『用心棒』この映画を見て!
第214回『用心棒』 今回紹介する作品は黒澤明監督による痛快娯楽時代劇『用心棒』です。今までの舞台で繰り広げられる様式美でなく、リアルな殺陣を目指した本作品は、それ以降の時代劇に大きな影響を与えました。
また西部劇のような時代劇を目指して製作された本作品は海外でも人気を博して、イタリアで『荒野の用心棒』として、アメリカで『ラストマン・スタンディング』としてリメイクされました。
ストーリー:「二つのやくざ勢力が対立する荒涼とした宿場町に、自称“桑畑三十郎”と名乗る腕利きの浪人が現れた。居酒屋の主人から町の事情を聞いた三十郎は同士討ちを仕組もうと、両方の勢力に用心棒として売り込み始める。しかし、そこに拳銃片手に首にスカーフを巻いたキザな男“新田卯之助”が帰郷する。」
本作品の魅力は何といっても三船敏郎演じる三十郎というキャラクターのカッコよさです!
三十郎のくいっくいっと肩をいからせて歩く気迫に満ちた姿、粋なセリフを言い回す渋い声、目にも止まらぬ速さの殺陣。三十郎の立ち振る舞いの一つ一つが見ていて惚れ惚れとします。
また、一見飄々としてクールな男のように見えながら、実は悪を憎み正義に燃える優しい男というところも見ていて好感が持てます。
脇役の演技も素晴らしいです!ニヒルでしぶとい拳銃使いを演じた仲代達也、口の悪い居酒屋の主人を演じた東野栄治郎、女郎屋の憎々しい女将を演じた山田五十鈴、調子ばかり良い間抜けなヤクザを演じた加東大介と、登場する役者一人一人が個性的で見た後に印象が残ります。
本作品の面白いところは剣の達人が主人公だからと言って、むやみやたらに剣を振り回さず、知恵と度胸で敵を壊滅させようとするところです。三十郎がどうやって敵を欺くのか、どうやって敵を追い込むのか、見ていてワクワクしました。
黒澤監督の演出は日本の時代劇よりアメリカの西部劇を意識していると感じました。街の中での対立するヤクザ同士の抗争という舞台設定や、仲代達矢がピストルを持って現れたり、クライマックスの決闘シーンで砂嵐が吹いているところなど西部劇を見ているような感じです。黒澤監督はジョン・フォードの映画が好きだったので、きっと本作品を制作するとき、三船敏郎にジョン・ウェインを重ね合わせたんじゃないかなあと見ていて思いました。
また、コミカルな演出が多いのも特長で。火の見櫓の上や棺桶の中から主人公がヤクザ同士の抗争を見物したり、敵に主人公が隠れている棺桶を担がせるなど、見ていて笑えるシーンが随所にあります。
もちろん殺陣シーンも工夫が凝らされており、三十郎が敵の腕を切り落とすショッキングなシーンや、他の映画みたいに敵が主人公に向かうのでなく、主人公が敵の方に自ら斬り込んでいき、一瞬の間に敵が倒れていくリアルかつスピード感溢れる演出は強烈なインパクトがあります。
映画のラストも主人公が居酒屋の親父に「あばよ」と言って颯爽と去っていくという清々しい演出で見ていて気持ちよい終わり方になっています。
本作品は古い作品ではありますが、今見ても大変面白い作品です。ぜひ未見の方は一度見ることをお勧めします!
上映時間 110分
製作国 日本
製作年 1961年
監督: 黒澤明
脚本: 黒澤明 菊島隆三
撮影: 宮川一夫
美術: 村木与四郎
振付: 金須宏
音楽: 佐藤勝
記録: 野上照代
照明: 石井長四郎
出演: 三船敏郎、 仲代達矢、 司葉子、 山田五十鈴、 加東大介
河津清三郎 、 志村喬、 太刀川寛、 夏木陽介、 東野英治郎、 藤原釜足
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