『パコと魔法の絵本』この映画を見て!
第219回『パコと魔法の絵本』
今回紹介する作品は『下妻物語』や『嫌われ松子の一生』での独特な映像表現とテンポの良い演出で高い評価を受けている中島哲也監督の最新作『パコと魔法の絵本』です。
本作品は2004年に全国8都市で公演された後藤ひろひと原作の舞台『MIDSUMMER CAROL ガマ王子vsザリガニ魔人』をCGを大胆に取り入れて映像化しています。
ストーリー:「とある時代のとある場所に患者も医者も看護師も変な人ばかりが集まる病院があった。
特に偏屈なクソジジイの大貫は病院内での嫌われ者だった。大貫はある日病院の庭で入院しているパコという少女と出会う。彼女にも意地悪にしか接することができない大貫は、ある日パコが自分の大切なライターを盗んだと勘違いして頬っぺたを殴ってしまう。しかし、パコは1日しか記憶を保てない病気のために昨日拾ったライターのことを忘れていたのだった。
大貫はパコの病気を知り、ひどく後悔する。パコは翌日も何事もなかったようにケロっとして大貫に近づく。さすがに反省した大貫はパコに謝ろうとほっぺに触れた瞬間、「おじさん、昨日もパコのほっぺに触ったよね?」と昨日のことを覚えていた。大貫はパコのために何かをしてあげたいと思い始め、病院の皆に一緒にパコの愛読する絵本「ガマ王子vsザリガニ魔人」を演劇として演じてくれと懇願する。」
今年の秋は日本映画が秀作ぞろいです。先日見た『おくりびと』も素晴らしかったですが、本作品も負ける劣らず素晴らしい作品でした。
本作品は日本映画としては珍しいファンタジー映画ですが、個性的な登場人物が色彩豊かな映像の中で繰り広げる物語は見ていて飽きることがなく、前半は大いに笑って後半は涙を抑えることができませんでした。
中島哲也監督というとCGやセットを巧みに駆使した独自の映像表現が有名ですが、本作品では日本映画では初となる3D-CGと実写の合成した映像が後半登場します。その出来栄えは大変素晴らしく、まさしく飛び出す絵本!映画のクライマックスを見事に盛り上げてくれます。CG以外にもセットや衣装そしてメイクもカラフルかつ奇抜で見ていて楽しいです。
また、登場人物たちの舞台を見ているかのような大げさな演技も本作品の作風にはとてもマッチしていると思いました。
役所広司はさすがベテランだけあって大貫という偏屈なおじいさんを悠々と演じていましたし、パコを演じるアヤカ・ウィルソンは見ていて本当に愛くるしく可愛いです。脇役の山内圭哉や國村隼のあくの強い演技も見ていて楽しいです。
また、上川隆也と小池栄子に関しては普段テレビで見慣れている雰囲気とは全く違う強烈なキャラクターとして登場するので正直驚きましたし、妻夫木聡にいたっては途中まで演じているのが妻夫木聡と分からないほどの怪演でした。
ただ、阿部サダヲの演技は終始ハイテンション過ぎて、見ていて時折少しうっとうしくなることがありましたが・・・。
ただ、本作品で唯一惜しかったのが、大貫がなぜパコに思い入れをするようになったのか心情の変化の描写が薄かったこと。大貫の心理描写をもう少し丹念にしたら、より素晴らしい作品になったと思います。
映画のラストは予想していた展開と違っていたので少々驚き、そして涙しました。てっきりあの人がああなると思ったもので。
本作品は今までの日本映画にはないタイプの作品ですが、見て損はしない仕上がりとなっていますよ!
公式サイト:http://www.paco-magic.com/index.html
上映時間 105分
製作国 日本
製作年度 2008年
監督: 中島哲也
原作: 後藤ひろひと
脚本: 中島哲也、門間宣裕
撮影: 阿藤正一、尾澤篤史
美術: 桑島十和子
編集: 小池義幸
音楽: ガブリエル・ロベルト
主題歌: 木村カエラ
『memories』
出演: 役所広司、アヤカ・ウィルソン、妻夫木聡、土屋アンナ、 上川隆也
阿部サダヲ、加瀬亮、小池栄子、 劇団ひとり、山内圭哉、國村隼
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» パコと魔法の絵本/PACO and the Magical Book [我想一個人映画美的女人blog]
主役のパコちゃん以外、ほぼ全員、キャラ濃っ{/ee_1/}個性豊かすぎる面々が詰まったおもちゃ箱{/atten/}
まるで、焼きそばとカレーと焼き肉とお寿司とチョコレートとエビフライと薔薇の花をごった煮した鍋みたい{/kaminari/}
どんな鍋じゃ。
うげっ。そんな気持ちワルくないよ{/kaeru_ang2/}
『下妻物語』も面白かったし、『嫌われ松子の一生』なんて邦画では珍しく劇場で2度観ちゃったほど好きだし
その中島哲也監督の新作ということで楽しみにしてたの{/kirakira/}
... [続きを読む]
受信: 2008年9月18日 (木) 23時15分
» パコと魔法の絵本 [そーれりぽーと]
今俺が一番ハマっている後藤ひろひと原作の舞台劇『MIDSUMMER CAROL ガマ王子VSザリガニ魔人』を、今のとこ最も面白い邦画だと思っている『嫌われ松子の一生』の中島哲也監督が映画化。
『嫌われ松子の一生』では原作から大胆なアレンジで違う世界を創造した監督だけに、今回のタイトルの変更に若干の不安も抱きつつ、それでもやっぱり今年一番の期待を胸に『パコと魔法の絵本』を観てきました。
★★★★★
原作の脚本にほぼ忠実に描きながら、視覚と聴覚をフルに使う全く新しい世界を生み出した中島監督の才能と、後... [続きを読む]
受信: 2008年9月18日 (木) 23時25分
» 映画「パコと魔法の絵本」 [FREE TIME]
3連休中に映画「パコと魔法の絵本」を鑑賞しました。 [続きを読む]
受信: 2008年9月18日 (木) 23時46分
» パコと魔法の絵本 [映画通信シネマッシモ☆プロの映画ライターが贈る映画評]
舞台そのもののような極端な登場人物がひしめく和製ファンタジー。入院中の大富豪・大貫は嫌われ者の偏屈ジジイ。そんな彼が、記憶が1日しか持たない少女パコのために彼女が愛読する絵本をお芝居にすることを思いつく。映像は一場面に原色が多すぎてちっとも美しくない。セ....... [続きを読む]
受信: 2008年9月18日 (木) 23時58分
» 映画「パコと魔法の絵本」を試写会にて鑑賞 [masalaの辛口映画館]
「パコと魔法の絵本」@新宿厚生年金会館大ホール 客入りは上々1階席は満席だ。客層は大人に混じり小さなお子さん達も多数来場している。 映画の話 昔々、大人の俳優に脱皮できなかった元有名子役や、消防車にひかれたまぬけな消防士など、患者だけでなく医者や看護...... [続きを読む]
受信: 2008年9月19日 (金) 00時17分
» 試写会 「パコと魔法の絵本」 [ぶっかにっき]
今日は先日ちらっと書いた試写会。
「パコと魔法の絵本」を観てきました。
個人的にはおおはまり。
オススメです!
とある病院でのお話。
一代で大会社を築き、
「お前が私を知ってるってだけで腹が立つ!」
が、口癖のいかつい髭のおじさん大貫。
今日もこんな奴ら・・と他の患者さんをバカにします。
そんな大貫は絵本を持った女の子パコに出会います。
1日しか記憶の持たないパコのことを知った大貫は。
賑やかな雰囲気の派手な衣装に身を包んだ役所広司、妻夫木聡、土屋アンナ... [続きを読む]
受信: 2008年9月19日 (金) 00時39分
» 『パコと魔法の絵本』 [試写会帰りに]
どこまでも現実的で、どこまでもおとぎ話。うふふと笑って、ぽろりと涙させられるおかしな不思議ファンタジー『パコと魔法の絵本』。 パコと魔法の絵本 オリジナル・サウンド・トラック メイキング オブ 「パコと魔法の絵本」と「いつもワガママガマ王子」 変わり者が集..... [続きを読む]
受信: 2008年9月19日 (金) 01時03分
» パコと魔法の絵本 [Akira's VOICE]
命きらめく絵本劇。
[続きを読む]
受信: 2008年9月19日 (金) 10時22分
» パコと魔法の絵本 [Diarydiary!]
《パコと魔法の絵本》 2008年 日本映画 とある病院に入院中の大貫は、1日しか [続きを読む]
受信: 2008年9月19日 (金) 19時44分
» パコと魔法の絵本 [象のロケット]
患者さんもお医者さんも看護師さんも全員変わり者の病院がありました。 偏屈な入院患者、大貫は嫌われ者で、ある日少女パコを突き飛ばします。 翌日そのことを忘れているパコは、一日しか記憶が持たない患者でした。 パコとふれあううちに、大貫は今までの生き方に疑問を感じるようになり、パコのためにあることを思いつきます…。 ハートフル・ファンタジー。... [続きを読む]
受信: 2008年9月19日 (金) 21時30分
» ★「パコと魔法の絵本」 [★☆ひらりん的映画ブログ☆★]
だいぶ前から劇場で予告編を流してた期待の1本。
実写と3D・CGの合成みたいな映像は華やかで楽しそう。
監督は「下妻物語」「嫌われ松子の一生」の中島哲也。
この作品も豪華・異色キャストで話題だけど・・・
ひらりん的にはヒロイン役のアヤカ・ウィルソンちゃんが可愛いーーー。... [続きを読む]
受信: 2008年9月20日 (土) 03時52分
» 『パコと魔法の絵本』 (2008) / 日本 [NiceOne!!]
監督・脚本:中島哲也原作:後藤ひろひと出演:役所広司、アヤカ・ウィルソン、妻夫木聡、土屋アンナ、阿部サダヲ、加瀬亮、小池栄子、劇団ひとり、山内圭哉公式サイトはこちら。<Story>一代で会社を作り、我侭放題に生きてきた大貫(役所広司)は、持病で入院して...... [続きを読む]
受信: 2008年9月20日 (土) 06時31分
» 「パコと魔法の絵本」完成披露試写会 [まぁず、なにやってんだか]
昨日は、国際フォーラムの「パコと魔法の絵本」の完成披露試写会を観てきました。
15:30から座席指定券と引き換えできるということで、友達が15:30に並んでくれたのですが、すでに長蛇の列・・・。いったい皆さん何時からお並びで?
それでも23列目がゲットでき、いいアングルでスクリーンも舞台挨拶も鑑賞できました。
子供向けの映画なのかなぁ?と軽い気持ちで観たのですが、私の琴線にかなりふれる、素晴らしい映画でした。
最初にパコ(アヤカ・ウィルソン)が絵本を読むシーンで、なんでかわかりま... [続きを読む]
受信: 2008年9月20日 (土) 22時17分
» 【2008-215】パコと魔法の絵本 [ダディャーナザン!ナズェミデルンディス!!]
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子どもが大人に、読んであげたい物語。
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受信: 2008年9月30日 (火) 01時03分
» パコと魔法の絵本&シーズン勝ち越し決定 [別館ヒガシ日記]
パコと魔法の絵本は劇場で先月18日に鑑賞したが
結論は面白さの中に所あり良い感じだったね
内容は人間嫌い大貫が記憶障害の少女と出会って
少女のため他の入院患者と劇をする展開だった
役所が大貫でパコとの出会い変わる演技は流石で
ウィルソンがパコで同じ事... [続きを読む]
受信: 2008年10月 2日 (木) 21時13分
» 『パコと魔法の絵本』@新宿ピカデリー [映画な日々。読書な日々。]
一代で会社を作り、我侭放題に生きてきた大貫は、持病で入院していた。病院には、患者も医者も看護婦もクセのある者ばかりが集まっていた。その中で唯一、ピュアな心を持っていたのが、交通事故で入院した少女パコ。我侭な大貫だったが、パコの優しい心に打たれ、毎日、絵本... [続きを読む]
受信: 2008年10月17日 (金) 00時18分
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