。デ・パルマカットと呼ばれる独自の映像表現に熱狂的なファンが現れます。
 
 しかし、1983年アル・パチーノ主演作の大作『スカーフェイス』が酷評され、一時期低迷状態に。

 そんな中、1987年に『アンタッチャブル』がヒットし奇跡の復活を遂げます。だが、90年以降は1996年の『ミッション:インポッシブル』以外にヒットにも恵まれず、作風も大味で評価も低迷状態が続きます。
 最近もコンスタントに監督作品が発表されますが、70年後半~80年前半の一番脂が乗っていた時代に比べると出来は今ひとつのものばかりです。

 私は70年後半~80年前半にかけてのヒッチコックを意識したB級テイストの作品が大好きです。(ヒッチコックのパクリと嫌う人もいますが。)
 華麗で凝ったカメラワーク、エロスと暴力に彩られた猥雑な雰囲気、ストーリーの語り方の巧みさ、往年の映画へのオマージュ。当時のデ・パルマ監督の作品には色気と勢いがありました。

 しかし、80年後半以降の作品はいまいちパッとしないものが多いです。特に監督が過去得意としていたサスペンス作品はどれも残念な出来が多く、デ・パルマ監督ファンとしては寂しい限りです。
 もちろん、『アンタッチャブル』や『ミッション:インポッシブル』等のアクション大作で、緊張感とスケールの大きさを感じさせる演出を行っていましたし、アル・パチーノを主演に93年に監督した『カリートの道』などはデ・パルマ監督でないと撮れない哀愁に満ちたギャング映画でした。

 デ・パルマ監督は大作や文芸調の作品より、エロチックなB級作品の方が才能を発揮できると思います。できれば、再度そのような作品を撮ってほしいとファンとしては願います。 

【主な監督作品】
・リダクテッド 真実の価値(2007)
・ブラック・ダリア(2006)
・ファム・ファタール(2002)
・ミッション・トゥ・マーズ(2000)
・スネーク・アイズ(1998)
・ミッション:インポッシブル(1996)
・カリートの道(1993)
・レイジング・ケイン(1992)
・虚栄のかがり火(1990)
・カジュアリティーズ(1989)
・アンタッチャブル(1987)
・ボディ・ダブル(1984)
・スカーフェイス(1983)
・ミッドナイトクロス(1981)
・殺しのドレス(1980)
・フューリー(1978)
・愛のメモリー(1976)
・キャリー(1976)
・ファントム・オブ・パラダイス(1974)
・悪魔のシスター(1973)

ブライアン・デ・パルマの作品

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『鳥』この映画を見て!

第232回『鳥』
Photo_2  今回紹介する作品はが鳥が突然人間を襲撃をする恐怖を描いたヒッチコック監督の傑作パニック映画『鳥』です。

 本作品のストーリーは至ってシンプルで、アメリカの小さな田舎町を舞台に人間が鳥に襲撃される恐怖を描いていきます。

私は小学生の時に本作品を友達と図書館の視聴覚コーナーで鑑賞したのですが、理由なく鳥が襲う不条理な恐怖とショッキングな演出の数々に圧倒されたのを覚えています。
 また、ヒッチコック監督の演出は斬新で、BGMも全くなく、鳥がなぜ襲うのか理由も一切提示されず、何も解決されないまま結末を迎えます。分からないゆえの恐怖と緊張感が本作品は終始漲っています。
 
 鳥の襲撃のシーンも前半は前振りだけでなかなか見せてくれないのですが、中盤からこれでもかと畳み掛けるようにショッキングなシーンが次から次へと繰り広げられます。特に学校での子どもたちが襲撃されるシーンは、ヒッチコック監督の徐々に迫り来る恐怖の演出が冴え渡っています。
 CGもまだない時代に、これだけリアルで恐ろしい鳥の襲撃シーンが撮影されたのは驚く限りです。
 
 また、人間ドラマとして見ても結構面白く、ヒロインと彼氏の母との確執は別の意味で映画に緊張感を与えています。 
 
 本作品はヒッチコック監督の作品としても、また動物襲撃映画としてもかなり異色の作品ではありますが、大変見応えがあります。ぜひ、未見の方は一度ご覧ください! 

上映時間 120分
製作国 アメリカ
製作年度 1963年
監督: アルフレッド・ヒッチコック 
製作: アルフレッド・ヒッチコック 
原作: ダフネ・デュ・モーリア 
脚本: エヴァン・ハンター 
撮影: ロバート・バークス 
音楽: バーナード・ハーマン 
プロダクションエグゼクティブ: ロバート・ボイル 
出演: ティッピー・ヘドレン 
ロッド・テイラー 
スザンヌ・プレシェット 
ジェシカ・タンディ 
ヴェロニカ・カートライト 
ドリーン・ラング 
エリザベス・ウィルソン 
エセル・グリフィス 
チャールズ・マックグロー 
ロニー・チャップマン 
ジョー・マンテル 
マルコム・アターベリイ

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『サイコ』この映画を見て!

第231回『サイコ』
Photo  今回紹介する作品はサスペンス映画の巨匠アルフレッド・ヒッチコック監督の代表作『サイコ』です。

 私が本作品を始めてみたのは、中学生のときに深夜のテレビ放送のときでした。その時は昔の映画だから今見ると退屈かなと思って最初見ていたのですが、終始漲る緊張感と予想外の展開に最後まで画面に釘付けになったものでした。
 
ストーリー:「会社の金を横領した女が逃げる途中に立ち寄ったベイツ・モーテル。そこの管理人の青年ノーマンは年老いた“母”が離れ家にいた。女は部屋でシャワーを浴びて一息つこうとするが、その時に背後から正体不明の女性にナイフで切りつけられる。」

 本作品の最大の見所は何といっても、中盤のシャワーでの惨殺シーン。モノクロ映像ながら真っ赤な血がまるで飛び散っているかのように見えるヒッチコック監督の演出は今見ても衝撃的です。バーナード・ハーマンの弦楽器を利用した観客の不安感を煽る音楽にあわせて映し出される細かなカット割りの映像。体にナイフが直接刺されるカットは一度もないにもかかわらず、見ている側は女性が刺されたシーンを見たかのような錯覚に陥ります。
ヒッチコック監督はこのシーンの撮影に一週間も費やし、70回以上カメラのアングルを変えて、ナイフを犠牲者の体に一度も触れさせずに、まるで刺されたように撮影したそうです。

 また、本作品の面白いところは前半と後半で主人公が変わってしまうところです。私は最初見た時、主人公だと思った女性が中盤に死んでしまってびっくりしました。映画の前半は後半の謎解きのための長い前フリという非常に大胆な展開です。

 映画の後半に関しては未見の方もいらっしゃると思うので詳しく書きませんが、予想外のショッキングな結末は始めて見る方は驚くと思います。
 ただ、最後に医師が真相を語るシーンは少し語りすぎのような気がします。

 映画の冒頭のソウル・バスが手がけたタイトルデザインも秀逸で、バーナード・ハーマンの緊張と不安を煽る音楽と共に、観客を映画の中に一気に引き込みます。

 アンソニー・パーキンスは一世一代のはまり役で、本作品に出演後、どの映画に出演しても本作品のイメージがダブってしまいます。
 
 なお、本作品は続編やリメイクも制作されていますが、1作目に比べると残念な出来栄えです。
 またヒッチコック監督を尊敬するブライアン・デ・パルマ監督は本作品にインスパイアされた『殺しのドレス』という作品を製作しています。本作品の出来には及びませんが、これはこれで面白い仕上がりになっています。

 本作品は予想外の展開の連続で、今見ても十分に面白い作品です。未見の方はぜひ前情報なく見てください!

上映時間 109分
製作国 アメリカ
製作年度 1960年
監督: アルフレッド・ヒッチコック 
製作: アルフレッド・ヒッチコック 
原作: ロバート・ブロック 
脚本: ジョセフ・ステファノ 
撮影: ジョン・L・ラッセル 
音楽: バーナード・ハーマン 
タイトルデザイン: ソウル・バス 
出演: アンソニー・パーキンス 
ジャネット・リー 
ジョン・ギャヴィン 
ヴェラ・マイルズ 
マーティン・バルサム 
サイモン・オークランド 
ジョン・マッキンタイア 
ジョン・アンダーソン 
パトリシア・ヒッチコック 

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