『おくりびと』この映画を見て!
第217回『おくりびと』
今回紹介する作品は遺体を清め棺に納める“納棺師”を主人公にした人間ドラマ『おくりびと』です。本作品はモントリオール映画祭でもグランプリンを受賞し、今年のアカデミー賞外国映画賞日本代表に選ばれるなど大変高い評価を得ています。
私も劇場に足を運び鑑賞して来たのですが、この手の映画にしては珍しく満員御礼でした。観客層は比較的中高年の人が多かったのですが、劇場内は観客の笑い声とすすり泣きが絶えませんでした。私も2時間近い上映時間の間、大いに笑って大いに泣いて、見終わって久しぶりに良い邦画を見られたなと大変満足しました。私の中では今年度見た映画の中でベスト3以内に入る出来だと思います。
ストーリー:「チェロ奏者の小林大悟は所属していた楽団が突然解散してしまう。大悟はチェロ奏者を諦め、妻と故郷の山形へ帰ることに。職探しを始めた大悟は“旅のお手伝い”という求人広告を見てN・Kエージェントという会社に面接へと向かう。しかし、旅行代理店だと思って行った会社は、“旅立ち”をお手伝いする“納棺師”を生業としていた。大悟は社長の佐々木の面接で即採用されて、納棺師の見習いとして働き始める。しかし、大悟は世間の目も気になり、妻にも言い出せないままだった。」
遺体を清め棺に納める納棺師という余り知られていない職業にスポットを当てた本作品。オープニングに納棺師の一連の仕事を紹介するシーンがあるのですが、故人の尊厳を保ちながら鮮やかな手際で遺体を清め納める納棺師の振る舞いに見入ってしまいました。
映画の中では様々な境遇のお別れが描かれていくのですが、故人を前にした遺族たちの様々な反応が見ていて涙を誘います。死とは誰もが生きている限り出会い経験するものですが、普段はなかなか意識していません。そんな死に関して本作品はいろいろと考えさせられるきっかけを与えてくれます。
また本作品の良いところは死という暗く重い題材を扱いながら、随所にユーモアがあり笑えるところです。前半は笑わせるシーンが多く、後半になるにつれて泣かせるシーンが多くなるというストーリー構成が巧みです。
あと印象的だったのが食べ物のシーン。本作品はいろいろな食べ物が登場するのですが、どれも大変美味しそうに撮ってあります。死と対照である生を象徴するものとして食べ物が見事に描かれています。
音楽は宮崎アニメや北野映画で有名な久石譲さんが担当。主人公が元チェロ奏者という設定であるために、チェロを中心とした音楽となっています。チェロの優しい音色が奏でる美しいメロディは聞いていて心落ち着きます。
役者の演技に関しては広末涼子以外は申し分ないです。広末が登場するシーンは何となく浮いていて違和感を感じてしまいました。特に本作品は山崎努、笹野高史、吉行和子の演技が素晴らしく、映画に奥行きを与えています。もちろんモックンの時にコミカル、時にシリアスな演技は主人公が納棺師として成長していく姿を見事に表現していたと思います。
本作品は死という重い題材を扱っていますが、変に堅苦しかったり重苦しくなく、明るく優しく温かく最後まで見ることが出来ます。
私としては本年度一押しの作品です。ぜひ、皆さん劇場に足を運んでください!
公式サイト:http://www.okuribito.jp/
製作国:日本
上映時間:131分
製作年:2008年
監督: 滝田洋二郎
脚本: 小山薫堂
撮影: 浜田毅
美術: 小川富美夫
編集: 川島章正
音楽: 久石譲
衣裳監修: 北村勝彦
企画協力: 小口健二
照明: 高屋齋
装飾: 小池直実
録音: 尾崎聡
助監督: 長濱英高
出演: 本木雅弘、広末涼子、山崎努、余貴美子、吉行和子
笹野高史、杉本哲太、峰岸徹、山田辰夫、橘ユキコ
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