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2008年10月

『天国と地獄』この映画を見て!

第226回『天国と地獄』
Photo  今回紹介する作品は黒澤明監督がエド・マクベインの原作を映画化した日本を代表するサスペンス映画の傑作『天国と地獄』です。

ストーリー:「ナショナル・シューズの専務である権藤は会社での権力争いをしている最中、「自分の息子を誘拐したので身代金3千万円を用意しろ」との電話が入る。しかし、実際に誘拐されたのは息子でなく、運転手の息子だった。権藤は苦悩の末に運転手のために全財産を投げ出して3千万円を用意する。」

 本作品は2部構成となっています。
 
 前半は主人公・権藤が犯人に身代金を払うまでの過程を密室劇の形式で描いていきます。会社での権力争いに勝つために主人公が用意した全財産。それがないと自分が会社の中で窮地に追い込まれる中、他人の子どものために支払うべきかどうか。主人公が子どもの命と自己保身の狭間で揺れ動く姿が緊張感たっぷりに描かれます。緻密なシナリオと三船敏郎の迫真の演技、そして長回しの演出が前半の見所です。

 中盤は本作品最大の見せ場である特急第二こだま号での身代金の受け渡し。国鉄から実物の151系電車を借りて実際に東海道本線上を走らせて撮影した映像は臨場感にあふれており、何度見ても手に汗握ります。

 後半は刑事たちが犯人を逮捕するまでの捜査過程を丹念に描いていきます。その描写はとてもリアルで、見ていて引き込まれます。また、モノクロの映像の一部を着色して見せるとても印象的な演出があります。この演出はその後の映画人にも影響を与え、スピルバーグはこの演出を「シンドラーのリスト」で使ったほどです。
 終盤の黄金町で刑事が犯人を追跡する際に登場するヘロイン中毒者の描写はまるでゾンビかと見間違うほどおどろおどろしく不気味です。
 
 ラストは犯人と権藤が刑務所にて対峙するシーンで終わりますが、犯人役を演じた山崎努が強烈な存在感を放っています。
 最初は権藤相手に強がっていたにも関わらず、最後は自分の体の震えを抑えられなくなり絶叫してシャッターが降りるシーン。罪を犯した人間の悲哀が見る者に伝わってくる名シーンです。
 私はこのラストを見るたびに『天国と地獄』というタイトルの意味を考えてしまいます。天国から地獄におちて、また這い上がろうとする主人公の権藤。権藤を天国から引きずりおろそうとして、地獄の底へと落ちていった犯人。結局、人生の天国と地獄とは貧富の差だけではなく、生き方によって決まるものだと見ていて痛感させられます。

 45年以上前の古い作品ですか、ここまで重厚で面白いサスペンス映画はなかなかお目にかかれません。未見の方はぜひ一度ご覧ください! 

上映時間 143分
製作国 日本
製作年度 1963年
監督: 黒澤明 
原作: エド・マクベイン  『キングの身代金』
脚本: 小国英雄、菊島隆三、久板栄二郎、黒澤明 
撮影: 中井朝一、斎藤孝雄 
美術: 村木与四郎 
音楽: 佐藤勝 
記録: 野上照代 
照明: 森弘充 
出演: 三船敏郎、香川京子、江木俊夫、佐田豊、島津雅彦
仲代達矢、石山健二郎、木村功、加藤武、三橋達也 
伊藤雄之助、中村伸郎、田崎潤、志村喬、藤田進 、山崎努
土屋嘉男、三井弘次、千秋実、北村和夫、東野英治郎、藤原釜足 

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『八つ墓村』この映画を見て!

第225回『八つ墓村』
Photo_5   今回紹介する作品は横溝正史ブームに乗って松竹が監督に野村芳太郎、主演に渥美清と萩原健一を据えて製作した『八つ墓村』です。
 
 『砂の器』を大ヒットさせ、当時勢いに乗っていたスタッフが再結集して、一流の役者を起用しただけあって、その完成度の高さは横溝作品の映画化したものの中ではピカイチです。
 ただ、金田一耕介役が寅さんシリーズで有名な渥美清が演じているところは評価が分かれるところです。
 特に市川崑監督の石坂浩二主演の金田一シリーズを見慣れている人からすると、背広で麦藁帽子の飄々とした金田一の姿は違和感を持つかもしれません。
 正直、私も始めてみたときは「こんなの金田一と違う」と思ってしまいました。しかし、何回か見ているうちに渥美さん演じる金田一もありかなと思うようになりました。

ストーリー:「羽田空港で誘導員をしている寺田辰弥は奇妙な新聞尋ね人欄を見ての法律事務所を訪ねる。そこで辰弥は母方の祖父井上丑松に初めて会うが、丑松はその場で誰かに毒殺される。辰弥は自分の出生の秘密を探るために故郷である八つ墓村に向かう。

 八つ墓村という不気味な名前は戦国時代に八名の落ち武者に由来していた。
 毛利に敗れた尼子義孝を始めとする8人の落ち武者は村外れの荒地を拓いて住みついたが、村民の欺し討ちにあい全滅。その時に義孝は「この恨みは末代まで崇る」と呪いの言葉を吐きながら死んだ。
 その後、落武者謀殺の中心人物であった村総代が突如発狂し村民七人を斬殺、自ら自分の首を斬り飛ばす事件が発生。村人は落武者の崇を恐れ、義孝ら八人の屍骸を改めて丁重に葬り祠をたてたことから、村は八つ墓村と呼ばれるようになった

 辰弥は村に来る途中に多治見家の後継者であることを聞かされる。村に着き、多治見家の屋敷に案内された辰弥は病弱な兄の久弥、姉の春代、この家の実権を握る双生児の伯母小竹、小梅らに会う。
 しかし、久弥は辰弥と面談中、突然吐血して死んだ。その後、次々と村人が毒殺される事件が発生する。」

 本作品は謎解きを味わうサスペンス映画というより、はっきり言って怨念を扱ったオカルトホラー映画です。 
 私は小学生の時にテレビで見たのですが、全体に漂うおどろおどろしい雰囲気とショッキングなシーンの連続にトラウマになりました。
 特に落ち武者殺戮シーン、村人三十二人殺しシーン、そしてラストの鍾乳洞のシーンは強烈で、並みのホラー映画を遥かに凌駕する恐ろしさです。
 これらのシーンに恐ろしさを与えているのが役者たちの狂気迫る演技です。夏木勲が最期に村人に向かって放つ呪いの言葉、山崎努さんが銃片手に桜並木を疾走するシーンの不気味さ、小川真由美の突如豹変した顔。この3人が出演したことが本作品の出来栄えを高めたと思います。
 
 また、映画のラストも何とも背筋が凍る終わり方で、祟りという日本人独特の思想が見事に表現されています。

 逆に謎解きを期待して、本作品を見てしまうと肩透かしを喰らうと思います。ラストの金田一耕介の事件の説明も証拠や犯人の動機なんかよりも、事件の背景にある400年前の怨念に重きを置いてます。それが本作品をサスペンスでなくホラーに仕立てているのですがね。

 映像も日本の田舎の夏のじめじめとした感覚を見事に捉えていますし、山崎努さんが銃片手に桜並木を疾走するシーンの背徳的な美しさは見ていて鳥肌が立つほどです。
 芥川也寸志さんのオケを駆使した壮大な音楽も大変美しく印象に残ります。 

 本作品は日本を代表するホラー映画の傑作です。その手の作品が好きな人で未見の人がいらっしゃったら是非ご覧ください。

2 ちなみに市川監督も豊川悦治を主演に98年に『八つ墓村』を映画化しています。市川版は原作に近い仕上がりではあるのですが、本作品を見た後ではインパクトに欠け凡長で退屈な作品でした。(それだけ本作品のインパクトが強烈なのですが・・・。)

上映時間 151分
製作国 日本
製作年度 1977年
監督: 野村芳太郎 
原作: 横溝正史 
脚本: 橋本忍 
撮影: 川又昂 
特殊メイク: マキシーン・坂田 
美術: 森田郷平 
衣装: 鈴木康之、原島正男、松竹衣装 
編集: 太田和夫 
振付: 花柳滝蔵 
音楽: 芥川也寸志 
殺陣: 菊地剣友会 
出演: 渥美清、萩原健一、小川真由美、花沢徳衛、山崎努、山本陽子
市原悦子、山口仁奈子、中野良子、加藤嘉、井川比佐志、下絛アトム 
夏木勲、田中邦衛、稲葉義男、橋本功、大滝秀治、夏純子、藤岡琢也
下絛正巳、山谷初男、浜田寅彦、浜村純、吉岡秀隆

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「あっと驚くどんでん返し映画」私の映画遍歴14

 米情報誌エンターテインメント・ウィークリー誌が、M・ナイト・シャマラン監督作「ハプニング」のDVD全米発売を記念して、あっと驚く結末が用意された「大どんでん返し映画」22本を発表しました。
 以下の22作品が紹介されていましたが、『サイコ』や『猿の惑星』の古典的名作から『シックスセンス』や『セブン』など最近の話題作まで誰もが知っている作品が数多く選ばれています。

「セブン」(95)
「シックス・センス」(99)
「ファイト・クラブ」(99)
「悪魔のような女」(55)
「メメント」(00)
「サイコ」(60)
「ユージュアル・サスペクツ」(95)
「猿の惑星」(68)
「アイデンティティー」(03)
「プレステージ」(06)
「ゲーム」(97)
「フォーン・ブース」(02)
「ドニー・ダーコ」(01)
「ソイレント・グリーン」(73)
「マルホランド・ドライブ」(01)
「スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲」(80)
「オールド・ボーイ」(03)
「キル・ビル Vol.1」(03)
「12モンキーズ」(95)
「イースタン・プロミス」(07)
「アザーズ」(01)
「エンゼル・ハート」(87)

 そこで私も個人的にどんでん返しにあっと驚いた作品BEST5を紹介します。

Photo 5位『ゾンゲリア』
 本作品は80年代前半にダノ・オバノンが脚本を務めたゾンビ映画です。かなり陰惨な残酷描写が印象に残る作品ですが、それ以上にラストの予想外のどんでん返しにはあっと驚かされます。

Gokemidoro 4位『吸血鬼ゴケミドロ』
 地球侵略を目論む謎の宇宙生命体ゴケミドロに襲われる人間たちの死闘を描いた本作品。日本を代表するSFホラーですが、ラストのシニカルで救いようの無い結末は強烈です。

Photo_23位『クライングゲーム』
 ニール・ジョーダン監督が手がけたサスペンス・ラブストーリー映画の傑作である本作品。公開当時に「決して内容を誰にも言ってはいけない」がコピーになっていましたが、本作品は一切の前情報なく見てほしいです。

Dead_or_alive 2位『DEAD OR ALIVE 犯罪者』
 日本一忙しい監督である三池崇史がVシネの帝王である哀川翔と竹内力を主演に製作した本作品。新宿を舞台に繰り広げられる男たちの熱い闘いを描いた作品なのですが、ラスト5分は見る者の想像を遥かに超える衝撃的な展開が待ち受けています。 

Photo_3 1位『シベリア超特急』
 今年の6月にお亡くなりになった映画評論家・水野晴郎が手がけたスーパーサスペンス・アクションロマン『シベリア超特急』。一部のカルト的ファンから人気を博して、映画は5本、舞台は2本製作されました。私もビデオで鑑賞したのですが、最後の何回も続くどんでん返しには呆気に取られました。

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『いまのきもち』 

中島みゆきのアルバム紹介No.4『いまのきもち』 
Photo  歌手である中島みゆきが作家である中島みゆきの作品を唄うというコンセプトで1976年代~1986年までに発表した名曲をセルフカバーした中島みゆき通算32枚目のアルバム『いまのきもち』。
 全曲、瀬尾さんによるリアレンジが行われており、オリジナルとはまた違う雰囲気に仕上がっています。
 レコーディングはLAで行われ、ヴィニー・カリウタ、マイケル・トンプソン、ジョン・ギルティン、ニール・スチューベンハウス等の一流のミュージシャンが参加して、中島みゆきの曲と歌声の魅力を引き立てています。

 本作品はオリジナルを知っている人も知らない人も中島みゆきのファンならいまの中島みゆきの良さを楽しむことが出来る仕上がりとなっています。
 どの曲も特に大胆なアレンジはありませんが、オリジナルよりも洗練され円熟した大人の歌になっています。
 歌い方もオリジナルにあった荒削りで感情がむき出しの歌い方とは違い、繊細で優しく語りかけるような歌い方となっており、良い意味で聞きやすいです。
 
私は発売当時なぜみゆきさんは昔の曲を今さらリメイクするのだろうと疑問に思いました。しかし、本作品を購入して聞いてみて、単なるリメイクなどではなく、タイトルの通り「いまのきもち」を歌っている新アルバムであることを認識しました。 
みゆきさんも本作品のブックレットに以下のようなコメントを載せています。

この歌を書いた日には、書いた日の気持ちがあり。
この歌を録音した日には、録音した日の気持ちがあり。
この歌を人前で歌った日には、歌った日の気持ちがあり。
どの日にも、誰も戻ることは不可能であり。

この歌は、私の子供。
私の想いを離れて、いろんな意味に遠くで育っていたりする。
でも、私の子供。どの子も好きに変わりはない。
古い写真を眺めては、あの頃のおまえは可愛かったのにと
嘆くことを、私は好かない。

今日の私の子供が、今日の私の目の前で呼ぶ。
それで私は忙しい。
今日は、この子と「翻楽」の旅をしてみようか。
今の気持ちを臍の緒にして、明日が細胞分裂を始めている。


 コメントを読むと、本作品は過去を懐かしむために製作されたのではなく、今を見つめるために製作されたものであることが良くわかります。
 本アルバムのラストを締めくくる「土用波」を聞くと、本作品にこめた中島みゆきの思いがよく伝わってきます。

 私が本作品の中で特にお気に入りな歌は何といっても『歌姫』。この歌の優しさと美しさは数あるみゆきさんの歌の中でも格別です。何回聞いていても、自然と心が落ち着き、寂しい心が慰められます。

 本作品は中島みゆきの歌姫としての魅力が非常に良くわかります。ぜひ多くの方に聞いてほしい名盤です!

1. あぶな坂 
2. わかれうた 
3. 怜子 
4. 信じ難いもの 
5. この空を飛べたら 
6. あわせ鏡 
7. 歌姫 
8. 傾斜 
9. 横恋慕 
10. この世に二人だけ 
11. はじめまして 
12. どこにいても 
13. 土用波 

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『デス・プルーフ in グラインドハウス』この映画を見て!

第224回『デス・プルーフ in グラインドハウス』
Photo_2  B級映画を何本か連続して上映するアメリカで流行った映画館“グラインドハウス”。それを現代に甦らせるべく、クエンティン・タランティーノ監督とロバート・ロドリゲス監督が競作した2本立てムービー『グラインドハウス』。
 アメリカでは2本同時公開で上映されたのですが、それ以外の国ではそれぞれ独立した作品として上映されました。
 今回紹介する作品はその内のタランティーノ監督が担当した作品『デス・プルーフ』です。

ストーリー:「テキサス州オーステインの人気DJ、ジャングル・ジュリアは友人たちとバーへ繰り出し、女の子だけの会話に花を咲かせていた。そんな彼女たちを秘かにつけ回す顔に傷のある謎の中年男スタントマン・マイク。彼はドクロマークの不気味な車を乗り回し、いけにえとなる獲物を探していた。ジャングル・ジュリアとその友人たちに目をつけた彼は彼女たちが乗る車にわざと猛スピードで衝突する。
 それから14ヵ月後、テネシー州で映画の撮影に参加していたスタントウーマンのゾーイ。彼女は売りに出されていた憧れの車ダッジ・チャレンジャー70年タイプに試乗するために仲間と計画を立てる。彼女は友人の協力を得て、試乗してスタントライドを楽しむ。そこにスタントマン・マイクが新たな獲物として狙い始め襲いかかるのが・・・。」

 映画は2部構成となっており、前半と後半で主人公が入れ替わります。
 映画の前半は女性たちのセックスを中心とした他愛もない無駄話しのシーンが延々と続きます。そこが退屈な人は退屈でしょうが、タランティーノファンにとってはこの緩いけどリズムのある会話シーンが非常に楽しめるところです。
 そして、長い会話シーンの後の衝撃的なクラッシュシーン。このシーンは一瞬ですが、その生々しさやグロさは半端ではありません。
 
 映画の後半は主人公の女性たちが全く違うのですが、映画史に名を残すほど迫力のあるカーチェイスを見ることが出来ます。CGを使わず生身の人間が体を張ったスタントは迫力満点で、久々に見ていて手に汗握るアクションシーンです。
 特に本作品が映画初主演のゾーイ・ベルは普段はスタントウーマンとして活躍しているだけあって、ジャッキー・チェンも真っ青の驚愕のスタントを次々に披露してくれます。(監督は『キル・ビル』でユマ・サーマンのスタントを勤めた彼女にほれ込み、本作品の脚本を書き下ろしたそうです。)
 映画のラストは唐突でありますが、見ていてとても痛快な締めくくり方です。

 私が個人的に面白かったのはカート・ラッセルの使い方。『バックドラフト』や『ニューヨーク1997』でカッコいい男を演じていたラッセルにあんな役をやらせるとは・・・。彼の情けなさぶりが非常にツボにはまりました。

 また『キル・ビル』にも登場したカウボーイの親子刑事が出てきたり、携帯の呼び出し音が『キル・ビル』の悪役エル・ドライバーが吹く口笛の音楽だったり、タランティーノ映画には欠かせないレッド・アップルが今回も登場したりと随所にタランティーノファンがにやりとするネタが散りばめられています。

 あと本作品はタランティーノの生足フェチが前面に出た仕上がりとなっています。以前から彼の映画には女性の生足にこだわった描写がありましたが、今回は露骨です。タランティーノの監督が嬉々とした顔で生足を撮っていた姿が映画を見ていて目に浮かびます。

 本作品は15歳以上でタランティーノ好きかB級アクション好きな人、そしてカーチェイスには目がない人にはお勧めです。

上映時間 113分
製作国 アメリカ
製作年 2007年
監督: クエンティン・タランティーノ 
脚本: クエンティン・タランティーノ 
撮影: クエンティン・タランティーノ 
プロダクションデザイン: スティーヴ・ジョイナー 
衣装デザイン: ニナ・プロクター 
編集: サリー・メンケ 
出演: カート・ラッセル、ロザリオ・ドーソン、ローズ・マッゴーワン、シドニー・タミーア・ポワチエ、ゾーイ・ベル 、 マイケル・パークス、メアリー・エリザベス・ウィンステッド、ヴァネッサ・フェルリト、ジョーダン・ラッド、 クエンティン・タランティーノ、ジェームズ・パークス

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『プラネット・テラー in グラインドハウス』この映画を見て!

第223回『プラネット・テラー in グラインドハウス』
Photo  B級映画を何本か連続して上映するアメリカで流行った映画館“グラインドハウス”。それを現代に甦らせるべく、クエンティン・タランティーノ監督とロバート・ロドリゲス監督が競作した2本立てムービー『グラインドハウス』。
 アメリカでは2本同時公開で上映されたのですが、それ以外の国ではそれぞれ独立した作品として上映されました。
 今回紹介する作品はその内のロドリゲス監督が担当した作品『プラネット・テラー 』です。

ストーリー:「テキサスの田舎町にある軍事基地で科学者と軍が取引しようとしていた生物化学兵器DC2が流出して町中に拡散する。そのガスを浴びた人々は体中の皮膚が腐り始め、次々と凶暴なゾンビへ姿を変えていく。」

 本作品、ゾンビ映画好きの私にとっては最高に面白い作品でした。劇場で公開されていた時は機会なく見逃してしまったのですが、今となっては大変悔やまれます。

 ゾンビ映画好きの私には過去の名作ゾンビ映画に対するオマージュを捧げたシーンが随所にあり、見ていてニヤリとしますし、ゾンビ映画好きが求めるお決まりの展開やスプラッターシーンがこれでもかと繰り広げられるので大変満足します。
 特に私が受けたのは80年代のゾンビ映画のような効果音や音楽と、サンゲリアを彷彿させるタランティーノが登場するシーン、そしてヘリを利用した思わぬゾンビ撃退方法です。
(まあ、厳密に言えば本作品に出るゾンビは正式にはゾンビではなく感染者ですが・・・。)

 また、70年代のグラインドハウスでのB級映画上映を彷彿させるために、わざとフィルムに傷やノイズを入れたり、そして「リール喪失」のテロップを一番いいところで入れるという演出が心憎いです。

 はっきり言って、本作品は見る人を選びます。ストーリーは荒唐無稽でナンセンスですし、エログロ描写も満載です。ホラー映画が苦手な人や映画に感動や格調の高さを求める人には全くもって不向きです。
 逆にホラー映画や下らないB級作品好きの人は本作品を大いに楽しむことが出来るでしょう!

 私が本作品で一番はまったのがDVDのジャケットにもなっている片足がマシンガンの女戦士。映画のクライマックスは彼女の人間離れしたアクションのオンパレードで見ていて思わず拍手してしまいます。

 あとバーベキューソースをめぐる兄弟間のやり取りも見ていて面白く、そのベタな展開の結末に少し感動したりもしました。

 出演している役者も豪華で、ブルース・ウィリスや今となっては懐かしいマイケル・ビーンが登場します!
 また、ジョージ・A・ロメロの『ゾンビ』で特殊メイクを担当したトム・サビーニが登場しているのもゾンビファンとしては嬉しいかぎりです。

 本作品はゾンビ映画好きにとっては外すことの出来ない作品です。15歳以上で興味のある方はぜひご覧ください!

 あと映画の冒頭に「マチェーテ」というフェイクの予告編が流れるのですが、その作品もぜひ見てみたいです! 

上映時間 105分
製作国 アメリカ
製作年 2007年
監督: ロバート・ロドリゲス 
脚本: ロバート・ロドリゲス 
撮影: ロバート・ロドリゲス 
編集: ロバート・ロドリゲス 
音楽: グレーム・レヴェル 
出演: ローズ・マッゴーワン、フレディ・ロドリゲス、ブルース・ウィリス、ジョシュ・ブローリン
マーリー・シェルトン、ジェフ・フェイヒー、ステイシー・ファーガソン、ナヴィーン・アンドリュース 、マイケル・ビーン、レベル・ロドリゲス、トム・サヴィーニ

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「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」来年初夏公開決定!

Evangelion_movie_2  首を長くして待っていた「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」の続編「破」が来年初夏に公開されることが決定しました。
 それに伴いポスターも公開。英語のタイトルは「EVANGELION 2.0: YOU CAN (NOT) ADVANCE」。
 ポスターの絵は基本的に「序」と同じですが、新キャラとして惣流・アスカ・ラングレーと「序」の最後に流れていた次回予告編に一瞬だけ登場したメガネとおさげ髪の新キャラクターの少女が描かれています。
 「序」は基本的にテレビ版第1話~第6話までの展開とほとんど同じでしたが、「序」の最後の予告編を見る限り、「破」からはテレビシリーズと違う展開が予想されます。
 予告編で示されたテレビ版には登場しないエヴァンゲリオンや新キャラクターの登場。一体どのような物語になるのか非常に楽しみです。
 

公式サイト:http://www.evangelion.co.jp/index.html

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『悪い奴ほどよく眠る』この映画を見て!

第222回『悪い奴ほどよく眠る』
Photo  今回紹介する作品は黒澤監督が自ら設立した黒澤プロダクションで初めて製作した社会派サスペンスドラマ『悪い奴ほどよく眠る』です。
 私は今までタイトルは知っていたものの作品自体は見たことありませんでした。昨日に偶然テレビで放映されているのを鑑賞して、その面白さと完成度の高さに正直驚きました。私の中では黒澤監督の作品のベスト3に入るほど気に入りました。

ストーリー:「日本未利用土地開発公団の副総裁である岩淵の娘佳子と秘書の西幸一の披露宴が盛大に行われようとしていた。ちょうどその時、公団の課長補佐である和田が刑事に連行される。
 建設会社の不正を追及するために会場に押しかけた新聞記者たちは、5年前に課長補佐が自殺して幕を引いた新庁舎建築の不正入札事件に、現公団の副総裁岩淵と管理部長の守山、契約課長の白井が関係していたことを思いだした。
 検察当局は開発公団と大竜建設の贈収賄事件を摘発しようとしていたが、逮捕した和田や建設会社の経理担当の三浦は何も自供しないまま拘留満期がきて釈放される。その後、三浦はトラックに飛び込み自殺、和田も火口から飛び降りて自殺しようとしていた。そんな和田の前に西が突然現れて自殺を止める。西は5年前新庁舎の建設に絡む不正入札疑惑で自殺した課長補佐の一人息子だった・・・。」

 政財界の汚職事件を追求した本作品。その内容は今見ても全く古臭くなく、むしろ今も昔も変わらない権力の腐敗構造と闇の深さを改めて痛感させられます。
 
 本作品の面白いところは主人公である西の復讐劇というサスペンスタッチで政財界の悪を暴いていくという点です。
 映画の前半は一筋縄にいかない悪に対して西が淡々とゲームを楽しむかのようにあの手この手で揺さぶりをかけます。西の揺さぶりにうろたえる悪の姿は見ていて痛快ですし、どうやって悪を窮地に追い込んでいくのか手に汗握ります。
しかし、映画の後半、西の正体が悪にばれてからは、西の内面やヒロインとの愛情に焦点が当たり、前半の痛快さは鳴りを潜めます。
 そしてラストは悪の巧妙さと冷酷さが描かれ、何とも後味のほろ苦い結末を迎えます。映画の最後には再度映画のタイトルが現れるのですが、その意味が痛いほど見る者に伝わってきます。
 私は本作品を見た後、何ともいえないやるせなさとやり場のない怒りがこみ上げてきました。

 本作品では本当の悪の親玉は一切姿を現しません。本作品に登場する一番の悪は副総裁である岩淵なのですが、そんな彼すら電話口で見えない巨悪にペコペコする。そこが何ともリアルであり、権力を牛耳る闇の奥深さを物語っていたと思います。

 また印象的だったのが、岩淵が自宅でエプロンをつけて家族のために肉を焼くシーン。職場では権力にしがみつき悪に手を染めながら、家に戻ればよき父親に戻る。人間という生き物の多面性が見事に描かれていたと思います。

 黒澤監督の様々な工夫を凝らした演出は本作品でも健在です。私が特に印象的だったのが冒頭の結婚披露宴のシーンと音楽の使い方。
 結婚披露宴という大人数が集まる場で登場人物たちの複雑な関係を緊張感を持って、一気に分かりやすく説明するシーンは見事な演出だと思います。『ゴッドファーザー』の冒頭も結婚式で始まりますが、コッポラ監督も本作品が大好きなそうなので、きっと真似て作ったのでしょう。
 佐藤勝の音楽も重苦しい内容と反した軽快で喜劇的なタッチで、映画にユーモラスな雰囲気を与えています。

 役者の演技では岩淵を演じた森雅之の悪としての圧倒的な存在感が印象的です。もちろん、主人公の西を演じた三船敏郎の他の黒澤作品では見られない抑えた演技で、一見すると三船とは分からないほどです。
 あと、若かりし頃の三橋達也、西村晃、加藤武の力のこもった演技も見ごたえがありました。

 本作品は後味は良くありませんが、現代にも十分通ずる内容ですし、重厚な演技と演出は大変見ごたえがあります。黒澤監督の隠れた傑作をぜひ一度ご覧ください!

上映時間 150分
製作国 日本
製作年 1960年
監督: 黒澤明 
脚本: 小国英雄、久板栄二郎、黒澤明、菊島隆三、橋本忍 
撮影: 逢沢譲 
美術: 村木与四郎 
音楽: 佐藤勝 
特殊技術: 東宝技術部 
出演: 三船敏郎、森雅之、香川京子、三橋達也、志村喬、西村晃、加藤武
藤原釜足、笠智衆、宮口精二、三井弘次、三津田健、中村伸郎

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