『八つ墓村』この映画を見て!
第225回『八つ墓村』 今回紹介する作品は横溝正史ブームに乗って松竹が監督に野村芳太郎、主演に渥美清と萩原健一を据えて製作した『八つ墓村』です。
『砂の器』を大ヒットさせ、当時勢いに乗っていたスタッフが再結集して、一流の役者を起用しただけあって、その完成度の高さは横溝作品の映画化したものの中ではピカイチです。
ただ、金田一耕介役が寅さんシリーズで有名な渥美清が演じているところは評価が分かれるところです。
特に市川崑監督の石坂浩二主演の金田一シリーズを見慣れている人からすると、背広で麦藁帽子の飄々とした金田一の姿は違和感を持つかもしれません。
正直、私も始めてみたときは「こんなの金田一と違う」と思ってしまいました。しかし、何回か見ているうちに渥美さん演じる金田一もありかなと思うようになりました。
ストーリー:「羽田空港で誘導員をしている寺田辰弥は奇妙な新聞尋ね人欄を見ての法律事務所を訪ねる。そこで辰弥は母方の祖父井上丑松に初めて会うが、丑松はその場で誰かに毒殺される。辰弥は自分の出生の秘密を探るために故郷である八つ墓村に向かう。
八つ墓村という不気味な名前は戦国時代に八名の落ち武者に由来していた。
毛利に敗れた尼子義孝を始めとする8人の落ち武者は村外れの荒地を拓いて住みついたが、村民の欺し討ちにあい全滅。その時に義孝は「この恨みは末代まで崇る」と呪いの言葉を吐きながら死んだ。
その後、落武者謀殺の中心人物であった村総代が突如発狂し村民七人を斬殺、自ら自分の首を斬り飛ばす事件が発生。村人は落武者の崇を恐れ、義孝ら八人の屍骸を改めて丁重に葬り祠をたてたことから、村は八つ墓村と呼ばれるようになった
辰弥は村に来る途中に多治見家の後継者であることを聞かされる。村に着き、多治見家の屋敷に案内された辰弥は病弱な兄の久弥、姉の春代、この家の実権を握る双生児の伯母小竹、小梅らに会う。
しかし、久弥は辰弥と面談中、突然吐血して死んだ。その後、次々と村人が毒殺される事件が発生する。」
本作品は謎解きを味わうサスペンス映画というより、はっきり言って怨念を扱ったオカルトホラー映画です。
私は小学生の時にテレビで見たのですが、全体に漂うおどろおどろしい雰囲気とショッキングなシーンの連続にトラウマになりました。
特に落ち武者殺戮シーン、村人三十二人殺しシーン、そしてラストの鍾乳洞のシーンは強烈で、並みのホラー映画を遥かに凌駕する恐ろしさです。
これらのシーンに恐ろしさを与えているのが役者たちの狂気迫る演技です。夏木勲が最期に村人に向かって放つ呪いの言葉、山崎努さんが銃片手に桜並木を疾走するシーンの不気味さ、小川真由美の突如豹変した顔。この3人が出演したことが本作品の出来栄えを高めたと思います。
また、映画のラストも何とも背筋が凍る終わり方で、祟りという日本人独特の思想が見事に表現されています。
逆に謎解きを期待して、本作品を見てしまうと肩透かしを喰らうと思います。ラストの金田一耕介の事件の説明も証拠や犯人の動機なんかよりも、事件の背景にある400年前の怨念に重きを置いてます。それが本作品をサスペンスでなくホラーに仕立てているのですがね。
映像も日本の田舎の夏のじめじめとした感覚を見事に捉えていますし、山崎努さんが銃片手に桜並木を疾走するシーンの背徳的な美しさは見ていて鳥肌が立つほどです。
芥川也寸志さんのオケを駆使した壮大な音楽も大変美しく印象に残ります。
本作品は日本を代表するホラー映画の傑作です。その手の作品が好きな人で未見の人がいらっしゃったら是非ご覧ください。 ちなみに市川監督も豊川悦治を主演に98年に『八つ墓村』を映画化しています。市川版は原作に近い仕上がりではあるのですが、本作品を見た後ではインパクトに欠け凡長で退屈な作品でした。(それだけ本作品のインパクトが強烈なのですが・・・。)
上映時間 151分
製作国 日本
製作年度 1977年
監督: 野村芳太郎
原作: 横溝正史
脚本: 橋本忍
撮影: 川又昂
特殊メイク: マキシーン・坂田
美術: 森田郷平
衣装: 鈴木康之、原島正男、松竹衣装
編集: 太田和夫
振付: 花柳滝蔵
音楽: 芥川也寸志
殺陣: 菊地剣友会
出演: 渥美清、萩原健一、小川真由美、花沢徳衛、山崎努、山本陽子
市原悦子、山口仁奈子、中野良子、加藤嘉、井川比佐志、下絛アトム
夏木勲、田中邦衛、稲葉義男、橋本功、大滝秀治、夏純子、藤岡琢也
下絛正巳、山谷初男、浜田寅彦、浜村純、吉岡秀隆
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