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『隠し砦の三悪人』この映画を見て!

第220回『隠し砦の三悪人』
Photo_2  今回紹介する作品は黒澤明監督が戦国時代を舞台に描く痛快娯楽時代劇『隠し砦の三悪人』です。

 ストーリー:「戦国時代、百姓の太平と又七は、一攫千金を夢見て戦に参加したが、何も出来ず全てを失って途方に暮れていた。そんな時、偶然に砦近くの川辺で木の棒に挟まっていた金を発見する。金を見つけて大喜びする二人。そんな前に謎の男が現れる。
 男は秋月家の武将・真壁六郎太で、山名家に敗れた秋月家の雪姫を擁して、お家再興のための軍資金の黄金と共に隠し砦にこもっていたのだった。

 六郎太は太平と又七に金のことについて問い詰めた時、彼らが苦し紛れに話したことをヒントに敵地を通って、友好国の早川領へ抜ける作戦を思いつく。そして六郎太は、二人の欲に付け入って黄金を背負わせ、雪姫の身を守りながら敵陣を突破する旅に出る。」
 
 本作品は黒澤作品の中では娯楽色が強く分かりやすい話しなので、黒澤作品初心者でも楽しんで見ることが出来ます。
 
 黒澤監督含めて4人の脚本家によって練られたシナリオは大変緻密で、主人公たちがどうやって危機を乗り切るのか最後まで手に汗握る展開です。
 特に敵の関所を通り抜ける場面はそういう方法で切り抜けるのかと見ていて感心しました。
 また、ラストの絶体絶命の状況において思わぬ味方の登場で危機を脱するシーンも「裏切り御免!」という名セリフと共に思わず拍手喝采してしまう清々しい展開です。

 キャラクターの配置も巧みで、無骨な侍と気丈な姫の逃避行に農民2人を対置させることで物語りに奥行きを与えています。映画の冒頭から登場する農民2人は小心者で狡賢く欲望丸出しで時には逃避行の足を引っ張るのですが、彼らの人間臭さは見ていて非常に微笑ましいです。農民たちの人間臭さに笑い共感しながら、武士階級に生きる人間たちのカッコ良さに憧れる。それが本作品の面白さであり魅力です。

映像も黒澤監督としてはシネマスコープを初めて採用してダイナミックな仕上がりとなっています。特に群集シーンや馬が駆け回るシーンは横長の映像の魅力が最大限活かされています。
 アクションシーンでは三船敏郎が馬を走らせながら敵兵をばっさりと斬るシーンが本作品最大の見せ場。複数のカメラを使い一気に撮影しただけあって、そのスピード感と迫力は鳥肌が立ちます。このシーンをスタントなしで演じた三船敏郎は本当に凄い役者です。
 また、主人公の三船敏郎と敵方の侍大将が槍で一騎打ちをする場面も終始緊張感が漲っており、見ている側にも闘う人間の気迫が伝わってきます。

 あと私が本作品で特に印象的だったのが火祭りのシーン。北野武監督の『座頭市』のラストはこのシーンに影響を受けたのではないかと思いました。

 今年の5月には『隠し砦の三悪人 THE LAST PRINCESS』というタイトルで樋口真嗣が監督、松本潤と長澤まさみが主演でリメイクもされました。ただ、その仕上がりはオリジナルの足元にも及びませんが・・・・。
 また有名な話ですが、ジョージ・ルーカスも本作品が大好きで、『スター・ウォーズ』にも随所にその影響が感じられます。C3POとR2-D2のタトゥーン星での登場シーンは本作品の冒頭の農民二人の掛け合いシーンと展開が似ていますし、レイア姫のキャラクターは本作品のヒロイン・雪姫にそっくりです。

 ジョージ・ルーカスにも影響を与えた本作品。50年前の古い作品ですが、今見てもスケールが大きく、話しも起伏に富んで大変面白いです。是非一度ご覧ください!

上映時間 139分
製作国 日本
製作年 1958年
監督: 黒澤明 
脚本: 黒澤明、菊島隆三、小国英雄、橋本忍 
撮影:山崎市雄 
美術:村木与四郎 
音楽:佐藤勝 
特殊技術:東宝技術部 
助監督:野長瀬三摩地 
出演:三船敏郎、千秋実、藤原釜足、藤田進、志村喬、上原美佐
三好栄子、樋口年子、藤木悠、笈川武夫、土屋嘉男

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