『回路』この映画を見て!
第213回『回路』
残暑厳しい夏、見た後に背筋が寒くなるジャパニーズホラー『回路』を紹介します。本作品はハリウッドでも『パルス』という題名でリメイクされ、続編も制作されています。(日本では残念ながら劇場未公開ですが、DVDにて現在販売されています。)
ストーリー:「観葉植物販売の会社に勤務するミチの周りで、家族や同僚が黒い影を残して消える奇妙な出来事が続発する。
同じ頃、大学生の亮介のパソコンが勝手に「幽霊に会いたいですか」と問うサイトにアクセスする不気味な現象が起こっていた。同じ大学の春江に相談をするが、彼女もある日姿を消してしまう。」
私は劇場で公開されていた時に本作品を鑑賞したのですが、レイトショーで私以外にお客が全くいない貸しきり状態で見て、本気で怖かったのを今でも覚えています。
本作品は『リング』や『呪怨』のような単なる幽霊が出てきて登場人物を怖がらせるホラー映画を期待して見ると、かなり肩透かしを食らうと思います。もちろんホラー映画なので、頭に黒いビニール袋をかぶった不気味な幽霊等が登場しますし、飛び降り自殺をワンカットで見せるショッキングなシーンもあります。
しかし、本作品の怖さはそんなショック描写とは別のところにあります。それは何かというと、「生きていくこと」そして「死んでいくこと」の孤独に対する恐怖です。
本作品はネットを媒介にして霊界から溢れた死者たちが人間界を侵食していく恐怖を描いていきます。いつの間にか身近な人がいなくなり、気づいた時には多くの人間がいなくなり、静かに崩壊していく人間社会。映画の後半はホラー映画というより、人類の終末を描いたSF映画のような展開になっていきます。
黒沢監督は幽霊によって侵食され滅び行く人間社会を通して、現代社会を生きる人間たちの孤独の苦しみと人間の存在の意味について描こうとします。「生と死の境界線はどこにあるのか?」、「どうやったら孤独から逃れられるか?」を本作品は真正面から描いた非常に哲学的な映画です。
ラストは客観的に見ると絶望的な状態と言えますが、ポジティブで希望のある終わり方をします。
皆さんも本作品を見て、冷や汗をかきながら、人間という孤独な存在について考えてみてください!
上映時間 118分
製作国 日本
製作年 2001年
監督: 黒沢清
脚本: 黒沢清
撮影: 林淳一郎
美術: 丸尾知行
編集: 菊池純一
音楽: 羽毛田丈史
出演: 加藤晴彦、麻生久美子、小雪、有坂来瞳、松尾政寿
武田真治、風吹ジュン、菅田俊、哀川翔、役所広司
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